表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊列車の夜  作者: 月這山中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/15

無理心中の片割れ


「彼がいない」


 車両に入る前に、浮かぶ魂が言った。


「彼とは?」

「あたしの恋人、あの世で一緒になろうねって、言ったのに」


 車掌は困っている。


「はあ、私もそこまではわかりかねます」


 魂は乗車を拒否する。

 車掌は帽子の鍔を直した。


「探して」




 列車から歩いて川の中へ入った。

 空は白んできている。


「自殺はここで企図された」

「そう」


 列車と反対側、三キロメートル下った川べりには、ブルーシートが張り巡らされ、いくつかの警察車両が停まっている。


「たしかにここで離れた魂はあなたひとりのようだ」


 川面から顔を出して車掌は言う。


「探して」





 探し人の彼は病院にいた。

 サイドテーブルには見舞いの花が置かれている。

 車掌と魂は四階の窓から室内を見つめている。


「生きていたんですね」

「………」


 彼に寄り添うのは家族だろう。

 老いた母親の背中を、彼の弟が擦っている。


「許さない」

「なぜ?」

「あたしを悪者にして幸せになろうとしてる」

「考え過ぎでは?」

「一緒になろうねって言ったのに」


 魂は呟く。

 肉体から離れた魂が、心変わりをすることはほとんどない。それは大脳皮質での電気交換を失ったためなのか、あるいは残された人間に固定された記憶がそうさせるのか、車掌にはわかりかねる。


「早く死ねばいいのに」


 魂は呟く。

 車掌はその場から動かない魂を置いて、列車へと戻った。


  了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ