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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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龍の里 後編 -アイドル・スイちゃん-

 「あ、レイにぃここに居た。探したんだよ、もぅ。」

 カナミが言う。

 「どうしたんだ?」

 「長さんが、私達を紹介したいから来てくれって言ってましたよ。」

 「今日の宴会、私達の為に開いてくれるみたいねー。」

 ミリィとカナミがそれぞれ言ってくる。

 「それなら行かないといけないなぁ。」

 あんまり大げさなのは好きじゃないが、友好関係を結んでおくに越したことは無い。

 なんて言っても、バックに龍がついているんだからな。


 俺達は風龍と地龍の情報を求めて、この龍の隠れ里と呼ばれる竜人たちの村に滞在している。

 と言っても、数時間前に着いたばかりだが。

 ここでは変革前の存在に戻ったソラとも再会し、竜人たちは歓迎の意を示してくれて良い事尽くめでだった為、少し油断していた。

 世の中順風に行くことは無く、何処かで問題が発生するって事は嫌っというほど知っていたはずなのに。 


 宴会も始まり、それなりに食事が進んだところで、長に呼ばれる。

 「我らが同胞よ、楽しんでおるか!」

 長の呼びかけに対し、うぉぉぉぉー!と歓声が上がる。

 「今宵は皆に良き知らせがある!」

 そう言って長は俺に手招きをする。

 「今から紹介するのは人族の冒険者レイフォード殿である。」

 俺は長の紹介に応じ一歩前に出る。

 「俺は……。」

 「彼は、我々に素晴らしい知らせを持ってきてくれたのだ!」

 俺が挨拶をしようとするのを無視して、長がさらに話をする。

 あれ?俺の出番まだだった?


 「彼がもたらした情報、それは……なんと……。」

 ためるなぁ……。

 「我らがアイドル、スイレン様が復活なされたそうじゃ!」

 おぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーー

 今までにない歓声が上がる。

 ……スイレン様ぁー……

 スイちゃんの名前が飛び交う。

 アイドル?スイちゃんが?

 しかし、この異様な雰囲気を見れば納得するしかない。

 魔法だろうか?周りの空間にスイちゃんの姿が次々と映し出される。

 ……って、スイちゃんより大人っぽいぞ。別人じゃないか?


 「ちょ、ちょっと長殿、今映っているのはいるのは?」

 「ウム、スイレン様じゃ、美しかろう!」

 「いや、確かにそうですが、俺の知っているスイちゃんはもっと……。」

 「何、今のスイレン様の御姿を御存じなのか!見れぬのか?魔映機を持っていないのか!嘆かわしい!」

 ……なんか、変なところでガッカリされているぞ。

 俺が悪いのか?

 

 (見れるわよ、スイちゃん)

 そんな事を言い出したのはエアリーゼだった。

 「なに!妖精よ!それは本当か!」

 (本当よ、それにこんな姿をしているけど私は風の上位精霊よ!頭が高いわ!)

 「ハハッ、精霊様とはつゆ知らず、とんだご無礼を!」

 皆が一斉に頭を下げる……なんだ、この光景?

 (レイ!みたみた?これが本当の私なのよ!これが普通なの!アンタはちょっと調子に乗り過ぎなのよ!わかったら今度からおやつを4回にしなさいよね!)

 「イヤ……エアリーズだしなぁ。」

 (キィーッ!何よ何よ!アンタもそろそろ敬いなさいよ!)

 (アリゼ姉様、そろそろいい加減にしないとみんな困ってます。)

 ファーが止めに入ってくれなければ、ウザさのあまりハリセンで引っ叩くところだった。

 さすがに、この状況でそれは不味いだろうなぁ。


 (そうだった。レイ、アンタ、スイちゃんをここに呼んであげたら?)

 まぁ、ここと転移陣を繋げば呼べなくはないが……。

 (確かに、ずっと封印されてたから、心配かけてたと思うわね。)

 自分も封印されていた為か、そんな事を言うファー。

 そんな手間じゃないしな。 

 それに……と周りを見る。

 俺とエアリーゼの会話を固唾をのんで見守る竜人たち

 これで呼ばないなんて言おうものなら、暴動が起きそうだ。

 (なぁ、エアリーゼ、呼ぶのはいいが、本人なのか?)

 俺は周りに映し出されているスイちゃんの画像を見ながら、小声で聞いてみる。

 美人というよりは可愛いの要素が勝っていて、それが人を引き付ける魅力になっている。

 たしかに、この容姿ならアイドルと言っても過言ではない。


 ただ、映し出されている妙齢の女性は、確かにスイちゃんに似てはいるが……俺の知っているスイちゃんは可愛いのに間違いないが、もっと幼い容姿をしているのだ。

 これで別人だったら目も当てられない。

 (それは心配しなくていいわ。間違いなく本人だから。ただ子供の姿になったスイちゃんを見てどういう反応をするかは……楽しみね。)

 ケラケラと笑いながらそんな事を言う。

 まぁ、本人ならいいか。


 「じゃぁ、ちょっと聞いてくるから待っててくれ。」

 俺がそう言うと広場に大歓声が起こり、ざわめきが戻ってくる。

 一旦広場を離れ、誰も使用していない家屋を借りて転移陣を描く。

 「転移、魔王城!」

 魔王城に転移した俺は、ウラヌスと連絡を取りスイちゃんがどこにいるか聞いてみる。

 丁度海岸にいるというので、ビーチで落ち合う事にする。


 「スイちゃん、急にゴメン。」

 「よいのじゃ、しかし、どうしたのじゃ?」

 俺は竜人の村での事をスイちゃんに話す。

 「ウムぅ……困ったのぅ。」

 「何か問題でも?」

 困っているスイちゃんに訊ねてみる。

 俺で力になれるのなら何とかしてやりたい。


 「面倒。」

 「は?」

 聞き間違いだろうか?

 「面倒と言ったのじゃ!せっかくここでゆっくりとしておるのに、なんで今更戻らねばならんのじゃ!」

 うっ、スイちゃんの言いたいことは分かる……わかるが、あの状況で、スイちゃんが顔を出さないと……。

 (はぁ……仕方がないわね。メッセージを届けてあげるから、それで我慢してもらいましょ。)

 そう言って何やら魔力を流すファー。

 とりあえず任しておくか。


 見ていると、メッセージは終わったのか、今度は色々ポーズをとっている。

 アイドルの撮影会みたいだ。

 魔法で衣装もコロコロと変える徹底ぶり。

 ロケーションが海辺という事もあって、水着姿も披露している。

 大盤振る舞いだな。


 (ふぅ……我ながらいい仕事をしたわ。)

 やり切った感を出しているファー。

 こういう、一見どうでも良さそうな事に情熱を傾ける様は、エアリーズそっくりだ。

 流石は姉妹という事か。

 スイちゃんは疲れ果てたのか、海岸であられもない格好で寝転んでいる……アレがアイドル……?

 

 (アッと、落とさないうちに渡しておくね。)

 そう言って、俺の掌に、ポトリと一塊の魔結晶を渡してくる。

 これを特殊な魔道具にかければ記録した音声や映像を再生できるらしい。


 (さぁ、そろそろ戻らないとね。暴動が起きているかも?)

 「怖いこと言ううなよ。」

 ケラケラと笑うファーに釘を刺しておく。

 精霊とか女神の言葉には言霊が宿るんだから、物騒なことは言わないでほしい。

 しかし、俺達がここに来てから1時間が過ぎている。

 いい加減戻らないと冗談抜きで暴動が起きているかもしれない。

 俺は急いで竜人の村へ戻るのだった。


 「よし、暴動は起きていないな。」

 広場に戻った俺が真っ先に口にしたのはそれだった。

 「何バカなこと言ってるの?」

 聞きとがめたカナミが応えてくる。

 「いや、だって、あの騒ぎだったからなぁ。」

 そう言いながら広場の方を見ると、竜人が皆リィズに傅いている。


 「何だあれは?」

 「アハハ……エアリーゼが暴走してて……。」

 (いーい、精霊は偉いのよ!)

 『『『『『はい!精霊様は偉いです!』』』』』

 (そしてリィズちゃんは可愛いの!)

 『『『『『はい、リィズちゃんは可愛い!』』』』』

 「もうやめるっすー!」

 なんか、新しい宗教が派生しそうだった。


 みんなが一通り落ち着いたところで、俺は竜人たちに声をかける。

 「みんな聞いてくれ!楽しみにしていたと思うが、スイちゃんはここに来れない!」

 ……ザワザワザワ……

 ……なんでだ!……

 ……スイちゃん~~……

 ……ザワザワ……

 思ったとおり、広場全体がざわめきに包まれる。


 「しかし、ここにスイちゃんからのメッセージを預かってきた!」

 途端にシーンと静まり返る広場。

 みんなが俺の次の言葉を待っている。

 「これに、スイちゃんのメッセージが収めてある。会いに行けずに申し訳ないとい。これで我慢してくれと言っていたぞ!」

 うぉぉぉぉぉぉぉぉ………。

 俺の言葉が終わるや否や、広場全体に咆哮が響き渡る。

 本当に大丈夫だろうなぁ?


 俺は竜人の長に魔晶石を渡す。

 「おぉ、では早速……。」

 長が何やら怪しい機械に魔晶石をセットすると、広場全体にスイちゃんの姿が映し出されメッセージが流れ始める。


 『皆の者、息災か?我は無事……とは言えぬが元気じゃ。見ての通り長い封印の間に力を失ってしまい、今はそこにいるレイフォードの庇護の下で暮らしておるのじゃ。』

 スイちゃんの姿を見て、皆が一斉に黙り込む。

 まぁ、そうだろうなぁ。


 『このような幼き姿を晒すのはさすがに恥ずかしいのじゃ。』

 ポッと顔を赤らめるスイちゃん。

 ザワザワとどよめきが広がり始める。


 『また、レイフォードを助けるため力を注いでおる最中でここを離れられぬ理由もある。じゃから、今は我慢してほしいのじゃ。後、出来れば出良いので、そのレイフォードに力を貸してやってほしいのじゃ。』

 皆が一斉に俺の方を向く。

 ありがたいけど……助かるけど……。


 『レイフォードは我の恩人で大事な人じゃ。レイフォードの言葉は我の言葉と思ってくれてよいのじゃよ。』

 うぅ……みんなの視線が痛い……ちょっと殺意も交じってるぞ。


 『少しだけ、今の姿を残したので、よかったら見てくれると嬉しいのじゃ。』

 その言葉でメッセージは締めくくられ、続いてスイちゃんの映像が次々と映し出される。

 にっこりピースのスイちゃん。後ろ姿で振りかえるスイちゃん。失敗しちゃったと、ぺろりと舌を出すスイちゃん……。

 あざといポーズ、表情のスイちゃんが次々と映し出される。


 ……イイ!……

 ……これはこれで!……

 ……ありだな!……

 ……アウトだ!だがそれがイイ!……

 ……むしろ、これがスイちゃん様だ!……


 ざわめきが広がっていき、いつしかスイちゃんコールに変わっていった。

 そしてスイちゃんの水着姿が映し出される頃には、広場全体の盛り上がりは最高潮となり、映像が終わっても興奮冷めやらぬ熱気が広場全体を支配していた。


 「レイフォード殿!感激ですじゃ、感動をありがとう!」

 竜人の長は俺の手を握ったまま離さない。

 「これからは、スイレン様のお言葉通り、レイフォード殿の言葉をスイレン様のお言葉として従いますので、何でもおっしゃってくれ!」


 「スイちゃんばんざーい!レイフォード様ばんざーい!」

 広場のあらゆるところで、「スイちゃんばんざーい、レイフォードばんざーい」の声が上がる。

 ……なんでこうなった。

 とりあえず、明日ゆっくり話をしましょうという事で、何とか解放されたのは夜も遅く更けてからだった。


 翌日、俺達は竜人の長と話し合い、色々と情報を得ることが出来た。

 「西の風の渓谷にウィンドドラゴンの集落、南の閉ざされた大地にガイアドラゴンか……。」

 「近くの里に使いを出しておきますので、まずはそこを訪ねるとよい。」

 長は、近隣の龍族の協力を取り付けてくれることを約束してくれた。

 これもスイちゃんのおかげだろう。


 そして、村を出るときには大量の魔晶石が手渡される。

 「今度来るときは、これ一杯にスイレン様のお姿をお願いします。」

 との言葉と共に……って、多すぎだろ。

 渡された魔晶石は、大小様々だが100個以上あった。


 「世話になったな。あの空き家の転移陣はそのままにしておいてくれると助かる。スイちゃんが気まぐれに来たいというかもしれないしな。」

 俺がそう言うと、長は胸を叩いて請け負ってくれる。

 「任せてくだされ。あそこは神域として奉り、誰一人として通しはしませぬ。」

 いやいや、そこまでしなくてもいいからね。


 「レイさん、準備できましたわ。」

 俺と長が話している間に馬車の準備が整ったようで、ミリィが呼びに来る。

 俺は長に別れを告げ、馬車に乗り込み竜人の村を後にした。


 ◇


 「で、これは一体……。」

 竜人の村をかなり離れたところで、俺は一旦馬車を止めて、小休止に入る。

 というか、止めざるを得ない。


 そして俺は疑問をカナミにぶつける。

 「えーと……何の事かなぁ?」

 カナミが視線を逸らす。

 「あれは何だ?と聞いているんだが?」

 俺は追及をやめない。

 俺が指さした先には2頭の龍が丸くなっている。

 「えーと「地竜」……かな?」

 カナミが視線をそらしたまま答える。

 「どう見ても「龍」だろうが!」


 そう「竜」じゃなくて「龍」……両者の違いは種族諸々色々あるが、一番分かりやすいのは「知性があるかないか」である。

 そして、カナミが馬車を引かせているのは、明らかに「龍族の幼生体」だった。

 つまり、人間に直せば幼児虐待である。

 龍族であれば、例え幼生体でもこの程度の馬車は軽々と引っ張れるが、幼児虐待に違いはない。    


 「こんなのが他の龍族に見つかったら、絶対に争いになるだろうが!」

 「だーってぇ……二人が曳きたいって言ったんだモン。ホントはあと20人ぐらいいたのをここまで絞ったんだよ?」

 「言ったんだモン……じゃない!可愛く言ってもダメ!返してきなさい!」

 「むっかぁ~!レイにぃはいっつもそう。私の話も聞かないで!私だってね、私だって、いろいろ頑張ったんだよ。あの子たちが引くって言ったせいでタロウたちは拗ねるし、そっちを宥めている間に、収拾つかなくなるし。帰そうとしても「お役に立ちたい」と周りの大人も巻き込んで涙ながらに訴えられるし!……レイにぃのバカぁー!」

 そう言うとカナミは泣きながら馬車の中に駆け込んで行ってしまった。


 「……えーと……。」

 「まぁ、今のはいぃにが悪いっすね。」

 「いや、だって……。」

 「レイさんは、もうちょっとだけ乙女心を理解してほしいですわ。」

 「おにぃちゃん……。」

 ソラまで、俺を責める目つきだった。


 「カナミを宥めてくるっす。にぃにはあとでカナミに謝るっすよ。……ねぇねもソラも行くっす。」

 そう言ってリィズたちは馬車へと行ってしまった。

 「はぁ……お前らのせいだぞ……。」

 俺は丸まっている地龍たちを撫でながらつぶやく。

 (八つ当たりねー。)

 うるさい。

 

 ……さて、困ったぞ。

 結局、あれからみんな馬車の中にこもりっきりで、声をかけても出てこない。

 仕方がなく、俺は地龍の2匹?2頭?2人?に馬車を引かせて出発することにした。


 ……うーん、馬に引かせてないから馬車というのもおかしいよなぁ。

 龍に引かせてるから龍車?狼の時は狼車……じゃぁ、アングラウサギの時は兎車か?

 そんなどうでもいい事を考えている。

 ……仕方がないじゃないか。女の子の機嫌を直す方法なんて知らないんだよ!

 とはいってもなぁ……。

 待てよ……確か昔美鈴が……。

 ……グリムベイブル!

 ………。

 …………可能か?

 ……可能です……ココから北の……。

 

 よし!行先は決まった!

 ……決まったけど、どうすりゃいいんだ?

 俺は御者なんて出来ない。

 格好をつけて手綱を握ってるだけ。

 今もただ握っているだけで、行先も何も決めず、龍達の行きたい様にさせているだけだ。

 今までは、カナミがタイガーウルフ達やアングラウサギたちに、お願いしてくれてたんだよな。

 「おい、左だ、左に行ってくれ!」

 龍達に話しかけるが返事はない。

 方向を変える気配もない。

 

 はぁ……困った。

 すると、龍達が不意に方向を変える。

 「お、いいぞ、そのまま真っすぐ行った先にある森を目指すんだ。」

 俺は龍達に話しかけながら、この先に必要な事を頭の中で整理しておく。


 やがて、森の端まで来たので馬車?を止める。

 しかし、女の子達は降りてくる気配も見せない。

 よし、分かった。

 そっちがその気なら……みてろ!俺の本気を見せてやるぜ!

 俺は馬車を中心に、安全確保のための結界を張った後、準備をするために森の中へと入っていった。


 ……よし、出来た。

 俺は、ソレ(・・)の完成度に満足気に頷くと、馬車の方を見る。

 まだ拗ねているのか、怒ってるのか……まったく気配がないというのも怖いものがある。

 ……仕方ない。

 俺は意を決して、馬車に入り……

 「スッミマッセンでしたー!」

 深々と土下座をした。


 どうだ、俺の本気を見たか!

 ……見ただろ?

 ……そろそろ何か言って欲しいなぁ……なんて。

 ……おーい?

 全く反応がない。

 俺は恐る恐る顔を上げる……が誰もいない。


 「にぃに、そこで何やってんすか?」

 ビクッ!

 不意に後ろから声をかけられ、俺の心臓が跳ね上がる。

 振り返るとリィズとカナミが後ろに立っていた。

 「いやぁ……ココの床の掃除をね、ちょっと……。」

 「そうなんすか、私はてっきりカナミに土下座をしてるのかと思ってました。」

 わかっているなら最初から言えよ、チクショウ!


 「えーと、カナ?」

 俺は恐る恐るカナミの顔を見る。

 カナミは背けてはいるが、その顔は真っ赤だ。

 しかも、小刻みに震えている。

 あー、まだ怒っているのか。

 ここは男らしく謝ろう。


 「えっと、さっきはゴメン。俺が悪かった。お詫びと言っては何だがプレゼントも用意したし……。いや、モノで誤魔化そうというんじゃなくてその……えっと……。」

 俺は必死になって言葉を紡ぎ出す。

 くそー、うまく言えない。

 「とにかくゴメン、俺が……。」

 「-っ……クスクス、もうダメェ……。」

 見ると二人が笑い転げている……なんだ?

 「クスクス……はぁ、はぁ……レイにぃ、ごめんね……ぷっ……クスクス……私も悪かったの。」

 笑いながらカナミが謝ってくるが……なんなんだ……。

 「ごめんね……クスクス……謝ろうと思って、そのお詫びの用意をしに森に行ってたんだけど……帰ってきたら……ぷっ……土下座してるんだもん……クスクス……。」

 二人は笑いのツボに入ったらしく、しばらくの間笑い転げていた。

 ……まぁ、機嫌治ったならいいけどさ。


 「アハッ、ごめんね。それでプレゼントって?」

 ワクワクした顔で俺をのぞき込んでくるカナミ。

 「あぁ、外にあるんだ。」

 俺はそう言って二人とともに馬車の外へ……そこには俺が用意した氷の塊に向けてワルサーを撃っているソラがいた。

 

 「何やってるんだ!」

 「あ、おにぃちゃん、これすごっく硬いんだよ!」

 俺は慌ててソラを氷から引き離す!

 アブねぇ……念のために多重結界かけておいてよかった。

 「これは、俺が用意した、カナミへのお詫びの品なの!壊しちゃいけません!」

 そう言いながら、俺は結界を解いて氷を割る。

 そして中から出て来た物を、カナミへ差し出す。

 「今回は、ゴメン。これで機嫌を直してください!」


 「「「「わぁー!」」」」

 俺がカナミに差し出したモノ……巨大プリン・ア・ラ・モードを見て歓声を上げている。

 昔、美鈴を怒らせたとき、プリンで機嫌を直してもらったのを思い出した。

 カナミの好みならケーキの方が良かったのかもしれないが、さすがに今ここで作るには機材も材料も足りなさすぎる。

 ベガスの玉子と試作したばかりのモゥシーのミルクとそれを使った生クリームが共有バックの中に入れてあって助かった。

 果物などは森で調達したものだ。

 カナミ一人では食べ入れないぐらいの分量を用意したので、皆で分け合って食べている。

 ウン、甘いものの威力はすごいね。


 今後の事を考えて沢山ストックしておこうと、決意するのだった。


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