171話 宇宙船ジェイナス
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------(テンタ視点)------☆
「私は宇宙船ジェイナスのマザーコンピュータ・ボギです」
と言う女性の言葉が頭に響き、俺は少し困惑したが……。
彼女……AIに性別はないが、声が女性なので一応彼女
としておくが……の説明によると、今俺が居るのは宇宙探査船
ジェイナス号の中らしい。
この宇宙探査船ジェイナス号と言うのは、イプシロン星系に
あるクレアド星の宇宙探査船で、今から7020年前にこの
イディア星の付近で恒星間飛行中にエンジントラブルを起こし、
このイディアに不時着を下らしい。
その時、不時着の衝撃で船のブリッヂが損傷し、ブリッヂに居た
船長を含む幹部が全員死亡し、唯一、エンジントラブルの修理
を試みていた機関士のエドガー・ビュランカが、残された乗組員
の指導者になったそうだ。
機関士のエドガーを中心に、ジェイナスの修復に全力を挙げて
行っていたのだが、この星には彼らの宇宙船に欠かせないチルソ
ニアンナイトと言う鉱石がないことに気づく。
このチルソニアンナイトという物質はこの船の恒星間飛行に欠か
せない物質であると同時に、船を修理するために使うレプリケータ
ーと言う量子からいろいろな物質やエネルギーを作れる装置のエネ
ルギー源でもある物質らしく、それが無いと、船の修理どころか、
自分達の食糧をこの装置に頼っていたため、このままだと、ジェイ
ナスの乗組員全員が食料が尽きて餓死することになる。
そんな中、不時着したジェイナスの付近に住んでいたこのイディア
の人々が、押し寄せてくる。
エドガーはじめジェイナスの乗組員達は手に手に武器を持ち構えるが
……。
ジェイナスに押し寄せて来たイディアの人々は、エドガーはじめジェ
イナスの乗組員達を見るなりその場にひれ伏した。
それを見て、エドガーはじめジェイナスの乗組員達は驚く。
そんなエドガー達に押し寄せて来たリーダーらしき人が何やらエドガー
達に訴えかけてくる。
彼の言葉は、エドガー達が理解できる言葉ではなかったが、すぐに
AIによる翻訳機能で何を訴えている内容って言うのが、
「天から舞い降りた天子様、我等を導いてくだされ」
だったそうで、初めは断っていたが、船の修理もできず、食料への
不安もあったことから、それらを受け入れ、彼らの住む村の守護神
として迎い入れられたそうだ。
◇
それから数日たったころ、エドガーはじめジェイナスの乗組員達
は、村人達のある行動に驚く。
何と彼らは、レプリケーターなしに、物資やエネルギーを作り
出したのだ。
そこで、エドガーはじめジェイナスの乗組員達は、村人達の体を
並びに周りの環境を詳しく調べると、何と未知の粒子が存在する
ことに気づく。
そして、調べること数週間、それは人間の意思でエネルギーや
物体を形成できる”魔力粒子”であることに気づく。
それから、再び数週間”魔力粒子”について調べた結果。
これを用いて宇宙船のエネルギーのもとである『チルソニア
ンナイト』を作成できそうだと言うことがわかり、さらに
魔力粒子を研究し、それから数可決後、”魔力粒子”を使い
『チルソニアンナイト』を作成することに成功したらしい。
それからさらに数ヶ月、完成した『チルソニアンナイト』に
より、船の修復を完成させたエドガーはじめジェイナスの
乗組員達は、意気揚々と飛び立とうとした時だった。
突然、この地を謎のシールドが覆う。
このシールドのため、宇宙船はこの地から離れることが出来
なかった。
そこで、船に備え付けられているビーム砲や、量子魚雷と呼
ばれる武器でそのシールドの破壊を試みるが……宇宙船が放
つビームや量子魚雷は、そのシールドをすり抜けるだけで、
破壊できない。
結局、この星からの離脱をあきらめたエドガーはじめジェ
イナスの乗組員達は、この地に住み着くこととなった。
◇
そして、月日は流れ、ジェイナスの乗組員のリーダーエドガー
はこの地の人々の王となり、また他の乗組員もこの地の治める
王となったエドガーの側近となり、自分達が乗って来た宇宙船
ジェイナスは、この地に住む人々にとって王の住まう神聖な建物
王の城と言うより神殿のような存在となり、その周りに人々が
集まり村から街へとなって行く。
当然のことながらその街の発展には宇宙船ジェイナスの科学力
が用いられたって事だが……。
そして、その宇宙船ジェイナスの乗組員たちがそれぞれ寿命を
迎へたに当たりこの町の統治と、管理は、宇宙船ジェイナスのAI
であるマザーコンピューターのボギーがするようになり、現在に
至るらしい。
(うーん、なんか信じられない……)
とは思うが、現に俺はそのSFのような世界を体現している。
(魔法の世界に、SFの世界って!?)
驚くって言うより、どちらも俺が居た世界とは全然違う価値観の
世界に俺は少々戸惑っているって言うのが正直な気持ちかな。
◇
「イメージしてください」
俺の側に来た銀色のアンドロイドが俺にそう言う。
既に俺の前にはテーブルと椅子が用意され、俺はそこに
座っている。
(イメージ……まるで魔法だね)
と思いながらも俺は食べたいものをイメージする。
すると、俺の目の前のテーブルの上に、\パ/ッ
と俺がイメージした料理が並ぶ。
俺がイメージした食べ物は……ハンバーグステーキ。
小さいスープに白いご飯にステーキ皿に乗ったハンバーグ。
\ゴクリ/
俺は思わず唾を飲み込んだ。
なんせ、コラクル国で、人質の時は、1日1回しか
食事を与えてもらっていなかったし、処刑当日から
戦闘になったので、結局丸1日食事をとってなかったもん
でね。
俺の座るテーブルの横には、何かキャットフードのような
物を黙って”カリカリ”食べている三毛猫……
ではなく三毛猫だったな。
少し心がわびしくなる俺……とはいっても”パクパク”
ご飯は食べてるけどね。
◇
食事中、俺の横に居る三毛猫が急に顔を上げ、耳を
ぴくぴくさせ、
≪ガレン≫
と念話で言う。
と、
次の瞬間、船内に\ピキピキピキン/と警戒音が鳴ったか
と思うと、船内で何やら計器を見ていたアンドロイドの1人が
言う。
「50キロ先に戦闘が見られます」
すると、AIである船のマザーコンピュータが、わざわざ
船内の大型スクリーンに映像を出す。
(おそらく、俺達に対しての配慮!?かな)
その巨大スクリーンに映し出されたものを見て俺は
驚く。
「エメラルド柱!?」
何とそこには巨獣と闘うクリスタルエメラルド(ガレンさん)
の姿があった。
俺が、「エメラルド柱!?」と叫んだのを聞いたマザーコンピュ
ータは、俺に
「お知合いですか?」
と尋ねるので、
「ええ」
と俺が頷くと、
「警備アンドロイドに次ぐ、その巨人を援護し、こちらに
お連れしなさい」
と恐らく、現場へと向かうアンドロイド達に命令を下すの
だった。
◇
-----(第三者視点)------☆
「えっえ―――っい!」
クリスタルマンエメラルド(ガレン)は、すぐさま
両腕を突き出し、
「ディア!」
と叫ぶと両腕のブレスレットがエメラルド色の光に包まれ、クリ
スタルマンエメラルド(ガレン)の腕から飛び出し、ペルーダ
※1目掛けて飛んで行き、\ズバーン/、\ズバーン/
とペルーダ※1の頭と尻尾を切り飛ばす。
「ふぅ~」
と一息ついた時だった。
シャトルと呼ばれる乗り物をクリスタルマンエメラルド(ガレン)
の側に着陸させると中から銀色のアンドロイドが2体現れる。
「んっ?なんだ……」
とクリスタルマンエメラルド(ガレン)は言いながら少し警戒してい
ると、1体のアンドロイドが、クリスタルマンエメラルド(ガレン)
に向かって、
「ヒムカイ・テンタさまのオシリアイデスカ」
と言って来た。
突然、知り合いの名前を出され少し驚くクリスタルマンエメラルド
(ガレン)。
「んっ?何でテンタを知っている……」
その質問には、アンドロイドは答えず、
「オマチデスノデ、ドウゾコチラヘ」
とシャトルの方に手をかざす。
「んだか、わからんが……ついてって見るか」
とクリスタルマンエメラルド(ガレン)は、
「ディア!」
と叫んだかと思うと人間大の大きさに縮んだ後、変身を解いた。
それを見た2体のアンドロイドは、一瞬固まったかのように見えたが、
2体は何事もなかったようにガレン(クリスタルマンエメラルド)
をシャトルの中に案内する。
ガレン(クリスタルマンエメラルド)がシャトルに乗り込むと、
静かにシャトルは浮上し、そのままテンタの居る宇宙船へと向かうの
だった。
◇
------(テンタ視点)------☆
俺が食事を終えると、\パ/ッと食べ終わった食器が消える。
(なんだ・なんだ)
俺は一瞬、心で驚くも、表向きは平静を装う。
そして、しばらくたって、船内の俺が居る部屋の自動扉が”スー”
と開くと、アンドロイド2体と共に ガレン(クリスタルマンエ
メラルド)さんが部屋に入って来る。
部屋に入るなり ガレン(クリスタルマンエメラルド)さんは、
「おお、テンタ無事だったかw」
と嬉しそうに俺の肩をポンポン叩き、俺の足元の三毛猫を見つける
と抱き上げ、
「おお、オトアも無事で何よりw」
と笑顔で言うが……。
その言葉に俺は項垂れると、その様子を見たガレン(クリスタルマ
ンエメラルド)さんが、一瞬固まる。
「えっ……」
そのに三毛猫がガレン(クリスタルマンエメラルド)
さんに向かい念話で言う。
≪このカラダには私しかいないのよガレン≫
その言葉にガレン(クリスタルマンエメラルド)さんは驚き叫ぶ。
「何ですって!」
そして続けて、
「では、ダリウスは……」
と三毛猫に聞くと、
≪ええ、オトアちゃんの魂を得て……≫
それを聞いたガレン(クリスタルマンエメラルド)さんは、慌てて
部屋を出ようとするが……。
≪待って、ガレンダリウスが完全復活するにはまだ少し時間があるわ≫
と引き留めた。
そしてその時、\グゥ~/とガレン(クリスタルマンエメラルド)さん
のお腹が鳴った。
「ああっ」
お腹を恥ずかしそうに抑えるガレン(クリスタルマンエメラルド)さん
に三毛猫は、
≪兎に角食事をとりなさいガレン≫
と言うと、ガレン(クリスタルマンエメラルド)さんは、お腹を押さえた
まま、
「はい……」
と答えるのだった。
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※1 ペルーダ 頭と尻尾が蛇で体はライオン背中には毒の棘が
が生えている。




