第62話 魔工匠(まこうしょう)フーバーの矜持
「では始めるとしようか…」
「はい!お師匠様!」
弟子一同
「魔王様とドノヴァン様より頂いたデモンズブラッド…何という凶々しさか!」
皆でスラリンの分体を保存出来る容器から取り出す準備を始めてデモンズブラッドを見詰める
「コレが!?流石は魔王様とドノヴァン様のデモンズブラッド!!」
始めて見る弟子たちは感嘆の声を上げる
「素晴らしい!スラリン殿の胃液でもドノヴァン様の目玉は再生を続け溶けておらん!
それどころかコチラを睨んでおるわ!
ウハハハハハ!
最高品質のデモンズブラッドだ!
魔王様の腕は新たな武器への変貌への期待か禍々しさを増しておるわ!
私の魔工匠としての腕の見せ所とは正にこの事よ!更に鉱石を混ぜるぞお前たち!」
「分かりましたぁ!!この日の為に集めた最高純度の魔鉱石と!その他諸々の鉱石!正にお師匠様がイツかの為と集めに集めた材料の出番ですね!」
弟子一同
「おぅよ!やるぞ!お前たち!今から完成まで寝れると思うなよ!!!!」
「はい!!!お任せください!お師匠!」
「では…
始めるぞ…」
シュワシュワシュワシュワ
次々と溶けて混ざり合う鉱石
その鉱石達は弟子がフーバー本人が魔王領各地へ赴き集めた物である
最高品質を最高の素材を集める為に奔走した日々、問屋に新しい鉱石が入れば買い付けに行き、北は極寒の地、南は溶岩地帯、魔王城付近の魔族すら寄り付かない漆黒の雷雲渦巻く土地にフーバーの武器を愛してやまない上位魔族に取りに行って貰った希少鉱石の数々
「混ざったか?」
「どうやら混ざった様ですお師匠様」
弟子一同
「では!取り出すぞ!」
「はい!!」
弟子一同
「嗚呼〜♪何という…」
混ざり合ったその未知の鉱石は凶々しさと漆黒へと誘うかのような…全てを飲み込む様な黒、最早!漆黒を通り越し無を象徴するかの様な闇、そして周りに揺らめくドス黒い巨大な赤いオーラ!
「お師匠様!コレで鉱石は完成ですね!」
「未だ混ぜるが、取り敢えず始めるぞ!おぅよ!イフリートの旦那!頼めるか!」
「任せよ!火焔獄牢!」
何人たりとも逃さない四角い炎の牢獄は吹子要らず!
「イフリート殿!我ら今より各種鉱石を混ぜます!
叩き始めますと普段は飛び散る火花に混じる鉱石を終わってから集めまするが!その火の粉も飛ばさず再度溶かして下さいますか!
熱しすぎてもオーバーヒートしてしまい鉱石が駄目になりまする故、温度は!」
「心得た!一粒すら逃さん!」
「しかぁーーし!酸化皮膜は除去しまする!出来ますか!」
「リョー( ̄^ ̄)ゞかいした!」
「いくらスラリン殿の胃酸で混ざっているとはいえ熱間鍛造で行きますので!温度は1100~1250℃でお願いしまする!
真鍮も混ぜまする故、その時は700~750℃でお願いします!
アルミニウムも混ぜるまする!その時は400~450℃で
銅合金は600℃~900℃の範囲で鍛造した後に叩き始めまする!
そこまで進めればスラリン殿の分体は剥離するでしょう!」
『…(;・`д・´)混ぜ過ぎじゃね?温度変わったら駄目にならん?接着砂は?多少はファンタジーなのでご了承下さい』
「適切な温度管理をお願いしまする!」
「心得た!」
「魔鉱石は1100~1250℃!」
「任せよ!」
「では!叩くぞ!お前たち!!」
「任せて下さい!」
親方が自分のハンマーで叩く
カーン!
「ほい!」
弟子たちは数発叩いて交代
弟子たちは入れ替わり立ち替わり大ハンマーで師匠の後に叩く
叩く強さはまちまちだが…
弟子と師匠の共同作業が始まった…
水分補給は弟子が親方に飲ませ
弟子たちは入れ替わり立ち替わり休憩を挟む
「どうじゃ?」
イフリートが声をかける…
フーバーは集中し過ぎて聞こえ無い様子…
「イフリート殿!温度が上がり過ぎそうです!」
「おう!心得た!」
「温度を指定した範囲内にキープして下さいませ!」
「任せよ!」
「ありがとうございます!」
「礼には及ばん!続けよ」
そんなやり取りがどれ程の時間、繰り返されただろう?
「くっ!魔王様のデモンズブラッドが他の鉱石と分離し始めたか!残して置いたスラリン殿分体に混ざった魔王様のデモンズブラッドを混ぜよ!」
シュワシュワシュワシュワ
弟子が手袋を溶かしながらスラリンの分体に混じる血液を加える
「どうじゃ!?フーバー!」
「イフリート殿!いけると思いまする!
良し!一体化した!魔王様のデモンズブラッドは高温でも溶けぬ故、この温度が最適かと」
「温度管理は任せよ!其方は私に礼など言わず集中せよ!」
「ありがとう…ございます…」
「集中せよ!!!魔王様に心血を注げと言われた筈ぞ!礼は後で貰う!集中だ指示だけ飛ばせ!」
「おぉぅ!」
私は幸せ者だな…
しかし…
ドノヴァン様の右目は…
何処をどう叩いてもハンマーから逃げる…
しかも…
此処を叩けとばかりに適切に移動される…
流石ドノヴァン様よの…
叩き始めてどれ程の時間が経過したのか…
何発、叩いたのか…
折り返した回数は2億を超える…
意識が…
取り敢えず今回は此処までか…
「イフリート殿ぉぉぉ!」
「おぅ!!!」
「今回は此処までです!」
ジュワっ!!油に投入!
「しかし!各種熱処理の工程がありますれば!今暫く温度管理をお願いしたく!」
「任せよ!」
「ふぅ〜」
一息付くフーバー
「して?この後は?如何する?フーバーよ?」
「イフリート殿!一旦削ったりして整形いたしまする!然る後もう一度火を入れて、前もって作って置いた各種パーツを取り付けて、更に削ります!
本日はここまでです!ありがとうございました!
削りの作業が終わったら連絡致します」
「分かった!」
「では!後日!次回に向けてごゆるりと休養されたし!」
「フーバーよお主もだぞ!次回も万全の体調で臨もうぞ」
後日、
「では!削っていくぞ!」
「はい!砥石板の回転速度は調整済みにてございます」
弟子一同
「形は私の書いた図面通り!」
「はい!親方が書いた部分を削ります!」
削りの工程は各種パーツと本体、フーバーがマーキングした部分を弟子が削り取る
「当て過ぎて焼きを入れるなよ!」
「親方ぁ!もぅ俺たち素人じゃありませんぜ!」
「おぅ!済まん!スマン!」
「親方…」
「何じゃ?」
「この砥石じゃ削れませんね、全く持って歯がたたねぇでさぁ」
(;゜゜)マジかぁ…それは想定して無かったわ
「スラリン殿の分体は!」
「各種パーツを繋げる為に取ってありますが…」
「どうした!」
「はい…残り僅かになってやして」
「繋ぎに使ったからな…新品のスラリン殿の分体はあるのか?」
「あるにはありやすが…混ぜると薄くなっちまいやしませんかね?」
「構わん!」
ズボッ
片足を突っ込むフーバー
「!?親方!?何を!?」
「叩いている私の血肉もくれてやる!」
「俺とお前たちの血豆の1つや2つじゃきかねぇくれぇの血が混ざってるんだ!繋がるだろ!」
「そう言う事なら!」
弟子一同足を突っ込む!
「お前たち!お前たちがそこまでする必要はねぇ!」
「何を言ってるんでさぁ!お師匠!魔王様の期待に応えてぇのは俺たちだって一緒でさぁ!キャプテン・ウェイ殿みてぇな格好いい義足を作ってくれりゃ良いんですよ!」
「お前たち…いけるかどうかも分からねぇんだぞ」
「我らはお師匠様と一心同体でさぁ!!なぁお前たち!」
「おおおおおおおぅぅよ!!!!ただ不要部分を溶かすだけならいけるでしょうに!」
「どうだ!」
「いけやす!溶かせますゼ!」
「いや…我らでは無く…流石はスラリン殿と言った所か…」
後日、
「イフリート殿!お待たせしました!」
「おう!待ちくたびれたぞ!?お前たち!?足はどうした!?」
Σ(・ω・ノ)ノ
「斯々然々」
「阿呆もここまで来ると言葉も出ぬわ…」
「( ^∀^)アハハ/\/\/\違げぇねぇ!」
「お前たち…最後の仕上げぞ!火焔獄牢!」
「おおぅ!」
熱し、各種パーツを自分たちの血肉の混じるスラリン分体で繋いでいく
「嗚呼見事に繋がっていくではないか!」
「後は研いで完成じゃあ!スラリン分体を持てぃ!」
「任せてくだせぇ!」
シュワシュワシュワシュワ
回転するスラリン分体に絶妙に当てて溶かし削る
みるみると切先から研がれていく魔槍
そして平滑に、刃物部分は普段は光沢のある様に磨がれていく筈なのだが
刃先部分に向かって磨げば磨ぐ程、黒さが増していく…
「ココからがワシの真骨頂よスラリン分体で刃先以外の部分に絶妙な深さで模様を掘っていくと」
「ほほぅ、フーバーよ相変わらずよ、たいしたものだ、その模様に意味はあるのか?」
「麻袋を編む時に使う編み方を模した物になりますれば」
「何故?麻袋なのだ?」
「ドンゴロスと申します」
「魔王様を名指しとは如何な物かフーバーよ」
「いや、麻で荒く編まれた袋の事をドンゴロスと申しますれば魔王様の事では無いのですが…
魔王様の名の由来はソレかと」
「そうか!娘たちも息子も編み名から来てあると聞いたが魔王様も…
フーバーよ…
主は鍛治師の知識だけではなく博識よのぅ」
「いえいえ、私などたいした者ではございません」
「で?完成か?」
「いや、未だです!この溝に魔力を流し込みます」
赤いオーラが血液が巡るが如く溝を巡り揺らめき始める
「嗚呼、まるで生きているかの様にオーラが脈打つかの様ではないか!」
「そうですな…更にドノヴァン様の右目は魔槍の一部の筈ですが溶解されず最後までギョロギョロと動いておいでですからな、まるで生きているかの様です」
「この魔槍の名は?考えてあるのか?」
「私の頭の中に響く名は2つ!魔王様に選んで頂く所存」
「共同作業をした我にも教えてはくれぬのか?」
「名付けは魔王様にゆだねまする」
「フム…号外を待つしか無いと言う事か?」
「然り!未だ名は有りませぬ」
「分かった!其方の矜持と捉えた!魔王様の命名を待つとしよう!」
…(;・`д・´)更に魔王軍が強化され…る?
魔王軍…強すぎじゃね?ヤバくね?
どうなる人族?