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超異世界侵略記 〜現代で全能になった俺、領土がこの宇宙じゃ飽き足らず異世界まで侵攻開始〜  作者: yuu
第一章 全能王、異世界へ。跪かぬなら、その法ごと消し去るのみ
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第七話 深淵の魔王城、あるいは神に抗う絶望の産声

 北の軍事大国「バハムート帝国」が、天ケ瀬累という一個人の「工場」へと成り下がってから数時間。異世界の住人たちが抱いた「希望」という名の幻想は、漆黒の絶望によって塗り潰されようとしていた。

 次なる標的は、大陸南方に広がる魔の領域。数千年の間、人類の立ち入りを拒んできた「魔界」の中心、魔王城グラズヘイムである。

「累様、前方の大気密度に変化。強力な負の魔力によって、空間そのものが腐敗しています。この世界の神々に呪われた、不浄の地であると推測されます」

 銀色の髪をたなびかせ、累の傍らに佇むブリュンヒルデが淡々と告げる。

 彼女の視線の先には、紫色の雲が渦巻き、絶え間なく血のような雨が降り注ぐ、死の平原が広がっていた。その中央にそびえ立つのは、巨大な生物の骨を削り出したかのような、異形なる尖塔――魔王城だ。

「呪い、か。法則の歪みが心地いいな」

 累は空中に生成した漆黒の玉座に深く腰掛け、頬杖をついた。

 全能権限ルート・アクセスを起動した彼の視界には、魔王城を幾重にも取り囲む「防御術式」が可視化されていた。それは、物理攻撃を無効化し、精神を崩壊させ、存在そのものを虚無へ送るという、この世界の理を極めた暗黒の魔法体系。

「【法則走査スキャン】。……なるほど、面白い。この魔王とやらは、この世界の『バグ』を自分の力として利用しているらしい。因果の糸がここでねじれている」

 その時、魔王城の城門が開き、大地を揺るがす咆哮と共に、数万の魔族軍が姿を現した。

 身長十メートルを超える巨鬼オーガ、空を埋め尽くす翼を持つ魔竜、そして古の契約によって縛られた悪魔たち。彼らは、先ほど滅ぼした帝国軍とは比較にならない、個の強さを持った集団だった。

「侵入者よ、止まれッ! 我が主、魔王陛下が眠るこの地を一歩でも踏み荒らすなら、魂の一片すら残さず喰らい尽くしてやろう!」

 魔族軍の先頭に立つのは、漆黒の甲冑に身を包んだ「魔将軍」だった。彼が掲げた大剣からは、触れるものすべてを腐食させる死の霧が溢れ出している。

 累は、その軍勢を眺め、退屈そうに鼻で笑った。

「魂、か。お前たちは、自分が『プログラム上のデータ』に過ぎないことにまだ気づいていないようだな」

 累はゆっくりと立ち上がり、右手を前に突き出した。

 彼が使うのは、この世界の詠唱を必要とする魔法ではない。宇宙の根本原理そのものを強制的に書き換える権能だ。

「【全能定義】:存在の希釈ディリュージョン

 累が指をパチンと鳴らした瞬間。

 数万の魔族軍が放っていた「殺気」と「魔力」が、目に見えて薄れていった。

 咆哮を上げていた魔竜は、その翼の密度を失って透け始め、大地を揺らしていた巨鬼は、自らの体重を支えられず、煙のように希薄になっていく。

「な……何だ!? 我が力が……霧のように消えていく……! 貴様、何をした!?」

 魔将軍が驚愕に目を見開く。彼が握る魔剣は、すでに実体を失い、ただの幻影へと変わっていた。

「単純な話だ。この空間における『お前たちの存在確率』を〇・〇〇〇一%まで引き下げた。お前たちは今、そこに『居る』ようで『居ない』状態だ。俺が許可しない限り、お前たちがこの世界に干渉することはできない」

 累は空中を一歩ずつ踏みしめ、実体を失った魔族軍の頭上を歩いていく。

 彼らがどれだけ剣を振り回そうと、魔法を放とうと、それは累を通り抜けることさえない。なぜなら、彼らの攻撃という事象そのものが「発生しない」ように確率操作されているからだ。

「魔王。いつまで城に隠れている。挨拶に来い、と言っているんだ」

 累が魔王城の尖塔を見据え、言葉を発した。

 その「言霊」自体が物理的な破壊力となり、魔王城を覆っていた伝説級の結界を、まるで割れたガラスのように粉々に砕いた。

 次の瞬間、城の最深部から、空間を裂いて一人の男が現れた。

 漆黒の長髪に、冷酷なまでに整った顔立ち。この世界の闇を凝縮したような圧倒的なプレッシャーを纏った存在――。

「……数千年の眠りを妨げたのは、貴様か。異邦の神よ」

 魔王・ルシフェルが、累の数メートル前で静止した。

 その瞳には、この世界の住人が抱く「恐怖」はなく、ただ純粋な「敵意」と「知的好奇心」が宿っていた。

「私のことわりを、こうも容易く上書きするとはな。だが、この魔界は私自身の魂と直結している。私が死なぬ限り、この地の法則は私に従う!」

 ルシフェルが両手を広げると、周囲の空間がぐにゃりと歪んだ。

 累が先ほど設定した「存在の希釈」を、ルシフェルは自らの命を削ることで強引に中和し、周囲の魔族たちに実体を取り戻させたのだ。

「ほう。この世界のシステムを、根性で押し返したか。面白い、実に面白い」

 累は全能になって以来、初めて愉快そうに笑った。

「ならば、ルールの競い合いをしようじゃないか。お前がその魂を燃やしてルールを守るなら、俺はそれを一瞬で『ゴミ箱』に捨ててやる」

 累の背後から、彼が支配する「元の宇宙」の幻影が立ち上る。

 太陽の熱量、ブラックホールの吸引力、超新星爆発の衝撃。この宇宙に存在するすべての物理現象が、累の指先に集束していく。

「【事象圧縮】:超新星の一撃スーパーノヴァ・インパクト

 累が軽く人差し指を振る。

 放たれたのは、細い一筋の光線。

 だが、それは異世界のどんな禁呪よりも巨大なエネルギーを秘めていた。

 魔王ルシフェルは、全魔力を注ぎ込んで最強の盾を生成したが、その盾は光線が触れた瞬間に蒸発した。光線は魔王の肩をかすめ、その背後にあった巨大な魔王城を一瞬で原子レベルまで分解し、更地へと変えた。

「……ぐ、は……ッ!」

 左肩を失い、血を流しながら宙に浮かぶ魔王。

 累はゆっくりとその首を掴み、至近距離で囁いた。

「どうだ、魔王。お前の守りたかった世界は、俺の指一本で消え去る。お前がどれだけ誇り高くあろうと、俺にとっては、この宇宙のバグ取り(デバッグ)程度の作業でしかないんだ」

 魔王の瞳に、初めて「絶望」という色が混じった。

 圧倒的な力の差。それは努力や天賦の才で埋められるものではない。根本的な「存在の次元」が違うのだ。

「累様、仕上げを。この魔族たちも、帝国の人間同様、戦力として再利用いたしましょう」

「ああ。魔王よ、お前も俺のコレクションに加えてやろう」

 累の手から、漆黒の電子回路のような模様が魔王の全身へと広がっていく。

 精神を、肉体を、そして魂の構造を、天ケ瀬累に従属するように書き換える【強制隷属プログラム】。

 数分後。

 かつて世界を震撼させた魔王は、累の足元に跪き、その靴に口づけをしていた。

「……仰せのままに、我が主。この魔界のすべてを、貴方様に捧げます」

「いい子だ。……さて、ヒルデ。大陸の半分は手に入れたな」

 累は、もはや自分のものとなった死の平原を見渡し、満足げに頷いた。

 神殿都市、軍事大国、そして魔界。

 この世界の主要勢力が、累の足跡を追うように次々と陥落していく。

「次は西の連合王国……いや、そこを統べる『神々』が住む天上界に、直接宣戦布告といこうか。この世界のルールを作った連中に、新しいオーナーが来たことを教えてやらなければならないからな」

 累の野心は、留まるところを知らない。

 一惑星の支配。それは全能者にとって、ただのプロローグの終わりを意味していた。

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