お菓子の家
私は魔女。ヘンゼルとグレーテルに出てくる魔女。
アホな御子様を騙すために、業者に頼んでお菓子の家を作ってもらった。耐震強度とか非常に難しく、莫大なコストも掛かってしまったが、とにかく無事に完成した。
出来るなり大量の虫が、お菓子の家に群がろうとしてきたので年甲斐もなく「キャアアアア!!」と悲鳴を上げてしまったが、結界を張ってなんとかお菓子の家を守ることが出来た。
あとはアホな御子様を待つばかり、お菓子は長持ちする素材を使い、有名パティシェに土下座で頼み込んで作ってもらった一級品ばかり、正直、御子様に食べさせるのは勿体無いぐらいである。
さぁ、早く来い。
~一ヶ月後~
・・・何故来ない。そろそろ賞味期限が切れちゃうぞ、お菓子の家。消費期限は、まだ大丈夫だけど、出来ることなら美味しいお菓子を食べて頂きたい。改心の出来なんだから。
"ザッザッ"
おっ、来たんじゃないコレ。窓から外をチラ見すると幼い男子と女子の二人の御子様の姿が見えた。
「ヒッヒッヒッ♪」
思わず魔女っぽい笑いをしてしまった。さて、勝手口から出て、草むらに隠れて様子を伺いますかね。
「うわぁ、お菓子の家だ。美味しそうだなぁ。」
男の子が嬉しそうに笑い、今にもお菓子の家にかぶり付きそうな勢い。よしよし♪食べておしまい♪そんで太らせてから私が食うという流れよ♪ヒッヒッ♪
「えぇ、お兄ちゃん食べるつもり?・・・私はパス。」
えっ?どうした女の子の方。食べなさいよ!!
「どうしてだいグレーテル?」
「だって怪しいし、地べたに直に置かれてるのよ。衛生上良くないでしょうよ。それにこの御時世だし。」
ガキの癖に生意気な。お菓子の家とコロナは全く関係ないでしょうに、ガキは素直にお菓子食ってろ!!
「ヘンゼルの言うことも最もだな・・・よし、僕も食べるのやめよう。」
やめんなや!!妹の言われたことを鵜呑みにするとか、お前には自主性というものが無いのかよ!!
「ねっ、ヘンゼル兄さん。それよりも早く家に帰りましょうよ。もう日が暮れちゃうわ。」
「そうだねグレーテル。」
おいおい、そりゃ無いぜ!!
「待ちなさいよアンタ達!!」
私は思わず草むらから飛び出すと、ヘンゼルの方が体をビクッとさせて驚いた。
「うわっ!!誰ですか!?」
「ヘンゼル兄さん、どうせこの森に住む魔女か何かよ。」
けっ、名乗る前に正体を言いやがって、本当に可愛げの無いガキだこと。
「ようよう、どうしてお菓子食べないのよ。美味しいから食べなさいよ。」
「いやよ、不潔だもの。」
「不潔じゃねぇって!!安心安全だから!!食品衛生法的にも大丈夫だよ!!」
「本当かしら~?」
くぅ~生意気なガキめ!!
「食べても良いけど、条件があるわ。家に帰るまでの道を教えて、魔女なんだからそれぐらい出来るでしょ。」
「そんぐらい朝飯前だ!!それっ!!」
私は森の木々に魔法でかがり火を付けて、兄妹の家までの道標を作ってやった。
「うわぁ、スゴーい。」
「やるじゃん、見直したわ。」
妹の方はマジで上から目線でムカつくわ。
「約束だからな早く食え!!」
流石にこうなると兄妹もお菓子の家をパクパクと食べ始めた。
「うわぁ、美味しいや♪」
「うん、悪くないわね。」
妹の美味○んぼみたいなリアクションが鼻に付くけど、まぁ誉めてくれてる様だから良しとするか。
「じゃ、魔女さん、美味しいお菓子ありがとうございました。」
「じゃあね。」
「はいはい、帰り道気を付けるんだよ。」
こうして兄妹は足早にお菓子の家を後にして行った。子供だからあまり量は食べていかなかったけど、目的は達成できたわね。めでたし、めでたし♪
・・・あれ?




