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狐の面は月見て笑う  作者: 衣桜 ふゆ
『氷』たちの紅
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*雪鶴語り〔過去〕*

雪鶴が語る(?)氷美の母の時代です。誰が誰だか、わかりますか?

「まぁ、姫宮様!?木に登るなんて危なすぎます!降りてください。」

姫宮は下から見上げてくる侍女に笑いかけた。

「いやだ!」

「嫌だではございません!もし怪我などしたらどうするのですか!?」

「けがなどしてもこうかいはしないぞ、わたしは。ここからみえるけしきはきれいだから。」

何を言っても動じない姫宮に、侍女はため息をつく。

「その気は庭にある中で一番高いのですよ!?」

「―――――麗音。落ち着きなさい。」

麗音と呼ばれた侍女は、はっと振り返った。

そこにいるのは物静かそうな女性。

木の上にいた姫宮は、慌てて飛び降りた。

「かあさま!」

「姫宮?危ないじゃないの。そんなに綺麗な景色だったの?」

「そうなの!だけど、さっきかられいねがうるさくて。」

嫌そうに顔をしかめる姫宮。

姫宮の母――――氷奈という名である――――は、困ったように眉を寄せると、人差し指を一本たてた。

「そんなことをいってはいけないわ、姫宮。麗音だってあなたが怪我をして痛いと泣くと、おろおろして自分も泣きそうになるのよ?だからよけいな心配をかけてはいけないの。」

「ちょ、氷奈!?ばらさないでっていったのにっ。」

後ろで麗音が慌てている。

姫宮は不思議そうな目でそれを見、氷奈に向き直った。

「うん、わかったよかあさま。――ねぇかあさま、どうしてれいねはかあさまのことをふつうによぶの?わたしにはけいごをつかうのに。」

もっともな疑問だ。

「…そうねぇ…麗音は、私が大変なときに支えてくれた大切な友達なのよ。麗音にはあなたより一つ年上の男の子がいるわ。今度会わせてもらいましょうね。」

「ほんと!?やったぁ!!」

麗音は何度か口を閉開したものの、なんていえばいいかわからずがっくりと肩を落とした。

「かあさまもおからだがよわいんだからむりしちゃだめだよ?」

なんの脈絡もなくそういう風に注意されて、氷奈は微苦笑を浮かべる。

ふと、そんな様子を見ていた麗音は自分の斜め後ろに人の気配を感じ、武器である鋼糸(・・・・・・・)を装備した。

その人は、振り返った麗音にチラリと一度だけ視線をよこすと、すぐにふいっと顔をそらす。

「…氷奈、この人…だれ?」

「麗音。どうでもいいけれど人を指さすのは辞めなさい指さすのは。」

氷奈が呆れていう。

それがかんに障った麗音は、震える手を下ろした。

「私の、弟よ。」

氷奈が答える。

「…弟ぉ!?」

「うるさいわね麗音ったら…。」

「…すいませんでしたー…。」

氷奈の弟(?)であるその人に目を向けると、どこもかしこも似ていなかった。

「義理の弟よ。」

「先に言え!!」

「あいかわらずツッコミ体質なのね、麗音…。」

「………初めまして。朔と、いいます。」

その少年、朔は軽く会釈した。

人見知りなんだろうか。

「ちなみに、二十歳よ。」

「どうだっていいわ!」

ふざけて麗音をおもちゃにしていた氷奈は、不意に顔を真面目にして言った。

「…月夜の、次期リーダーよ。」

「……はぁ、月夜の。」

月夜の次期リーダー。

…リーダー?

「はぁっ!?」

「…麗音…。」

「月夜って、あれですよねあの。」

「そうよ。」

「旦那様の、義賊グループ。」

「ええ。まったくその通りよ。」

もとをたどれば、氷奈も麗音も月夜の一人だった。

日本刀と、鋼糸を扱う、とても気が合っていて仕事はいつもこの2人、といったかんじの。

氷奈はどこをどう間違えたのか、リーダーである弓弦(ゆづる)と結婚し、貴族の端くれのような生活をしている。

旦那様というのは、弓弦のことだ。

麗音はそこの侍女。

その、弓弦の弟がこれらしい。

朔…新月のことだ。

弓弦が弓のような形をした月だとすると、結構近いなぁと思う。

「ええ、やってあげましょう。月夜のリーダーだろうとなんだろうとどんな奴が来ようと手なずけて見せますよもうヤケですけどそれがなんですか開き直って何が悪いんです!!」

朔が急に饒舌になり、開き直って話し始める。

麗音は、若干引いた。

「はいはい、落ち着きなさい朔。後で弓弦に人の手なずけ方とか教えてもらえばいいわ。」

そういう風に簡単に言うのもどうかと思う。

「ははうえー!」

急に後ろから大好きな声が聞こえてきた。

息子の、零。

麗音は振り返る。

「ははうえ、しごとおわった?」

「零!ごめんね、まだなんだけど…姫宮様と遊べるとは思うわ。」

「ひめみやさま?だれ?なんていうこ?」

「ふふ、氷美ちゃんよ。仲良くしてやって?」

「ひみ?うん、わかった。ひみ、あそぼう?」

零が姫宮の顔を覗き込む。

だけど、姫宮は安らかな寝息を立てながら夢を見ていた。

「…あれー?ははうえ、ひみ、ねちゃってるよ?」

「え、そうなの?」

予想外だ。

さっきからなんか静かだなーとは思っていたけど寝ていたなんて。

「ごめんなさいね、若君。」

氷奈が笑いながら謝る。

「わかぎみ?おれのこと?」

零は可愛らしく首を傾げた。

「そうよ、零。可愛い若君様。」

「だめだよ!おれ、かっこよくなってひみをまもるんだ!」

「あら、これはまた。」

姫宮の耳元で騒いでいたせいで、姫宮が目をうっすらと開ける。

「うぅ~ん…だぁれ…?」

「あっ、ひみ、おきたの?」

「だぁれ?」

「れいだよ。ははうえのところにきて、ひみとあそぼうとおもったんだけどねちゃってたんだもん。」

「れいねのこどもなの?れいって、おんなじはつおんね。」

「うん、おれね、おおきくなったらひみをまもるんだ!」

「そうなの?じゃぁわたしはどうすればいいの?」

「うーん、ひみはねー……………」


そんな、子供たちの平和な会話を聞いていて、氷奈と麗音は顔を見合わせて笑った。

朔もクスリと笑う。

笑われてきょとんとしていた子供たちも、つられて笑い出す。

今だけの、平和な時間だった。

 

長めですが、さらに2つぐらいあるかもしれないです!

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