自称平凡な少年の幼馴染と友人とそして…
虎太郎達が在学している「春風高校」は、地元では有名な私立の進学校だ。現理事長が定めた校訓である「個人の才能を伸ばす」をモットーに、普通科でありながら様々なことに力を入れている。
勉強はもちろん、部活動も盛んに行われており、希望する部には、態々外部から専門の人間を雇う徹底ぶりである。そのため、大会などがある部活は例年優秀な成績を挙げてくるため、地元のみならず全国的にも有名な進学校なのだ。
勉学においてもそれは変わらず、こちらも例年数多くの生徒達が、某有名大学や企業等に進学・就職してきた。
そのため、毎年入学を希望する学生は後を絶たず、進学校とはいえ私立の高校でありながら、一般入試の合格倍率は驚異の"20倍"! この数値から「春風高校」の人気の高さが伺うことができるだろう。
さて、ここまで話を聞いて、皆さんの頭の中で一つ疑問に浮かんだことがあると思う。
そう、あの自他ともに認めるザ・平凡人間鈴木虎太郎、彼ほどの一般ピーポー「やっぱり俺に対して、あたり強くない!??」…がどうして、こんな合格倍率がアホみたいに高い私立高校に入学することができたのだろうか?と…まぁ、彼のような存在にとっては至って普通な、その他大勢の人間にとっては一生の人生の中で起きる方が稀な、それこそ宝くじの一等を連続で2回3回と当てるくらいの奇跡、そんな偶然とも、必然とも、運命とも言える出来事がきっかけで、彼はこの「春風高校」に入学することができたのである…
~虎太郎視点~
「いや~~、それにしても俺たちももう2年生かー、時間が経つのってほんとあっという間だよな」
「なによ、急にどうしたの?そんなこと言って」
「いやだってさ、高校に入学してから今日まで、基本的に寝てる記憶しかないのに気付いたらもう一年も時間が経ってるから…楽しい時間は時の流れが早く感じるってほんとなんだなーって思うとなんだかしみじみとしちゃってさ、、、(涙目)」
「本当に急ねアンタ!??しかも、今の話のどこにしみじみとする要素があったのよ!!!要は、アンタが高校でも碌に勉強や部活に取り組まなくて、中学の時と同じように只々寝て過ごしてて気付いたら2年生になってたってだけの話でしょ!!!!」
「ザッツライト!!!流石、玲奈!!そんな俺のことをよく知っている君には、これからも毎朝俺のこと起こせる券を「いるかーーーー!!!!!(ズドン!)」ぐふっ!???」
「あ、いや、しょうがないから貰える物は貰ったあげるけど、、、(テレッ)、ってこんな事してる場合じゃないでしょ!早く学校に行くわよ!」
「い、イエスマイマム…(汗)」
デジャヴかな?あ、どうも鈴木虎太郎です。そして、この強烈なツッコミ(物理)を見事に入れてくるのは、俺の幼馴染である赤井玲奈。お互い家族ぐるみで仲が良く、家が隣り合っているのもあり、保育園から高校までずっと同じ場所で育ってきた。仲もご覧の通り良好である…多分ね(汗)。
そんな彼女だが、遺伝である鮮やか赤い髪の毛はもちろん、その整った容姿から高校に入学してから全男子生徒たちの注目の的となっている(本人はその辺疎いようで気付いてないが)。
ほら今も…
「あ、あれは二年E組の赤井玲奈さん!?」
「赤井様、今日もお美しい…!」
「お、俺のことをあの綺麗なおみ足で踏んでくれないだろうか…」
…な、なんだ聞こえちゃいけないものまで聞こえた気がしたが、おそらく気のせいだろう、うん気のせい気のせい!(現実逃避)
それはさておき、そんな彼女と毎朝一緒に登校している俺も彼らから当然注目されるわけで…
「赤井さんの隣にいるのは、同じE組の鈴木虎太郎か…」
「なんであんな奴と赤井さんはいつも一緒にいるんだよ…」
「羨ましすぎる!俺だって赤井さんの右ストレートを受けたいのにっ!!」
ご覧の通りである(笑)。まぁ、そりゃあ誰だって、こんな美少女が俺みたいな冴えない平凡な男と一緒にいたら、そう思うのも無理はないだろう。実際俺だってそう思うし。あと、最後のやつ、お前玲奈の右ストレートを実際に受けたことないから、平気でそんなこと言えるんだぞ!実際に受けてみな、軽くとべるぞ…!(実体験)
まぁ、そんなわけで、今日も今日とて俺は、男子生徒たちからの嫉妬の視線を一身に浴びつつ、玲奈と一緒に学校の校門をくぐるのであった…
それから、本校舎に着いた俺たちは下駄箱で靴を上履きに履き替え、3階にある自分達のクラス「二年E組」の教室扉を開けた。すると…
「あっ!赤井さん、虎太郎おはよう!」
「「おはよう、樹(小野くん)」」
教室に入った俺たちに真っ先に気付いて挨拶をかけてきたのは、俺たちの友人である「小野樹」。
彼は、俺の数少ない友人であり、玲奈に対しても過剰に接したりしない、男子生徒の中では珍しい存在であった。俺と同じで彼女歴=年齢である彼がなぜ、他の男子生徒達と違ってそんなことが可能なのかと言うと、理由は至ってシンプルであった。
「樹、お前今日も朝からそれ描いてるのか?」
「それじゃなくて、マミたんだよ!!!僕の彼女になんてこと言うのさ虎太郎!!!」
「あ、ああスマン(汗)」
「・・・(サッ)」
「ちょ、ちょっと赤井さん!そんな露骨に僕から距離を取らないでよ!!」
「あ、ごめんなさい。ちょっと…いや、かなり気持ち悪かったらつい」
「直球ドストレート!??いや、変に気を遣われるよりは全然いいんだけどね(笑)」
そう、樹は三度の飯よりもアニメが好きな重度のアニメオタクであり、それは彼が特に好きだというアニメのヒロインを"僕の嫁!"と周囲に公言し、そしてそのヒロインをさらに自分好みにしたいからという理由だけで美術部に入部して毎日暇さえあれば絵を描いてることから、そのヤバさが伺えることだろう…。
樹の口癖は「三次元の美少女よりも二次元の平凡な女の子」である。
そして樹よ、気を遣われるのも引かれるのも、俺からすると同じくらいキツいぞ。
「二次元は良いよ~二次元は!虎太郎、君も三次元なんて捨ててさ、こちら側に来ないかい?(ニヤリ)」
「ゲームのラスボスみたいなカッコイイ感じで言ってるけど、言ってること只々のヤバいやつだからな!!!」
「・・・(ササッ)」
「玲奈さん!?俺からも距離をとってませんか!??」
「えっと…あの…うん…」
「やめて!物理的にも精神的にも俺から距離をとらないで!!右ストレートを…あのいつものやつを俺にプリーズ!!!」
「うわ〜…、虎太郎ってそっち側の人だったんだね、ちょっと引くわ〜(笑)」
「お前だけには言われたくないわ!!!!」
⭐︎
そんなくだらないやり取りを3人で続けていると、教室の入り口の方が少し騒がしくなってきた。まぁ、この感じは十中八九彼女が教室に到着したのだろう。
「「「青葉さん、おはようございます!!」」」
「ええ、みんなおはよう(ニコッ)」
「「「うおーーーっ!(キャーーーっ!)」」」
…というわけで、挨拶一つで(男女問わず)クラスをクラブ並みに沸かせる彼女の名は青葉京華、彼女は何を隠そうこの春風高校の現理事長である青葉重吾の一人娘なのだ。
「青葉さん、今日も素敵っ!!」
「青葉様に挨拶を返して頂けた!これだけで今日一日は頑張れるぞ!」
「ああ、いつか俺のことをあの美しい足で踏んづけて頂けないだろうか…」
そう、そして京華は家柄だけでなく、容姿も玲奈同様ひじょーーーに!優れているし、運動も当たり前のようにできる、勉強もお茶の子さいさいと、正直彼女以上にハイスペックな人間を俺は今まで見たことがないほどだ。
…"天は二物を与えず"といったことわざがあるが、俺の周りにいる人達にだけはそれが全く当てはまっていなように感じる今日この頃である(樹もああ見えて勉強は出来るし、絵もめちゃくちゃ上手いからな)
あと、最後の奴、今更だが同じクラスだったんだな(汗)。
「相変わらず凄い人気ね、青葉さん」
「ほんとそうだね。このクラスになってからもう2ヶ月は経つけど、未だに毎日あんな感じだから色々と凄いよ(笑)」
「…お前、それ本人に向かって絶対に言うなよ。人によっては馬鹿にしてるように聞こえるからな」
「うん分かってるよ、それは…言えってことだよね!任せといてよ!」
「ふりじゃねーよっ!!!1ミリもお前には任せられないわっ!!!」
「1ミリも任せられないってどういうこと?ミリって、基本的には距離を合わすための単位だから、それを任せられないって…つまりは"任せられない"も何か距離を意味してる隠語なのかな?流石僕の親友!!僕でも知らないことを平然と言ってのけるんだね!そこにシビれるあこがれr…」
「あー!もー!喧しいわっ!!!樹!馬鹿にするのもいい加減にs「虎太郎、ちょっと静かにしてくれる(ニコッ)」
」
「はい、すいません…(シュン)」
「ぷーくすくすくす(笑)」
オレ、イツキヲゼッタイニユルサナイッ…
「…はい!というわけなので、本日からこのクラスに新しいクラスメイトが1名加わります!みんなよろしくね!」
はっ!?俺は一体何を考えていたんだ?という冗談はさておき、3人でいつも通り話して過ごしていたら、あっという間にHRの時間となり、今は担任の先生から今日からうちのクラスに転校生が来ることを告げられている状況である。
それにしてもいきなりだな〜、この時期に転校生っていうのも珍しいし。俺だったら、絶対に気まずくて学校生活上手く行かなそうだな…(汗)。
ま、まぁ、俺のことはいいとしてみんなの反応はというと…
「へ〜〜、この時期に転校生って珍しいな」
「転校生は男の子と女の子どっちなのかな?」
「「「(ざわざわざわ)」」」
みんな転校生に興味津々みたいだ。まぁ、転校生が自分のクラスにやってくるなんてことはそうない事だからなぁ、無理もない。かくいう俺もめちゃくちゃ気になってるし。
「先生ー!転校生の子ってどんな子なんですか?」
「そうね…こう言うとあれだけど、私が今まで会ってきた生徒の中では一番衝撃を受けたわね」
「「「えーー!気になるーー!」」」
このクラスになって初めてクラス全員の気持ちが一つになった瞬間である。
いや、そんな言い方されると余計に気になってきますよ先生!これで、転校生が俺みたいな普通の生徒だったら、マジでなんとも言えない空気になるけど…オラわくわくしてしてきたぞ!
「はい、じゃあずっと待たせておくのも可哀想だから、転校生の子を皆さんに紹介したいと思います!
白さーん!入って来て!」
「はい、失礼します」
先生が元気よく声をかけると、そんな真面目な返事と共に教室の扉を開けて"ソレ"は俺たちの前に現れた。