プロローグ 俺にとってのラブコメ
「人は何をもって幸せと感じることができるだろうか・・」
起業に成功して莫大な地位と財産を得たとき、世界的有名な女優を抱いたとき、おいしいご飯を食べたとき、靴下が一度もつっかえることなく履けたときなど大きいものから小さいものまでいろいろある。が、一番は何か・・それは青春恋愛だ。異論は認めん。これは絶対であり決定事項なのだ。それはなぜか、企業するにも女優を抱くにも選ばれた人間かつ努力が必要なのだ。大金を稼ぐのもセンスと忍耐力が欲しいし、顔がよく秀でた何かを持っていないと女優なんて相手にもされないだろう。うまい飯も食おうと思えば食えるし、靴下に関してはどうでもいいし、つまり現実なんてはくそくらえってことだ。なんか現実はなんでもできる自由度が高いオープンワールド的なことを言った人いたけどセーブやロードのようにやり直しのきかないだけじゃなくログアウトもできないものをゲームとは言わない。ていゆうか認めたくない。セーブやロードができれば俺の黒歴史をなかったことにできるのだろう、、やっぱ現実はくそだな、違うってんなら俺、佐藤拓海は今、病院の待合室でラブコメアニメなんて見ていない・・・
「兄貴・・エロアニメ見ながらブツブツ独り言いうのやめてくんない?普通に嫌、てかキモイ。離れて座って、ごめんだけど兄弟だと思われたくない・・」
そう言って不機嫌そうな不機嫌そうな顔でこちらを見てくる女子がいた。
おっといけない妹に聞かれてたみたいだ。わざわざ病院まで来てくれた妹にこんなことを言われるのは心苦しい。
しかし、お兄ちゃんとして、上のものとしてしっかり威厳を保たなければ!
「おい!おm
「あぁ?」
「ごめんなさいもうしないからにらまないで!お兄ちゃん体は強いほうだけど心はあれだからガラスみたいなものだからガラスのハートだから」
俺の妹、佐藤梢は怖い、長い茶髪に派手な服、それにネイルまで、いわゆるギャルだな。まだ中学3年とは思えねー。
「はぁ、兄貴さ、不良やめるとか言ってなんかむずかいそーな本よんでからそれの影響で変に考え事してるかもだけどさ。元々あほなんだからサルの一つ覚えもたいがいにしなよ。」
「うるせえな・・」
なんでこいつはわかるんだよ、怖ぇよ。エスパーかよ。
「それにさ、エロアニメなんて見てないで不良やめるならべんきょーとかためなることすればいいのに」
「エロアニメじゃねーし、健全なラブコメだし、大体お前が勉強なんていうなよ」
「悪いけどあたしべんきょーできるからどっかのバカと違って」
そうだった、こいつ成績よかったな
「それにさ、兄貴から喧嘩とったら何になるの、唯一のとりえでしょ。それに金髪も黒髪にしっちゃってるし、せっかく似合ってたのに。」
「その不良のような行動のせいで今回入院する羽目になったんだろうが。俺はまだいいとしてお前ら家族にまで迷惑かけられねえよ」
「そうだね・・」
梢はうつむきながらそう言った。それもあんなことがあったらしょうがないか。
—東部高校入学式当日俺ソワソワした気持ちで学校へ通学していた。通学路の途中の橋を通ったそのとき、不良グループに喧嘩を吹っ掛けられた—
「はぁ、入学式ぐらい何事なくいかせてくれよ。これでも死に物狂いで勉強して入った高校なんだからよ」
俺は溜息を吐きながらそう言った。
入学式でソワソワしていて少し警戒するのがおろそかになってたな。
「はっ、お前が勉強だぁ?何言ってんだか。それより・・・」
「天下の佐藤拓海さんもこの人数には勝てないだろう!!」
不良グループはそう言って橋の入口と出口をふさいだ。
人数は入口に三人、出口に二人か・・まずは人数の少ないとこから叩くか・・!
「ぉらっ!!!!」
俺はまず出口にいたやつらを一人一人蹴散らした。多人数戦闘で一対一に持ち込んで倒していけば余裕だ。俺はこういう戦い方が得意だった。
「くそが・・・」
不良の人数が減ったことで怖気ずいていた。
よし、これなら問題なく勝てそうだな。
しかし・・
「!?」
「おい、これが見えるか、くっくっく・・」
負けそうになった執念深い奴の考えはひどいもので近くを通りかかった女の子の身動きをとれないように人質にしていた。
「次攻撃を仕掛けてきたらこのいたいけな少女を橋の柵に落とすぞ!」
「お前は、正義の番長と呼ばれてているだけに、この女の子を無視できないよなぁ!」
と不良たちは俺を脅した。正義の番長というの俺の二つ名のようなものだ。自分で言うのもなんだが俺は、弱いものを助けるいいタイプの不良だった。
しかもまだ中学生の時だったから生意気だとよく目をつけられて・・そのせいか、不良たちから目の敵にされ、よくからまれていた。
「よし、いまだ・・!」
俺はすきを見て女の子を助けようと突っ込んだら、焦ったあいつらは女の子を橋の下に突き落とそうした。とっさにそれを庇って俺が落ちた。
女の子がどうなったのか心配だがそれどころではなかった・・
まだ見知らぬ女の子だったからよかったものの人質が梢だったらと考えると血の気が引く。だったらもう不良とは決別したんだ―
「兄貴を落とした奴らはどうなったの?ほんとにこうやって病院で入院できたのだって奇跡なんだよ!もしあのまま川に流されて見つけられなかったらと思うと・・」
「そんな心配そうな顔しなくていいって、大事にするつもりはないし俺もこんなに見た目が変わったんだから俺ってわからないんじゃないか?」
「そりゃそんなに変わったらわかんないね・・ありがと、」
「別にお礼を言われるようなことじゃねえよ。むしろ俺が悪かったんだから」
俺は今まで悪目立ちしすぎた。俺が変われば解決なんだ。これで家族にヘイトが向くことがなくなるはずだ。それに・・
「それにちょっと楽しみなことがあるしな!」
そう!俺には遂行な目的いや、計画があるのだ!
「佐藤さーん、診察室にお入りください」
「お、よばれたな」
不思議そうに首をかしげている梢を置いて俺は診察室に入った。
―しばらく医師の話を聞いた。状態が良いので退院できるようになって久しぶりに我が家へ帰ってこれた。
「今日は拓海の退院祝いよ」
嬉しそうに母さんが言った。どうやら母さんが夕飯に唐揚げを作ってくれていたようだった。
「おお、うまそうだな。ありがとな」
俺はそうお礼を言って食卓についた。
「拓海どうだったんだ・・体はもう大丈夫なのか?」
仕事帰りの親父が椅子に座りながらつぶやいた。一応心配してくれてるみたいだな。
「もう大丈夫だ。明日から普通に学校いける」
そう俺が言うと両親はよかったと胸をなでおろした。
「心配したんだから、気を付けなさいよ。まあなんか不良やめたみたいなこと言ってたらしいけど、その姿を見る限り本当みたいね」
「まあな、それより母さんなんでそのこと・・あー梢が言ったのか」
「そうよ。ってそういえば梢ちゃんは?」
「あいつは買いたいものあるからショッピングモール寄ってから帰るって」
「全く、お兄ちゃんが久しぶりに帰ってきたっていうのにしょうがない妹だな。帰ったらお兄ちゃんのありがたみについてみっちり教えてあげないとな!」
俺の百八ある自慢話でもしてやろうかと考えていると、
「兄貴のそういうとこが嫌いなんだよ」
と梢の声が聞こえてきた。
「なんだよ梢。帰ってたのかよ」
「なに、悪い?」
「なんでそうけんか腰なんだよ」
「あんた達けんかしないの二人しかいない兄妹なんだから仲良くしなさい」
俺たちが言い争っていると母さんが仲裁してくれた。
二人しかいない兄妹か・・母さんの口癖だ。兄妹原価を仲裁するときには決まってこの言葉を使っている。これを言われたらもう喧嘩する気も起きない。
「「はあい」」
それは梢も同じようで適当に返事をしてから、俺と梢は黙々と夕飯を食べていた。
―夕飯を食べ終えてから俺は自分の部屋へ向かった。
「なんで不良をやってたんだろうなぁ?」
俺はつぶやきながら考えた。考えたのだが答えは明白だった。
「うん、家庭環境がわるいわ。」
母さん・・佐藤マリアはスケバン、親父・・佐藤大海は暴走族の頭をはっていた。
両親とも自分のキラキラネームで舐められまいとそういうことをしていたらしい。
その自分たちの境遇に運命を感じて付き合い始めたとか何とか・・まあどうでもいいな。
俺が生まれてからそういうことは足を洗ったみたいだし、なにより・・
「俺、拓海っていう普通の名前でよかったぁ!」
やはり両親の名前でコンプレックスを作るにはやめようとのことでこの名前になったらしい。
うん、賢明な判断だ。
ただ両親とも怒らせると過去の片鱗が見える。それに・・
「親父との約束もあったしな・・」
「弱いやつを守れ」
それが親父とした最初で最後の約束だった。
弱い者を餌とする不良につっかかっていくたびに俺も自然とそうなっていったなあ。
不良に対抗するためには同じ不良の力だってね。
「まあそれで他の奴らに迷惑かけたり、何よりも家族に危険が及ぶのであれば意味ないしな。まあでも・・!」
俺には高校に入ったらやりたいことがあるのだ!!
それは・・
「それはっ!青春恋愛だ!!!」
二か月という長い入院生活の中で唯一の癒しが医師から暇ならこれでも見てなさいと勧められたラブコメアニメだった。
それはそれはそばらしいもので、今まで灰色だった世界がカラフルに色づいていくようだった。
「ふっふっふ、人はいつ死ぬと思うか?」
「それはラブコメができなくなったときだ・・・どっかのドクターが言っていたように!」
俺は今まで死んでいたんだ。現実でラブコメをして蘇るのだ!真の意味で生きよう。
「人の夢は終わらねえ!!!」
「クソ兄貴うるさい!!!」
ひと笑いしてやろうかと思った時、梢が何やら怒った顔で部屋に入ってきた。
「ちょっと梢ちゃん、急に入ってくるなんて!思春期のお兄ちゃんが変なことでもしてたらどうするの!」
俺は梢に注意をした。これは大事なことだ。
「は?何言ってるの。もう十分変なことしてるでしょ?変な事口走りながら叫んじゃってさ。あたしの部屋隣なんだけど?キモイ声が聞こえてたんだけど?」
やべ、梢様がお怒りだ。ここは穏便に済まさなければ・・
「はいこれ」
「えっ、なにこれ?」
俺が梢にびくびくしていると何やら本のようなものを渡してきた。
「これ参考書、二か月授業に遅れていると大変でしょ?あたしからの退院祝いだよ」
「まじか・・お前ってやつは・・ってそんなことされても全然うれしくなんてないんだからね!」
最近はまっているツンデレ少女の真似をして照れ隠しをしていると梢の顔がひきつってだんだん不機嫌そうな顔になってきた。
うん、こりゃまずい。謝ろっと
「嘘です冗談ですめっちゃうれしいです。勉強これで頑張ります。」
「はぁ、これだからクソ兄貴は」
不機嫌な顔は変わっていないがとりあえずこれで最悪の事態にはならないだろう。
「お兄ちゃんにクソといってはいけません・・あ、もしかしてこれ買うためにわざわざショッピングモールによったのか?」
「まあそうだけど、ただでさえ残念兄貴だったのに不良やめるとか言ったあたりからまた残念さがましたよ・・自覚ある?」
「ぐぬぬ・・」
心外な・・こいつはいちいち余計な一言が多いんだよ。俺は昔から全力でお兄ちゃんを遂行してるだけだってのに・・
「もうあたしは寝るからまた叫んだりして起こさないでね?」
「はい」
そういって梢は自室へ帰っていった。梢どんどん怖くなっていくなぁ。お兄ちゃん心配。
「よおし、明日に備えて俺も早く寝るぞ!おやすみぃ!!」
「だからうるさいって!!!」
隣の部屋から壁をドンドン叩きながら叫ぶ声が聞こえた。
「梢さんがお怒りだ。早く寝よ。」
明日に希望を抱いて俺は眠りについた―
私の書いたお話を読んでくださりありがとうございます。☆をいただけると嬉しいです。
ゆっくり更新していこうと思うので、楽しく読んでくれると幸いです。長い間僕の話にお付き合いください。これからよろしくお願いします!