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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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地龍の里へ

 ガタゴトガタゴト……

 俺達の馬車の旅は続く……。

 「って言うか、飽きて来たなぁ。」

 「にぃには、空を飛ぶ魔法とか使えないんすか?」

 飽きたという俺に、隣に座っていたリィズがそんな事を聞いてくる。

 「空飛ぶ魔法かぁ……術式は分かるけど……面倒なんだよなぁ。」


 『空を飛ぶ』それはロマンだ。

 俺は魔法を使えると知った時、まずはそのロマンを追い求めたよ。

 だけど、ただ浮くだけならともかく、空中で動こうとすると、凄く複雑な術式の呪文を唱え続ける必要があって、とてもじゃないが、悠々とというわけにはいかなかった。

 俺の場合、イメージによってある程度魔法を制御できるのだが、当然の如く「空を飛ぶイメージ」なんてものはなく役に立たない。


 「で、俺が退屈なのと、空飛ぶ魔法に何の関係があるんだ?」

 「んー、にぃにだけ空飛んで目的地に行って、転移陣で私達を迎えに来れば暇しなくて済むっすよ?」

 「その間、お前たちは何してるんだ?」

 「この間の竜人の村で大人しく待ってるっすよ。ソラをプロデュースして、スイちゃんの座を奪うのも面白そうっす。」

 「イヤだよ!」

 リィズに悪だくみを聞いて、即座に否定するソラ。

 「ボク、おにぃちゃんと離れたくないよ。」

 そう言って、俺の膝の上に乗っているソラが見上げてくる。

 「とりあえずリィズの案は却下だから安心しな。」

 俺はソラの頭を撫でてやる。

 ソラは嬉しそうに「うん」と頷いて目を細めていた。


 「じゃぁ、話を聞かせて欲しいっすよ。結局ソラの状況ってどうなんすか?他への影響とかはないんすか?」

 「一言でいえば「問題ない」で済むんだが……色々と解説すると長くなるぞ?」

 「いいっすよ。ドヤ顔で語るにぃにを見てるの好きっすから。」

 俺の言葉に、リィズがそんな風に応える……って、俺ドヤ顔してるのか?


 「それなら、後ろでお茶しながら私達にも聞かせてよ。」

 俺達の会話を聞いていたらしいカナミが、後ろから声をかけてくる。

 「タロウたちに任せておけば迷うこともないし、それに、話が長くなるとソラちゃん寝ちゃうからね。」

 まぁ、確かにこの馬車に御者はいらない。

 引いているタイガーウルフ達はカナミの指示により自己判断で動いてくれるからだ。

 怪しいものがあったり、危険なものが近づいたりしたときはすぐに知らせてくれるので見張りも必要ない。


 じゃぁ、なぜ御者台に座っているかと言えば、……色々ある。

 まず、俺がいないほうがガールズトークに花が咲くだろう。

 また、外で風を受けている方が気分がいいと理由もある。

 それに、何より一番重要なのが、御者台に座っていないと危ないという事だ。

 人もいない馬車が勝手に走っているのを見れば、はぐれた馬車だと思って、盗賊たちがこぞってやって来るだろう。

 まぁ、馬じゃなく狼が引いてるのを見ても襲ってくるかどうかは疑問だが。


 ちなみに、隠れ里を出た時に馬車を引いていた地龍達はすでにいない。

 「飽きた」「満足した」と言って帰っていったのだ。

 流石は気まぐれな龍族である。

 まぁ、カナミの「コール」で呼べばすぐ来るんだけどね。


 「じゃぁ、ティータイムと洒落込むか。」

 俺は、リィズとソラとともに、後ろの馬車の中へ移動する。

 馬車の中はすでにサロン風に模様替えされていた。

 どう見ても、馬車の大きさより室内の方が広く見えるのだが、これは空間を弄っているためだ。

 この方法により、今のサロンから、食事の時はダイニング風、寝るときは寝室と自在に変更が出来る。

 空間が切り離されているので、振動とかも気にならない。


 ちなみに、空間操作を含め、馬車の内装は全てカナミがやっている。

 カナミは、多岐にわたり様々な魔法を行使できる。

 女神の力を借りる「神聖魔法」はもちろんの事、根源の魔法(ルーン)や、龍族だけに伝わるという幻の龍魔法(ドラゴン・ルーン)さえも使いこなす。

 女神との親和性の関係で精霊が寄ってこないため、精霊魔法を使うことはないが、実はファリスやエアリーゼの力を借りて精霊魔法を使うこともできる、魔法のオールラウンダーだ。


 だから、空間魔法は少しコツを教えてやったらあっという間に覚えてしまい、今では俺よりうまく使いこなしている。

 流石に魔力量の関係で、空間の大きさとか収納量などは俺には及ばないが、その分効率とか、事細かな部分を極めていて、俺では思いつかないような使い方をすることもある。

 魔王城の共有空間に、まとめて何でも詰め込んでいた「共有バック」を改良して、各個人スペースと共有部分の使い分けをしたり、バックの入り口を指輪など別の所にもリンクできるようにしたのは全てカナミだったりする。


 「ミントとカモミールのハーブティですよ。」

 そう言って、俺にお茶を出してくれるミリィ。

 カナミが「ティータイム」という習慣を持ち込んでから、ミリィがお茶の種類を研鑽するようになった。

 もとからあるお茶の種類はもとより、カナミから、俺達の世界にあったお茶の種類などを聞いてそれを再現しようとしたり……。

 流石にコーヒーまではまだ無理なようだけど……今度カミラに会ったら聞いてみよう。

 

 「美味しいよ、ミリィ。」

 ミントの香りが実に爽やかだ。 

 落ち着いたら、どっかの街の片隅でカフェをやるというのもいいな。

 俺はUSOでカフェをやってた時の事を思い出す。

 カナミも同じ事を思ったのか「今度カフェやりたいね。」と言ってくる。


 「さて、ソラの状況を含む変革の事だったか?」

 俺にお茶のおかわりを持ってきたミリィが座るのを見て話しだす。

 「ファルスの話からも、ソラが変革前の状態に戻ったとみて間違いがなく、これに関して大きな問題は起きないよ。ちょっとミィルの苦労が増えるだけだろう。」

 俺がそう言うと、カナミがミィルの事を思い出したのか、くすくすと笑う。


 「どうしてそうなるかが、よくわからないっすよ。」

 リィズがそう言うが……俺自身正確に理解しているわけじゃないし、結構長く小難しい話になるんだよなぁ……まぁ、元々暇つぶしから始まった事だし、いいか。


 「この間も少し話したと思うけど、俺達の行動で未来が分岐して世界が変わるという事は理解しているか?」

 「なんとなくっすが……今の世界は「ポメラ獣人国を建国しない事を選んだ」世界なんすよね?」

 「まぁ、そう言う事だな。選択肢の数だけ未来があり、人の数だけその世界は広がる……収拾がつかなくなると思わないか?」

 「思うっす……と言うより、今の時点でもうダメっす。」

 リィズが混乱し始めた……ま、そうだろうな。


 「だから、世界の修復作用として「根幹となる未来」と言うのが用意されているんだ。これは、世界中の人々がどのような選択をしたとしても、最終的に行きつく未来なんだよ。……簡単に言えば、俺がハーブティを頼んだ場合とミラ茶を頼んだ場合の行動があったとして、お茶を入れる過程の違いがあっても最終的には「俺がお茶を飲み、美味しいとミリィに言う」という世界に繋がるって事だ。」


 わかるか?とリィズに聞く。

 「んー、最終的な結果が決まっているから、その途中は変化があっても問題ないって事っすか?」

 「まぁ、概ね間違ってはいないから、この認識でいいかな?だから、ソラが、俺達と一緒に居てもいなくても最終的には大きな問題はないって事だ。

 だからソラの状況が変わっても、態勢に影響はない。

 ただ、その途中の変化によって最終的な結果が変わるのはマズいって事は分かるかな?」

 「わかるっす。」

 「問題が起こるとすれば、ソラが戻ったことが原因で大きな変化が起きた場合だけど、そんな要因はないし、そもそもそうならないように調整しているのが運命の女神ミィルなんだから、がんばってもらうしかない。

 まぁ、いつも邪魔をするイレギュラーな魂、それが俺って事らしいから、俺が絡む案件は油断できないらしいけどな。」

 「ミィルが嘆いていたもんね。」

 カナミがクスクスと笑う。


 「推測になるけど、この世界が安定して存続することが最終的な結果とした場合、現状ではうまくいかない方に進んでいた。

 現魔王以外にも力をつけた魔王種の誕生が重なり、また勇者がアホ・・・・・・じゃなくてバカ・・・・・・でもなくて弱っちいので、魔王どころかその辺のオークでも相手にならないレベル……つまり魔王種の異常発生と勇者の弱体化だな。

 それで世界の修復作用により、現状を打開する勇魔システムが稼働。異世界より勇者たる魂が召喚されたのだけど……それが俺だったことにミィルは不安を感じたんだろうな。余計な事をしないように転生の瞬間の記憶にブロックをかけたんだよ。

 だから、ミィルに会うまで俺はミィルの事を知らなかったけど……結局無駄だったわけだ。

 この世界に来て、世界の不条理と自分の力のなさを嘆いた俺は、必死に自分を鍛え上げる。

 そしてミリィと出会い、ミリィを含む世界を守ると決めた俺は、その街に立ち寄った勇者に力を貸して、魔王を討伐する……たぶん、こんなストーリーを描いていたんじゃないかな?」


 「あの勇者様に、レイさんが力を貸すんですか?」

 ミリィが呆れたように言う。

 「無いわー。あそこまで……って言うのはミィルも想定外だったんじゃないの?」

 ミリィの言葉にカナミも頷く。


 「結局、俺達は勇者を無視して独自に動く事になり……その結果はいい方向に転がったみたいだ。」

 「そうなんすか?」

 「あぁ、ほら、途中から魔人の事聞かなくなっただろ?」

 「そう言えば、そんなのいたっすねぇ……。」

 「今どうしてるか分からないけど、俺がこの世界に来なかった、もしくはあの町から動かなかったなら、世界は魔人の暗躍によって、より混乱していたかもしれないな。それがないって事は、この点に関しては問題を潰したって事でいいんだろう。

 その後の筋書きについては、そのまま俺がアルガード王国に力を貸して、魔王と戦う。その理由付けとしてカナミの存在がある。……たぶんそう言うこじつけで、カナミの転生が許されたんじゃないかな?」


 「え、って事は私センパイに会えなかった可能性があったってこと?」

 「まぁ、元々世界にとってはカナミが転生する意味も理由もなかったわけだしな……俺達の行動から、ミィルたちがうまく理由をつけてくれたとみるのが正しいと思う。」

 「そっか……色々あったけど、やっぱりみんなは優しいんだね。」

 「まぁ、その後グチャグチャになったのを何とかしようとしたのに、カナミに邪魔されたんだけどな。」

 俺はからかう様にカナミに言う。


 「それは!……仕方がないじゃない……ミリィもリィズもセンパイと会えない世界なんてイヤだと思うし、私も折角できた友達を失いたくないし……。」

 「わかってるっすよ。」

 「カナミ……。」

 俺の言葉に、しょんぼりとするカナミをリィズとミリィが抱きしめてあやす。

 ちょっとからかい過ぎたか。


 「ま、とにかくだ、せっかくそんな筋書きを作ったんだけど、王都に行くのをやめて獣人の隠れ里に行った結果、世界の方向がねじ曲がり、ポメラ獣人国建国という世界が出来てしまったわけだ。

 更にその流れで、本来接触するはずのなかった魔族に……果てには魔王にまで俺が接触することになったため、未来の存在が不確定になってしまったんだ。

 このままではどんな未来に行きつくか分からない。だから原因となった俺を排除……正確には未来が確定した世界に定着させようとした。

 ミィルが指し示した世界は、どこも強固に未来が確定しているため、俺がちょっと動いたぐらいでは変動しないところばかりだったからな。

 まぁ、結局その目論見に失敗したうえ、事象を捻じ曲げようとした反動で元より余計おかしくなってしまったのは……自業自得だな。」


 「今までの事はすべてにぃにが悪いってことは、なんとなくわかったっすけど、これからはどうなるっす?魔王になるって言ってたっすけど、問題ないっすか?」

 リィズが少し心配そうに聞いてくる。

 「俺のせいか?……まぁいい……問題についてはわからんとしか言いようがないかな。魔王を目指すのが結果として良くなるのか、何もせず大人しくしているのがいいのか……。

 ただ、今の流れでは、近い内に人族と魔族の争いが起きて、その混乱に乗じて、各地の魔王種が動き出す……魔族の内乱だな。

 それに対し人族がどう動くか分からないけど、何もしなかったら、結局は魔族と人族の大戦に巻き込まれていくのは避けられないだろうな。 

 それらを踏まえた上で、何もせずただ傍観してるだけか、勇者として人族をまとめ上げ、魔王を含めた魔王種総てを滅ぼして後処理を王家に丸投げするか、魔王と交渉し魔族と人族の間にたつか……って選択肢の中で、魔王として魔族に認めさせ、その上で人族との間に均衡を保つ……のがいいと考えたんだけどなぁ。」

 人族として人族を纏めて魔族と交渉するより、人族として魔族を纏めて人族と交渉する方が、話を聞いてもらいやすいと考えたんだけど……。

どう思う?と皆に聞いてみる。


 「まぁ、そう言う事ならいいんじゃないかなぁ?レイにぃらしいし。」

 「勇者になるって言わないところが、にぃにらしいっす。」

 「レイさんの決めたことに間違いありませんわ。どこまでもついて行きますから。」

 「………。」

 皆が口々に応えてくれる。

 反対意見は無い様だ……ソラは寝ていたが反対はしないだろう。


 「ソラちゃん、やっぱり寝ちゃったね。」

 カナミがソラのために、馬車内の空間を弄ってベッドをだす。

 「話が難しかったってこともあるけど、ソラがよく寝るのは、魂の変質が原因だろうな。」

 「どういう事?」

 「この世界に定着しかけていたソラの魂を無理矢理以前の世界の状況に戻した反動……らしい。魂を保護してゆっくりとこの世界に馴染ませるために、しばらくの間、平時はよく眠ることが多くなるそうだ。」


 何故そうなのか、俺自身よく分かっていないがグリムベイブルの検索結果ではそうでている。

 さっきの世界変質の話も、グリムベイブルによる知識の補完があって初めて分かったことだ。

 「まぁソラが寝てる間は平和って事だよ。」

 俺は強引にそうまとめる。


 「一応今後のことについて考えていることはあるけど、全ては魔王島のことが片付いてからかな。」

 「はーい・・・・・・っとそろそろ着くみたいよ?タロウが近くに村っぽいのがあるって言ってるわ。」

 話に丁度キリがついたところで、隠れ里が近いことを知らせてくれる。

 しかし、わかりづらくしてあるって事なのに、タイガーウルフ達には関係ないんかな?

 カナミに聞いてみると、隠れ里の周りには上位者の匂いが集まっているそうだ。

 その匂いの元をたどれば、おのずと場所が分かると言う。

 「成程ね、弱者を寄せ付けない為の強者の縄張り自体が場所を特定するってわけだな。」

 そんな話をしていると、俺の眼にも入口らしい場所が見えてきた。 

 よく目を凝らすと、一人の竜人が立っている……出迎えだろうか?


 「レイフォード様ですね。北の竜族からお話は伺っております。ここで立ち話もなんですので、どうぞ中へお入りください。」

 やはり出迎えだったみたいだ。

 俺達はその人について、里の中へ入っていった。

 里では住人たちが総出で迎えてくれているようだった。


 「あの……これは一体……。」

 「色々聞きたいと思いますが、まずは旅の疲れを癒してください。あちらに温泉がありますのでどうぞ。」

 俺達はそのまま温泉へと案内される。

 ……うーん、何か隠しているっぽいけど……。

 まぁ、いいか。とりあえず、温泉を堪能しよう。


 「ふぅ……やっぱり温泉はいいな。」

 「そうね。でも、竜人の里ってみんな温泉があるのかなぁ?」

 ……カナミが当たり前のように俺の横へ来る。

 「ん?どうしたの?」

 「イヤ……。」

 まぁ、今更か……。

 「あ、そう言う事か……ここは混浴なんだって。」

 俺の態度で察したのか、カナミがそう答えてくる。

 「……だけど、エッチなことはダメだゾ。」

 カナミの言葉に、おれば無言でお湯をかける事で答える。

 ……ったく。

 因みに、カナミは湯着を着ているので大事なところはしっかりとガードされている。


 「ミリィとリィズは?」

 「ん、ソラちゃんがまだ寝ているから、側についている。起きたら一緒に入るって。」

 「そうか。」 


 「それより、なんか変な感じじゃない?」

 カナミが小声で聞いてくる。

 密着しているのは、周りに声が漏れないようにするためだろう……そうに違いない。

 「やっぱり、カナもそう思うか?」

 「ウン、何か隠してる感じ……ミリィもリィズもそれは気づいているよ。」

 なるほど……別行動はソラのガードをする為か。 

 

 「まぁ、考えても答えが出ないからな。とりあえずは食事とかに気を付けておこう。」

 「そうね。場合によっては馬車の中で寝泊まりも考えたほうがいいかも?」

 俺達は、湯につかりつつ何かあった場合に対処法などを相談するのだった。


 「レイフォード様、ナミ様、歓迎の宴の用意が出来ておりますので、広場までお越しください。」

 温泉を出ると、案内してくれた人が待ち構えていて、そんな事を言う……なんか監視されているみたいだ。

 とりあえず案内に従って広場へと向かう。

 広場では多くの竜人たちが集まっていた。

 数多くの珍しい食べ物や飲み物、贅を凝らしたものから、シンプルなものまで多種多様に揃えられている。

 また、艶やかな装いや飾りなど、眼も楽しませてくれる……歓迎してくれているのは間違いないようだが……。

 

 「お連れの方のお姿が見えないようですが?」

 出迎えてくれた竜人……ガルムと名乗った。村の代表を務めているらしい……が心配そうに声をかけてくる。

 「あぁ、実はもう一人いてね。今馬車の中で眠っているんだ。放っておくわけにもいかないから悪いけど……。」

 「なんと、怪我でしょうか?それともお加減が……おい、あれを持って来い!」

 ガルムが近くの竜人に何やら指示を出す。

 「今『龍族の秘薬』をお持ちいたします。それを使えば、大抵の怪我や病気などはすぐに治りますぞ。」

 「いやいや、お気遣いなく。ただ単に寝てるだけなので。」

 大事になりそうな予感がしたので、慌てて止める。


 「それより、今回伺ったのは……。」

 「おっと、皆が馳走を前に待ちきれないようですので、宴を始めてもよいですか?」

 「あぁ、いいよ。」

 俺の言葉を遮られたが、ガルムに対してOKの返事を出す以外になかった。

 「皆の者!本日は遠方より参られた我らの大切なお客人、レイフォード殿とその御一行の歓迎の宴じゃ!竜人様に感謝を捧げ、大いに食べ、大いに飲み明かそうではないか!」

 おぉ――――――!

 ガルムの言葉に歓声が上がる。

 宴の始まりだ。


 俺達もしばらくは黙って、飲み食いをしていたが、肝心の話をしようとすると、お酒はどうか?食事はどうかと、明らかに話を逸らそうとしてくる。

 「いい加減にしろ!俺はただ、地龍について話を聞きたいだけだ!話す気がないのならここに用はない!」

 ……キレてもいいよな?

 俺がそう怒鳴ると……。

 「「「「スイマセンでした!」」」」

 その場にいた竜人たちが一斉にひれ伏した……どうなってるの?


 「レイフォード殿、大変申し訳ない、どうかお気を沈めてくだされ。」

 ガルムが代表してそんな事を言ってくる……が俺の怒りが収まるわけがない。

 「どうでもいい!地龍について話すのか話さないのか!……それとも、何か企んでいるのか?」

 「企むなんてとんでもない!ただ、我々は……その……レイフォード殿に申し訳なくて……。」

 そう言って一通の書簡を差し出すガルム。


 「これは?」

 「この地に住まうガイアドラゴン様からの書簡でございます。先日届いたものです。」

 ガルムの話では、北の竜人達から俺達の目的が伝わり、それを知ったガイアドラゴンが、俺達が来たら伝える様にと残していったものだそうだ。

 その内容を見て、あまりにも申し訳なくなり、せめてものお詫びという事で急遽歓迎の宴の用意をした、とのことだった。


 「それほどの内容なのか?」

 「えぇ、本当に申し訳ないです。」

 「分かった、悪いけど向こうの馬車でみんなと一緒に目を通させてもらう。集まってくれた竜人の皆にはかえって悪い事をしたみたいだな。気にするな、と言っても難しいかもしれないが、しばらく宴を続けていてくれ。」 

 俺はそう言ってカナミと馬車へ移動する。


 「なんか、すごく落ち込んでいたね……どんなことが書いてあるんだろうね。」

 「さぁな……あれだけ申し訳ないっていうなら、会う気はない!とかじゃないか?」

 「えー、それじゃぁどうするの?」

 「まぁ、そこはみんなで考えようか。」

 

 俺達は、地龍のよこした書簡の中身と、この先の不安を抱えながら、書簡の封を開けた。

 

 


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