第６１話 魔王との交渉
「又！来たのか！人族の使者よ！懲りぬと見える…
我は毎回の様に言っておる！
お前らは！我らの家畜となって飼われて食料となるならば生き残れる！…と」
「私は和睦の使者でございます」
「和睦とは！対等な立場の者達が交わすものであって我らとの力の差を理解しておらんと見えるが？我らは対等か？」
「私達人族は魔王討伐をしない見返りに和睦を求めておりますれば」
「ほほぅ？ではイツ討伐にいらっしゃるのかな？」
「ドノヴァン！つい先だって来たのは誰達であったか！」
「はい！魔王様！人族は愚かにも勇者を召喚せず勇者の子孫のみで攻め込んで参りました」
「フム、してどう成った？」
「主要な人族は道すがら会敵したギガンテス一体に討ち取られ方々の程で逃げ帰っておりまする！」
「そして和睦の使者が来た…と」
「我らは対等か？人族の使者殿よ？」
「…我らは魔王討伐の凍結を見返りに…」
「家畜如きが良く吠えおるゎ！」
「なっ！？いくら魔王と言えど無礼であろう！」
「だから家畜にも分かる様に言ってやっておる！家畜と和睦する馬鹿が何処にいるのか！と！」
「我らを愚弄するか！魔王！貴様など聖剣の一振りで滅ぶ脆弱な存在の分際で！」
トントントン
「だから言っておろうが、我が首を、その聖剣とやらで落としてから言え」
魔王は小首を傾げ、右手で我が首を落としてみよ、とばかり挑発する
「下郎が！」
「かなりの上から目線であるな、ドノヴァン！主ならどうする？」
「下等生物である人如きが我らを討伐すると？それをしてやらないから和睦してやる(=｀ェ´=)フフフアルザスの首でも持って出直してこい！としか言えませんな」
「何だと！我らに王を差し出せと！」
「人族の使者よ、よく聞け、我ら魔族を今までの様に討伐出来ると思うなよ、我らは以前の討伐出来た頃とは違うのだ、其方らが同族で争っている内に我らは一枚岩と成った、何度来ても一緒だ、返り討ちに合うだけよ、無闇に死者を出さぬ方法が我らの家畜となり生きながらえる事だけよ」
「家畜に成れば我らに人権と生活する土地は確約されるのか！」
「んん？そんなモノはあるはずも無かろう家畜ぞ、餌を与えられ次は我が身と怯えて暮らすのみよ」
「度重なる無礼！許し難い！帰って我が王に！そう伝えまする！」
「ドノヴァン！今まで来た使者はどの様にもてなしたかのぅ？」
「はっ！此方から送迎しております！」
「結構です！我らに送迎は不要！」
「丁重に贈ってやれぃ！」
「はっ！」
「待て！待ってくれ！」
「空間魔法！亜空間転移！圧縮！」
「あっ…」
一瞬で五人の使者は拳大サイズの四角い一塊に圧縮される
「では、今回は我自らが贈り届けてやろうか？」
「はっ！御心のままに！」
「ではドノヴァンよ、空間転移のゲートを開いてくれるか」
「かしこまりました！転移ゲートオープン！」
「片手だけの転移でよいかな？」
「おん自ら出向く必要は無いかと」
「分かった」
黒いゲートがハインデル王国謁見の前に出現する
「何事ぞ！？この魔力波動は！？魔王か！？」
「ちゃーす！お届け物でーす！」
ゲートから出てくる魔王の手らしき物に握られていた四角い塊が投げ捨てられる
腕だけしか出ていないのに強烈なオーラによりメイド達が次々と失禁し気絶して行く、近衛部隊の新人はその場で四つん這いになり嘔吐を始めた
「こうも簡単に…結界はどう成っておるか！」
「そんなモノは触れなければ、どうと言う事は無い、その四角い肉塊が今回の使者五人分よ、再生ボタンがあるので、使者の記憶が映像で観れる様に趣向を凝らした故、皆で観て内容を把握せよ、我らの要求は１つのみである、人族は全面降伏し家畜となる約定を交わせば絶滅は免れる事が出来るぞ」
「何と！？」
「映像再生だと！？何と言う技術力か！？その分野でも我らは足元にも及ばぬと！？」
「んじゃ！我はこれにて失礼する、よくよく考えて活論を出すとよかろう……？？」
クリスティーが魔王の手を見詰め睨む
「ほほぅ？我らの上級魔族並の殺意のオーラを放てる者も居るか？面白い？其方の名は？」
「クリスティー……メイド長ですわ」
「ほほぅメイドの長か、覚えておこう、では帰るとするか♪ゴミの片付けを頼んだぞ！フハハハハハハ」
「再生ボタン？コレか？」
「無闇に手を出すでない！！！！！！」
バクンッ！
ミミックが人を食べるかの如く飲み込まれる新人騎士
「フハハハハハハ！再生一回の対価である魂と血肉！確かに受け取った！再生を始める！」
「くっ！無知とはいえ前途ある若者が召されるとは」
その後の映像は魔王との会談のままである
「メイド達の介抱を…」
嘔吐していた新人は若いと言えど騎士クラス、魔王が去った後に直ぐに回復、失禁気絶した一般メイド達の介抱が成される
「たかが腕１つがコチラの国に現れただけでこの有様か…」
頭を抱えるアルザス2世
「王よここは、帝国やハナ王妃の母国ジーパングォは元より妖精王やドワーフ王やエルフの王に打診する他に手はございません！」
「それだけでは足りませんわ！」
「王妃様！？」
「天界の方々にも助力を仰ぎましょう！」
「天界ですか！？」
「そうです！人族、ドワーフ族、エルフ族、妖精族、等が居るコチラの世界が魔王に蹂躙されれば…次に魔王が狙うは天界、助力と神聖武器の貸し出しを願い出て見ましょう！」
「しかし問題が！神々への使者には誰を！何処に行けば良いと？アースガルズに辿り着いた人など！ただの一人としておりませぬ！」
「…」
一同沈黙
しかし姫騎士アンナだけは、該当する人物を一人思いついていた
魔王城、謁見の間
「ルドウィンよ」
「はい魔王様」
「そろそろ交渉も飽きたな」
「さようにございますな…して如何なされるおつもりで？」
「彼奴ら同じ事をグダグダと申すだけの癖に何も代案を考えて来ぬ、使者の受け入れを不可能にするにはどうすれば良いか？」
「簡単にございます」
「ほう？」
「ギガンテス一体如きに屠られる者達にございますれば、実力で魔王城に来れば良いのです。来れればの話しですが」
「主も人が悪いな」
「バンパイアですので」
「我の揚げ足を取るでない！」
「はっ！申し訳ございません」
「実力無き者との謁見は叶わぬと言う其方の意見、採用だ」
「はい、ハインリヒの奴らに伝えまする」
「ルドウィンよ、主は優しいな」
「では放置の方向で進めまする」
「それで良い」
