第五話 証明
パール「これは...本物だね...。そのビッグラットについて何か覚えてることはあるかい?」
ダン「俺と同じくらいの高さで、昨日戦ったビッグラットより素早かったくらいしかわかんないよ」
パール「おかしいね。そのくらい濃い魔石ならディグリーくらいの大きさくらいはありそうなんだけど...。
貴重な情報をありがとう、後はこちらで調べておこう」
ディグリー「ああ、助かる。それはそれとして、本題はここからだ」
パール「なんだい、これよりも厄介なことを持ってきたのかい?」
ディグリー「実はこいつの冒険者登録なんだが、神の恩恵について隠しておきたいんだ。
お前の権限で何とかならんか?」
パール「何とかならなくはないけど、何かあったのかい?」
ディグリー「知れ渡ると何かありそうなんだ」
パール「成程ね。事情は分かったわ。ただし条件があるわ。
その子の使える力について詳しく教えて欲しいの」
ディグリー「まぁそうなるよな。ダンこいつは信用できる奴だから教えてやってくれ」
その後ダンは。ダンが信用しているディグリーが信用しているパールということもあって包み隠さず話した。
パール「ありがとう、好奇心が満たされたわ。
それにしても面白い魔法だね。確かに公言するのは良くないわね。
取り合えず隠すのは賛成よ。それで代わりの能力はどうするの?」
ディグリー「なあ坊主、その魔石を持ってたビッグラットどうやって倒した?」
ダン「ディグリーさんに貰ったこの刀で首を斬ったんだ」
ディグリー「もうそれを使いこなしてんのか!?」
ダン「使いこなしてるなんて言えないよ。もっと頑張らないと」
ディグリー「言っただろ、それはそもそも物を切るのさえ難しいと。
しかも突然変異であろう魔物を一太刀たぁ、立派なもんだ。
それが本当の話ならな」
ダン「本当だよ」
ディグリー「お前が嘘をついているとは思っていない。
がしかし、それをただ信じるわけにもいかねぇ。
現にその刀は昨日渡したばかりだしな。
そこでだ、俺様とモンスター討伐に行ってその実力を見させて欲しい。いいか?」
ダン「わかった」
ディグリー「って事だパール。お前もついて来い。
それで代わりの能力になり得るか決めてくれ」
パール「あたしはこれでも忙しいんだけど。
まぁいいわ、その子の動きも見てみたいしね」
ディグリー「じゃあ、明日またここに来るからその時までに何か良さげな依頼取っといてくれ」
パール「そこはあたし任せかい。ほら言いたいことが終わったんなら散った散った」
部屋から出た後、ディグリーとダンは他の五人と合流し、宿へと向かった。
ジュディ「遅かったわね二人とも」
ダン「赤い魔石の事でちょっと」
スズ「何かあったの?」
ダン「わかんない。ただ、良い事では無いみたいだった」
ディグリー「まぁ詳しい事は後回しにして、まずは飯だ」
こうしてダン達は[宿屋ゴンダ]に連れていかれた。
トーヤ「ディグリーさんここ宿屋だよ?」
ルルカ「ルルカお腹空いた」
ディグリー「宿屋兼食堂だ。安くて美味い、俺様のおすすめの場所だ」
宿を三部屋(ディグリー一人。ダン、レオン、トーヤの三人。ジュディ、ルルカ、スズの三人)予約し、そのまま食堂に行き、出された料理を食べていた。
スズ「それでさっきの続きだけど、詳しくは後でって事は赤い魔石の他にも何かあった?」
ダン「うん、皆には言ったと思うけど俺の能力は公にしない方が良いって言われたんだ。
だからその事を隠すのは出来無くは無いみたいなんだけど、その代わりの能力についてどうするかって話になったんだ。
そこでビッグラットを倒した方法を神様から授かった力って事にすればっていう話しだったんだけど、俺が倒したのはこの刀でなんだ」
腰に下げていた刀を机の上に置いた。
ジュディ「これって昨日ディグリーさんがダンに渡してた武器よね」
ダン「そうだよ、練習したことを実践で出来るかどうかも兼ねて刀を腰に下げて森を散歩してる時に偶然出会ってそれで」
レオン「練習って言った?もしかして練習って刀を貰ってすぐのこと?」
ダン「いや...あの...どうだったかな...?」
ルルカ「刀渡されてすぐダン倒れたからルルカ達心配しただけど」
ダン「あの...貰った後興奮しちゃって、つい...その...ごめんなさい」
その後ダンは責められつつ明日の方針を話し合い、決まったところでその場は解散となり各々の眠る部屋へと向かった。
そしてダン、レオン、トーヤの三人の眠る部屋では
レオン「ダン、今日ドラゴンが出たときさ、ディグリーさんを助けた方法ってどうやったの?
僕にはダンが水球を使ったように見えたんだけど」
ダン「多分そう。水球でドラゴンの頭を弾いたんだと思う。ただルルカの真似だったからあってるのかどうかはわからない」
レオン「間違っててもいいからさ、ダンのやり方教えてくれない?」
ダン「いいよ。って言ってもルルカが魔物に対して使ってた水球を手から出るように想像しただけなんだけどね」
トーヤの寝ているであろう場所から水の音がした。
トーヤ「本当だ。ダンやルルカくらい大きな物は出来ないけど小さいやつなら俺でも出来た」
急に試してびしょ濡れになるトーヤの方を見てダンとレオンは二人で笑った。
ダン「何やってんだよ。今拭くもの貰ってくるよ」
雑巾を借りて拭き終わった三人はその後すぐに寝た。
翌朝ー身支度を済ませると全員食堂へと集まった。
ディグリー「改めて今日の内容を確認するぞ。俺様とダン達男組は魔物討伐、嬢ちゃん達は王都観光だっけか」
ジュディ「ディグリーさん、その事なんですけど昨日の夜皆で話し合ったんですけど私達も魔物討伐に参加したいです」
ディグリー「いいのか?昨日説明した通り基本戦うのはダン一人だぞ?」
スズ「それでいいのよ。ダン以外の実力は把握しててもダンだけはいまいち謎だったの。丁度良い機会だわ」
ディグリー「わかった。ダンもそれでいいよな?」
ダン「うん、皆をがっかりさせないように頑張る」
ディグリー「その調子だ。じゃあ行くか」
そしてディグリー達一行はパールの元へと向かった。
パール「随分大所帯だね。一応自己紹介しとこうか。
私はパール、ここのギルドマスターをやってるんだけどまぁ肩書きは所詮肩書き。
主に働いてくれてるのはティファニー達職員、私はギルドの方向性を決めるだけの名前だけってとこだね。
よろしく」
その後レオン達も挨拶と自己紹介を一通り終えた所で本題に入った。
パール「今日の討伐目標はこの三体。
まず一体目が昨日、一昨日と戦ったビッグラットの成熟個体だね。
二体目がブラックベアー。その名の通り全身真っ黒な毛で覆われている。ビッグラットより大きくて強いとでも考えとくんだね。
そして三体目はレッサードラゴン。昨日ディグリーが倒したやつの番だろうね。
ダン、どこまでやれるか見せて貰おうじゃないか。
それから戦闘においての時を止める魔法は禁止させて貰おうかね。
あれを使われると参考にはなりにくいからね。
致命傷になりそうな攻撃は防ぐから安心しな。
その代わり使った時点であたしが戦闘を終わらせる」
ダン「わかった」
ダンが承諾すると魔物が居る地点へと出発した。
まずはビッグラットのいる森に着いた。
そして群れを見つけると一番大きなやつを除いて周りのビッグラット全てをパールが魔法で全滅させた。
パール「さぁ、残るはお目当てのあいつだけだ。
やっておいで」
パールの魔法に驚いてしまったがすぐにダンは立て直し刀を構え、ビッグラットと向き合った。
ビッグラットも急に仲間が倒されて恐怖を抱き、魔法を放たれた方向に顔を向けるとその時にはもうダンしか残っておらず、本能的にダンは今のような強さでは無いと悟り、その上で仲間が倒された怒りをダンへと向けた。
そしてダンに向かって勢いよく突進したがダンはそれを躱しつつトーヤの動きを思い出し、すれ違いざまに片手足を切り落とした。
動きが鈍ったビッグラットの隙を見逃さず、ダンはすぐさま懐へ潜り込み、下から上へ曲線を描く様にして刀を振り上げ、首を切り落とした。
パール「やるじゃない。次よ」
次の地点はビッグラットの生息地よりも更に奥の森だった。
パール「ブラックベアーは基本は群れず、一体で過ごす事が多い。そして縄張りに入られると無条件で襲ってくる。
その縄張りの印がこの木の爪痕だ。
言いたいことはわかるね」
ダン「はい」
返事をするとダンは縄張りに侵入した。
森の奥に行けば行く程生い茂る木々に視界を遮られながらブラックベアーを探していると前方から黒い塊が突進してきた。
間一髪で避けると体制を整え、刀を構えた。
Uターンをし、ダンの目の前で止まると立ち上がり大きな右腕を振り下ろした。
ダンはその振り下ろされた力を利用し、刀を滑らすようにしながら右腕を切り落とした。
ブラックベアーは萎縮し、その場から逃走しようと後ろを向き、四足歩行に戻り、叫びながら走り出した。
ダンはそんなブラックベアーの上に飛び上がり、落下の速度と共に刀を振り下ろし、ブラックベアーの首を切り落とした。
そんな光景を見ていたパールはダンを褒めようと近づくと横から猛スピードで突進してきたブラックベアーにダンは吹き飛ばされた。
ブラックベアーはディグリー一人半くらいの大きさ。
パールは赤、青、黄、白の四色の魔法が使える。