第44話 魔王四天王オーガのロゴス
「ロゴスよ此度の失態どう始末を付けるつもりですか?」
「誠に申し訳なく…」
「良い!ロゴスよお前には一週間の謹慎を申し付ける!里に帰って暫し我が貴様に言い聞かせて来た事を深く考え直してみよ!」
「魔王様!その様なヌルい事では他の者達に示しが付きませぬ!このままでは四天王が舐められかねません!」
「ルードリヒよ…我の判断に誤りがあると申すか!」
「慎みなさいませルードリヒ様、魔王様の御前でありますぞ」
「其方までその様な事を言うのかドノヴァン!?」
「ドノヴァンよ此度の遠征の空間転移の件、ご苦労であった!」
「勿体無きお言葉、恐悦至極の極みにございます!お気軽にお声掛け下さいますれば、このドノヴァンいつでも魔王様の手足となって働きましょうぞ!」
「其方の献身痛みいる!今後も励め!」
「ははぁ!」
「して、此度の遠征にて気付いた事はあるか!」
「はっ!魔王様に於かれましては、我々の思考の範疇を超えるお方でありますれば、思うままにして頂ければそれが最良かと」
「私はお前に意見を聞いておる!そう畏まらなくても良い!申せ!」
「はっ!僭越ながら申し上げまする」
「うむ」
「此度仕留めたキョウイチロウなる人物…魔力量こそ膨大でありましたが、あまりにも脆弱極まりなく我らの脅威となり得ない獲物であったかと」
「フム然り!確かに手応えも何もあった者では無かったが…仕留めた筈の奴の魔力が消えてはおらぬ!」
「何と!?お分かりになられるのですか!?」
「うむ、魔力の数値的にしては微弱だが、何処かに通じておる」
「亜空間に本体を残していたと!?」
「そうでは無い様だ…が!我にも分からぬ!」
「全知全能なる魔王様でも分からない事を我ら四天王が知るよしもなく…」
「もう下がって良い!」
「ははぁ!」
「あぁ魔王様!パねぇ!カッケー!あのお方になら俺は何処までも着いて行くゼ!
で?ドノヴァン!今後の展開的な物ぁどうなると予測する?」
「どうもこうもあるか!
我らは魔王様の思考の深淵の淵を少し覗けるだけで本意など理解出来る筈も無かろう!
我らは己が小さき頭で魔王様の為の権謀術数を張り巡らすだけよ!」
「流石は爺!最古参の言う事は重みが違げぇゼ」
「其方も、もう少し考えてはどうか?」
「俺か?そんな物ぁ!魔王様と爺の下知に従うだけよ!それで間違いはねぇ!」
「はぁ〜単純よのぉ…ロゴスももう少しお主を見習って欲しいものだ」
「父上…只今戻りました…」
「おぉ我が愛しの娘ロゴスよ!お帰り♪してこの度は如何した?」
「あの…父上…」
「毎回も言っておろう!親父殿か親父と呼べと!」
「その件については!父上で決着が着いている筈です!」
オヤジと呼べと強要する父ゴロス、父上と呼ぶと頑なに意固地になる娘で殴り合いの喧嘩になり、どれだけ殴られても意見を曲げない娘にゴロスが折れる形で決着がついている。
「相変わらず頑固よのぅ!誰に似たんだか?」
「父上です!」
「まぁ良い!話せ!此度の帰還、理由あっての事と聞き及んでおる!話して聞かせよ!」
「はい父上…此度の遠征にて、私の不注意な殺気にて敵方に悟られてしまいまして」
「それだけでは無かろう!」
「はい…バトル中の魔王様と敵の会話にツッコミ、質問し、嘆き、又、質問し、相手の挑発に乗ってしまい、魔王様に残念なロゴスと言われてしまいました」
「お前!常日頃から魔王様に残念な奴と言われておるのか?」
「今回初めてです」
「ではその時、魔王様は何と?」
「はい…挑発に乗った私に相手の時間稼ぎだ安い挑発に乗るな…と」
「馬っ鹿もーーーん!」
ボコスカに殴られる娘ロゴス、顔の形が変わっても殴り続ける父、ゴロス
「父上…ガハッ私なんかより…姉上の方が四天王にグハッ相応しいかと…グフッ」
「そこに直れぃ!」
「はっ!」
正座するロゴス
「よく聞けよロゴス!確かに姉はお前より賢い、がしかしそれはこの里の中での話しだ!魔王軍に入れば下の下だ!理屈っぽく無駄にプライドが高い、あ奴では魔王様の役には立たん!」
「ですが私では!実際!魔王様のお役に立てておりません!」
「馬っ鹿もーーん!」
ボコスカ!
「ワシは魔王軍四天王であったゴロスぞ!お前とどんな差がある!ワシはお前に四天王の座を譲ったんだぞ!その意味が分かるか!」
「分からないから!今、ココに居ます!」
「馬っ鹿もーーーん!」
ボコスカ!
「魔王様は常日頃からお前を軽んじ、馬鹿にし、蔑むか!」
「いえ!その様な事は!ありません!」
「だったら!常日頃何と言われておる!」
「沈黙は金!と!」
「それを魔王様から聞いておきながら!
この体たらくか!
何故!守らん!敵に何を言われ様とも!
どれ程の我慢を強いられ様とも!
怒りを抑え!流行る気持ちを抑え!
何故!魔王様の下知を待たぬか!
何故!魔王様の下知に即応出来る様に体勢を整えなかった!
魔王様のご指示に間違いは無いのだ!その下知に即座に対応するが我らの存在意義である!そんな事も分からんかーーーーー!!この馬鹿者が!」
散々殴られた後に、常人なら首がもげて飛ぶ様な横薙ぎの蹴りを喰らってそのまま倒れ込むロゴス
「お父さん!やり過ぎです!ロゴス!ロゴス大丈夫ですか?」
「母さんは!黙っておれ!ワシとロゴス!元四天王と現四天王の話し合いぞ!ロゴスが挑発に耐え!怒りを抑え!その怒りを溜め!魔王様の下知を待てば!魔王様の攻撃で弱体化したハインデルの姫騎士を討ち取れた筈だ…それを不意にするなどあってはならない事だ!今回、姫騎士を仕留めていれば戦況は大きくコチラに傾いていた筈なのだ!」
「こんなもの!話し合いではありません!」
「母上…良い……良ぃのです…全ては私の咎故の父上の私への愛なのです。殴っている父上の方が痛い筈なのです…」
そう言うと意識を失うロゴス
パチっ
「目が覚めましたか?ロゴス?」
「母さん?手当ありがとう…父上は?」
「知りませんあんな人!」
「いけません!父上は思い詰めたら!最後まで止まりません!娘の責任を取って自ら命を断つかも知れません!」
「あっ!あり得ますね!里の集会場に1人で籠ってます!行きましょう!」
「父上…?」
「あんた!嗚呼〜〜!!!こんな!事って!」
自ら腹を十文字に切り裂き、里の集会場は血の海、ゴロスの臓腑が全て流れ出ていた。
傍らには
「手紙?家族宛?」
「こんな事って」
「ロゴス!何故!?お父さんは!?こんな姿に…」
「全て…私の…責任です…私の失態で父上は四天王に私を推挙した責任を取って自ら命を…」
父、ゴロスの遺書には
1、ロゴス自らの手で父の首を切り落とし、今後の戒めとせよ
2、身体は里全ての者で均等に分けて食べ己が血肉に変えよ
3、母さんへ、先に逝く、すまない
4、謹慎明け父共々魔王様に直々に呼び出された際に私の首を魔王様に捧げよ
一週間後、父の遺書の通り、魔王様から二人の呼び出しがかかる
「ロゴスよ…父の采配か?良い面構えになったな」
一週間経っても顔の腫れは引かず左目はまともに開かない状態のロゴス
「して?父のゴロスは何処に?」
「コチラにてございます」
「箱?」
箱を開け父の首を魔王に差し出すロゴス
「此度の娘の失態、我が身をもって償いたく…と、更に魔王様の血肉となりて未来永劫…共に人族を亡さんと申しておりました」
「スキルテイカーを呼べ…食べるだけでは強化しか出来ぬ…スキルも我が物とするにはスキルテイカーからの譲渡が必要だ、ロゴスよ己が手で父の下顎の牙を抜き形見とせよ…持ったら下がって良い…暫く1人にさせてくれるか」
「はっ魔王様の御心のままに…父上…御身の牙、頂きます」
謁見の間から退室するロゴス
「おおぉぉぉゴロス!我が友よ!なんたる姿に!常々!あれ程言っておったであろうが!其方は我が剣!下知を待てと!おぉぉぉ!!!何故!何故ワシの下知を待てなんだ!ゴロス!ゴロス!ゴロスぅぅぅ!!!!」
「父上…これほどまでに…魔王様に愛されておいででしたか…この戒め生涯胸に刻み魔王様に忠誠を誓いますので安らかにお眠り下さい…父上…父上…ごめんなさい…」
沈黙は金…
二度と同じ誤ちを犯すまいと父に誓うロゴスであった