6話 : 世界最恐の料理人、喰噛 明広
砂井 葉月と喰噛 明広が参加中のデスゲーム、長期デスゲームのルール
・孤島でのサバイバルゲーム。制限時間は入島してから1か月間。武器や道具の類は持ち込み禁止。
・1日に1回、島内のランダムな3か所に救援物資(食料、武器など)が配置される
・島から出ずに1か月生存、または他の参加者を10人以上殺害すればゲームクリア。
・ゲームクリアした者は賞金100万円。さらに1人殺害するごとに10万円が追加される。
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「暗くなってきたわねぇ♡ この、いつどこから敵が現れるか分からないスリル感が最高だわ♡」
「最悪だよ。わざわざ南海まで来たのに」
アタシの名前は喰噛 明広、職業はデスゲーマー。
クランは四季咲ちゃん率いる必殺隊、世界ランキングは3位。
長期デスゲームの島に入って1日目の夕方、アタシと砂井ちゃんは島の中心部の森に身を隠していた。
「でも、初日から救援物資が手に入ったのは不幸中の幸いだったね」
「そうねぇ♡ 奪いに来た2人組を返り討ちにもできたし。砂井ちゃん、接近戦めちゃくちゃ強くなってるじゃない」
「特訓したんだよ。誰かさんが騙して長期デスゲームに連れ込んだりするから」
「それは良かったわ♡」
「ずっと気になってたんだけど、」
「どうしたの? 砂井ちゃん」
「戦ってる途中もずっとビデオカメラで撮影してるけど、その映像って何に使うの? 貴族たちに見せる用?」
「そうよ♡ 参加者視点の映像は貴重だし臨場感が違うからねえ♡」
ちなみに、常に動画を撮影する一番の理由はデスゲーム参加者視点の映像が高く売れるからである。
アタシの稼ぐ金額のうち4割は貴族からの投げ銭、4割は映像の売り上げ、残りの2割が賞金である。
長期デスゲームは生存率が高い代わりに賞金が低いのが難点である。
でも、貴族のファンが多いアタシなら長期デスゲームの参加だけで世界ランキング3位にまで上り詰められるというわけよ。
「砂井ちゃんもやってみる?」
「無理」
だよねー。
「じゃ、代わりに何か面白い話でも聞かせてちょうだい」
「面白い話……例えば?」
「例えば、そうねぇ♡ 恋愛の話とか、貴族の皆さまは気になるんじゃないかしら。そういえばこの前、インタビュ―で『喰噛さんは砂井ちゃんとはどういう関係なんですか?』って聞かれたわよ?」
「それ、ボクのこと女だと思われてるじゃん」
「砂井ちゃん、女の子みたいな顔してるからねぇ♡」
「廻原 薔薇と付き合ってた話とかする?」
「そういえば、そんな時期があったわねぇ♡ じゃあその話してちょうだい」
「えっとねぇ――、」
そんな感じでしばらくの間話を聞いていたのだが、砂井ちゃんが急に身構えて周囲を警戒し始めた。
「今、何かの発射音が聞こえた」
「え? 何も聞こえなかったわよ?」
「ちょっと見てくる」
そう言って、砂井ちゃんがどこかへ消えた直後、
『ドーン』
と、遠くから爆発音が何度か聞こえた。
「この音は花火かしらねぇ♡」
音が止んで数秒後、砂井ちゃんが戻ってきた。
「リーダーから呼び出しだ。白い花火が三発」
白い花火は、携帯を持ち込めないデスゲームに参加中のメンバーを緊急で呼び出すときにリーダーが使う合図である。
三発ってことは、今から3時間以内に本部に集合か。
「あら♡ 砂井ちゃん、この島から早く出たいからって嘘は良くないわよ?」
「本当だよ」
相手の感情を見抜く異能を使ってみたが、砂井ちゃんの言っていることは本当のようだ。
「分かったわ。にしても、リーダーから呼び出しなんて珍しいわねぇ♡」
このデスゲームは島内の人数が常に40人以上になるように調整されているため、2人で今すぐ同時にクリアすることは可能である。
残念、砂井ちゃんとのコラボ映像は特に高値で売れるから今回もがっぽり稼ごうと思ってたのに。
でもリーダーからの呼び出しなら仕方が無い。
立ち上がり、砂井ちゃんに声を掛ける。
「それじゃあ早速行こうかしら。アタシも砂井ちゃんも、あと9人ずつ殺せばゲームクリアよ♡」
登場人物紹介:
・喰噛 明広
19歳。
身長190㎝くらいで、金髪のイケメン。
独特の喋り方と戦闘スタイルにより、貴族たちから絶大な人気を誇る。
必殺隊所属のデスゲーマーであり、世界ランキング3位。
デスゲーム中は常にビデオカメラで撮影しているため、基本的に片手で戦う。
異能力の都合で他のデスゲーム参加者を料理して食べることが度々あるため、「世界最恐の料理人」と呼ばれている。
異能力は「能力食い」。
他の異能力者の肉体を食べることで、食べた相手の能力を得ることができる。
人類史上、5人しか確認されていないコピー能力者の1人である。