〈1〉彼女の名は十六夜
「十六夜…お前は何者だ…?この月夜の様に君の本心が見えない…」
「神湖は私のこと、幻か?と聞いたな。その答えを教えてやる。私は幻獣だ。名は鵺。真の名は芳夜。」
「…じゃあ……」
「ああ、現。ここにいる。貴方に触れることも、貴方を傷つけることも出来る…」
「……」
神湖はふと口角を上げ笑った様に見えた。
あの時、二人は愛に触れたのかもしれない…。
「神湖~!もう、待ってよ~!」
「あーもう遅いっ!十六夜と一緒に歩いてたらこの坂道は十年かかるぜ。はぁ。」
「いくら坂の名前が十年坂だからって、言い過ぎ!」
十六夜のその漆黒の髪は艶やかで腰まである。
着物の様な赤の合わせの上に紺のプリーツミニスカートを履いている。
右耳の上には細い赤の糸の様なリボンが結えてある。
男の方は二十歳ぐらいか。十六夜より少し年上に見える。十六夜は今年、十七になる。
神湖は茶色の短髪。目は切れ長の吊り目気味。
黒の上下の中は茶色のシャツを着ていて、臙脂色の細いリボンをしている。
『暁の空に吠える鵺は今日も幻を映す
アルカリの夢毎飲み込むか あるいわ否か』
白の髪を胸まで伸ばし、白のセーラー服を着た少女は呟く。眼を細め微笑する様は不気味に紅い唇と瞳を引き立てていた。
冷獲討伐の為、十年坂の頂上に向かった十六夜と神湖は無傷で帰って来た。
「今日の獲物も楽勝だったな!」
「私達にかかればこんなもんよ!」
十六夜はどんなもんだと言わんばかりだった。
「システム2が優秀だっただけだよ~。」
ピンク頭の天パ短髪女子、真佐御、15歳。
これが以外と爆乳なのだが、一応司令塔というかITに強い。システム2とは、真佐御が開発したピンク色の結界的なフィールドの事である。
【COCORO56番地より、奇怪獣〈麻子〉出現‼︎近くの討伐組は至急COCORO56番地に向かうように!】と館内放送が入った。
「麻子ってまたかよ。」
神湖が面倒くさそうに言う。
「やった!今日は2件目っ♥︎楽しいなぁ!」
「お前だけだろっ。」
「以外と皆んなノリノリだよなっ!真佐御っ♥︎」
十六夜はにこにこ顔で真佐御を見た。
「一緒にすんな~。」
いつもダルそうな真佐御。