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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヱオカケ

この物語は、すべてフィクションです、実際の人物、場所とは関係がありません。

これは、2013年7月、あるネット掲示板の「怖い話あるんやけど聞いてくれへん?」というスレッドを元にした奇妙な一連の物語である。

スレ民の、「まずはスペックよろ」という、話にあまり興味がなさそうな投稿で始まった。

主のスペックは「33歳、会社員、スレ主・妻・8歳になる子どもの3人家族」だという。

「ちっ、家族いるのかよ」という嫉妬を見せる醜いスレ民もいたが、次第に人も集まり始め、本題の怖い話に興味を持つ者が出始めた。

「早く怖い話教えろ」というツンデレなスレ民に、主が「では、投稿します」と丁寧な返信をして語り始めた。

以下は、その投稿の内容である。



 あれは、私が小学三年生の夏(ちょうど今の時期くらい?)にあった出来事です。家族の、夏の恒例行事は母の実家へ里帰りへ行くことでした。そして、その年も去年と同じように、私、母、父の家族全員で里帰りへ行くことになりました。母の故郷は××県から車で二時間の、辺り一帯には田んぼや畑しかない小さな村で、その年以来行っていません。私は、里帰りがとても好きでした。実家のすぐ隣の、もっくん(本名は忘れた。自分よりも2歳くらい?年上だった)と遊べるからです。彼とは、よく近くの川で魚釣りをしたり田んぼで虫を探したりして遊び、当時都会に住んでいた私にとって新鮮な体験でした。実家に着いたときには、あたりはすでに真っ暗となっており、もっくんとは明日の朝から遊ぶことにしました。そして迎えた翌日の朝。私は急いで朝ご飯を食べ、隣のもっくんの家に向かいました。少し経ってガラガラと戸が開き、去年よりも背が高くなった、もっくんが出てきました。「おおっ、久しぶりだなぁ」と言った、彼の驚いた顔は今でも記憶に残っています。私ともっくんは、よく行った小さな小川に向かって歩きました。10分ほど歩いたところでしょうか。彼が突然立ち止まりました。「たまには、裏山に行ってみようぜ」私は夏休みの自由研究で生物について調べる予定だったので、都合が良く、その意見に賛成しました。裏山は、薄暗く、夏なのにひんやりと冷たい場所でした。「あくしろよ。行くぞ」正直、私はなんか嫌な予感がして行きたくありませんでしたが、地元に住んでいる彼を信用して先へ進みました。雑草が生い茂った舗装されていない道。手入れがあまりされていないのか、苔が生い茂った地蔵。都会では聞いたことのない虫の声。私の好奇心による興奮と不安は段々と大きくなっていきました。少し歩いていくと、眼の前に、ヒビが入った、大人一人くらいの大きさの石碑が現れ、そこで行き止まりになっていました。「タナカ ユウコ 七月 之ヲなんとかス?なんだこれ ツタが邪魔で見えないなぁ」もっくんがツタを払うと、崩れかけていた右半分が壊れ、ドンッという音を立てて倒れてしまったのです。ヤバい。バレたら怒られる。早く逃げないと。どっと背中から溢れ出す汗。青ざめる顔。私たちは全力で走ってその場を離れました。ですが、もう遅かったのです。「ヱオカケ、ヱオカケ」という不気味な声が段々と近付いてくるのを感じましたが、恐怖で後ろを振り向くことはなく、ただひたすらに来た道を走りました。その声が段々と大きくなったとき、もっくんが石につまずいたのです。逃げたい。でも助けないと。引き返そうと止まったとき、もっくんの「あぁあー!」という震えた悲鳴が聞こえて来ました。恐る恐る、後ろを振り向くと、一瞬でしたが、右手首から先と足がない、女の幽霊のようなものが見えて消えました。「だ、大丈夫か?」もっくんの、口をぽかんと開けて驚き、目の焦点が定まらない魂が抜けたような、何かに取り憑かれたような表情は今でも脳裏にこびりついています。早く家に戻らないと。もっくんの震える重い肩を担ぎ、ありったけの力を振り絞って道を進み、家へ戻りました。家に着くと、何があったのかと戸惑う母が来ました。私は、恐怖で嗚咽を漏らしながら事情を話すと、私は和室へ、もっくんは二階の部屋へ連れて行かれました。部屋について五分ほど待っていると、ドタドタという音と唸り声が近づいてきました。バンッ!怒り狂った様子で部屋に入って来たのはもっくんの母でした。「こ、こんにちは」と言い終わるよりもはやく、私に殴りかかってきました。「なんでだよ!なんで家の子がこんな目に!あんた、あんたが憑かれればよかったのよ!あんたが悪いんだよ!殺す、殺してやる!」私は意味がわかりませんでした。なぜ、こんなに怒っているのか。なぜ、私が殴られているのか。憑かれればいいとは、どういうことなのか。すぐに親族が部屋に入ってもっくんの母を止め別室へ連れて行きましたが、すでに私の顔は血だらけでした。「顔を洗ったら、この部屋に戻っておいで。おじいちゃんからお話があるから。」やけに冷静な祖母にそう言われ、洗面所で顔の血を洗い流した後、急いで部屋に戻りました。部屋に戻ると、祖父が何かを決意したような表情で正座をしていました。「そこへ座りなさい」と机を挟んで反対側に座らされました。「お前は、何が起こったか知りたいか?」私は、もちろん「はい」と言いました。祖父が「なら、お前がやったことを説明してやろう。」と教えてくれました。

以下はその内容をまとめたものです。


・裏山にあった石碑は、「タナカユウコ」という悪霊を封印するためのものだった

・「タナカユウコ」というのは、昔この村に住んでいた画家でよく村の風景を描いており、その絵に描かれた人は呪いをかけられ、死んでいったため、村の住人全員で取り押さえた後、絵がかけないよう右手首を切り落とし、最後に首を落として処刑した

・処刑に関わった人物が、その霊に取り憑かれ、次々と謎の死を遂げたため、住職を呼んで私の住んでいる家の裏山に、石碑をつくって封印した

・住職に、25年ごとに封印の力が弱まらないよう、15歳になる前の子ども一人を生贄として捧げる必要があると伝えられた

・生贄として捧げる子どもは、村であらかじめ決めていたが、15歳になる前の子どもであれば誰でも良い

・今年が25年周期の4回目で、私が生贄として捧げられることになっていた

・父親・母親が60歳になるまでは、儀式のことは伝えず、子どもは行方不明扱いにされていた

・石碑に触れたものは、その悪霊に取り憑かれる

・取り憑かれた場合、他の者に霊を乗り移らせるか、取り憑かれたものを生きたまま石碑にして固めることで、霊を封じ込めることができる

・幸いにも、もっくんは取り憑かれてからまだ時間が経っておらず体に霊が定着していないため、住職を呼んでお祓いをしてもらい霊を一時的に無効化しようとしている


私は、恐怖、安心、申し訳ない思い、知らなければ良かったという後悔、しかし知れてよかったという思い、様々な思いが混ざった不思議で複雑な、すべてを言葉で表せない気持ちになりました。祖父が、このことは今から父母にも伝えるから部屋を出て待ってなさいといったので、和室を後にし、もっくんのもとへ向かいました。住職はすでに到着してお祓いを始めており、布団の上で仰向けになったもっくんを、彼の両親、私の叔父・叔母が見守っていました。2時間ほどだった頃でしょうか。お祓いが終わりました。お祓いが終わっても、もっくんが言う言葉は、「ヱオカケ、、、ヱオカケ、、、」。ずっと繰り返すこの言葉。抜け殻のようになったもっくんの両親。もっくんの母親の、私に向けていた鬼のような形相は消えていました。住職が「まだ、霊が弱まっていません。霊は、一回で祓い切れないことも多々あります。まだ、頑張りましょう。」と言い、2回目のお祓いが始まりました。それから、少しの時が経ち、私の両親が部屋に入ってきて、私に「急遽、家に戻ることになったから、身支度を整えて出発するわよ。」と言いました。そして、異様な空気に包まれた、お祓いをしている部屋をあとにし、荷物をまとめ、両親の車のトランクに詰め込みました。荷物を詰め込むとすぐに、私と両親の三人は実家を後にしました。道中見える一面の田んぼ。一つのカカシの後ろに、あの「タナカユウコ」がいるのが見え、すぐに目をそらしました。両親にも「あいつ」が見えていたのか、その後、もっくんがどうなったのか、それ以降、家族の間でこの話題に触れるのは禁忌のようになったので、今でもわかりません。「ヱオカケ」。この言葉が、20年以上経った今でも脳にこびりついています。以上です。


 スレ民たちは、その「タナカユウコ」の正体について、持ち前の特定能力を活かして、解明しようと努めたが、正体はわからず。そんな中、一人のスレ民が「わからんなら、両親に聞けばいいやん」と言った。主は「両親は4年前に、交通事故で亡くなりました。」と返信した。

「実家に行って祖父母に聞いたらよくない?」と別のスレ民が返信した。多くのスレ民が、その意見に賛成する。最初は乗り気でなかった主だったが、最後は主が折れ、主が「そんなに言うなら実家に帰ってみるわ。妻も子どもも、行きたがってるし。あいつの正体が何なのか、祖父母に聞いてみる」と言った。喜ぶスレ民。「気を付けてな。情報を手に入れたらすぐに投稿しろよ」というスレ民。その投稿を最後に、このスレは幕を閉じ、主は消息不明となった。


 ID:5uYAk7aT

2013/07/16/02:56 実家に行って祖父母に聞いたらよくない?


 別のスレでこの投稿が、話題になっていた。「ID、逆に読んだら、Ta7kAYu5(タナカユウコ)じゃね?この掲示板、IDは自分で決められないし、ランダム生成だから、偶然にしてもおかしくね?霊が、どっかのPCに憑依して、このスレを見つけて投稿した説あるかも。ありえんけど。」

別のスレ民があることに気づく。「今年って主が、その奇妙な体験をしてから、ちょうど25年(生贄の周期)だよね。しかも、主は「子どもも連れて行く」って言ってたし、子どもも、8歳(小学3年生)で主が体験をしたときと同じ年齢、、、、まさかとは思うけど、主は、「タナカユウコ」に呼び寄せられて、子どもを生贄にしようとしてんじゃね??」

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― 新着の感想 ―
怖すぎる
2025/03/15 14:57 その辺のトマト嫌い
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