2話 : 立ち回りの天才、水巻 影雄
この世界では数十万人に1人の割合で異能力をもつ人間が生まれており、「異能力者」と呼ばれている。
デスゲームに参加した平民はデスゲーマーとして登録され、「デスゲーマー世界ランキング」によって順位付けされている。
協力関係を結んだデスゲーマーの集団を「クラン」と呼ぶ。
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「というわけで影雄、私の代わりにデスゲーム行ってきてよ」
「どういうわけだよ。最初から説明しろ」
俺の名前は水巻 影雄、職業はデスゲーマーだ。
必殺隊の副リーダーであり、デスゲーマー世界ランキングは5位である。
さっきのデスゲームのときからリーダーの四季咲 星の様子がおかしかったので、何があったのか一通り聞いた。
女神だの異世界だの正直信じ難いが、星が嘘をついていないのは一目見れば分かる。
「なるほど。だからさっき『クソ女神~』みたいなことを叫んでいたのか」
「そうなんだよ! 何でデスゲーム中に呼び出すかねえ」
寝てるときとかに呼び出すと夢だと思われて信じてもらえないから、みたいな理由な気がする。
「さっきのデスゲームに参加してた敵の中に異能力者がいて、星に変な幻を見せてきたって可能性は無いのか?」
「無いよ。さっきの参加者は全員死体にして確認したけど、異能力者は1人もいなかったもん」
「そうか……」
なら、本当だと信じるしか無いな。
それにしても、
「どんな願いでも1つ叶う、か」
「素敵でしょ?」
「何をお願いするんだ? 貴族を全員ぶっ殺して欲しいとか?」
「また~、影雄はすぐ過激なこと考える」
ちなみに今の発言、貴族に聞かれていたら死刑レベルである。
「私は出ないし、勝ち残ったメンバーに決めてもらうってのはどうかな」
「いいぜ。でも、なんで星は出ないんだ?」
「今回のルールはタイマンだからね。死体の大群引き連れて行ったら反則だよ。それに私、1対1じゃ役立たずだから」
「……そうかい」
星が1対1じゃ役立たず?
そんな訳あるかい。
「こっちの陣営の10人だけど、まず必殺隊の世界ランカーたちは私以外確定だね」
「そうだな」
星以外の世界ランカーは、
世界ランキング1位と2位の廻原姉妹。
3位の喰噛 明広。
5位の水巻 影雄(俺)。
6位の藻部山 緑子。
7位の笛野 陽介。
8位の砂井 葉月。
この7人だ。
いずれも優秀なデスゲーマーであると同時に強力な異能力者である。
この世界で最強の10人に数えても違和感の無いメンバーだろう。
「あと3人だな」
「あとの3人は他のクランとか無所属のデスゲーマーをスカウトしようと思う。その辺の人選は私に任せて」
数年ぶりに必殺隊のメンバー勢揃いってわけか。
これは面白くなりそうだ。
「分かった。それで、俺は何をすれば良いんだ?」
「あと10日間しか無いからタイマン戦の特訓しておいて。他のメンバーにも急いで招集かける」
「了解した」
星の言う通り、タイマン戦は久しぶりだ。
いつもは敵を避けることに全力を尽くしているから、1対1の直接戦闘に慣れなければならない。
「早速、タイマン戦を見に行ってみるか」
登場人物紹介:
・水巻 影雄
19歳。
黒髪、瞳は青色。
四季咲 星の彼氏。
必殺隊の副リーダーであり、デスゲーマー世界ランキング5位。
方向感覚が優れており、地図を見るか高い位置から一目見るだけで地形を完璧に把握できる。
チーム戦では司令塔を務めることが多く、一度も接敵せずにデスゲーム終盤まで生き残ることが多々あるため、「立ち回りの天才」と呼ばれている。
異能力は「水使い」。
水を自在に操ることができる。
大量の水を出現させる、数百メートル先の水の存在を感知するなど、汎用性が高い。