第15話 ジワジワと突きつけられる現実
チートはゆるゆる、現実は少し厳しめ、全てが上手くはいかない
「過去異世界から来られた方々は殆どがコチラの世界に残って下さってます。でも、ご主人様は帰られるのですね」
「未だ帰れる保証はありませんが…」
「が?」
「直ぐには帰れないと聞きました。あちらに残して来たお客様が不憫で」
「と申しますと?」
「私が管理させて頂いていた庭木の手入れがコチラに居ると出来なくて」
「あら、お優しい事ですこと、流石ご主人様♪帰りたい理由はご自分の為ではなくお客様の為と」
「まぁそんなところですね」
「ではお帰りの際は、わたくしも着いて行きますわ」
「多分それは無理でしょう」
「何故ですの?セイラさん?」
「キョウイチロウ様の住む異世界には魔法と言う概念がございません」
「つまり?」
「私達の世界は魔法の元であるマナに溢れております。産まれたてのスライムですら微弱ではありますが魔力を持って居ます。」
「それくらい私でも分かりますゎ、それがなんだと言うのです?」
「ですから、我々が魔力の無い世界でどれくらい生きられるか分かりません、向こうに着いた途端に魔力切れを起こして徐々に衰弱して身動き出来ずに死ぬかもしれません、最悪…キョウイチロウ様の世界に存在しない我々は向こうに行けず消滅して、2人で戻った筈が向こうでキョウイチロウ様お1人だけになるかもしれません」
「と言いますか、我々とは?セイラさん貴女も行くつもりでしたの?」
「えっ!?イヤ…あの…」
「飴玉1つに釣られて?(*≧艸≦)」
「そんな事は…」
「ありますのね」
「キョウイチロウ様!飴以外に後1つ注文出来るのですよね!」
「はい!」
話しを変えたなw
話しを変えましたわねw
「次は何をご注文なされるのですか?」
「セイラさん!次の食べ物を要求するなど、はしたないですわよ」
「でもでもでもでも♪ラティも異世界のお菓子もっと食べたくありませんか?」
「はぁ〜」
深いため息をつくラティ
「貴女と言う人は本当に子供ですか?私がご用意したお茶菓子もご主人様に食べて頂きたいのに、それにその飴でご主人様のMP回復の検証も未だでしてよ」
「それは…確かにそうですけど…」
「早くその飴の袋をご主人様にお渡しなさいな」
しっかりと残りの飴の袋を握って離さないセイラにラティは促す。
「はぃ…」
名残惜しそうにキョウイチロウに飴の袋渡すセイラ
「フフフwセイラさんその飴、どれだけ気に入ったのですかw本当に子供の様ですわ」
「では!頂きます。」
「…どうです?」
「…どの様な感じでしょう?」
「はい、全回復はしませんね、でも舐めてる間は凄い勢いで回復してますね」
「果実の時の様に音声ガイダンス付きで全回復とまではいかないまでも異世界ショッピングなるスキルで購入した物でも回復が見込めると言う事ですね」
「流石ご主人様♪」
「いやぁ、私は何も凄く無いですよスキルが凄すぎるだけです。ラティさんが作ったクッキーも美味しいですよ♪」
「うふふ♪お褒めに預かり光栄ですわ」
「では!次はどんなお菓子を注文しますか!」
「…」×2
音声ガイダンス
「MPが全回復しました。」
「(;゜д゜)アッ…飴を舐め終わったら全回復した…みたいです。」
「ラティさん何か必要な物は無いですか?」
「お菓子は!!!???」
「…」×2
「思いやりのあるお言葉、ありがたいですが飴を舐め続けて回復ばかりしていたら虫歯になってしまいますわ、何か滋養の取れる物はありませんか?それでもわたくしにと仰るなら食材を購入して頂いて、それを使って調理してもMP回復するのか検証したいです。」
「分かりました!」
「お菓子は…」
_| ̄|○ガックリと肩を落として膝を付くセイラ
(y゜ロ゜)y
「そして!セイラさん!私にも音声ガイダンスなる声!聞こえました!もうドヤ顔なんてさせません!」
「なっ!?」
私だけの特権が(ノω・、)…それに私ドヤ顔なんてしてたんだ…恥ずかしい
「飴を舐めたから音声ガイダンスが聞こえる様になったのでしょうか?」
「多分」
「後は、ご主人様にお取り寄せ頂いた物で私が料理を作ってご主人様のMPが回復するのか?調理した私のMPは回復するのか?を検証致しましょう」
「なっ!?」
私の存在意義が…このままではラティの方が優れている事に、強いては私は返品!?出戻りなんて出来ません!私にも何か出来る事が…
何かセイラさんから視線を感じますね、何か私にも仕事を!って感じの目線ですねぇ
「セイラさんお料理は?」
「します!出来ます!」
「ではMPも全回復した事ですし、食材を2つ注文しましょう♪各々一品づつ、そして飴回復して私も一品作ります。」
「キョウイチロウ様も!?異世界料理ですか!?」
「そんな、ご主人様に作らせるなど、とんでもない!」
「元の世界では自炊してましたから、コチラの食材はどんな物があるか後で厨房を見せて下さい」
「申し訳ありません、なにぶん急な事で未だ食材が届いていないのです。」
「セイラさん、王都まではどれくらいの時間で行けるのでしょう?近ければ一緒に食材の買い出しに行きませんか?」
「ご主人様!?それではまるで新婚夫婦のお買い物ではありませんか!ダメです!」
「アクセラレーション!」
「王都へは私が運べば一瞬です!」
嗚呼ぁ〜(′□`*=*′□`)ああぁ〜又、このパターンですかぁ
強い風圧を受けて呼吸が…
お姫様抱っこされたキョウイチロウ、王都の入り口に佇むセイラ
「着きました!あら?又、気絶なさってますねぇ〜」
両手をダランとぶら下げたキョウイチロウを抱えたまま目立ち始めたセイラ
「仕方ありませんね、このまま目立ってはメイド長に叱られてしまいます。」
「ひとまず王城に赴き休憩させますか、アクセラレーション!」
バタンッ
「何です!?セイラ!?と…キョウイチロウ様!?」
何事かと思ったメイド長が声を上げる、ここはメイドが集まる休憩室、そこに現れた力無く両腕を垂らしたキョウイチロウを抱えるセイラ
「どうしました!キョウイチロウ様はご無事なんですか!?というか何がありましたの!?怪我!?病気!?生きてますの!?」
「あぁ〜…え〜と…」
「何です!?一大事ですの!?」
「生きてはいるかな…怪我でも無いし…病気でも無いです〜」
「又!その様な話し方!…今はキョウイチロウ様です!ハッキリなさいセイラ!」
説明を聞きどっと疲れたかの様に肩を落とすクリスティーメイド長
「とりあえず仮眠室で寝かせましょう」
「貴女はあれ程目立たぬ様にと念押ししたにも関わらずこんな暴走をして!」
「静かにして下さいメイド長、キョウイチロウ様が寝てらっしゃるんですよ」
キョウイチロウの手を握りベッドの傍らで座るセイラ
「なっ!?原因は貴女でしょうに!部屋の外に出なさい!」
「起きたら一緒に夕飯の買い出しをして保養地に戻りますので起きるまでここで待たせて下さい」
「はあぁ!?コレから一緒に買い物!?こんな暴走しておいて一緒に買い物ぉ〜!?このまま貴女を保養地に行かせるとでも?王妃様がお呼びです。ご準備なさい!」
「えっ!?王妃…さ…ま…?」