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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう
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 森で出会った少女

ミリィとの出会いです。

 目の前で、お互いに「あーん」をしているミリィとリィズを眺める。


 このほんわかとした心地よい時間が、何より大切だと思う。

 この街を拠点に冒険者登録して過ごすのも悪くないと思う。


 ただ、もし俺がこの街を出ると言ったら、二人はついてきてくれるだろうか?

 できれば一緒について来て欲しいけどな。


 「・・・一緒に・・・か。」


 出会った頃は思いもしなかったけどな。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺がミリィと出会ったのは、今から約1年ぐらい前、国境沿いの森の中だった。


 その森は「精霊の森」と呼ばれ、国境を中心に両国に広範囲で跨っている。


 森では、果実や山菜の他、食用になる動物なども豊富に獲れたので、昔は森の所有権をめぐって両国の間で諍いが絶えなかったという。


 しかしある程度入り込むと迷う者が多くなり、どのルートを通っても入り口に戻って来たり、帰還する者が居なかったりという事が続き、いつしか「迷いの森」として両国共に不可侵の場所とされた。

 

 「英知の書(グリムベイブル)自動応答(オートコレクト)!」


 俺は、今「精霊の森」に来ている。

 通り抜けることが出来ない、迷ったら生きて出られないといわれてる為、今では「迷いの森」と呼ばれている場所だ。


 森に来た理由は特にない。素材を採集しようとか、モンスターを狩ろうとか思っているわけではなく、ただ何となく足が向いただけである。


 しいて言えば「迷いの森って言っても、俺なら抜けられるんじゃね?」という軽い気持ちだったりする。


 何も根拠ないわけでもなく、色々な話を聞くに「迷いの森」の正体は、認識疎外の魔法か結界じゃないかと思ったからだ。向こうの世界でも、よくある設定なので間違いないだろう。

 魔力の流れをたどったり、結界の素を探れば攻略の糸口はつかめそうだ。何より俺には「英知の書(グリムベイブル)」がある。道に迷ったら聞けばいい。


 森に入ってから数時間・・・いや、そんなに経ってないのかもしれない…とにかく、時間感覚も方向感覚もマヒしていた。


 ・・・・・・ハッキリ言おう!迷った・・・。


 魔力の流れを感知しようにも、全体に薄く広がっている感じ…動きに合わせて包み込んでくる感じだ・・・わかりやすく言うと、水の中にいるような感覚?だ。


 頼りのグリムベイブルだが「こっちの道は正しいか?」と聞くと「検索項目不明」となる。

「出口につながっているか?」と聞くと「出口…入り口と同義。」と答えてくる。


 オートコレクトモードでは、詳細まではわからないため一度休憩を取り、ゆっくりと調べてみることにした。


 「英知の書(グリムベイブル)!」


 『目の前の道』

  ・・・森の中の街道。


 『出口はどっちか?』

  ・・・内から外へ向かう方向。

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


 つまり「英知の書(グリムベイブル)」はあくまでも知識の書だということである。


 迷いの森について、どこにあるかとか、なぜそう呼ばれているかなどの知識はわかっても、進む方向など、知識とは関係ないことまでわかるわけがなかった。


 はぁ・・・甘かったなぁ・・・道さえわかれば何とかなりそうだけど…何かいい方法はないか・・・向こうの世界みたいにGPSでMAP表示できたりしないのかな…。


 ・・・地図…知識だよな?


 「英知の書(グリムベイブル)!」


 「地図表示」

 ・・・・・・基準点不明・・・


 …ダメかぁ・・・行けると思ったんだけどなぁ。

 んー、基準点不明ってだけで、ここが何処かわかれば表示できるって事だろうか?

 マッピングするべきだったかなぁ…


 マッピングと考えたところで、昔やったゲームの事を思い出す。

 あれは、ロケット型のアイテムを打ち上げて周辺の地図を表示することにより現在地がわかるようになってたなぁ。


 ・・・・・・待てよ?アレをこうすれば…いや、ムリか…。


 休憩して疲れが取れ始めたことにより、頭が回るようになってきた。いくつかの案が思い浮かんでは消える…。


 しばらくして、なんとなく形がまとまる…ま、ダメもとでやってみるか。


 目をつぶり集中する…周りの魔力の流れを感じ取るようにして、徐々に、徐々に感覚を広げていく・・・ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・世界に広がっていくイメージ…上空に上っていくイメージ・・・上から下を見下ろすイメージ・・・


 ・・・「地形確認(サテライト)!」・・・「探索(サーチ)!:対象人間:範囲森全体」


 ボーっとエネルギーの揺らぎみたいなものを感じる…まだ集中・・・


 「英知の書(グリムベイブル)!」


 「サテライト、サーチを基準に視覚化表示」


 ・・・グリムベイブルの表面に森の地図が表示される・・・が、魔力の流れに揺らぎがあるせいか詳細は判別しづらい。

 しかし自分が今居るであろうと思われるところに光点が現れる。


 森の端からそれほど中に入っていない…どうやら同じところをグルグルしているようだ。


 「地形確認(サテライト)」と「探索(サーチ)」を維持し、グリムベイブルを開いたまま、少し移動してみる。…すると、移動に合わせて光点も動く。


 よし、簡易GPSとして使えるな。こまめに確認しながら動けば出口に向かえそうだ。



 ・・・途中幾度かの休憩をはさみ、その都度魔法をかけなおす。

 森の入り口付近の広いところに辿り着く頃には魔法のイメージ化が完了。

 結果「現在地確認(マップ)!」と唱えるだけで脳裏に周りの地図が浮かび上がるようになり、その状況で「探索(サーチ)!」を唱えると指定した対象が地図上に光点として浮かびあがるので、大変使いやすくなった。


 俺にとって魔法は、イメージの顕現という認識が最初についてしまったため、現象をしっかりとイメージ化できればわかりやすいワードで発動可能になる。まったく都合の良いチート能力だと思う。


 ぶっちゃけ、イメージ化さえしっかりできれば、空を飛んだり、瞬間移動をすることも可能になると思う。・・・空を飛ぶ感覚とか、一瞬で移動するって感覚がわからないけどさ。


 「さて出口…というか、森の入り口も近づいてきたし、今日はもう帰るかな?」


 「現在地確認(マップ)!」


 魔法を唱え、進む方向を確認。対象を人間にして光点表示。こうしておけば、光点が沢山あるところに沢山の人間がいる。つまり、村か街があるってことなので、そちらに進めばいいって事になる。


 少し進んだところで、脳裏に浮かぶ地図の端に光点が浮かぶ。進んでいる方向とは別の方向・・・森の中に向かったところ・・・そこに人間がいるって事だ。


 俺のように迷って出られないんだろうか?少し悩む。


 …そこにいるって知ってしまった。

 知ってしまったからには無視すると見捨てるようで気分が悪い・・・結局助けに行くことに決めた。


 光点を表示しそこを目指して進んでいくと迷うことなく相手に近づいていける。途中まったく逆方向に進む感覚にとらわれる。

 きっと認識疎外の魔力か結界が働いたのだろう。しかし、それらの間隔を無視して光点に近づくように進む。


 しばらく進むと開けた場所に出る。その中央に泉があり、そこに彼女はいた…一糸まとわぬ姿で。



 少女は腕を上に伸ばし、天を仰ぐ。彼女の周りで淡い光が彼女の動きに合わせて明滅する。…声が出ない。その光景は神秘的でさえあった。


 歌…いや祈りの言葉だろうか?ゆったりとした節に合わせて、彼女は腕を横へ伸ばし首を振る…あ、目が合った。・・・見つかった!?


 しかし彼女は舞を続ける…気付かれなかったのだろうか?


 彼女を見つめると、目の下あたりが心なしか朱く染まっているように見えた。


 そのまま彼女の舞を見続ける。以前レイファに「祝福」を見せてもらった時の光景に似ている。

 違いがあるとすれば、レイファの時は神秘的な光が降り注ぐイメージに対し、目の前の少女は乱舞…輪舞のほうが近いか…光が彼女の動きに合わせて舞っているように見える。


 いくつかの光が俺の方にも来て、俺の周りをまわりながら包み込んでいく・・・光が広がる・・・


 やがてゆっくりと動きが止まり、光も静かに消えていく・・・。光が消える前に少女は手を前に出し、何かを受け止める…そして光が消え去ると静寂が戻ってきた。


 「あの…。」


 彼女の声に我に返る。


 「あの・・・向こうを見ていてくださると、助かります…その・・・恥ずかしいので。」


 そういう彼女は全身真っ朱になっている。


 「あ、ご、ゴメン」


 俺は慌てて後ろを向く。


 背後ではチャプンッと泉から出たときの水音・・シュルッという衣擦れの音が聞こえる。


 「…あの…もうこちら向いても大丈夫です。」


 恥ずかしそうに声をかけてくる。


 「あ、えーと、その・・・覗くつもりはなくて・・・でもなんか神秘的で目が離せないというかなんというか…とにかくゴメン!」


 「いぇ、その・・・ただ、見られてると・・その・・・とても恥ずかしかった・・・です。」


 デスヨネー。ゴメンナサイ。


 「やっぱり気づいてたんだ。そのまま舞い続けてたから気付かれていないかと・・・。」


 「恥ずかしかったですけど…儀式を途中で止めるわけにはいかなかったので・・・。」


 「やっぱり、なんかの儀式だったのか。どおりで神秘的だと思った。何の儀式か聞いてもいい?」


 「村に古くから伝わる言い伝えで『虹の癒しを求める者よ、集いし約束の地にて汝を示せ。十と五の光が上りし時、清らかなる乙女の祈りを捧げよ、願いを唱えよ。光満ちし時汝が手に望みを与えん。』というのがあるんです。その中に出てくる『虹の癒し』というのがこれで・・・。」


 万能回復薬の素になるんです・・・と手に持った小瓶を見せてくれる。


 小瓶の中では虹色に光る液体が揺れていた。


 「で、そ、その、なんで私がここに居たかというと、村にはその・・・しょ、処女なのは私だけで…」


 真っ赤になりながら、聞いてもいないことを教えてくれる。


 「あ、あぁ・・・。」


 俺もなぜか照れてしまった。


 「あぅ・・・。」


 彼女も言わなくてもいいことだと気づいたみたいで真っ赤になってうつむく。


 「あ、でもその解釈は…」


 照れ隠しに、伝聞の解釈に間違いがあることを伝える。


 「・・・というわけで、『清らかなる乙女』というのは経験の有無にかかわらず『身を清めて純粋に祈りを捧げることが出来る女性』ならだれでもいいんだ。」


 俺はグリムベイブルで調べて知ったことを彼女に伝える。


 「そ、そうだったんですね。」


 彼女の顔がさらに朱く染まる。


 …しまった、つい調子に乗って言わなくていいことを…。


 「あ、ところで・・・えーと、その・・・」


 恥ずかしさを振り払うかのように声をかけてくる彼女。

 話題を変えようとしたところで、、どう呼び掛けていいかわからなくなったようだ。


 そういえば、まだお互い名前も知らなかった。


 「レイフォード。レイって呼んでくれ」


 「あ、はいレイさんですね。私はミリィと申します。」


 「ところで、レイさんは、ここへ何しにいらしたのでしょうか?」


 あまり人が来ないのに珍しいです…という。


 「あぁ・・・森の中で道に迷ってね。人の気配がしたから・・・。」


 嘘は言っていない。


 「そうですか、ここ分かりにくいですからねぇ。…ついてきてください、村まで案内しますよ。」



 あれから彼女の道案内で森の中を進んでいる。

 慣れているのか、途中分岐があっても彼女は迷うことなく進んでいく。


 「なぁ・・・、迷わず歩いているけど、大丈夫なのか?」


 「えぇ、大丈夫ですよ。・・・ちょっと休憩しましょうか?」


 そういって、彼女は木の根元に腰を下ろす・・・レイさんなら大丈夫かな?ウン大丈夫だよね。・・・誰に言うでもなく何かをつぶやいている。


 俺も彼女の横に腰を下ろすと「あれ見えますか?」と彼女が囁いてくる。

 彼女が指さしたのは、今まで俺たちが歩いてきた道だが、何か違和感がある。


 じっと見ていると、何かが動いたような気がするがよくわからない…しかし、しばらくすると来た道が消えているのに気付く。


 「なっ!・・・」


 「シッ!」


 俺が声を上げかけたところで、彼女の指が俺の口をふさぐ。


 「妖精さんの悪戯です。ここには悪戯好きの妖精さんが多いんです。」


 ただ・・・と彼女が続ける。


 「自分たちの悪戯バレないって思っている子達が多くて、悪戯現場を見られると逆ギレしちゃうんですよ。」


 だから見ないふりしていてくださいねと、ミリィが言う。


 これが迷いの森の正体らしい・・・グリムベイブルで見た「精霊の仕業」というのはこの事か。


 「迷う理由はわかったが、ミリィが迷わない理由がわからん。」


 簡単なことですよ、と彼女は言う。


 「森の木々達が教えてくれるんです。こっちだよーって。明るい時でしたら、小鳥さんや動物さん達が教えてくれることもあります。」


 …ミリィは不思議ちゃんだった…。



 「さて、そろそろ行きましょうか。」


 ミリィが立ち上がる。


 「あ、今のことはナイショですよ。周りの人に知られると、気味悪がられますから。」

 お願いしますね、とニッコリ笑う。どこか、懐かしい笑顔だった。



 「ふぅ・・・ようやく森から出てこれた。ミリィのおかげだな。」


 「どういたしまして、ですよ。それより、レイさんはこれからどうするんですか?」


 「何も考えていないなぁ。森を抜けて向こうの国へ行くことも考えていたけど難しそうだし。」


 「じゃぁ、今夜はそこの村で休んで、明日ゆっくり考えたらどうですか?」


 「そうだな、そうするよ。」


 「じゃぁ行きましょうか。」



 村の宿屋で部屋を取り、ようやく一息つく・・・。


 「・・・・・・あのぉ…ミリィさん?」


 「はい、なんでしょう?」


 俺の目の前にミリィがいる。しかも、今湯浴みを済ませてきたところだったりする。


 「何故、ここに居らっしゃるのでしょうか?」


 「えっ、私もここに泊まるからですけど・・・ダメですか?」


 なんで?と小首をかしげる。


 湯浴みを済ませたばかりの彼女からはほのかにいい香りがする。


 「ダメというか、仮にも男と女が同じ部屋で寝るということは・・・。」


 森で見た彼女の裸身が思い浮かぶ…ヤバい。


 「はい、殿方がそう言うことをしたがるという事は聞き及んでいます。特にレイさんのようなお年頃の方は抑えきれずに野獣になると…ポッ。」


 言いながら顔を朱く染めるミリィ。


 「いや、だから…」


 「ただ、私初めてですから、その・・・優しくしていただけると・・・ポッ。」


 そこまで言うならメチャメチャにしてやろうか…呆れを通り越して怒りが湧いてくる。


 ミリィが俺の前に来て…いきなり抱きしめられた。俺の顔がミリィの豊かな胸の中に埋まる。


 「からかってゴメンなさい。ただ、レイさんがあまりにも辛そうで・・・。」


 俺が?・・・辛そう?…なんで?


 「レイさん自身は気づいていない…ううん、気付かないふりをしてるだけですね。」


 ミリィに抱きしめられたまま俺は言う。


 「俺が辛い?そんなことない。気のせいだ。」


 「いいえ、こうしているとレイさんの心が悲鳴を上げているのがよくわかります。」


 「そんなこと…。」


 ないと言いたかったが言葉が途切れる。


 「森の中で儀式を行っていた時、妖精さん達の楽しい感情や嬉しい感情と共に、辛い、悲しい、痛い、淋しい、無力、怒りといった感情が流れ込んできたんです。それが何か最初はわかりませんでした。そして儀式の最後に妖精さんからのメッセージが響きました。」


 彼女がギュッと力を込める。


 「『悲しい魂』『助けが必要』『一緒』断片的なイメージでしたが、言葉にするとこんな感じです。私にはこの虹色の雫を使って助けてあげたい人がいました。だから最初はその人の事かなって思ったんです。」


 でも・・・と彼女は続ける。


 「レイさんとお話ししている時、さっきの感情がレイさんのものだってわかったんです。」


 彼女は腕の力を少し抜き、片手で俺の後頭部をなでる。


 「ずっと、助けを求めていたんですよね。」


 …そんなこと…ないと言いたかったが声が出ない。


 「誰かにそばにいて欲しかったんですよね。」


 …俺の目から涙がこぼれる。


 「私は何もできません。ただこうしてそばにいて、ギュってしてあげる事はできます。」


 …そっか、俺は…


 「だから、今日ぐらいは・・・」


 …そばにいて欲しい…



 「私、小さいころから『世界の声』が聞こえたんです。それは小鳥や動物達、木や花などの植物、それに妖精さん・・・。」


 ミリィが俺の横で話している。


 「ただ、人の心は普段聞こえないんですよ。人は心を隠すのがうまいですから。でも、たまに悲鳴が聞こえてくるんです。どうしようもなく張り裂けそうなぐらいの悲鳴です。当たり前ですよね、普段聞こえないのに聞こえるってことは、隠しきれないほど限界って事なんですから。」


 ミリィがギュッとしがみついてくる。


 「だから、私はそういう人達に声をかけたんです。あなたの心が悲鳴を上げてます。私何か力になれますか?って」


 「優しいんだな。」


 「違いますよ。私自身の為です。人の悲鳴が聞こえると、もう心が張り裂けるくらい痛いんですよ。」


 だから私のわがままなのです、という。


 「でも、なんだコイツって言われるだけで…殆どの人は心に余裕もなくて…そのうち潰れていくんです。」


 …誰も助けられないとつぶやく。


 「ミリィは俺を助けてくれた。」


 俺はミリィを引き寄せて抱きしめる。


 「ミリィのおかげで心が楽になった。」


 「エヘッ。嬉しいです。」


 「だから無理するな。」


 …ミリィが静かになる。


 「ずっと苦しんできたんだろ?誰にも理解してもらえなくて。」


 「・・・」


 「さっきの言葉、全部お前に返してやる。俺がそばにいてやるよ。」


 「…あれ…?おかしいですね……グスン」


 ミリィが俺の胸に顔を押し付ける。


 「立場が逆になってますよぉ…私がいい子いい子してあげてたはずなのにぃ・・・スン。」


 「男が守られてたら立場無いからな。」


 「一生懸命背伸びしているレイさん、可愛いですぅ。」


 ぎゅっ!




 翌朝、目を覚ますとベッドには俺一人だった。


 ・・・俺の腕の中に居たはずのミリィ・・・

 ・・・夢・・・だったのか?


 夢だとするなら、どこまでが現実で、どこからが夢なのか…


 そもそも、今この瞬間も「星野彼方」が見ている夢で、起きたらいつもの日常が・・・


 いや、逆に「星野彼方」が俺、レイフォードが見てた夢なのか・・・


 だんだん混乱してきた頭を抱えていると・・・

 ガチャ!・・・ドアが開く。


 「あ、レイさん起きられたのですね。おはようございます。朝ごはんもらってきましたからいただきましょう。」


 「ミリィ・・・夢・・・じゃないよな。」


 「あれ?レイさん、まだ寝ぼけているんですか?」


 それともぉ…と、ニッコリ笑いながら聞いてくる。


 「またギュってしてほしいですか?」

 

ミリィはレイフォードと同い年です。

しかし、お互い相手の事を年下としてみています。

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