第二話 旅立ち
翌朝、六人は全員でディグリーに報告に行ったー
レオン「ディグリーさん、昨日皆で話し合った結果六人全員で行くことになったよ」
ディグリー「そうか六人全員で...六人!?まぁ、大丈夫か!」
少し引っかかっていた様子のディグリーだが問題は無いようだ。
ディグリー「そうと決まれば早速今日の昼には行くか!ちゃんと親には言っとけよ」
トーヤ「え、今日の昼!?」
ディグリー「そうだ。実はそんなに時間が無いから今日中には答えを出してもらおうと思ってたんだ。いやぁ決まってて本当に良かった。じゃあ俺は馬車やらなんやらに話をつけて来るから」
そう言うとディグリーは遅れんなよと言いながら走り出した。
皆があっけにとられている中トーヤが
「何か勢いで決まっちまったが結局は行くんだ。取り合えずさっさと準備しちまおうぜ」
と言い、皆は正気に戻った。
そして挨拶も準備も済ませ村の入り口の集まった。
ディグリー「おう来たかお前ら。適当に荷物乗せてさっさと乗りな」
と言われ六人とディグリーは馬車に乗り込み村の皆に見送られながら王都へと出発した。
その日は何事も無く順調に進み、日が沈むまで進んだ。
辺りが暗くなってからは前も見えず危ないので野営をする事にした。
ジュディ「急過ぎて深く考えれて無かったけど私たち本当に村を出たのね」
ディグリー「考え込んで出発を先延ばしにするよりさっさと出発しちまって良かっただろ」
と言い、ガハハと笑った。
スズ「トーヤ君も言ってたけど最終的には行くことになってたでしょうし時間の無駄にならなくて良かったのかもしれないわね」
レオン「そういえばディグリーさん、ちょっと気になっている事があるんですが」
ディグリー「どうした?」
レオン「お金の問題ってどうやって解決するんですか?」
トーヤ「確かにすっかり忘れてた」
ディグリー「あぁそれなら今のお前らなら問題無いと思うが、俺の考えてる作戦はこうだ。
一つは学校に入るには試験をクリアしなきゃならない。それを良い成績でクリアするとトップの数人が学校側が金を出してくれる制度がある。生活費も含めてな。
二つ目はまぁ簡単に言えば自分で稼ぐって感じだな」
ダン「ちなみにその試験の内容は...?」
ディグリー「確か一体一で勝負をして試験官が実力を見て判断するらしい」
トーヤ「え、戦うのか!?」
ディグリー「安心しろ。俺がお前らを指導してるんだ。そしてそこの嬢ちゃん二人は俺が見込んだこいつらの友達だろ?なら問題ねぇよ」
ジュディ「何それ凄く不安になって来たんですけど...」
スズ「大丈夫よ。二人とも凄く魔法の練習頑張ってたもの。何だったらそこの男三人衆より強いまであるわ」
ルルカ「それならルルカ安心」
トーヤ「おいこら!どういう意味だ!」
このやり取りで笑いが起こり、緊張感もだいぶ緩和された。
ダン「そういえば話はちょっと戻るんだけどよ、自分で稼ぐってどうやって稼ぐんだ?」
ディグリー「一番現実的なのは冒険者ギルドに行ってそこで依頼をこなすって感じかな」
ルルカ「依頼ってどんなの?」
ディグリー「簡単なので言えば採集クエスト、難しいが沢山稼ぎたい場合は魔物の討伐かな」
ジュディ「魔物って何?動物とは違うんですの?」
ディグリー「まぁ大きく分けて三つだな。
一つは動物には無い核となる石が魔物にはある。
二つ目は動物は母から生まれるが魔物は魔素と呼ばれる空気中を漂う物質が濃い所から生まれる。
三つ目は魔物は何故か人を見つけると必ず襲ってくる」
レオン「その魔物って僕達でも倒せるんですか?」
ディグリー「ランクにもよるが低級のモンスターなら束になってもお前らには勝てねぇよ。束っつっても十体くらいが限界だろうがな。
明日にでも試してみるといい。だいぶ村からも離れたし魔物よけももう少し進んだら届かなくなるだろ。
って事で明日からは気、引き締めてけよ」
と言うと話は終わり、翌日に備え皆早々と寝た。
次の日ー
野営地点から出発し、何事もなく馬車に揺られる時間が続いていると、突然空気が変わった。
ディグリー「おいお前ら、魔物のお出ましだぞ」
そこには大型犬程の大きさの巨大なネズミが六匹現れた。
ディグリー「ビッグラットの小さいヤツが六匹か丁度いい、一人一匹づつ倒して見せろ。
いつもの訓練に比べたら楽勝だぞ」
レオンは腰に刺していた剣でネズミを一刀両断して見せた。
トーヤは村から出る時に背中に装備してきた槍を取り出し、魔物の手足だけを器用に傷つけ、動きが鈍った所で上に飛び乗り心臓部に向かって槍を一突きだった。
ジュディはいつの間にか使えるようになっていた魔法、赤魔法ー火球ーで魔物を燃やして倒した。
ルルカはジュディ同様一緒に覚えたであろう魔法、青魔法ー水球ーで魔物を包み込み、溺れさせて倒した。
スズはいつの日か見せてもらった姿を消す魔法、黒魔法ー影隠ーで魔物の懐まで潜り込み心臓部を持っていた短剣で一突き。
その頃ダンと言えば立ち尽くしていた。これといった武器も無く、ジュディ、ルルカ、スズのように魔法が使える訳でも無い。
訓練ではレオンとトーヤの真似して木刀と長い棒を使って二人と同じ動きが出来るまで練習をしていたが、戦う姿を見て同じ動きは出来ても威力や器用さが段違いだった。
唯一使える時を止める能力も生物相手には無力だった。
そしてどうすればと考え込んでいるとダンの体に鈍い音が響いた。
魔物に勢い良く体当たりされ、ダンは吹き飛び、後ろにあった木に叩きつけられた。
この時ようやくどうすれば倒せるか思いついた。
まずは時を止め、心を落ち着けた。痛みはあるが何とか動く体に鞭を打ってあるものを作った。
周辺に落ちていた太く長い木の棒をポケットに入れていた小さなナイフで鋭く削った物だ。
それが出来るとそれを手に持ったまま一度魔法を解除し、今度はいつもより魔力を多めに込めてもう一度発動した。
精度はまだまだ粗末なものだが今度は倒れずに済んだようだ。
解除しても元の場所に戻らないよう範囲を広げると魔物の後ろまで歩き、木の棒を振り上げた。
そして振り下ろすと同時に魔法を解除し、魔物を串刺しにした。
そしてようやく倒してダンはほっとしたのかその場に倒れたこんだ。
目を覚ますとダンは馬車に寝かされていた。
ダン「あれ、ここは?」
スズ「あら、起きたのね」
レオン「ダン!良かった...無事だったんだね」
トーヤ「何やってんだよ。心配させやがって」
ジュディ「勝手に死ぬなんて許さないんだからね」
ルルカ「痛くない?」
ダン「ごめん皆心配させて、考え無しに突っ込んでしまった。それはともかく言われてみれば全く痛くない...何で?」
ルルカ「さっきディグリーさんがポーションって言う水を飲ませてたの」
ダン「凄い、痛くないどころか傷一つ無いや」
ディグリー「坊主、起きたか。すまなかったな俺はどこか舞い上がっちまってたみたいだ。良く考えればお前らはまだまだこどもなのに...」
ダン「ディグリーさんのせいじゃ無いよ。俺、考えたらまともに戦うような武器持って無かったんだ。訓練だと木刀か槍に見立てた棒を持ってたけど、俺二人みたいに上手く扱えないから...」
ディグリー「いやいや、坊主は上手に扱えてると思うぜ。ありゃ比べる相手が悪い。そもそもの才能から話が違ぇ。まぁ、どうしても気になるってんなら他の武器にして見りゃどうだ。例えば俺様の鞄にいい物があるから後でみせてやるよ」
そう言うと馬車はスピードを上げ、日が暮れるまで走り続けた。
馬車の御者はディグリー
ビックラットは大きくなると成人男性より大きくなる