第三話 初戦闘
日も沈み辺りが暗闇で包まれた頃ー
ディグリー「今日はこの辺にしよう」
そう言うと馬車を止めた。
野営の設営も終わり、戦闘の話になった。
ダン「レオン、あの威力どうやったの?」
レオン「あれはこの剣のおかげだよ。前にも言ったけどこの剣を身に着けてると力が凄く湧いてくるんだ。っていうか僕の話はいいんだよ。
ねぇダン、昼間のあれ何?ダンが吹っ飛ばされたかと思ったら急に尖った木の棒を持ったまま魔物の背後に立ってていつの間にか魔物倒しちゃってるし。
君が倒れてしまってから聞くことが出来なかったんだけど今ならいいよね?
ダンのことはよく知ってる。でも色んなことを秘密にしてる」
ルルカ「ダン、ルルカ達に隠し事?」
ダン「ごめん、皆には言いたく無かったわけじゃなかったんだ。
俺が神様に貰った力は時に干渉出来る能力なんだって」
そう言い終わるとトーヤ以外驚いていた。
トーヤ「時に干渉?鳥か何かか?」
スズ「時間を操るってことじゃないかしら。もしそうなら凄い能力じゃない。
それをどうして秘密に?」
ダン「この能力っていうか多分魔法。を使ってみて何故か良くない力だって感じちゃって、それて秘密に...」
ルルカ「時間操るの悪いこと?」
ダン「わからない...。ここまで来たら全部話すよ」
それから今この魔法でできることを全て話した。
時間を止められること。
生き物には干渉しないこと。
止めた世界では何をしても解除する時にダン自身が干渉していないと元に戻ってしまうこと。
魔法を解除する時決められた範囲内にいないと元の場所に戻ってしまうこと。
その範囲は魔法を発動する時の魔力量で決まること。
ダン「こんな感じかな、僕の出来ることと言ったらその時間を止めた世界で体を鍛えることくらいなんだ」
スズ「あなた、その世界で何年暮らして来たの?」
ダン「細かく数えて無いからわかんないけど多分十年くらい。
十年頑張っても皆には追いつけなかった。もうどうすればいいかわからない」
レオン「十年!?僕達と訓練を受けながらさらに十年も鍛錬してたの!?」
ディグリー「成程そりゃ上手なわけだ。いっただろ坊主。お前さんは凄い。
まずそこの坊主二人と同じ動きが出来るだけで規格外っていうのを自覚した方が良い」
ルルカ「十年も先に過ごしてたのにルルカ達とあんまり変わらないね」
ダン「あの世界だと成長はしないみたい」
ディグリー「そういえば坊主、お前さんの能力の話、ここにいるやつ以外にしたか?」
ダン「してないよ。やっぱり良くない力なのか?」
ディグリー「色んなやつに伝わると良くない力に変わるかもしれねぇが正しいかな。
まっ、とにかくその能力については今まで通り隠してれば変なことに巻き込まれることもねぇさ。
それよりもお前さんが起きた後の話覚えてるか?」
ダン「そういえば良いものを見せてやるって」
トーヤ「良いもの?」
ディグリー「そうだ。普通に生きてるだけじゃ目にする機会はないであろう物だ」
そう言うと鞄から布で包まれた細長い何かを取り出した。
そして布を解きつつこう話した。
ディグリー「これはギルドで落とし物として預かってたんだが全然取りに来ないからって言うんで俺様が貰っちまった物なんだが、調べたところこれは刀という異国の剣らしい」
ディグリーの取り出した刀という物は大小それぞれ一つずつあり、小さい方はダンの腕程の長さで、大きい方はダンの背丈程もあった。
ディグリー「これ使ってみるか?」
ダン「良いの?」
ディグリー「ああ良いぞ。そもそも俺のじゃないしな。因みにその武器は力任せに振っても斬れないらしいぞ。ちゃんと斬らないと斬れないらしい」
ダン「どういうこと?」
ディグリー「さぁな、そこまでは知らねぇ。取り合えずそっちのちっこい方使っときな。自分に合ってるかどうかそっちで確かめつつもう少し背が大きくなったらこっちのでかい方もやろう」
ダン「ディグリーさんありがとう!」
ディグリーに礼を言うと早速ダンは使ってみる事にした。
まず刀を足元に置き、時を止める魔法を発動した。
ダン「斬らないと斬れない...」
と言いながら剣のように両手で持ち思い切り刀を振り、上空に浮かせた木の枝を真っ二つにしようとした。
すると木の枝は半分にはなったが斬れたと言うよりは叩き折ったが正しいようだ。
ダン「何故斬れない?」
と言いつつ指で刀の刃を軽く撫でるとダンの指はうすくだが斬れた。
ダン「痛っ...あ、これだ」
もう一度刀を握るり木の枝を浮かせ今度は枝に刃が当たる瞬間刀を手前に引いた。
すると木の枝はしっかりと真っ二つになった。
ダン「出来た!」
早い段階で刀の使い方がわかって嬉しかったのかその後もダンは色々と試し斬りしていた。
木の枝も最初は踏めば折れるような太さから腕くらいの太さまで変えてみたり斬る角度を変えてみたりと、とにかく色々試してあろう事か石を切ろうともしてみた。
小さいものは思ったよりも楽に斬れてしまった。
ダン「やった、次はこっちで...」
とさっきより何倍も大きな石を斬ろうと試みた。
半分まで刃を軽々と通ったが途中で止まったかと思うと止まった場所で刀にかなりの力がかかり、石はそこからわれ刀は半分に折れてしまった。
ダンは焦ったがすぐに発動する前の事を思い出し折れた刀から手を離し、すぐさま魔法を解除した。
刀は元の形に戻りほっとしたのと休む間もなく解除してしまったのでそれまでの疲れが一気に襲いダンはその場で眠ってしまった。
翌朝ー
ダンは皆より早く目覚めると誰かが掛けてくれたであろう毛布をめくり刀を腰に下げ、一人森の中へ散歩しに行った。
朝日が木々の間から差し込む中、奥から来た一匹の魔物と鉢合わせた。ビッグラット
昨日よりも二回り程大きなビッグラットで、ダンの背丈程もあった。
ダンはすぐさま刀を抜き、構えた。
猛スピードで体当たりしてくる魔物をギリギリで躱すと昨日の反省を生かし、すぐに魔物よりも広く、動ける範囲を取りつつ魔法を発動した。
そして魔物の横に立ち、刀を円を描くように魔物の首目掛けて振り下ろした。
見事に綺麗に斬れた所をみるとダンは思わず
「よし!」
という声が出た。
それが聞こえたのかスズがダンの元へとやってきた。
スズ「もう起きてたのね。あら、ダンが倒したの?」
ダン「うわぁっ!何だスズか」
近くまで来ていたのに気づいていなかったダンは突然声をかけられ驚いてしまった。
ダン「そうだよ。誰も起きてなかったし、散歩に来てみたら丁度出くわしちゃって、この刀も試してみたかったから戦ってみたんだ。
結果は見ての通りだよ」
スズ「ふぅん、結構綺麗に切れてるのね。所でこの魔物の死骸はどうするつもりだったの?
ほっとくとこの森に悪影響を及ぼすのだけれど」
ダン「えっそうなの!?そこまでは考えて無かった...」
スズ「しょうがないわね」
そう言うとスズは魔法で魔物に火を灯し、燃やして灰にしてくれた。
スズ「はいこれ、この魔物から取れた魔石よ」
灰になった魔物から拾い上げ、ダンに渡した。
ダン「これが魔石っていうものなんだ。結構綺麗なんだね」
透明な赤色のガラスのような石がキラキラと光っていた。
それをポケットにしまうとダンとスズは馬車へと帰って行った。
暫くすると皆起きてきて、すぐ出発となった。
そして半日くらい馬車に揺れられていると大きな街が見えてきた。
ディグリー「おいお前ら、王都が見えてきたぞ」
トーヤ「本当だ!」
スズ「ようやくなのね」
ジュディ「おっきいー」
ダン「あそこに俺たちが通う学校が...」
レオン「皆で合格しようね」
ルルカ「大丈夫だよきっと」
と、皆が王都について口々に述べている時、右奥の方から地鳴りがした。
ダン(現在八歳)の身長は約120cm