85話 テンタ湯屋でパニック
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その様子を見ていた4本腕の魔人が、俺の所に来て
「あんたらいったい何者なんだ?」
と聞かれたので、
「フェードアウト!」
「リバース!」
俺のベルトバックルから三毛猫が飛び出し、そして、
俺がコンバットスーツを解除すると、
その辺に居た、魔人達を含む町方の人達が、
「おお!」
と声をあげ驚く中、
「ああ、テンタの旦那!」
と女の魔人の隣に居た平次さんが言う。
そこへ、俺と同じくコンバットスーツをリバースしたシェリーさん
とタミーさんも後から俺の所に来るのを見て、
「何です、そっちは、沙里(シェリーさんの偽名)お嬢と
民(タミーさんの偽名)お嬢だったんですかい」
と再び平次さんが言うと、4本腕の魔人と女の魔人が、平次さんに聞く
「何だい平次の知り合いか?」
「ずいぶん変わった闘変(魔人の戦闘隊形)だねぇ~どこの藩の人な
んだい?」
と聞く。
因みに、後で平次さんに聞いたら、4本腕の魔人は、四肢四十郎
さんで、女の魔人は、影山鈴さんで、次いでい言うと相撲取り
みたいな魔人は、猪突力三郎さんと言い、3人共
東町奉行所の同心だと言うことだ。
”どこの藩”と鈴さんに聞かれ、お互いの顔を見合わす、
俺にシェリーさんとタミーさんだったが、すかさず平次さんが、
そう俺達に問う鈴さんに、俺達に変わって説明をする。
平次さんの説明に、同心(魔人)達は一同に驚く。
そこへ、犬が、妖刀魂吸刃を咥え戻って来た。
それを見た四十郎さんが、慌てた様に言う。
「おい、ワン公!危ないからその刀そこに捨てろ!」
その言葉に犬は、妖刀魂吸刃を咥えたまま首をかしげる。
「そこの僕、あなたの飼い犬でしょ、捨てるように言って!」
と鈴さんも俺に慌てた様に言うが……。
「安心してください、もうその刀は妖刀ではなくなりました」
と俺が落ち着いたように2人に言いながら、犬が咥える
妖刀魂吸刃を俺は手に取り言う。
それを見て、
「小僧、何言ってんだ、お前も見ていただろう、それは紛れも
ない妖刀だぞ、危ないから早く捨てろ!」
と大慌ての四十郎さんだが、
「坊や、妖刀ではなくなったってどういうことよ」
と冷静に鈴さんが俺に聞く。
「みなさん慌てないで下さい、さっき、テンタ君がこの刀の術式を解き
ましでしょw」
と俺に代わり三毛猫が答えると、
「うっ……」
「えっ……」
三毛猫の言葉に驚きのあまり言葉が出ない四十郎さんと鈴さんだったが、
代わりに相撲取り風の力三郎さんが、声をあげる。
「ね・猫がしゃべった!!」
(あれ、何で驚くんだ?平次さんや伝八さんは、驚かなかったのに?)
と俺が、逆に驚く魔人に驚いていると、三毛猫驚いた魔人達をそのままに
説明を続ける。
「それが、証拠にそこで悪魔に刺されたあの人も、そしてここで斬られた町方の人達
もピンピンしているでしょ」
その言葉に、鈴さんが周りをキョロキョロ見回し、
「そー言われればそうねぇ」
と一人納得してくれたみたいだ。
しかし、残りの四十郎さんと力三郎さんは、
今だ半信半疑だが、俺から鈴さんが妖刀魂吸刃を受取ったのを見て、
半信半疑ながら信じてくれたようだ。
◇
平次さん達は、事件を起こした次郎左衛門さんに縄をかけ
ひっとらえる。
俺達が干渉して、誰も死ななかったとはいえ、遊郭で騒ぎを起こしたことには
変わらないので、奉行所で取り調べを行うらしい。
もし、あのまま100人近い人の魂が向かれていたなら、
市中引き回しの上、打ち首獄門は、免れないが、今回は恐ら
く月港所払いで済むようだ。
ってことで、平次さんは次郎左衛門さんを奉行所に連行する
ので、代わりに子分の六五郎さんが、俺達を今晩停まる旅籠に案内して
くれることになった。
旅籠に向かう途中、六五郎さんに俺は聞いてみた。
「どうして、平次さんや伝八さん、それに六五郎さんは、
三毛猫がしゃべっても驚かなかったのに、同心(魔人)さん
達は驚いたのでしょう?」
すると、六五郎さんは言う。
「へい、あっしも平次親分も、伝八親分もテンタの旦那達は、魔王様の
お知り合いとお聞きしていましたので、てっきり魔人の旦那達同様に
戦闘形態をお持ちだと……」
と言うので
「戦闘形態ってなんです?」
と再び尋ねると、
「へい、魔人様達は通常はあっしら町人同様の体をしてなさるんですが、
戦う時に体の一部又は全部を別の姿に変えるお方が居るんでやんす、
……ほれ、現に旦那も見たでやんしょ、4本腕の旦那とか、
力士の旦那とか」
その言葉に、
「確かに体が変化していましたね」
と俺が答えると、六五郎さんは続けて、
「でね、うちの奉行所(東町奉行所)には、ガマの旦那(自来也十蔵)
って同心の旦那が居て、あの方なんて体が人の倍以上にもなるガマガエル
に変化なさる同心の旦那がおられるんで、だからおいらたちはてっきり
猫のお嬢もその系統かとおもっていたんでやんすよ」
と説明してくれた。
(へー、そう言うことだったのか)
と六五郎さんの説明に俺は心で納得……。
したところで、今晩停まる旅籠に着いた。
旅籠、『桔梗屋』の看板が目に入る。
◇
「じゃ、あっしはこれで」
と六五郎さんは言い帰って行った。
俺達は 旅籠『桔梗屋』の中に入ると、
「いらっしゃいましぃ~」
と女中さんが俺達に声を掛ける。
その声を聞いた『桔梗屋』の女将が、俺達の前に来て
「テンタ様ご一行で?」
でと聞くので、俺が頷くと、
「加納様よりお聞きしています、まずはお足元を」
と頭を下げ言うと、すぐさま周りにいた女中さん達に
「はやく、タライを持っておいで」
と指示をすると、数人の女中さん達は、
「へ~い」×3
と返事をして、水の入ったタライを持ってくる。
(?何に使うのかな)
って思っていたら、
「お足をお拭きいたしますのでどうぞ」
と言われたので、俺とシェリーさん、タミーさんは、戸惑いながらも
草鞋を脱ぎ、俺はさらに腰の刀を女中さんに預け、水の入った
タライに足を入れる。
すると、女中さん達は丁寧に俺達の足を洗ってくれて、手拭いで濡れた
足を拭いてくれる。
その間に少し小さめのタライで別の女中さん達が三毛猫と
犬の足も丁寧に洗い、そして手拭いで濡れた足を俺達
同様拭いてくれるのだった。
足を拭き終えた俺達に女将さんが、
「さぁさ、おあがりください」
と2階にある部屋へと案内してくれた。
シェリーさんとタミーさんと隣同士別の部屋……って思ったが、
襖一枚で隔てただけなので、襖を開けるとお互い行き来出来る部屋
だった。
ので、そのまま襖をあけはなし、1つの部屋として使うことにする。
俺は部屋に入るなり、刀置き台に腰の大小の刀を置き、部屋の座布団に
腰を下ろす。
よく旅館なんかにはテーブルがあり、その周りに置かれた座布団って
感じだが、ここは座布団だけしかなく。
すでに三毛猫と犬もちゃっかりその座布団に
ちょこんと座っていた。
シェリーさん、タミーさんも隣の部屋ではなく俺達の部屋側に自分で
座布団をもってきて座る。
「よう~お越しくださいました、ごゆっくりしてくださいませ」
と女将が頭をさげ、部屋を出て行くのと同時に、女中さん達が部屋に
入って来てお茶を入れてくれた。
俺達は、お茶を飲みながら、ここの旅籠の説明を女中さんから聞く。
女中さんの話だと、夕食は暮れ六つ(午後6時ごろ)だそうで、
お風呂はこの旅籠と言うか月港の町の旅籠にはないそうで、
代わりに湯屋(銭湯)を利用してくれと言うことだった。
今は夕七つ(午後5時付近)なので、夕食まで少し時間がある。
「じゃ、その湯屋ってお風呂屋さんにいってみようよ」
と嬉しそうに言うタミーさんに俺達は従い湯屋に行く用意をする。
湯屋で湯気を浴びると刀が錆びると言うので、刀は旅籠に置いて
行く。
まぁ、いざとなりゃ『赤着』すれば済むからね~。
◇
旅籠の女中さんに場所を教えてもらい湯屋に着く。
湯屋の周りには数件の屋台が並ぶ。
『天婦羅』、『すし』、『うなぎ屋』etc。
湯屋の名前は『亀の湯』。
入り口で、シェリーさんとタミーさんと別れ湯屋に入る。
(ちゃんと男女に分かれててよかった~)
ただ、三毛猫と犬は、入れないのでしばらく2人には外で
待ってもらうことにした。
湯屋に入ってすぐの番台で、お金を払う。
湯屋のお金は10文(250円)。
後、普通は手拭いや、ぬか袋(石鹸の代わり)なんかも購入できるが、事前に手拭い
は用意していたのと、例のホブゴブリンの村で初めて使った粉せっけんも持参して
居るので、借りるのはおけだけ……。
おけは、無料なのでお金は10文だけ……何だけど100文銭で支払ったので
おつりが2文銭で45枚も返って来て少々かさばる。
(もう財布(がま口)が、パンパンだよ)
脱衣場と体を洗う洗い場には仕切りがなく、そのまま脱衣場
から丸見えなのには一瞬驚いたが、服を脱ぎ、桶に手拭いと
粉せっけんを入れ、洗い場へと進む。
洗い場では、三助(湯屋の男性職員)に体を洗うお湯を数度かけ
てもらい、その後、持っている桶にお湯を入れてもらい手拭いに
粉せっけんを着け体を洗う。
体を洗い終わったら、再び三助(湯屋の男性職員)に石鹸を落とす
お湯を数度かけてもらって、いよいよ湯船に向かうのだが、湯船
に入るのには、洗い場奥に見える石榴口と呼ばれる
浴槽を板戸で仕切り、その下部を開けてからだをかがめて出入り
する入り口。
これは湯のさめるのを防ぐためらしいが、体をかがめるので少々
窮屈ではある。
石榴口から体をかがめて浴槽のある部屋へ入った。
(薄暗て、蒸気が充満していてよく見えないな~)
って思っていたら、何やら”ムギュ”と肘に当たった。
「キャッ」
と女性の声がした。
(えっ、何で女の人が!?)
と思い、よく目を凝らして見てみると、そこには紛れもなく女の
人が2人立っていた。
「うっわ」
って驚く声を聞いた相手の女性の1人が言う。
「えっ、その声は……テンタ君!?」
俺もその声を聞き、驚き叫ぶ。
「なっ・何でシェリーさんとタミーさんが居るんですか~!」
すると、シェリーさんとタミーさんが俺に言い返す。
「そのセリフはこっちが言うのよ」
「テンタ君、ここ女湯だよ、テンタ君ってそんな趣味があったんだ」
って2人に責められたので言い返す、
「いやいや、ここは男湯ですよ、シェリーさんとタミーさん!」
すると湯船に浸かっていたいたおじいさんがもめる俺達に向かって
「なぁ~に、おめえら眠たいこと言ってんだ。湯船は混浴に決まっ
てんだろうが!」
そのおじいさんの言葉に、俺もシェリーさん、タミーさんも
顔を見合わせ
「ギャー!!」×3
と大声で叫び、慌てて入って来た石榴口に戻り
お互い慌てて着物を着るのだった。
◇
------(第三者視点)------☆
一方、テンタ達が湯屋に入ったころ、外で待っていた三毛猫
と犬は……。
”クンクンクン”
≪いい匂いがするではないか≫
としばらく湯屋の前でおとなしく待っていた犬が動いた。
「ダメよ、禍龍そっち行っちゃ」
と三毛猫が止めるにも関わらず、犬は、フラフラと
匂いのする方へ歩いて行く。
そこには、ウナギの串焼きを売る屋台があった。
「ダメだって!」
再度、三毛猫が止めたにもかかわらず、犬は三毛猫を無視して、
ウナギの串焼きを売る屋台の前で足を止める。
≪うーん、もうたまらん≫
と言うや否や、屋台に並べられたウナギの串焼きを”ムシャムシャ”
と食べだした。
「ダメよ!禍龍!」
三毛猫が必死で叫ぶも犬は、止まらなかった。
「おい、何っしやがんだいワン公!これはでいじな売りもんだぞ」
と言って追い払おうとするが、犬は、微動だにせず、
”ムシャムシャ”とウナギの串焼きを串ごと食べる犬。
たまりかねた店主が、棒切れを拾うと、
「このガキ!」
と言いながら、持っていた棒切れで、犬の頭を思い切り叩く。
\バッキーン/
が、叩いた棒切れの方が折れ、犬は、平然とウナギを食べている。
「こんにゃろ~!」
と店主は折れた棒切れを捨て、今度はウナギを捌く包丁を取
り出し、犬目掛けて斬り付けるが……。
\ポッキーン/
と包丁が折れてしまった。
「くっ、……」
そこへ
「すみません、後でちゃんとお代をお支払いしますから」
と三毛猫が店主に声を掛けるが、店主は声を掛けた三毛猫を
見ずに、犬を睨みながら
「あん、払うっていったいこれがいくらになるかわかってんのか……」
と言いかけて、振り返り三毛猫を見た。
「えっ、今しゃべったのは猫……なっ、わけねーよな」
と言うと、店主の目の前の三毛猫が、
「おいくらになります?」
と言うと、店主は目を丸くし、また目をこすりながら、
「えっ、俺もこの暑さで焼きが回ったか……猫がしゃべるわけ……」
「いえ、私しゃべれますよ」
店主が疑い深く三毛猫を見ている目の前で、三毛猫は、
店主に話しかけた。
「ぎぇ――――っ、猫がしゃべったぁ~!!!」
と目の前で話す三毛猫に腰を抜かすのだった。
◇
------(テンタ視点)------☆
俺とシェリーさんタミーさんは、慌てて着替え、湯屋の外に出ると。
「ぎぇ――――っ、猫がしゃべったぁ~!!!」
と男の人の悲鳴が耳に入った。
俺達は、慌てて声がする方に向かうと……。
そこには、屋台のウナギを喰い尽くす犬と三毛猫の
目の前で腰を抜かす町人の男の人が居た。
この状況に、俺は直ぐに察しがついた。
(しまった、禍龍に萬豆を食べさせておくべきだった)
俺は腰を抜かす店主らしき人に近づき
「お代は僕がお支払いします、いくらにいくらになりますか?」
と尋ねるも、店主は腰を抜かしたままただ、
「あわわ、あわわ」
と言ってるだけ、
(しかたない)
俺は、屋台を見た。
1串16文と書いてあった。
(うーん、この店の規模だとどうだろう100串くらいか……いや、
仕込む前のウナギも犬は食べいてしまっている)
と考え、財布から1両小判を出して、店主に握らせ
「これで、お許しください」
と言うと、放心状態の店主が、握った小判を見て、そして俺の顔を
見……しばらく考えたのか、正気に戻ったのかわからないが、急に
真顔で、
「旦那、こんなにたくさんいただけねぇー」
と言って渡した小判を還そうとするので、俺はすかさず店主の手を握り、
「いえいえ、ご迷惑おかけいたしましたから、これはその迷惑料です」
と言って小判を還せないように店主の手を強く握ると。
店主は急に不安そうな顔で
「いえ、こんなにいただいても……」
と言うので俺は大きく頷くと、
「へい、まいどあり~」
と笑顔に変わるのだった。
(ふぅ~、よかった)
と俺は胸を撫でおろすのだった。
本来、江戸時代の湯屋は先に湯船に浸かってから、体を洗う仕組みですが
本編では先に体を洗う設定に変えてあります




