表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

序章

都会の屋上、そこには二人の少女がいた、片手に本を開いて向かい合っている。「貴女が氷上の女王、日上 零ですね」背の高い女がセーラー服の少女に問いかける。返答は沈黙、夜の空気が注ぐ中、例外者が相まみえるのはイカサマか。リクルートスーツの女が右手を銃の形にして向ける。

返事はない、そして観測史上最悪の幕開けが始まった。

 私は目が覚めると屋上にいた。高い空に鳥が舞っている。「痛てて、頭をぶつけたかな」と諧謔を弄したが、頭痛は消えない。「おっつ、気が付いたか、まさか黒の魔導士と戦って生きてるとはね」と朗らかな声で喋りかけてくる。「あの鉄の魔法は、体内に堅い氷の膜を作って防いだけど」そこまで言って記憶が混濁する。「まあ、次あったら命はないぞ」

「気を付けるよ、それより彼方は『人面人魚の人形劇』見つかった? 」と問う。「いや、全然手掛かりすら、掛からないよ。諦めた顔をして笑う男子は『白宮 彼方』と言い、私のタッグだ。少し赤みがかった金髪で、いつも派手なT シャツを着ている。「じゃあ、帰ろうか。零の傷も治療したいし」と言って私の手をつかんで支えてくれる。「ありがとでも、一人で立てるし」強がってみたものの正直助かっている。「気にすんな、タッグだろ」

私は1か月前、国家機密組織、『魔導書国防軍』通称本狩りに入った。なぜならば私が、世界7大奇書の一つである『クリオネの功利論』を持っていたからだ。

今から三年前、シベリアの氷の下から発見された遺跡、その深奥にあったとされるのが、『魔導書』それを手にしたものは魔法が使えるようになる。私たちが『ノベルアビリティ』と呼ぶものだ。その中でも特に強力なものを7奇書と呼ぶ。その一つを持っていることが組織にばれて、勧誘された。まあ、世間のサークルだとかのとは一線を画すかれつさっだたが。

 「とりあえず、本部に黒の魔導士に遭遇したことを報告しなきゃ」「それは俺がしとくよ、お前は医術部に行って診てもらえよ」ぶっちゃけ先輩に会うのは億劫だったし、やさしさに甘えさせてもらうことにした。「じゃあ頼んだ」

ある地下駐車場の鉄の扉そこは、『魔導書国防軍関東支部』につながっている。重い扉を開けるとコンクリート打ちの廊下に出る。

「じゃあ、俺は川島先輩に言ってくるから」「サンキュ」彼方と別る。狭い廊下に足音が低く響く。「頭痛はだいぶ良くなったけど、足の傷がひどいな」裂創を氷で冷やし止血したものの、鋭い痛みが残る。

地下1階、医務室の扉を敲く。「入っていいわよ」と声がかかる。「あら、零ちゃんまたけがしたの、ってひどい傷じゃない」「お願いします、特に足がひどくて」促されるままベットに横たわる。葉先先生は関東支部随一の回復術を持っている。私たちは一般人とは違い、魔術による治療を受けられる。「はじめるよい」と言って先生は、傷口に手を当てる。血がわっと弾け、だらだらと流れる。痛みと熱が脳に刺すが、すぐに傷がふさがっていく。「治せるのも限界があるから、あまり無理しちゃだめよ」「すみません」と言って立ち上がる。全身が寝て起きたかのように軽い。

 医務室を出ると彼方と合流した。「川島先輩めっちゃ切れてたよ」「そりゃ現場の判断で『奇書持ち』と戦闘したんだもん」と言う。「わかってんなら止めろよ、せめて俺も呼べ」

「わかってる」と言ったとこで、「お前達、こっち来い」と声がかかる。「今回の件聞いたぞ、無事でよかった。が、次の逸脱は許さない」宮内室長だ。私が故意ではなかったことを反論しっようとするも「すみません」と彼方が謝ってしまった。「まあいい、怪我も直したことだし、任務を与える」「ハイ」二人緊張が走る。「今回の任務は、民間に流れた「廉価魔導書3冊の回収だ」

 「廉価魔導書って何? 」と彼方に聞いてみる。「ああ、新人だから知らないのか。魔導書にも三種類あるんだよ。零が持ってるのは世界7大奇書っつって、シベリアの遺跡から発見された。そんで、それを元にソビエトの『MGK』が真似てつくったのが魔導書と呼ばれてるもの」電車が揺れる、目的地まではあと15分くらいだろうか。「それをソビエトの連中が世界にばらまいた」「彼方の『彼岸の時間』も魔導書だよね」「そうだよ、君のには及ばないけど、廉価盤よりは火力が出る。魔導書のコピーが廉価魔導書だからな。

「じゃあ、私の本は価値があるんね」とあまりにも自分が無知なことに絶望しつつ、ドーナツを口に放る。「まあ、零がいれば廉価魔導書なんて敵じゃないさ、氷上の女王なんでしょ」そう言うと彼方もカロリーマキシマムを食べ始めた。「のどが渇いた」「私も、なんか飲み物買っていこうか」夕日を浴びながら電車はホームに滑り込む。「ついたよ、行こうか」

私たちがホームに出た瞬間目の前で爆発が起きる。「なっ! 何が起きたの」絶叫が響き、騒然とした喧騒がホームを包む。「あわてるな、本を出せ」と言われて、冷静さを取り戻す。「リサーチ」唱えると左手に本が現れる。結構大きいサイズのそれは、深海のように深い青色に、日本語でクリオネの功利論と書いてある。「君が日上零だねぇ、初めまして、私はドイチュからきた、ヴァルナ・カーレントって言うの、楽しいことしましょ」とたどたどしい日本語で自己紹介してくる少女がいた。明らかな異常事態、平然としているからきっと、この子が犯人だと思う。

それを現実にする、年端のいかない子供がテロ紛いのことが出来るのが、魔導書だ。それをこの1か月で痛いほど知った。「零、こいつはまずいぞ、狼だ」と1メートルくらい離れたとこから彼方が言う。「私のことが知られてる」とカーレントが言うと、後ろからSP風の金髪サングラスが現れて何かを外国語で言ったみたいっだった。「零さんと彼方さん、私は『狼の夜』です。知っているのですね」「知らないわけないだろ、7大奇書の一つ、血の水晶」「こいつも奇書を持ってるの」と彼方に尋ねる。「ああ、同格だ、気を付けて」と警告してくる。「おしゃべりはここまでにして要件を言いますわ。『クリオネの功利論』を渡しなさい」そんな要求は通せない。「そういう訳にはいかないぜ、お嬢ちゃん、『クロスポイズン』」

彼方の首裏から、赤い触手が伸び、鞭のようにしなりながら少女目掛けしなる。「狼ちゃん、私の名前を知るものを殺してください」

カーレントの本から黒い狼が飛び出した。ほの白いオーラを纏う黄色い目の獣は、彼方の赤い触手を噛みちぎる。「手品かよ」と楽しそうに笑う彼方めがけ、狼が突進してくる。私は急いで栞を挟んだページを開き「スノウボウル・アース」と唱える。魔法は魔導書のページの上に書かれている名前を呼ぶことで発動するのだ。左手を黒い狼に合わせると、氷の塊がパキパキと音を立てて放たれる。「やった、当たった」狼に氷弾が命中した刹那、凍り付き、すぐにひびが入って砕け散った。「狼ちゃん2384号、なんてことだ。彼女に鉄槌を、私はヴァルナ・カーレント」とまた名乗る。「きっとあいつの名前を聞くと何あるぞ」と彼方がいった。そしてまたドイツ少女の『狼の夜』から黒い塊が湧き出る。それは一体、二体と増えていく。「さっさと止めないとやばいな」彼方のほうを見ると、「零黒服にも注意しろ、あいつも魔法使える」

と言いきらないうちに、彼方の触手が爆発する。「あいつが駅を爆破したんだ」「そのようだぜ」二人対二の闘い。素人の私たちには厳しいかもと思う。

 「さあ、狼ちゃん達行きなさい」とかわいらしい声に似つかない、冷徹さすら感じる声音だった。「百足駄駄羅、これが一番手数が多い」それは、体の様々な部位から発生し、グロテスクな様相をしている。狼と触手がぶつかる、数えきれない肉片が空中に消えていく。「狼の数がすごい、一掃するよ」ぺージをめくる。「これだ、雪国」目の前に魔法陣が展開され、吹雪が吹き荒ぶ。群狼の動きが鈍る。「よけろ」彼方が叫ぶが、火球が肩を掠める。背後で爆発が起こり、びっくりして術が途切れてしまう。「気いつけろ、攻撃中が最大の隙だぜ、あの爆破野郎は俺がやる」彼方の左手から太い触手が伸び、黒服を襲う。迎撃の爆撃は勢いを殺し切らず、腹を貫いた。

「よっしゃ、即死だ」喜ぶ彼方は、さらに狼に赤い鞭を打つ。

これが闘いか。胸に不快感が上がって来るのを抑えられなかった。組織に教育されたことを思い出す。奇書を持っていては戦わなければ生き残れない。奇書を全部手に入れ、世界を安定させる。それが魔導書国防軍の目標。兵隊の悲願。私もそれを目指して戦わなければ、それが『クリオネの功利論』と言う奇書を持つ私の宿命だから。

 「レイトウビイム」私の手から青白い光線が発射され、着弾点を凍らて行く。狼が逃げまどい、それを赤い触手が追撃する。凍ったり、貫かれたりした狼は、黒く離散する。「私の狼ちゃん達を」喚く声すら、私の心を動かさない。「満月の夜、不可視の殺人。気づいてた? 名前を呼ぶのが大事なんだよ」「来るぞ、零」残った狼たちが黒い影に飲まれていく。闇が膨れ、巨大な狼が現れた。「貫け、『諧謔触手』」首からうねる触手が狼に向かう。「レイトウランス」氷の槍が撃ち放たれる。「ガオグルーッ」咆哮がを挙げた獣は触手をつかみ彼方ごと振り回し、前足で氷の槍を叩き落した。「おー、吹っ飛ぶー」駅の天井に触手をひっかけ、勢いを殺す。「そのまま吹っ飛んでしまいなさい! 『ブラッドムーンディスティニー』」黒狼は毛を逆立だて、口腔から黒い煙が湧き出、ガウーと闇の波動が彼方に向けて発射される。バチバチと触手が抉れ、霧散する。そのまま勢いを留めることなくぶつかる。急いで魔導書のページをめくる、確か24p「危ない!『アイススタンド』」彼方が落っこち始めた所に、私の足音から氷が走り、それが屹立し彼方を宙で受け止めた。「助かった、零気をつけろ、あの狼強い」「やっと一撃入りましたね」ドイツ娘が頁をめくる。栞を挟んだページを開き『アイスボーウル・アース』を発動する。

 狼は大きく旋回し、右前足に命中し、その一帯が凍り付く。「まず、足を止めさせよう」

と彼方から太い触手が伸び、左足を拘束する。

「無駄だよ、狼ちゃん振り払え」触手を噛みちぎり、右手を振り下ろし、彼方は回避するが、厚い氷柱をペットボトルのようにぐちゃりと潰す。「どんなパワーしてるんだよ」隣に着地した彼方は毒を吐く。「アイスボウル・アース」と唱え、狼に向けて攻撃する。しかし狼の波動が放たれ、アイスボールは空中で砕け散ってしまう。「正直、きついわ」「俺もだいぶ限界」私たちはかなり窮地に陥っていた。狼はこちらを睨み、再度闇の波動を放つ。『アイスウォウル』『赫壁』氷と触手が壁になって目の前に展開される。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ