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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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龍の里 前編 -ソラの事情-

 「そろそろだな……あのバカ娘、あったら叱ってやらないと。」

 「ホントに叱れるんですか?顔がニマニマしてますよ?」

 俺の言葉にミリィが応える……が、そう言う彼女の顔も笑っている。

 「なんだかんだ言っても、にぃにはソラに甘いっすからね。」

 リィズもミリィに追従する。その顔もニコニコとしている。

 「そ、そんな事は……ない……と思う。」

 「はっきり言えないところが、レイにぃだよねぇ。」

 ミリィやリィズが笑顔なのを見て、カナミも嬉しそうだ。

 

 事の起こりは、俺達が龍の里に向かうために、ミンディアによった事から始まる。


 ◇


 「転移 ミンディア!」


  俺達は転移陣を使ってミンディアに来た。

 龍族の里は、ミンディアからヤムロ山脈を越えたところにあるらしい。

 せっかくミンディアに来たんだから、レイファ達の所に顔を出しておこうと教会によったら誰も居なかったので、とりあえず自宅へ……と街中まで来たのだ。


 「ミンディアも久しぶりねぇ。レイファとソラ、元気してるかなぁ?」

 「最近は、大きな争いごともなさそうだし、元気なんじゃないか?」

 カナミの言葉に俺は気楽に答える。

 最近は本当に平和だ。

 「そうっすね、何かあったとしても、隊員が増えて困ってるってことぐらいじゃないっすか?」

 リィズの言葉に俺達は声をあげて笑う。

 確かにそれはありそうだ。

 特に、最近はミリィとリィズが余り姿を現さないため、レイファとソラに鞍替えをする隊員が増えたと、ギルドにいた奴らが嘆いていた覚えがある。


 「確かあの家だったよな?」

 俺は目の前に見えてきた一軒の家を指さす。

 「そうっすね。間違いないっす。」

 そんな話をしていたら、目的の家のドアが、ガチャッと開き、レイファが飛び出してきた。


 「レイファ、久しぶり。」

 俺はレイファに声をかける。

 「え、レイさん、何故ここに……いえ、これも女神様のお導きですね。」

 俺達の顔を見たレイファが驚いた顔をしたが、すぐに寄ってくる。

 「レイさん、来てくださってよかった……、助けてください。」

 レイファが、焦った様子で助けを求めてくる。

 ただ事じゃなさそうだ。


 「どうした、何があった?」

 「ソラちゃんが、ソラちゃんが……。」

 「レイファ、落ち着け!」

 どうやらソラに何かあったらしいが、焦っていて言葉が出てこないらしいレイファを落ち着かせる。

 

 「ごめんなさい。レイさん達を見たら、ついホッとしてしまって……。」

 「いいさ、それより、ソラがどうしたんだ、何があったんだ?」

 「これを……。」

 俺が問いかけると、レイファが一通の手紙を差し出す。

 「ソラちゃんの置手紙です。」

 俺達はみんなでその手紙に目を通す。

 手紙にはソラの字で、こう書かれていた。


 『 お姉ちゃん、いきなり家を飛び出してごめんなさい。

 おにぃちゃん達が困ってるの。ボク助けになりたいんだ。

 ……よく覚えてないけど、おにぃちゃん達が困ったときはボクが助けるって、昔誓ったんだよ。だから、ボク龍の里へ行くね。

 大丈夫、ボクが危ない時は、きっとおにぃちゃん達が助けてくれるから、……だから心配しないでね。』


 「ソラ……。」

 俺は言葉が出なかった……みんなも同じらしい。

 「ソラ……相変わらず、ちゃっかりしてるっすね。」

 最後の部分を指さして、リィズが言う。

 その瞳には涙がにじんでいた。

 「そうね……所々、字が間違ってるから後で勉強させなきゃね。」

 同じように涙ぐんでいるミリィが言う。

 「あはは……そこじゃないでしょう。」

 涙をぬぐいつつ、ツッコミを入れるカナミ。


 「レイファ、心配しなくていい。丁度俺達は龍の里へ向かう所なんだ。どうしてソラがそれを知っていたか分からないが、ソラが龍の里に向かったなら、向こうで会えるはずだからな。」

 何の事か分からないという顔をしているレイファに、安心しろと告げて、俺達は龍の里に向けて出発した。

 

 ◇


 ヤンロン山脈への転移陣を使えば、目の前はもう山の麓だ。

 俺達は出来る限り急いで山を駆け上がっていく。

 

 「でも、なんでソラちゃん、私達が龍の里へ向かうって知ってたんだろうね?」

 カナミがが不思議そうに聞いてくる。

 「うーん、まぁ……心当たりというかそれしかないだろうと思う事はあるんだけどな……エアリーゼ?」

 俺は、何処かにいるはずの精霊に声をかける。

 (ちょ、ちょっと、……ファー、バラしたの!)

 「今の言葉は自白って事でいいかな?」

 (え、あ、ちょ、ちょっと待って、今のなし!なしだからね!)

 (はぁ、アリゼ姉様。私は何も話していません。それは一緒にいた姉様がご存じでしょうに。とぼければよかったのに。)

 (そう言う事は早く言いなさいよ!)

 俺の周りに二人の小妖精が飛び交い、言い合いを始める。


 片方はファー……あるダンジョンで精霊封印の壺に閉じ込められていたのを俺が助けてからは、相棒としてずっと一緒にいてくれる。

 元々は風の上位精霊だったのが、長い年月の間、蟲毒の呪法を施されて閉じ込められていたせいで精霊としての格を失い、現在は小妖精として存在を保っているが、上位精霊さえも凌駕する力を内包している。

 

 もう片方はエアリーゼ……精霊の森でリィズに一目惚れをしてからずっと一緒にいる、リィズの相棒の風の上級精霊だ。

 戦闘時は、精霊魔法で援護してくれるだけでなく「精霊化」と呼ばれる、契約者が精霊の力を取り込み、その力を自在に使用できる魔法により、リィズの大きな力となっていてくれる。


 ファーとは発生の根源を同じくするらしく……まぁ簡単に言えば姉妹って事らしいが、ファーと再会した時にその小妖精の姿を見て、自分もやってみたいと言い出し、小妖精の姿を借りて顕現することに成功した。

 正直、普通ではありえないのだが、簡単にやってしまうエアリーゼという精霊は、上位精霊の中でも破格の力を持っているのだろう……まぁ、普段の姿を見てると信じられないけどな。


 「それで、一体ファルスに何を吹き込んだんだ?」

 (大したことじゃないのよ……ただ今までの事と、龍の里に行くって事を伝えただけよ。)

 エアリーゼはそう言うが、あのファルスがそれだけで動くだろうか?


 ファルスというのはソラについている精霊だ。

 元々ミルファースの眷属として、芸術と調和を司る女神だったのだが、仕事をサボって好きな音楽に身を委ねていた為、精霊に堕とされてしまったらしい。

 その後は音と光と調和を司る精霊として存在していたが、ソラの歌に魅せられてからはずっとソラに付きまとっていた……まぁ、ストーカーみたいなものか。

 一応自分の存在は隠していたらしいが、ある時ソラが俺達を助けるために力を望み、それに応えて存在を明かしてからは、頻繁に姿を見せている。

 特に、ソラが歌う時はほぼ必ず精霊化して一体となる、

 ソラが「光翼の歌姫」と呼ばれているのはその姿所以であったりする。


 「それだけか?何か隠しているだろう?」

 俺はエアリーゼを問い詰める。

 (え、えーと……そ、それは……そう!精霊の理に反するから言えないわ。)

 ドヤ!という顔をしてそう言うエアリーゼ。

 「はぁ……じゃぁ、ファー。お前は精霊じゃないから大丈夫だろ?」

 (何、それ!ズルいわよ!)

 (はぁ……もうアリゼ姉様は。……内容はアリゼ姉様の言ったとおりです。ただ目一杯挑発していましたが。)

 「挑発?」

 (えぇ、今ファルスは微妙な立ち位置にいるため、自在に動けません。それをいいことに魔王城での楽しかったことを始めとして、この3か月の事を面白おかしく自慢してたのですよ。じっと大人しくしているファルスは一生そのままで残念ねーと言う言葉を最後に残して……ね。)


 「そう言う事か。」

 「ねぇ、にぃに。ファルスが微妙な立場ってどういう事っすか?」

 「そうだな……難しい話になるぞ?」

 「ウッ、頑張るっす。」

 リィズが一生懸命なので教えてやるか。


 「ちょっと長くなるぞ……女神たちと会って世界が変革した時に、変革の影響を受けなかった存在がいる。それは女神や精霊など、因果の外にいる者達や、龍族などの因果律を超越した存在、そしてあの場にいた俺達だ。」

 それは分かるか?とリィズに聞く。

 「ウン、だからファルスには影響ないって事だよね。」

 「あぁ、そして「あの場」にいた俺達だが、その「場」というのがどの範囲までかは知らないが、ソラはあの扉の向こう側にいた……たぶん変革の影響を受けるかどうかギリギリの範囲だったんだろう。そのうえ、レイファとソラは変革後も俺の近しい存在となっているからな。」

 「……つまりどういう事っす?」

 ちょっと混乱してきたか……仕方がないな。

 「つまり、何かのきっかけがあれば、ソラの存在の在り方が変わる可能性があるって事。」

 「……って事は、ソラが私たちの事思い出すって事っすか?」

 「思い出す……っていうのとちょっと違うけどな、まぁ、昔のようになる可能性があるって事だ。」

 「いい事じゃないっすか!あのソラが戻ってくるっす。」

 喜ぶリィズ……気持ちはわかるんだけどな。

 

 「しかし、事はそう簡単じゃないんだ。それがファルスが微妙な立場にいるって事になるんだけど……。」

 「何か問題があるんすか?」

 「そうだな……ちょっと極論になるんだが、もし、ミリィが突然「お母さん」だよって言いだしたらどうする?」

 「どうするって言われても……困る?」

 「でも、言われてみれば、自分の知らないはず位の記憶が蘇ってきて、その記憶の中ではミリィはお母さんだった。でも、今のミリィとの関係は?……混乱しないか?」

 「確かに……でもそれくらいなら……。」

 「更に、もし俺が親の仇だったらどうする?そして、それが事実だという記憶が蘇ってくる。そうしたら俺の事をどう思う?

 その後は……、カナミの事を信じれるか?カナミも実は……なんて疑問が出てくるんじゃないか?

カナミだけじゃなく、レイファも、ソラも……信じてたことがすべて違うんじゃないかという疑問に捕われたら……。」

 「……確かに、何を信じていいか分からないっていうのは怖いっすね。」

 「だから、ファルスは動けなかったんだよ。自分が表に出ることで、ソラの存在が変質してしまったら、ソラが諸々の事に耐え切れずに精神が壊れてしまったら……自分のせいでソラが……となると動くに動けないってわけだよ。」

 「そう言う事っすか……。」


 (アンタたちも、ファルスも考えすぎなんだよ!ソラがあなた達と、今より深い関係だって事を知って傷つく?そんなわけないじゃん?逆に良かったって喜ぶでしょ?他の記憶?信じられなくなる?あの単純なソラちゃんがそんなに深く物事考えてるわけないでしょ?アンタ達はもっとソラを信じなさいっての。)

 (また、アリゼ姉様は。……でも、ソラに関してだけはアリゼ姉様に同意だわ。もっとソラを信じなさいよ。……ま、とにかく、アリゼ姉様に挑発されたファルスは、ソラちゃんに「夢」という形で情報をリークした結果、ソラちゃんが行動を起こした……それだけ見ても信じるに足ると私は思うわよ。)


 「ま、ここまで来たらなるようになるしかないか……っと、あそこだな。」

 話をしている間に、ランに教えてもらった隠里の入り口が見えてくる。

 「結局ここまでソラに会えなかったっすけど、まさか、すでに里の中に入ったんすかね?」

 リィズの疑問も分かる。俺達だって、ランに教えてもらわなければ、入り口に気付かなかったと思うのに、ソラが気づくとは思えないんだが。

 (そこはファルスがうまく誘導したんじゃないの?)

 精霊なら入口ぐらいはすぐにわかるか……。

 「だとしたら急いだほうがいいな……ソラの事だ、問題を起こしてるかもしれない。」

 俺達は急いで隠里の入り口を通り抜けた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ……夢を見た。

 とても楽しい夢。

 夢の中でボクはレイフォードさんを「おにぃちゃん」って呼んでいた。

 ボクはおにぃちゃんの事が大好き……おにぃちゃんとキスもした……その後までは進めなかったけど……大好きなおにぃちゃん。

 ミリィさん……おねぇちゃん……、リィズさん……リズ姉……ボクの大事な大事な……お母さんでお姉さんで家族……。

 いいな……こんな関係いいな……。

 レイファお姉ちゃんは優しい。お姉ちゃんとの生活に不満はない。でも、何かが違うっていう違和感。

 でも、この夢に違和感はない……しっくりくる。……ボクの願望が見せてる夢だからしっくりくるのは当たり前か。


 (いいえ、その世界は実際に会った世界。あなたが見ているのはあなたの体験した事……。)

 どういうこと?ボクはみんなと暮らしてたの?

 おにぃちゃんのこと好きでいていいの?

 (あなたの望むことが私の望むこと……あなたが望むなら私は力を貸しましょう。)


 ……ボクの中で記憶がフラッシュバックする。  

 おにぃちゃんも、おねぇちゃんも、みんなボロボロになって……それでもボクを守ろうとして……

 そう、あの時も聞こえた声。

 そしてボクはみんなを守る力を望んだんだ……。


 「……今度は、ボクのボクが望むための……それでも力を貸してくれるの?」

 (あなたの望みはみんなの望み……あなたの幸せはみんなの幸せ……みんなの為にあなたは笑って……ね?)


 おにぃちゃんが、おねぇちゃんが、リズねぇが……みんなが手を伸ばしてくる……ボクも、みんなと一緒に居たい……一緒に居たいよぉ……。

 手を伸ばすけど届かない……すこしづつ遠ざかっていく。

 イヤだ……行かないで……置いて行っちゃイヤだよ……ボクも一緒に居たいよ……。

 手を伸ばす……一生懸命伸ばすけど届かない……。

  

 イヤだ、もう置いていかれるのはイヤだ……。

 「イヤだよぉ。一緒に居たいよ……お願いファルス!力を貸して!ボクはみんなと一緒に居たいんだ!」

 その途端に光が周りを包み込む。光溢れ出す……これが……ファルス?


 ◇


 「……うーん……ねむぃ……。」

 ボクは目を覚ます……何かとっても楽しい……大事な夢を見てたような……。

 「ううん、夢じゃない。ボクはおにぃちゃんとおねぇちゃんとリズねぇと……ファルス!ファルス!いるなら返事して!」

 (よかった……無事に目覚めましたね。)

 「ファルス……夢じゃなかったんだね。……どういうことか説明してもらえる?」

 (そうですね……何から話しましょうか……)


 それからのファルスの話は長くてよく覚えてない。途中で寝ちゃったし。

 ボクに分かったのは、おにぃちゃん達の事を忘れていたらしいって事だけ……他にも何か言ってたけど、よくわかんないからいいよね?

 それで今おにぃちゃん達は魔王島を直すために龍の里に向かっているんだって。

 これはボクも行くしかないよね?

 「ファルス、行こうか?」

 (ソラ、貴女はちゃんと聞いていたのですか?そもそも……)

 「ウン、龍の里に行けばおにぃちゃん達に会えるんだよね?」

 (……もう、この子は……仕方がないですね……まずはレイファに出かけることをお伝えしなさい。)

 「ウン、レイファ姉ちゃん心配性だからね。手紙書いておくよ。」


 ◇


 ボクはレイファ姉ちゃんに置手紙をして、さっそく龍の里へ向かったんだ。

 「確か、ラン姉ちゃんに会いに行く転移陣があったよね?」

 (そうですね、もう直ってると思うので使えるはずです。)

 ファリスは賢いから何でも知ってる。

 だから分からないことはファルスに任せればいいのだ。

 当然龍の隠れ里もファルスなら知っているはず。

 「ふわぁぁ……眠ぃ……。あ、そうだ!ファルス、お願い!」

 ボクはファルスを呼んで「精霊化」する。

 (どうしたのです、いきなり?)

 「うん、この姿ならファルスも力が使えるんだよね?」

 (そうですが……変なこと考えてませんか?)

 「そんなことないよ。ただ、ちょっと眠いから、寝ている間に飛んで行ってくれないかなぁーって。」

 (はぁ……この子は……もう、今日だけですからね。)

 文句を言ってるけど、嬉しそうなのは声の響きでわかるんだ。


 「じゃぁお願いね。入口に着いたら起こしてね。」

 ボクはファルスに体を運んでもらいながら寝ることに……楽ちんだよぉ。

 夢の中で、おにぃちゃん達が悪いドラゴンに捕まっていた。

 待ってて、ボクがすぐ助けに行くからね。


 (ソラ、つきましたよ。)

 「う……ん……ついた?」

 (はい、あそこが龍の隠れ里の入り口です。くれぐれも対応には気を付けてください。)

 「ウン、わかってる。おにぃちゃんはボクがたすける!」

 えーッと……あった、おにぃちゃんがくれたワルサー。

 ボクはワルサーを構えて入り口をくぐる。


 「おにぃちゃんを返せ!」

 里の中に入ると、眼前には竜人たちが待ち構えていた。

 30人くらいだろうか?

 でも、これくらいなら何とか……。

 「聞こえないの!おにぃちゃんを返せ!」 


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 里の入り口をくぐると、目の前にソラがいた。

 ソラは、30人ぐらいの竜人たちに銃を向けている。

 「聞こえないの!おにぃちゃんを返せ!」 

 ……えーと、何が起きているんだ?

 俺はカナミを見る。

 カナミは分からないというように首を振る。

 俺はリィズを見る。

 目が合うとリィズは頷き、ソラの下へ駆け寄る。


 「何やってんの!」

 リィズがハリセンでソラを叩く。

 スパーッン!と小気味よい音が鳴り響く。

 「あうっ!」

 叩かれたソラは頭を抱えてうずくまる。

 「いったーい。……リズ姉酷いよぉ。」

 「ソラ、一体、何やってんすか!竜人さん達に謝りなさい!」

 「えーでも、おにぃちゃん捕まってる。」

 スパーッン!

 リィズが、もう一度ハリセンでソラを叩く。

 「何寝ぼけてるんすか!」

 そう言いながらソラを引きずって俺達の所へ連れてくる。


 「え、あれ?おにぃちゃん、捕まっていたんじゃ?」

 「ソラ、寝ぼけてる?」

 「えーと、あれ?あれ?」

 ソラが、不思議そうな顔で俺達を見回す。

 「それより、ソラちゃんさっきから……。」

 (皆様お久しぶりです。ソラはさっきまで寝ていたので、寝ぼけているので間違いないです。)

 カナミが何か言いかけたところでファルスの声が聞こえる。

 「ファルスが出てきているって事はやっぱり……。」

 「ソラ!」 

 ミリィがソラを抱きしめる。

 「えーと、おねぇちゃん苦しぃ……リズ姉助けて……。」

 「ムリっすね、ねぇねの後は私の番っす。」

 ソラを抱きしめるミリィとからかいながらも楽しそうなリィズ。

 「あはは……よかったね。」

 カナミも嬉しそうに笑っている。

 「あぁ、とりあえず、アイツらの事頼むな。俺はあっちを片付けてくる。」

 俺が視線を向けた先には、何が起きているのか分からず呆然としている竜人たちがいた。


 ◇


 「なるほど、ダーク様とラン様からですか。」

 俺は竜人の長に、ここに来る経緯と目的などを話した。

 ちなみにソラの事は笑って許してくれた。

 そのソラ達は、他の竜人たちの案内で温泉に行っている。

 龍の隠れ里というのは、龍族の住む里ではなく龍族を神と崇め信仰している竜人達の住む里の事だった。

 龍族は元々細かい事を気にしない性格の上、気まぐれなのだが、竜人達の事はそれなりに気をかけている為、そこそこ交流があると言う。

 なので、どこにいるか分からない龍を当てもなく探すよりは、竜人たちに聞いた方が早いと、スイちゃんは言いたかったらしい。

 

 「まぁ、ここに来るように言ったのはスイちゃんなんですが。」

 アハハと笑いながら言う。

 「スイちゃんとは?」

 「あぁ、そうか……スイちゃんというのは……。」

 俺は水龍の事を長に話す。

 「ま、まさか、もしや……。」

 ん?長の様子がおかしい。

 「レイフォード殿、その水龍様ですが、首の……この辺りに1枚色の変わった鱗などはあったりしませんかな?」

 長がそんな事を聞いてくる。

 「んーそう言えば、確か1枚だけピンク色の鱗があったよな……。」

 俺がそう言うと、長たちの様子が変わる。

 「なんと!それは確かですな!」

 「あぁ、うん、間違いないよ。」


 「皆の者!大ニュースじゃ!スイレン様が復活なされたぞ!水龍の里にもお知らせするのじゃ!」

 長が叫び、周りが騒がしくなる。

 「えーと何が……?」

 「おぉ、済まぬレイフォード殿。ちょっと忙しくなるのでこれで失礼させていただく。」

 「ちょ、ちょっと、まだ話が……。」

 「今夜は宴会じゃ!話はその時か、明日でよかろう。ゆっくりしていくがよい。」

 「ちょ、ちょと……って行っちゃったか。」

 あっという間に姿を消す竜人の長。


 「すみません……年甲斐もなくはしゃいでいる長を見るのは、私どもも初めてです。レイフォード殿もよかったら温泉に行かれてはどうでしょうか?長も言ってるように今夜は大宴会になりますので、ゆっくりしてください。」

 俺は傍付きの人に促されて温泉に行くことにした。

 まぁ、この後は話も聞けそうにないしな。


 「うーん、やっぱり温泉はいいなぁ。」

 俺はお湯の中でゆっくりと体を伸ばす。

 「しかし、あるんじゃないか、温泉。ランの奴知らないなんて言いやがって。」

 「温泉がどうかしたのかえ?」

 ふいに声が掛けられる。

 どうやら先客がいたみたいだ。

 「あ、すみません。うるさかったですか?」

 「いやいや良いのじゃ。」

 俺は先客の老人に頭を下げるが、笑って許してくれる。

 「それより、先程温泉がどうとか言っておった様じゃが?」

 「あー、以前ですね、物知りな知り合いに温泉がないかどうか聞いたんですよ。」

 隠れ里だから黙っていたのかも、と笑いながら言う。

 「フム、特に隠してるわけじゃないんだがのう。おかしなことじゃのぅ。まぁ、ゆっくりして行くがいいて。」

 そう言って老人は先にあがる。

 俺はその後ものんびりと湯につかり、温泉を堪能した。


 「おにぃちゃん!どこに行ってたの、もぅ。」

 広場に戻ると、俺を見つけたソラが飛びついてくる。

 「えへへ。」

 ソラがスリスリしてくる。

 なんか、こういうのも懐かしいな。

 「にぃにも温泉っすか?」

 「あぁ、なんか、長が急に飛び出して行って、話が中途半端になってしまってな。」

 俺と会話をしつつ、さりげなくソラとの間に割り込もうとするリィズ。 

 「それより、こんな所に温泉があるなんてな。ランも早く教えてくれればよかったのに。」

 「そうっすね。」

 「ランおねぇちゃん、火山なんか知らないって言ってたもんね。」

 俺のつぶやきに、リィズとソラが応えてくれる。

 「そうだな火山なんて……って、そうか「火山」って聞いたからか……最初から「温泉」って聞けばよかったんだな。」

 謎が解けた、と一人で納得する俺。

 

 竜人の里か……宴会も開いてくれるっていうし、交流を深めれるといいな。

 久しぶりにソラの歌も聞きたいしな。

 俺の近くで、場所争いに精を出すソラとリィズをみながら考える。

 詳しくは聞いていないが、ソラも変革前の記憶があると思っていいだろう。

 本当に良かった。

  

 「おーい、いい加減にしておかないと、今夜の宴会お留守番にするぞ。」

 俺はじゃれあっている二人に、笑顔でそう告げるのだった。

長くなったので、前後編に分けました。

ソラちゃんが戻ってきました。

ご都合主義です!……嘘です。

当初のプロットではソラというキャラは存在しなかったのですが、いつの間にか出現してリィズの存在を脅かせ、リタイアさせたはずなのに復活するという手に負えないキャラです。

いう事を聞かないキャラクターがどう動いていくのか……楽しみです。

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