第一話-転生
前回のあらすじ
銀行強盗に撃たれた銀行員の俺は即死だと思いよくわからない落ち着きで死を待っている。
あれからどれだけ経っただろうか。今俺は真っ黒な何もない空間に一人足を閉じて腰を曲げて立っている。
時間の感覚としては10分くらいの気もするし1万年って気もする。よくわからない。それだけだ。
なんでこんなにも冷静でいられるかっていうと、同期で入社した親友が銀行強盗の事故にこの世を去ったってのを今とは違うとこの店で働いていたときに聞いたからだろう。「銀行」に勤めててたらいつかは遭う天災みたいなもんだってその時は自分に言い聞かせて友人の死で嘆きたいのを抑えた。
しかし、どうも自分のときはあっさりと逝けた気がする。悲しいけど嘆きたいとも痛いとも思わない。
そんなことを考えているとまた1万年経った気がする。虚無だ。虚無。
虚無感に浸っていると黒い天井から紙が落ちてきた。目を凝らして見るが、よくわからない。それは目を頑張って凝らす必要もないぞとでも言わんばかりに俺の眼の前に落ちてきた。それは小切手だった。元銀行員の俺が見間違うはずがない。
小切手だ。
なんともバカバカしい。今更小切手がなんだというのか。
少々腹を立てた俺はそれを拾ってすべてをざっと見て真っ二つにしようと両手で掴むとあたりの黒いのが黄色い光へと変化した。
しかし、俺はお構いなしに破ろうとしたところ、どこからか声が聞こえた。
「破るな、破るな、破るんじゃない」
一回腕が止まったが、また破ろうと試みる
「破っちゃだめって講習会で習わなかったんか。」
老人っぽい声が少し怒った声が黄色い空間に響く。仕方なく対話をしてみようと思う。
「なんでですか?」
高圧的に問う
「なんでってその紙は儂じゃからじゃ」
この老人はどこにいるんだ。まさか本当にこの紙切れじゃないよな。もう一回破ろうとする。
「いい加減やめんか!老人をいたぶって楽しいか!」
なんだこのじじいは令和◯虎みたいなことを言いやがる。
「はい。なんかすみません。」
「ほんとだわい。」
だいぶ高潔そうなじじいだな
「それであなたは本当にこの紙切れなんですか。とてもそうには見えないんですけど」
威厳はありそうだが容姿が紙切れだと威厳もわからなくなる。その体裁をどうにしかしてほしいものである。しかし、俺がどうこう言えるものではないだろう。
「紙切れとはなんだ。これでも崇高な小切手だ。」
なんだよ崇高な小切手って。
「そして儂はお前の住んでいた世界の金の神様じゃ」
「金の神が紙だと。なんともぺらぺらな冗談を仰る。」
「なんじゃと。紙は紙でもこの小切手はそんじょそこらの紙とは違う材質でできておる。紙の中でも神じゃ」
「あぁ、そうですか。」
数秒の沈黙が流れる
「ときにおぬし。なんでここにいるかわかるか?」
「いえ、わからないです。じつは僕、死んだことは覚えてるんですが。」
「良い。儂はすべて知っている。おぬしが歩んだ人生のすべてをな。」
場に沈黙が流れる
「その、残念じゃったな。急にあんなのに襲われるなんて。色々と悲しかったり辛いだろうが、んっ?」
「辛い、悲しいってもう何も感じませんよ。ただ虚無です。」
「そうかいそうかい。もう覚悟は決まっておるようじゃの。」
「えぇまぁ。.... 死ぬ覚悟くらいとっくの昔に持ち合わせていましたがね」
銀行強盗の事故に巻き込まれたあいつ。よく飲みにいったなぁ。べらべらに酔ってちょっとカラオケ寄って。気づいたらお互い彼女から着信やばくて、帰ろうとか言って駅でまたなとか言ったっけか。懐かしいな
「お主の目は懐かしに溢れているように見えるが、なんだ。まだ、心残りの一つや二つでもあるのか?」
「いえ、もう死んだやつの事考えてただけです。」
「ほう。そうか」
「して、お金の神様。なんでここに?」
「それは決まっておろう。おぬしを救うためじゃ。」
「救うってどう?」
「転生させる」
神は言っているここで死ぬ〇〇ではないと。なんてまるでエル◯ャダイで言いそうなことが。さておき、転生?なんでだ。生き返らせるなら元の世界に戻せよ。俺はまだ後輩にも会いたいし疎遠になった彼女にも色々と話を聞きたい。童貞も卒業したい。なんで今、転生?早く返せよ。こちとらあんな真っ暗なところにどんくらいかわかんないくらい長く閉じ込められてたんだぞコノヤロー。ま、言い分を聞くか。
「なんで?生き返らせるなら元の世界に戻してくれよ。なぁ?」
「それはできないのぉ。それをすると君がとてつもなく傷つく」
「なんで俺が傷つくんだ?俺にはやり残したことがある。やりたかったことだってある。話しておきたかったことだってある。」
「そう怒ることはない。記憶を消してゼロから転生させることもできるのじゃから。」
記憶を無くして転生?それって普通の赤ん坊と同じで生まれてこいってことだよな?確かにそうすれば今の未練みたいなのも消えるだろうけど、それはないぜ爺さん。元の世界に戻るより残酷じゃないか今までの人生も努力も全部ぱぁになった気で転生しろってことか?そんなのは異世界転生どうこうよりごめんだ。
「さぁどうする若造。悩め。時間はいくらでもあるのじゃ。記憶飛んで転生か記憶ありで転生か」
数秒の沈黙が起こった。そう難しい判断ではない。すぐ決めることができた。だが、最後に一つ確認をとりたい。
「なぁ、爺さん本当に元の世界には戻れないんだよな?」
「そうじゃ。それは儂を破いても天地がひっくり返っても戻れない。」
「そうか。じゃあ俺は後者で転生する。記憶を持って転生だ。」
「その心は?」
「その心は思い出が惜しいからだ。」
「そうかそうか。ふぉふぉふぉ。よいよい。いい心中じゃ。」
じじいのような声を出す小切手はそう語る。なんともむかつくことを言うやつなんだろうか。
「さぁ心を決めた。どうすればいい?」
「この小切手にサインして0円と記入しろい。そしたらすぐに転生じゃ。よいな?」
そう小切手はいいながら体を押し付けるように俺のひらひらと妖怪の一反もめんのように手元に寄ってきてペンをよこしてきた。そこに俺は黙って「小林宗幣」と書いて「0」と書いた。この小切手は元の世界にあるものとは違うようでたったこれだけでいいらしい。
「ふぉふぉふぉでは頑張ってくれよ。その高学歴な頭脳で異世界を謳歌してくれ。ちなみに儂は一切手出しだったり手助けはしないぞぉ」
と言った瞬間視界が歪んだ。なんとも都合のいい転生だこと。さて頑張るか。
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目を開ける。眼前には豊満な胸。というわけではなく、がたいのいい胸板がどどんと現れる。上に視線をやると確かにそこには茶髪の男がいた。ちょっと老けているだろうかと思うくらいの顔だ。多分疲れからの顔だろう。顔の彫りは大して深くなく、怖い顔でもなく優しい顔で目に涙を溜めながら俺に微笑みかけてきている。どうやらというかやはり俺は赤子らしい。まじで転生してしまったのだ。呆気に取られているとメイドらしき人物が俺の知らない言語でなにか言っている。男が歩き始める。どこへ行くのだろうか。すると、ある女が寝ていた額には汗をかいていた。母親なのだろう。とてもきれいな女性だ神は金髪目は青い、耳は長いわけではないが魅力を感じる。感傷に浸っていると俺は母の手に渡され頭を撫でられた。そして微かであったが言われた。
「ナイク」
いい響きだった。俺はそれを直感的に俺の新しい名前だと感づいた。なんて素敵な名前なんだろう。前の名前はどうも普通でしかも銀行員になる運命でしたと言わんばかりの名だったから。今回のは良いだろう。とりあえず安堵した。
こうして転生者ナイクはこれからの異世界の生活に心を躍らせるのであった。
これから毎晩9時ごろに上げていこうと思うんで応援お願いします。部活とかであげれない日があるかもなんでご容赦を。




