#005 真実
まぁ、怪我をしないようにゴム弾で迎えたから、大怪我ではなく骨折位のダメージだろうけど。念のために脅しておくか、今後――年上だからって年下を見下すようなことを止めさせるために。
「警告する、今後。僕のような年下を脅して低ランク狩りをするのならば、次に出会った時はゴム弾ではなく実弾を撃ち込むぞ」
「「ヒ、ヒイィィィ!」」
コルト・パイソン(2・5インチモデル)の銃口を下半身に向けて撃つ真似をすると、立ち上がって俺を恐怖の眼で見据えていた2人が口から泡を吹いて地面に倒れた。
「あーぁ・・・、気絶したか。 まぁ、想定内だけどさ」
踵を返してギルドに戻ろうとした時、数人の受付嬢と共に何人かの少女たちの後ろにエフォート・リスタが走って来るのが見えた。
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「――はぁ・・・、はぁ・・・。え、嘘でしょ⁈」
「ど、どうしたの・・・?」
「こ、これは・・・、一体・・・?」
彼女達の目の前には地面に泡を吹いて倒れている少年2人の光景と、少し残念そうな表情をしたアルトリア・ラーミスの姿があった。
「アルトリア、この状況は一体⁉」
「ん? ああ、喧嘩を売られたから買ってあげたのに・・・相手が気絶した、ただそれだけだよ」
平然と言っているアルトリアの両手を「ふーん」と言いながら盗み見たエフォートは、何かを持っていた跡がくっきりと残っている事に気が付いたが「――まさか、心配したとかじゃないよね?」と聞いて来たアルトリアの声に驚いて「ふぇ・・・⁉」と変な声色の返事を返した。
「う、うん」
「そうだよね、心配して来たわけじゃないよねー。(棒)」
なぜか棒読みのアルトリアの声を右から左に流し聞きしてしまった時、エフォートは背筋が冷えるような気配を感じたので右隣に目を向けた。
しかし、右隣に居たアルトリアが居なくなっていたので恐る恐る背後を見た。
「ねぇ・・・、今。僕の手に残った跡を見て考え事をしていたよね?」
「あ――アル、トリア・・・?」
「なぁ・・・、キミは僕の敵?味方? どっちかなぁ?」
「て、敵と言ったら?」
「天国に送ってあげるよ、今すぐ回転式拳銃《この手》で」
「・・・ゴクッ・・・‼」
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冷酷な目をしたアルトリアの声色は暗殺業をして来たかのような声色だったので、エフォートは背筋が凍るような感覚に見舞われた。そして、観念したかのように「な、なんで・・・分かったの?」と聞き始めた。
「僕の直感だよ、それに。 お尋ね者は、誰かに変装するために変装する相手を殺して皮を剝いでその皮を被るって僕が読んだ本に書いてあったからさ」
「ふ・・・、お見事――だな。小僧」
同い年のような声色が突然、大人の女性の声色に変わった。そして、「小僧、お前はこの世界の住人では無いな? 渡り人か?」と少女の皮を脱ぎ捨てたソレは、次の瞬間――背中から黒い羽根をはやして爪をとがらせて笑いかけた。
「いいや、俺は転生者だ。 それに、前世では暗殺をしていたのさ」
「ふははは! 面白い冗談話だ、キサマが掃除屋だと・・・?」
空中に飛びあがったソイツは、「私は魔王軍四天王淫夢のレズベリー、小僧の名前は?」と笑いながら聞いて来たので「俺はアルトリア・ラーミス、児童冒険団ではジャッカルと名乗っている。お前の中に眠っている少女の魂を今から解放する者だ」と告げた。