80話 出島
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トムさんは、そのまま東支部の転移魔法円で南支部に向かい、
ミリー(トム妻)さんとアナ(ガイゼル妻)さんは、お店がある
本国の聖クリスタル国へと向かう。
ケンタウロスのレツさんダイさんは、俺やシェリーさん、タミ
ーさんに同行しようとしたが、三日月魔王国では馬車が使えない
とのことなので、ミリー(トム妻)さんとアナ(ガイゼル妻)
さん達と一緒に帰国することとなった。
皆を見送り、俺と三毛猫にシェリーさん、タミーさんそれに
犬になった禍龍は、グロル・アノルさん(トパーズ柱)と共に
悪特隊東支部専用港に歩いて向かう。
◇
20分ほどで港に着いた。
そこには、全長78.3m、最大幅14.5mの大きな船。
所謂、中世のガレオン船(帆船)が港に横たわっている。
悪特隊東支部専用調査船『シーマリン号』である。
港に着くと早速、悪特隊東支部のメンバーが迎えてくれる。
隊長のジョン・ドラコさんを筆頭に、モン隊員、ビレ隊員、ビレ
隊員にフル隊員それに紅一点のペルト隊員(推定Bカップ)の5人。
他の悪特隊同様全員エルフ族の面々だ。
「お待ちしてましたトパーズ柱」
とドラコ隊長がグロル・アノルさん(トパーズ柱)に頭を
さげ挨拶すると、グロル・アノルさん(トパーズ柱)が、
「兄さんは?」
と聞く。
「はい、エメラルド柱はすでに乗船されております」
とドラコ隊長が答え、グロル・アノルさん(トパーズ柱)
は、その言葉に頷きそのまま船に乗り込んで行く。
そして、そんなグロル・アノルさん(トパーズ柱)を見送った
ドラコ隊長は、俺に近寄り言う。
「今回はお世話になりますバルバンさん」
と頭を下げるので、俺は慌てて、
「いえいえ、こちらこそ」
とドラコ隊長に頭を下げ返すと、側に居た紅一点のペルト隊員
が、俺の横に居るシェリーさん達に声を掛ける。
「シェリーさんにタミーさんですね」
その言葉にシェリーさんとタミーさんは、
「はい、今回はお世話になります」
「よろしくです~」
と軽く会釈を返すのだった。
「こちらこそお世話になります」
と会釈をするシェリーさんとタミーさんににこやかに答え、そして
視線をすぐずらし、シェリーさんタミーさんの脇に居る禍龍とその
上に乗る三毛猫を見て、
「そのワンちゃんが、禍龍さんで、その上に乗っているのがオトア
ちゃんねw」
と、にこやかに話しかける。
禍龍は、無反応だったが三毛猫は、
「お世話になります」
とペルト隊員に返すと、ペルト隊員は目を丸くして、
「オトアちゃんは人間の言葉を話せるのですね」
と驚いていた。
その後、ドラコ隊長率いる悪特隊東支部隊員達と共に
『シーマリン号』に俺達は乗船するのだった。
◇
悪特隊東支部専用調査船『シーマリン号』は、滑るように港
を出る。
本来このような大きな船を動かすのには、300名以上の乗組員が
必要なのだが、そこは 悪特隊の科学力?魔法学力?
で、特殊な魔法装置によりこの船を動かしているので、悪特隊
5名での操船が出来ているらしい。
『シーマリン号』は、港を出て2時間ほどで、例の海底の陵の近く
までたどり着いた。
ここで一旦船を停船させ錨を下す。
ちょうどお昼だったので、皆でサンドイッチで昼食を……。
だが、食いしん坊の禍龍が、全員分を平らげそうになったので、
慌てて俺は萬豆を取り出し1粒禍龍の口に放り込み、何とか
各自のお昼は確保した。
で、お昼を食べ終わり甲板に出る。
俺は甲板に出るなり、
「赤着!」
そして、三毛猫が、
「フェードイン」
「宇宙シェリフバルバン!」
とコンバットスーツを着用し、ポーズを決める。
(最近、ポーズを決めるのが癖になってしまってる)
そう思いながらも、『シーマリン号』の甲板から海に向かって
小槌振るい、
「マリンバリアン」
\バッシャーン/
と海の上にマリンバリアンを浮かべる。
「チョー!」
『シーマリン号』の甲板から海に浮かぶマリンバリアンに向け
飛ぶ俺。
\スタッ/
素早くマリンバリアンに跨った俺は、『シーマリン号』の甲板の
グロル・アノルさん(トパーズ柱)に手で合図を送る。
俺の合図を見たグロル・アノルさん(トパーズ柱)は、ガレン・
アノルさん(エメラルド柱)に向かって、
「じゃぁ、兄さん行ってきます」
と声を掛けると、
「ああ」
とグロル・アノルさん(トパーズ柱)に頷くガレン・アノルさん
(エメラルド柱)。
そして、悪特隊東支部の隊長のジョン・ドラコさんと紅一点の
ペルト隊員に目配せをすると、隊長のジョン・ドラコさんと
紅一点のペルト隊員はそれに頷く。
そして首から掛けたペンダントを手に取ると、それを外し、右手で
頭上高く上げると……。
\ピカー/
とペンダントが光ったと思ったら、次の瞬間光に包まれ……。
\ディユーン/
身長40mの巨人……ではなく、等身大(2m)のクリスタルマン
トパーズの姿へと変身する。
そしてすぐさま、隊長のジョン・ドラコさんと紅一点のペルト
隊員に手をかざし、2人を光の球体で包み込む。
それを見た俺は、マリンバリアンを海中へと潜航させた。
すると、
「ヒアッ」
その球体を自身の念力で空中に浮かせると、
「ヒアッ」
と言って自身も空中に浮かび上がりその球体を両手で押しながら
空中から海中へと飛び込む。
\ドボン/
俺は、クリスタルマントパーズが球体から海中に飛び込んだのを
確認すると、ゆっくりとマリンバリアンを海底にある陵に向け走
らせるのだった。
◇
海底の陵付近に到着し、手でハンドサインをクリスタルマン
トパーズに送ると、それに頷いたクリスタルマントパーズは、
そのまま光の球体を押しながら、陵の中へと入って行く。
それを確認した俺は、マリンバリアンの進路を『シーマリン
号』に向け帰る。
そして、『シーマリン号』に俺は、到着するや否や小槌に
マリンバリアンを収納し、海から『シーマリン号』の甲板目掛
けジャンプ!……って、海では踏ん張りがきかず、ジャンプで
きない。
(甲板からロープを下してもらって上がろうか……)
と思った時、俺のコンバットスーツのヘルメット内の左のモニ
ターに映るエードラム様が、”ほれほれ”って感じでアピール
してくるので、俺は素直に自身の体のコントロールをエードラ
ム様に渡すと……。
ビユーン彡
俺の体は赤い光の球となって、一瞬で『シーマリン号』の甲板へ
と昇る。
それを確認した悪特隊東支部のモン隊員が、
他の隊員に向け、
「出航!」
と言い合図を送るのだった。
◇
『シーマリン号』で進むこと約一日、次の日の朝には、目的
地の三日月魔王国が見えてきた。
三日月型で、大きさは日本の本州より少し小さめの島。
内側の輪郭……の部分がおおよそ平地で、晋王国側に向いていて
その反対側の弧の部分はおおよそ険しい山岳地帯になっている
らしい。
その晋王国側に向いている部分のちょうど真ん中部分には、月港
と言う港町があり、その奥東側にこの国の王都である月都
がある。
この月港から海側に突き出した2平方キロメートル
の扇形小さな島が出島と言って、貿易を求める船が接岸でき、また、
住居7棟、倉庫8棟 主に晋王国から来た貿易人が滞在できる。
今、俺達の乗る『シーマリン号』は、その出島に向かている。
もう少しで出島に着くのだが、着くまでの間に船の中で、朝食
を取る。
ベーグルにハムとチーズを挟んだものに、目玉焼きと簡単な
サラダがワンプレートに乗っていた。
これに俺と、三毛猫とガレン・アノル(エメラルド柱)
さんは、コーヒーで、他の人たちは紅茶でいただく。
因みに、犬は、食べる前に萬豆1粒
食べさせ、朝食を一緒に食べた。
(でないと、全部食べてしまう)
◇
『シーマリン号』が、出島の港に接岸して、ガレン・アノル
(エメラルド柱)さんを先頭に、俺、シェリーさん、タミーさん
に犬になった禍龍、そしてその背中に乗る三毛猫
が、出島に上陸する。
「お気をつけて」
『シーマリン号』の甲板から悪特隊東支部のモン隊員が、俺達に
声をかける。
「おう、お前達もな」
とガレン・アノル(エメラルド柱)さんが手をあげモン隊員に返すと、
『シーマリン号』は錨をあげそのまま出島の港を出港する。
港から出る『シーマリン号』を黙って見送るガレン・アノル(エメラ
ルド柱)さん、犬になった禍龍、そしてその背中に乗る三毛猫
に『シーマリン号』に手を振る俺、シェリーさんにタミーさん。
そこへ、江戸時代の偉い武士と言った感じの男の人と、いかにも金持ちの
商人風の男の人が近寄て来て、ガレン・アノル(エメラルド柱)さん
に声を掛ける。
「ガレン殿とお見受けいたす」
その声に振り返って、
「ああ、そうだが御宅たちは?」
と聞き返すガレン・アノル(エメラルド柱)さんに、
偉い武士の隣の商人風の男の人が言う。
「失礼つかまります、ここに御わすのは、出島奉行の月形平蔵
様で、わたくしが出島奉行所の与力をさせていただいています
長崎屋文左衛門でございます」
と俺達に名乗り、深々と頭をさげた。
(へー町人が与力?)
文左衛門と言う男の人の言葉に俺は素直に心に思っていると、
「では、ご案内いたします」
と俺の疑問はほったらかしで、俺達を案内する文左衛門さん達。
そのまま2人に着いて行くと……出島の町の真ん中にデカイ
門構えの和風の建物。
(なんか時代劇に出て来そうないかにも奉行所って感じの
建物に案内される。
(御白州とかあんのかな)
と疑問に思いながらも門をくぐり俺達が建物に入ろうとして、
「ちょ、ちょ、それは困ります」
と土足のまま建物の中に入ろうとする俺達の先頭のガレン・
アノル(エメラルド柱)さんを止めるに、
「あっいっけねーぇ、そうだったな」
とブーツを脱ぐガレン・アノル(エメラルド柱)さん
その様子を見て、不思議そうに俺の横に居るシェリーさん
とタミーさんが小声で俺に聞いてくる。
「ねぇ何で靴脱ぐの?」×2
それに対し俺は、
「僕の居た日本でもそうでしたけど、そう言う習慣って
言うか、建物上もそうなってるからじゃないですか?」
って同じく小声で答えるも、シェリーさんとタミーさん
はどうも納得がいかないようだ。
首をかしげながら靴を脱いで中に入る。
そして、入り口に居た町人風の別の男の人が、そのまま
建物に上がろうとしている犬になった禍龍を
見つけ、慌てて水が入ったタライを持ってきて、禍龍
の足を濡れた手拭いでぬぐていた。
そして建物中へと俺達は案内されるのだった。
◇
廊下を通り、ある部屋の障子が開けられ中に通された。
その部屋は16畳くらいの畳の部屋で、畳の上に絨毯が引かれ
洋風のダイニングテーブルの様なものが部屋の真ん中に置かれ
ていた。
テーブルの左右に3脚ずつと正面に1脚椅子があり、右側に
ガレン・アノル(エメラルド柱)さん、シェリーさん、タミー
さんが座り、その反対側に俺と……三毛猫は椅子に
座れるのだが……禍龍が無理っぽいので、椅子を
外してもらう。
正面の席には出島奉行の月形平蔵さんが座り、その脇に
長崎屋文左衛門が立っている。
そこへ、着物姿の女性2人がお茶を各自の前に配る。
配り終えるのを待って、ガレン・アノル(エメラルド柱)さん
が言う。
「こっちのメンバーを紹介しておこう」
と言いながら座ったまま俺達を紹介する。
「まず、俺の隣がシェリー、その隣がタミーだ」
ガレン・アノル(エメラルド柱)さんに紹介され、軽く会釈をしな
がら、
「シェリーです」
「タミーです」
と自己紹介する。
出島奉行の月形平蔵さんと長崎屋文左衛門も軽く会釈を返す。
「で、俺の向かい側に座ってるのが、バルバン、オトア、禍龍だ」
とガレン・アノル(エメラルド柱)さんに紹介され、
「バルバンです」
「オトアです」
「バウ!」
と禍龍だけ、吠えた。
俺は三毛猫がしゃべったのに出島奉行の月形平蔵さんと
長崎屋文左衛門が驚かなかったことに少し驚いてはいたが……。
俺達の紹介が終わると、早速長崎屋文左衛門が
説明する。
「ただいま、上様(魔王)直属の鬼番達が、上月藩の様子を探りに
行っておりますゆえ、皆様は、鬼番達が戻るまでの間、しばらくは、
月港にある上月藩の藩邸で、お待ちくださるようお願いいたします」
と頭を下げ、そして
「ただ、我が国は表向き外国人の入国を禁じておりますので、
別室にご用意したお召し物と着替えていただきとうございます」
と頭を下げた。
「よしわかった」
長崎屋文左衛門さんの言葉を聞いて、ガレン・アノル
(エメラルド柱)さんがそう言って席を立ったので、それに合わせて
俺達のも席を立ち服を着替えるため別室へと向かうのだった。
◇
俺とガレン・アノル(エメラルド柱)さんは、同じ部屋で着替えをする。
三毛猫と禍龍も一緒の部屋に居た。
シェリーさん、タミーさんは別室で着替えているようだ。
ガレン・アノル(エメラルド柱)さんは、緑の羽織に白の着物で
着流し姿……袴を進められたが、季節はまだ8月と夏……暑いって
理由で、ガレン・アノル(エメラルド柱)さんは断った。
俺は、赤い羽織にアノルさん同様白い着物、一応夏用の着物
だが、俺もガレンさん同様俺も袴を断わり着替えを済ませると、
すぐさま町人風の男の人が来て、髪をセットすると言われた。
(どうするのか?)
って思っていたら、俺もガレンさんも髪の毛が短いので、所謂
ウイック(付け毛)をして髷を結われた。
ここ三日月魔王国では、日本の江戸時代のように魔人も町人
も髷姿だそうで、髷の種類は、魔人と町人で違うらしいが……。
(えっ、ひょっとして…)
と日本の江戸時代のように月代と言って頭の上をそられるのか
とびくびくしていたら、この三日月魔王国では、月代と言う
風習はないそうだ。
(よかった~)
また、髪の色はどうするんだろうと思っていたら、町人は
確かに俺と同じ黒髪らしいが、魔人達は、千差万別で、ガレン
さんのように緑髪でも問題ないそうだ。
次に、瓢箪を渡された。
(なにこの瓢箪?)
って思っていたら、これは俺や冒険者達が持つ”小槌”と
同じように使うもので、物を収納し出し入れが自由に
出来る者らしいが、ただ、この瓢箪には”小槌”のような
銀行システムがないので、小槌のようなお金の出し入れは
できないとの事だった。
冒険者の証である”小槌”は、ここ出島以外では持ち込め
ないとのことなので、俺は”小槌”の中に入っている。
スカイバリアン等のアイテムを瓢箪にうつす。
物がデカイので、文左衛門さんには、
少々驚かれたが……。
で、次に刀を渡された。
(おっ、これ日本刀ジャンw)
と少しテンションが上がる俺だった。
これからは週一のアップになります。
一部シーマリン号での朝食のシーンを追加しました。




