プロローグ・第1話 秘湯ハンター
プロローグ
この世界の秘湯の中には、楽園へ通じるものがあるという。
遥かな楽園を夢見て、多くの者たちが秘湯探しへ挑んでいった。
だが、彼らの運命を知る者はいない。
そして今、またひとり――
第1話 秘湯ハンター
山奥。
湯気の立ち込める岩場で、巨大な魔物が暴れていた。
岩のような外殻。
鋭い爪。
熊にも似た巨体。
その奥にあるのは――小さな天然温泉だった。
「秘湯ぉぉぉぉっ!!」
男が飛び出す。
腰にはカトラス。
秘湯を愛し、
秘湯を求め、
秘湯のためなら命まで張る男だ。
「温泉しか見えてないの!?」
軽い身のこなしの女性が宙を舞い、無数の手裏剣が飛ぶ。
ビキニにパレオ、
胸元で結んだ白シャツ。
大きなつばの麦わら帽子。
ポニーテールを揺らしながら、少女が岩場を駆け抜ける。
彼の相棒、兼ツッコミ役だった。
~「俺、漢・温泉太郎! 相棒のスパ子と秘湯探しの旅をしている。」~
魔物が突進してくる。
スパロウは正面から飛び込み、スパ子は横から苦無を投げる。
長く旅をしてきた二人の動きは、言葉がいらないほど噛み合っていた。
だが。
ガギィン!!
「硬っ!?」
刃が弾かれる。
「このままじゃラチが明かないわ! いつもの通り!」
「わかった!」
次の瞬間。
スパ子が煙玉を叩きつけた。
白煙。
その中を、スパロウが一気に駆け抜ける。
狙うのは魔物ではない。
奥の秘湯だ。
ザバァッ!!
スパロウは勢いよく温泉へ飛び込んだ。
「太郎ー! 早く!」
「3分待て」(落着き)
「早くしろー!!」
・・・
3分後。
ゴゥッ!!
湯気が吹き上がる。
「うおおおっ! 力が湧いてきたぁぁっ!!」
「毎回なんなのそのシステム!?」
温泉で強化されたスパロウが、腰にバスタオル一枚の姿で飛び出した。
一閃。
巨大な魔物が崩れ落ちた。
____
戦いが終わり、巨大な魔物は湯煙の向こうで崩れ落ちていた。
静けさが戻る。
沢の音。
山の風。
そして、秘湯の湯気。
スパ子は肩まで湯へ浸かり、大きく息を吐いた。
「はぁ……生き返る。」
戦闘の疲労が、じわじわ溶けていく。
秘湯には回復効果がある。
だから戦いの後に浸かるのは、ある意味当然だった。
その時。
ザバァッ!!
勢いよく湯が跳ねる。
「ちょっ!?」
スパ子が振り向く。
そこには当然のような顔で温泉へ入ってくるスパロウがいた。
「いい湯だなぁ、スパ子!」
「あんた何入ってきてんのよ!?」
「もうひとっ風呂浴びようかと思ってな?」
「さっき入ったじゃない!」
「戦闘中はのんびりできないだろ?」
「そうじゃない! 当たり前みたいに入ってくんな!!」
スパロウは首まで浸かりながら満足そうに唸る。
「いいじゃねぇか、減るもんじゃなし。」
「出てけぇー!!」
山奥へスパ子の叫び声が響いた。




