表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第3話 お坊っちゃん

 × × ×


 クラゲは晴れの日、朝ごはんを食べてから軒先で眠り、昼ごはんを食べてから軒先で眠り、夜ご飯を食べてから軒先で眠る生活を送っている。雨の日は、リビングのソファの上だ。


「……にゃう」


 今日も名を体で表すと言わんばかりに、まるで海に浮いているかのようにフワフワと眠っていた。しかし、そんな昼下がりのこと。鼻先に違和感を覚えて起き上がると、頭を振ってあたりをキョロキョロと見渡した。


「あれ、ご主人。そんなところでどうしたの?」


 訊くと、主人は庭で干していた鯵を指さして網の上でひっくり返した。ところで、クラゲの鼻の違和感はてんとう虫が止まったからであったらしい。未だ、上向きについている鼻には赤い点があった。


「おいしそうだね、僕これ好き」


 裸足のままテクテクと歩いて、腰の後ろに自分の体を押し付けたまま主人の作業を眺めた。

 この干物は、ネコ人たちのおやつだ。作って置いておくことで、先日のような緊急時の大合唱を食い止めることができる。


 今回の魚は、7月に旬を迎える千葉の金谷港で捕れるマアジ。つまり、回遊せずに同じ海域に生息しキラキラと体を輝かせることで黄金鯵と呼ばれている絶品魚だ。

 当然クラゲはなんの魚を干しているのかまでは分かっていない。彼の言う『これ』とは、魚を干したモノの事を指している。


「え?それホント?」


 今晩のご飯に柔らかく脂ののったその刺し身が出ることを主人から聞いて、クラゲは丸い尻尾をピョコピョコと動かして笑った。


「ご主人は何でも出来るね」

「小説を書く為に調べたんだよ」

「ふぅん。あ、僕も手伝うよ」

「じゃあ、見張りをお願いね」

「にゃす」


 そして、主人は先に捌いておいた鯵の刺し身をこっそりクラゲにあげると、自分の部屋へ戻っていった。


「おいひぃ」


 それから、クラゲは静かに見守る鯵の干物の番人となった。その間に一度だけ、トイレのために部屋を出た主人はクラゲの姿をこっそり覗いてみたのだが。


「食べちゃダメだよ」


 呟き、カラスにおやつの半身をお裾分けして、ネコ人一人とカラス一羽で風に揺れる青いかごを夜になるまで眺めていた。クラゲが一睡もせずに午後を過ごしたのは、今年に入ってから初めての事だった。

よかったら、こちらもどうぞ


アオハル・オブ・ザ・サイコパス

https://ncode.syosetu.com/n8436ha/



「面白かった」か「ゴミ」と思った方は、

下の☆☆☆☆☆から、評価をお願いします。

実は、そういうのしてもらうとめちゃくちゃ嬉しいです。

よければブックマークして続きを待っていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 平和なところが好き。 何か、こう、ほんわかしててね。 こういう話もいつか書きたいなあ……無理そうだけど。 [一言] ↪︎ 「小説を書く為に調べたんだよ」 (ToT)←それでクトゥルフにハ…
[一言] 本来ネコは魚を取って食べる生き物ではないはずなんだけれど(泳がないから)、新鮮な刺身とかは食べるよねえ。サザエさんだと焼き魚を盗んで行ったりするけれど、本物のネコは焼き魚とか干物とか食べるの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ