桜
掲載日:2026/07/18
以前家族で住んでいた家の向かいには児童公園があり、その公園には何本かの桜が植えられていた。
その中でも一番大きくて立派な樹が我が家の斜め前にあり、毎年綺麗な花を咲かせていた。
その、大きな桜の樹が満開になる頃に、毎年。
満開の桜の花の中に。
綺麗な着物姿の、日本髪の若い女性がいつも逆さまにぶら下がっていた。
白塗り化粧で、少しだけ笑っている様な表情で。
その女性はいつも、逆さまの姿で満開の桜の中にぶら下がっていた。
もちろん、それは"生きてはいない人"だった。
どうして逆さまでぶら下がっているのか、その女性が誰なのか、以前その場所で何があったのか、私には分からなかったが。
その女性は桜が満開になる頃になると、いつもその姿で現れた。
他の人には見えていない様だった。
その桜は切り倒され、今はもう無い。




