第106話 風魔小太郎義父、アルザス2世を叱る
「此度、呼び出した理由は分かっておるか?」
「お義父上からキョウイチロウ殿にハインデルの軍事増強の件をお願いして下さると!?」
「馬鹿者!」
「はい?」
「ハナよ!お主が付いていながらこの体たらくか?他力本願にも程があるぞ!
根本的な見落としに気付けておるか?」
「我らは魔王に敵対する同盟国の盟主です。
最強でなくてはなりません」
「はぁ〜」
深いため息を付く風魔小太郎
「お義父上?」
「アルザスは魔王軍の同行をどう思っておる?
そしてキョウイチロウ殿とは別にどのよう動いておるのだ?」
「はい!異世界勇者召喚の儀にて呼び寄せた四人の勇者は順調に育っておりますれば」
「危機管理は完璧と?」
「完璧などと言う言葉はありませんので常に最悪の事態を想定しておりますれば」
「…
それでギガンテス一匹に敗退か?
そして…
ワシのように異世界から召喚した勇者に丸投げか?」
「生活の支援は万全にございます!」
「…」
「何か問題でも?」
「馬鹿者!問題しか無いわ!
そもそも…ワシのような異世界人に頼らねば国が滅んでしまうかもしれない弱い立場の人族は弱肉強食のこの世界で生き残れるのか?」
「異世界勇者召喚の儀は神の御業」
「なら問う!神々は神託を下さるか?顕現するか?助力は?
人族からの信仰が無くなれば神は立ち行かぬと言うのであれば魔族との戦いに共闘してくれたか?」
「……い…ぇ…」
「見た事もない四柱の神々と四柱の魔族、実在する柱は?」
「知る限り我らが信仰する炎を司る女神アルベリア様と風、土、水の三人の神々の四柱と
魔王ドンゴロスと不死龍ドノヴァンと蝿王バアル…
の三柱…分かっているのはコレくらいでしょうか?」
「知る限り全ての魔族の柱は顕現していて此方に敵対の意を表しておるのに対してこの異世界の神々は?
何処におる?
我らが最高神である天照大神さまは高天原におられるぞ」
「…」
「我らにはお前たちが見た通り天孫降臨によりジーパングォの最高神であらせられる天照大神さまよりお孫様にあたる瓊瓊杵尊さまを賜り立憲君主制のトップにお立ちになられた、それどころかキョウイチロウ殿は大日如来さまの加護まで頂いておる
其方らの神々は?
スキルと職業を渡すだけか?
業腹よのぅ」
「…キョウイチロウ殿の加護は異世界の神々ならば我らとは違いまする
キョウイチロウ殿が受け取ったスキルも我らが神の御業」
「お前たちが一つとて知らないキョウイチロウ殿のスキルを女神が渡したと?
んな訳あるかぃ!
神々までも異世界に頼るか?」
「殿が申されるように他力本願と言われようと我らには…」
「頼る縁が無いと?」
「他に手立ても無く…」
「自助努力は生活支援のみか?」
「勇者の育成にジークフリートが頑張っておりますれば!」
「お前は?」
「国内の安定に尽力を…」
「それは常日頃の公務であろう?通常運転よの?
魔王の脅威に対して何をしておると聞いているのだ」
「…」
「今回の異世界勇者召喚の儀にて最強であるキョウイチロウ殿を見誤ったのはお前たちの責よの?」
「我らと勇者の力の差は歴然!どうせよと?」
「あぁん!もっぺん言ってみろや小僧が!
アルザス!お主も勇者の末裔であろうが!」
「すみません、わたくしの力不足です…」
「謙虚に生きよ!目上の者に対する口の利き方に気をつけよ!」
「かしこまりました!
せめてもの救いは我が娘、アンナが騎士団を任せられる程の人材に育った事でしょうか」
「それも、我が国ジーパングォの石川五右衛門の指導の賜物…」
「然り…」
「甘えてはおらぬと言い切れるか?
自助努力は?」
「しておりませなんだ…」
「ハナ!お前は異世界勇者召喚の儀の重要性をどのように捉えておる!」
「はい!父上!我らになくてはならない物であると自覚しております!」
「今回の魔王は異質…
過去に例の無い魔族領を統一した傑物
キョウイチロウ殿が従者にしたルドウィン殿お一人で一国が滅ぶとされる者を、今回の魔王は何人従えておる?」
「四柱…に加えデーモンロード…どころか全ての魔族を配下にしています…」
「アルザスよ?それをどう捉える?」
「かなり危険な状況かと!」
「だろうな…
魔王はキョウイチロウ殿を危険視しておる!
その原因を作ったのは何処の誰だ!」
「ハインデルの異世界勇者召喚の儀にて勇者を呼び出したわたくしめと言う事でしょうか?」
「然り!魔王がキョウイチロウ殿に挑み!
全力を持って滅ぼしに掛かり失敗を繰り返す中!
更なる勇者を召喚出来るハインデルは無事ですむのか?」
「殿は魔王軍はキョウイチロウ殿の討伐を諦め根本原因であるハインデルに標的を移すとお考えでしょうか!?」
ガクガク((( ;゜Д゜)))ブルブル
「然り!」
「それではハインデルは亡びまする!!!」
「如何にする?」
「キョウイチロウ殿に…
今、まだ此方にいるのでしょう?」
「馬鹿者!!
キョウイチロウ殿にセイラ殿の実家であるエルフの里以外を守る義務はあるか!?」
「あり…ませ…ん…」
「で、あるな…
どうするよ?」
「今!獣人族と精霊王に打診しておりまする」
「獣人と龍人の亜人種を蔑み獣人を奴隷としているお前たち人族に亜人種が助力をしてくれると?」
「…奴隷紋にて」
「無理矢理に従属させて前線に出すと?
この外道が!」
「ならば…お義父上はわたくしにどうせよと?…」
「思考を止めるな!常に最善の策を模索せよ!」
「しかし…事此処に至っては…」
「全てが遅い!即行動に移せ!取り敢えず亜人族と和睦して此方から助力を求めるのであれば!奴隷解放宣言をしよ!
それでも行う者が居れば厳罰に処せぃ!
魔王軍は目下ハインデルに侵攻すべく準備しているであろう…
キョウイチロウ殿は十年でジーパングォを近代国家にすると申しておったが間に合わぬ!」
「しかし!奴隷が居なければ我らは立ち行きませぬ!」
「黙れ!人族同士でも奴隷として搾取しているのもやめよ!
人の上に人は立たぬ!心せよ!人も獣人も平等に扱うのだ!
人族が狂っているのに魔族が狂っているなどと!どの口がほざく!」
「しかし…」
「しかしも案山子もあるか!!馬鹿者が!
キョウイチロウ殿の多種多様な従者たちに力の差こそあれ身分の差があるか?」
「ありません…」
「貴様は平和な世なら良政を敷ける良い王なのだろうが!今は戦時下ぞ!
全てを前倒しして動けぃ!
早急に妖精王オベロン殿との連絡を取り付け、魔族の脅威を知らせよ!
そして頼むのではなく懇願して助力を求めよ!
頭が地面に着く程の誠意を見せてみよ!
妖精族がお前たちを格下と蔑んでくるのであれば、その時は諦めよ!
最低でも相互不可侵の約束だけでも良い!条約を交わせ!
妖精族が中立を保ち独立を維持すると傍観を決め込むのであればジーパングォも妖精の国で何があっても助けはしないと通達せよ!
ジーパングォにはキョウイチロウ殿が居る!
魔族がハインデルの次に攻めるならの妖精の国である事は間違いない!
ハインデルが滅亡すれば、防波堤の無くなった妖精の国に魔族は押し寄せるであろう、共に戦ってくれるハインデルは無い!妖精の国は魔族領に蹂躙されるであろうな…
ジーパングォは静観するとも伝えよ!
そんな事態となればハインデルからの避難民でジーパングォは溢れかえるであろう!
共闘しないと言うのであれば自国は守れても魔族に攻められる妖精族を助けに行く義理はジーパングォには無い!
此方が助力を求め相互関係を築く使者を無下にするのであればジーパングォも同じスタンスを取ると言うのは至極真っ当な事よ!
しかと伝えよ!」
「はい!」
「未開の妖精領に行くツテはあるか?」
「我が国の守護獣である聖獣様にお聞きすれば或いは」
「早期に事を進めよ!事は一刻を争うぞ!
今までキョウイチロウ殿や勇者様に甘えていた分を取り戻す気概で望め!
国家の存亡がかかっておると心せよ!!」
その頃…
天孫降臨の儀を滞りなく済ませたキョウイチロウは少し燃え尽き、ノンビリしたいと思っていた…
世の中そんなに甘くは無いのですよ!
ジーパングォに攻め入る魔王軍の海軍は壊滅して居なくとも…
ハインデルでは…
国旗の図柄にも成っているハインデルの聖獣…
白き象であるハクメイが魔族領よりただならぬ気配を感じていた…
「来るか…魔王よ…
亡き王との盟約により尽力する時か?
致し方あるまい…
しっかし…アンナに会いたいのぅ
鼻に乗せて高い高いしたい!
あの屈託の無い笑顔が見たい!
打診のあった彼の地へ向かうアンナに付いて行きたいと言ったらアルザスめ、どのような顔をするかの?フフフ」
聖界にてハクメイとモビーは旧知の中であった…
しかし、二人は(二匹?)袂を分ちモビーは闇堕ちし魔王に
ハクメイは人族に付いた…
モビーは多くの同胞を人族に狩られる姿を聖界から見ていたが人族のあまりの酷さに、いた堪れず同胞を守る為に聖界から大海てと降りて来た
自らも人族と命のやり取りをしていたが多勢に無勢で力及ばず、無数のモリが刺さった瀕死の状態で命から柄逃げたモビーを助けたのは魔王ドンゴロスであった
「聖獣をやめて我が配下となれ!人族を共に亡そうぞ!」と誘われて魔王の元に身を寄せた経緯がある
同胞の楽園を築くには人族は一人残らず亡すべきと心に誓い、同胞たちの無念を晴らすべく長きに渡り海軍の育成と増強に日々を費やして来た…
しかしキョウイチロウの加護を受けた元味方のキャプテン・ウェイ達に壊滅の憂き目に合わされ、次なる手立ても無い…
又、人族か!と怒り、負の感情を露わにし人族への憎悪は増すばかりのモビーのオーラを旧知の中であったハクメイは感じていた…
魔族は混沌たる世界を望み、人族を家畜にしようと人族の生活圏に攻め入る
人族は平穏な世界を望むのは変わらない
相なれぬ存在である…
魔族、人族、妖精、亜人、聖獣、神々
色々な者達の思いが交錯する…
討伐されると100年後に復活、それを繰り返す魔王…
しかし、魔王が居ない世界に平和は無い…
この世界は魔王が居ないと世界秩序は保たれない!
異世界を支える柱が一本無くなるのだ、世界の均衡は崩れあらゆる天災が世界に暗い陰を落とす格も厳しい世界である人族のジレンマである
今回の魔王ドンゴロスは滅ぼされずにオーバーステイしている
魔族領を統一して君臨し続けている傑物である
ハインデル滅亡の危機!
果たしてアルザス2世は魔王軍総攻撃に間に合うのか?
ここまでお読み頂きありがとうございます!
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