3話 : 歩く災害、廻原 薔薇
廻原 薔薇が参加中のデスゲーム、準バトルロイヤルのルール
・参加者50人による殺し合い。制限時間は4時間。武器は持参。
・賞金1000万円を生存者で山分け。ただし生存者が11人以上の場合、賞金は無しとする。
・ゲーム終了前にフィールド外に出た参加者は死亡扱いとする。
・生存人数を知りたい場合は挙手すること(放送によって通知する)
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「どこだぁぁぁぁーーーー‼」
大声で叫びながら剣を振り、周囲の建物を粉々に破壊する。
「はぁ、はぁ……こんなに能力を使ったのは久しぶりだ」
私の名前は廻原 薔薇、職業はデスゲーマーだ。
必殺隊の1人であり、デスゲーマー世界ランキング1位でもある。
今回のゲーム開始から既に3時間50分以上が経過し、最初は50人だった参加者も、今や残り2人である。
いつもなら開始30分も掛からずに他の参加者たちを皆殺しにできるのだが、あと1人の参加者がどうしても見つからない。
「これでフィールド内の建物は全て破壊した。どこにも隠れられる場所は無いはずだ」
周囲を警戒しつつ、挙手する。
「えー、只今の生存人数は2人でーす」
「……はぁ」
今日何度目かの放送を聞いてがっかりする。
もう1人の参加者は一体どこに行ったのだろうか。
「地面の下にでも潜ってるのか? あるいは異能力で透明になってるとか」
残り時間は1分くらいだろうか。
「まぁ、いいか。生存人数2人でも賞金は貰えるし」
と、その辺の岩に座り込み、一息ついたそのとき、
「――!」
背後から剣撃が迫ってきた。
咄嗟に躱して相手を確認する。
「必殺隊? ……いや、違う」
そこには、私の姿をした何者かが立っていた。
私と全く同じ白いスーツ姿に、私のものと全く同じ長剣をこちらに向けている。
「お前、コピー能力者か?」
「秘密です」
そう言うと、私の姿をしたもう1人は斬りかかってきた。
「私に剣で挑むなんて、良い度胸だね!」
こうして、世界ランキング1位の廻原 薔薇と、廻原 薔薇の姿をした何者かによる激しい剣撃の応酬が始まった。
(こいつ! 太刀筋まで私と同じだなんて……!)
「くっ……! お前、強いな」
「世界ランキング1位も大したこと無いですね。能力は使わないのですか?」
いやいや、コピー能力者かもしれない奴の前で迂闊に異能力使わないだろ。
「えっと……さっき使い過ぎて今日はもう能力使えない」
「嘘が下手ですね。それにあなた、思ったこと全部言いますね」
「うるさい! ていうか、そんなに姿とか声を完璧に真似できるんなら、喋り方も真似ろや!」
埒が明かないので私の異能力を乗せた剣撃を食らわせてやろう。
と思ったのだが、攻撃を放つ直前にデスゲーム終了を告げる鐘が鳴ってしまった。
「残念ですが、今回はここまでですね」
私の姿をした何者かはそう言うと、幼い少女の姿に変化する。
小学生……それも低学年くらいの少女だった。
「あら可愛い」
ふわっとした髪も、きらきらとした可愛らしい瞳も、驚くほど綺麗な水色である。
どこかで見たような学校の制服を着ており、武器は持っていない。
剣が消滅したということは、私の姿だけでなく武器までコピーできるのか。
ていうか、こんなデスゲーマーいたっけ?
少なくとも世界ランキングの上位にはこんな少女はいなかったはずだ。
賞金の受取所まで一緒に歩きながら、軽く言葉を交わす。
「お前、強いな。次は必ず殺してやる」
「あなた1人で私に勝つのは無理だと思いますよ。廻原 薔薇さん」
すごい余裕感だ。
私に向かってそんなことを言う奴は久しぶりだ。
「大した自信だな、お嬢ちゃん。名前は何ていうの?」
「秘密です」
「クソガキが」
それ以降会話は無く、少女は賞金を受け取ると帰って行った。
登場人物紹介:
・廻原 薔薇
19歳、女。
廻原 百合の双子の妹。
茶髪のショートヘアで、赤い薔薇の髪飾りを付けている。
必殺隊所属のデスゲーマーであり、世界ランキング1位。
剣術に秀でており、バトルロイヤルでは他の参加者をあっという間に皆殺しにする。
その圧倒的な強さから「歩く災害」と呼ばれている。
異能力は「身体能力向上」。
人間離れした力を出すことができ、小さめの山ならパンチ1発で粉々にできる。