Ⅱ.秘密、過去④
「なんで、朔さんが知ってるんですか。」
「だーかーらー、義姉だっていってんじゃん。」
朔が笑う。
なんか、悔しいんだ。
氷美は自分の母のことを覚えていないのに、朔は知っている。
そのことがやけに悔しい。
ふと、氷美は思った。
「あり、てことは朔さんって…」
「うん。」
「私の叔父に当たる人ぉ!?」
「うん、そうだねぇ。」
……………。
「信じたくないっ!!!!」
悔しい上に、自分の叔父だなんて。
朔のとなりで雪鶴が嘆息した。
「落ち着け、氷美。」
「…雪鶴?」
「悔しくなったところで、朔の記憶は消えないさ。」
「…もしかしてさ。」
「ん?」
「本当にもしかしてだけどさ。」
「なんだ?」
「雪鶴も、母さんのこと知ってるの?」
雪鶴は沈黙する。
何も言わない雪鶴を見て、氷美は悟った。
「知ってるんだ。」
「…なぜわかるっ!?」
態度でわかるでしょ、そりゃぁ。
「朔さんが知ってるのは少し腹立たしいけど…」
「えぇっ!?なんで?雪鶴はいいの?」
氷美がいったことに、朔は悲痛な声を上げる。
笑うのをこらえて氷美は続けた。
「雪鶴なら、いいや。」
「…なんでだ、氷美。」
雪鶴が無表情で問うた。
「だってさ、母さんも使ってたんでしょ。雪鶴の、パートナーだったんでしょ?」
氷美の言葉を聞いて、雪鶴がふっと微笑む。
「氷美は、すごいな。」
「…正解ってことね?」
「そ。氷奈は君みたいな人だったよ、氷美。性格も、全部。」
悲しみから復活した朔が言う。
「私、みたい。」
日本刀―――雪鶴を使っていて、性格も似ていて。
「…暴走もした?」
「…………………………………。」
朔と雪鶴がそろって氷美から目をそらした。
「…母さん…」
自分も同じだけど、少し呆れた。
「うん、だからな氷美。」
「雪鶴?」
「お前が同じように暴走したとき、そんなところまで似なくてもって思ったぞ?」
「……似ちゃったよ、母さん。」
母も苦笑しているだろう。
「あ、でも…。」
「ん?」
「私の中に、なんで母さんの記憶がないんだろ…」
雪鶴を見て呟くと、雪鶴は少し目を伏せた。
朔も険しい顔つきになる。
「…?」
「氷美、過去の話をしていいか?」
雪鶴の深刻そうな問いにとまどいつつ氷美は頷く。
「少し、つらいかもしれないけど。」
朔がそういった。
「つらい…?」
「そうだ。お前は3歳ぐらいのときだったしな。」
「…3歳って。」
微妙な年だが、少しぐらい覚えていてもいい年だと思うのに。
覚えてないということは、それなりに何かあったのだろう。
氷美は一人、息を飲んだ。