エンド……End……END?
「センパイ、眠い?」
ベッドの中、俺の横から甘い声で囁く香奈美。
俺の恋人……大切な人。
「いや、大丈夫。」
俺は香奈美を引き寄せると、腕の中にすっぽりと納まる香奈美。
こうしていると安心する。だけど、何故だろう、何かが足りない気がする。
「……センパイ?眠いの?……センパイ、センパイ?……私だけを見て……私の事だけ考えて……。」
香奈美の声が呪文のように、繰り返され、いつしか意識が遠くなっていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「センパイ、しっかりして!」
香奈美の声がする。
俺の意識が浮かび上がる……目の前に香奈美……いや、カナミがいた。
「っ……ココは……。」
「大丈夫?わかる?」
カナミが俺をのぞき込む。
制服じゃない……巫女装束風のバトルドレス姿のカナミ……。
あぁ、そうか。
「大丈夫だ。夢を見てたみたいだ。」
俺はまだ心配そうなカナミにそう告げる。
『夢ではありませんよ。』
ミィルがつぶやく。
『ではこれならどうです?』
エルフィーネが手を振ると、また光が溢れ包まれる。
俺は、あっけなく意識を手放す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……ぐるぅ、ぐるっこぉー……
……ン……。
……ぐるぅー、ぐるぅー。
…………ツンツン……。
何か突っつかれている気がする。
……ぐるぅー、ぐるぅー、ぐるぅー、ぐるぅー。
うるさい……ベガスかぁ?
……していいですか?
ン……いいよ。……眠い……
……ホントにしちゃいますよ?
……ん……
唇に柔らかいものが触れた気がする。
……んっ。
離れていく感覚……イヤだ、離したくない。
俺は無意識に手を伸ばす。
何かを掴む感触。
俺はそのまま引き寄せ抱きしめる。
……もう、離さない。
無意識にキスをすると、相手も応えてくれる。
ギュっと抱きしめられる……離さない。ギュっと抱きしめ返す……。
……んっ、ンンッ……ンンン……
腕の中で何かもがいているが、やがて大人しくなる。
代わりに俺の口がふさがれ息苦しくなってきた。
「ぷふぁぁ!」
息苦しさに一気に目が覚める。
「目が覚めましたか?」
顔を真っ赤にして俺をのぞき込む美少女……ミリィ。
「朝から激しすぎっす。」
同じく顔を真っ赤にして、俺に抱きしめられている美少女……リィズ。
「あれ?……俺どうしてた?」
起こしに来たリィズが、いたずら心を出して寝ている俺にキスをしたら、そのままお返しのキスをされてフラフラになったらしいが……覚えていない。
そしてリィズが戻ってこないので、様子を見に来たら、俺に抱きしめられて動けないリィズを見て、焼きもちを焼いたミリィ。
近づいてギュっとしたら、ギュっとし返してくれたので、嬉しくなって思わず口づけを……。
「……で、今の状況ってわけか……ゴメン覚えてないわ。」
酷いっす!私の純情を返せっす!
喚きたてるリィズは放っておいて、ぼーっとしているミリィに声をかける。
「おーい、ミリィさんやー?……帰ってこーい。」
やたらとスキンシップをしたがるくせに、スキンシップに慣れていないミリィ。
なので、過剰なスキンシップをすると、こうなってしばらくは戻ってこなくなる。
「なんか、夢を見てたみたいでな……なんか女神に会う夢。」
「昨日聖女の話をしてた所為っすかね?」
「そうかもな?」
奇跡を起こす聖女の噂を聞いて領都まで会いに行ったが、一足遅く、俺達が領都につく数日前に女神と共に天に召されたそうだ。その姿は神々しく、まさに女神の化身とも言われその場にいた人々の語り草になったという。
「まぁ、聖女に会えなかったのは残念っすけど、やることは一杯あるっすよ!」
「そうだな。ミリィが戻ってきたら朝食にして、ギルドに顔を出すか。」
「その前に、こいつらの世話っすよ……にぃに、いつもこの煩い中、よく寝てられるっすね。」
リィズが、俺のベットの周りにいるベガス達を指さす。
日に日に数を増やすベガス。
リィズがここに来た頃には十羽程度だったのに、今では50羽を超える群れになっている。
しかも、なぜか礼儀正しく、餌の時間は順番に並んでいたりする。
本当に不思議な鳥だ。
そしてそれだけの数が居れば産み落とす玉子の量も大変なわけで……。
「にぃに……持ち切れないっす!」
「その籠をこっちへ、代わりにこれ使って。」
ベガス達は、毎朝餌をもらうと、1~2個玉子を産んで飛び立っていく。
おかげで、最近では毎朝100個近い玉子が部屋の中に散乱している……産卵だけに。
「にぃに、うまいこと言ってないで手伝ってほしいっす。」
……リィズは、時々俺の心の声にツッコむときがある……エスパーだろうか?
ベガスの玉子は滋養強壮栄養満点、しかもとても美味とくれば市場でそれなりの値が付く。
最近では下手な依頼より、ベガス他ミリィ牧場での畜産品の売り上げの方がもうかっている気がする。
おかげで、生活の為というより趣味で冒険者をやっている気がしてならない。
「しばらくは遠出を控えて、近場での依頼の方がいいかもしれないっすね。」
「ちょっとバタバタしてたからな。少しはゆっくりするか。」
ギルドの依頼は近場での採集から、別の街へ行く商隊の護衛や危険モンスターの討伐など多岐にわたる。
日にちがかかるものや、危険度が高いものほど報酬もよく、逆に近場の採集などは安全な分報酬は安くなっている。
その額は銅貨10枚ぐらいから銀貨10枚ぐらいまでと幅広い。
もっと高い報酬の依頼もあるが、それはまずもって普通の依頼ではない。
考えても見て欲しい。
一つの依頼で何か月も暮らせる報酬がもらえるなんてこと普通に考えてあり得るだろうか?
報酬が高い=危険度が高いなのだ。
腕に自信のある奴か余程のバカでない限り、身の丈に合った依頼を選ぶのが普通である。
しかし……だ、実は俺達が毎朝ギルドに納品しているベガスの玉子にヤンゴンの乳と、1週間に一度ぐらいの割合で納品している各種ポーション類。
これだけで、月に銀貨40枚の稼ぎがあったりする。
この街の物価はそれほど高くなく、生活するだけなら銀貨20枚で1ヶ月、たまに贅沢な食事をしたりしても、銀貨30枚もあれば余裕で生活できる。
俺達みたいに住む所がすでにあるのなら、3人でも十分潤った生活が出来るだけの稼ぎがあるため、依頼を受けなくても暮らしていけるのだが……というか、下手な依頼より稼いでいるって言うのはどうなんだろうと思う。
「そうっすね、ちょっとのんびりしたいっす。で、刺激が欲しくなったらまた出かけるっす。」
「じゃぁ、暇つぶしの採集依頼を受けておくか。」
街から戻り、庭先で他愛もない話をしながら、のんびりとした時間を過ごす俺達。
「にぃに……。」
リィズが俺の横に来て、腕を絡ませてくる。
「えへっ、にぃに、にぃに。」
甘えてくるリィズ。
依頼などで冒険者をしているときはしっかり者のイメージだけど、こういう時は年相応だと思う。
頭を撫でてやると「ふにゃぁー」と、だらしなく相好を崩す。
あまりにも可愛いので、撫で回してやる。
「リィズばっかりズルい!」
急に後ろから抱きつかれる。
ミリィも戻ってきたようだ。
「ねぇねもギュっ!」
リィズがミリィに抱き着く。
今日のリィズは甘えっこモードだ。
まぁ、たまにはいっか。
俺とミリィは顔を見合わせて笑う。
たまには……いや、ずっとこんな日が続けばいいと思う。
「ふわぁぁぁ……。」
まったりとした時間……不意にあくびが出る。
「まだ眠いんですか?」
「ウン、なんか眠い……。」
「よかったら、少し休みますか?」
そう言って、ポンポンと自分の膝を叩くミリィ。
魅力的な提案だが、そこにはちゃっかりと丸まって寝入っているリィズがいる。
「そうだな、せっかくだから……。」
俺はリィズを抱きかかえて、ミリィの膝枕に納まる。
リィズには悪いが、代わりに抱きかかえてやるから我慢してほしい。
なんといってもミリィの膝枕は格別なのだ。
「暇してても仕方がないし、何か新しい事でも始めるかなぁ。」
「時間はたっぷりとありますから、慌てないでいいですよ。」
そう言いながら、俺の頭を撫でるミリィ。
ミリィが触れたところが心地よい。
段々と意識が朦朧としてくる。
腕の中に納まっているリィズの柔らかい感触。
頭の下に感じるミリィの弾力のある太もも。
優しく触れてくるミリィの手。
すべてが心地よく、俺を眠りの地へ誘う。
「ゆっくり寝てていいんですよ。私とリィズと3人でゆったりした時間を過ごしましょう……。」
そんな声を聴きながら、俺の意識は遠ざかっていく……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「にぃに、にぃに、しっかりするっす!」
リィズが声をかけてくる。
「……甘えっこモードじゃないんだな。」
「何訳分からないこと言ってるっすか!しっかりするっす!」
リィズに揺さぶられているうちに、段々意識がはっきりしてくる。
……そうだ!
俺は、飛び起きて身構える。
目の前には4柱の女神たち。
「くそっ!どういう攻撃なんだ!」
『攻撃ではないんですけど……ね。』
エルフィーネがまた手を振り、光に包まれると、俺の意識は抵抗むなしく遠くへと落ちていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……ん?朝か。」
教会の朝は早い。
俺は教会で働いているわけじゃないが、寝泊まりさせてもらっているので、俺だけ寝ているのは具合が悪い。
「あ、レイさん、おはようございます。」
レイファが、朝の挨拶をしながらキスをしてくる。
未だ、照れ臭く慣れないが、レイファは意外とこういうスキンシップが好きだ。
人前では手を繋げないぐらい恥ずかしがり屋なのだが、その反動だろうか?
人目のない所ではかなり積極的だ。
レイファと一緒に暮らし始めてからもう5年が経つ。
旅をしていた時、偶々この街に立ち寄り、レイファから回復魔法を教えてもらう機会があった。
レイファは身寄りがなく、幼い頃に教会に拾われてからもずっと一人で暮らしてきた。
そのせいだろうか、俺といる時のレイファの笑顔は普段見た事のないくらい素晴らしいものだった。
俺も、ただ世話になるのもなんだしと、近くの山賊や盗賊団などから街を守ったり、教会の作業などを手伝ったりもしていた。
しかし、俺がそろそろ旅に出ようとすると、決まって寂しそうな笑顔で送り出そうとするレイファ。
その顔を見ると、胸が締め付けられる思いがして、結局ズルズルと居着いてしまっている。
依頼を受けたり、教会の農地を開拓したり、山で獲物を狩ったりと、毎日は充実している。
レイファとの暮らしに不満があるわけでもない。
レイファの笑顔も、毎朝のキスもいつもの事なんだが……。
「レイさんどうしました?」
「いや、なんか、こう違和感が……。」
「え、私のキス、おかしかったですか?」
泣きそうな顔で聞いてくるレイファ。
「いやそう言うんじゃなくて……。」
なだめるためにレイファを抱き寄せる。
胸にあたる感触が相変わらずすごい。
正直、正面から抱きよせると胸の分、距離が開くのが俺的には好みじゃない。
抱きしめても、胸がある分、顔を密着させれないのだ。
なので、後ろに回り背中越しに抱きしめる。
この方が密着できるし、前に回した手が自然と胸元に行く。
レイファは顔が見えないと、やや不満気味だが、そんなときは大きくたわわな果実を突っついてやれば……。
「あっ、やんっ!」
こうやって誤魔化せる。
「もぅ!」
ちょっと膨れた表情も可愛い。
俺はそのままレイファにキスをする。
「あー、またイチャイチャしてる!」
ボクもー、と言って抱きついてくる少女。
この子の名前はソラ。
近くの村の孤児院に住んでいた子だ。
孤児院経営の不正や、村ぐるみで巻き込まれた事件などがあり、唯一生き残ったソラを俺達が引き取ってから1年になる。
以前は、ただの甘えただったのが、最近ではイチャイチャに混ぜて欲しいとキスをねだる様にもなってきた。
女の子はませてると言うが、さすがにソラにはまだ早いだろう。
ソラが来たから、朝のイチャイチャタイムは終わりを告げる。
「おにぃちゃん、ボクともイチャイチャする!」
仕方がないので、ギュっとしてからソラのおでこにキスをしてやる。
「えへへ。」
いつまで、これで誤魔化せることやら。
「あ、そうだ、おにぃちゃん。偉いおじちゃんが、おにぃちゃんにコンサートの事で話があるっていってた。」
ソラが思い出したように言う。
偉いおじちゃんというのは、たぶん町長の事だろう。
先日町興しの為に、ソラのコンサートをプロデュースしたことがあった。
ソラは、こう見えてもすごく歌がうまく、その守ってあげたい容姿と合わさり、ファンの数は日に日に増えている。
また、ソラのコンサートをやると言ったら、この街の広場では賄えないだろう。
下手したら暴動が起きるかもしれない。
だからずっと断り続けていたのだが……。
「あぁ、ちょうど街に行く用事があるから、聞いておくよ。」
偉いぞ、とソラの頭を撫でる俺を慈愛に満ちた笑顔で見守るレイファ。
何も変わった所はないんだが、どうしても違和感がぬぐえない。
「坊主!待っておったぞい。」
街に行こうと、教会を出るとわらわらと人が出てきて取り囲まれる。
「今日こそは負けんぞ!」
「そうじゃそうじゃ!」
「今日のレイファちゃんクイズ!ズバリレイファちゃんのバストサイズは!」
「くだらない……95のEカップだ!」
俺が答えてやると、周りからオーとどよめきが聞こえる。
……ざわざわ……
……去年よりカップサイズが上がっておるじゃと!……
……けしからん!、ホンにけしからん胸じゃ!……
……うらやましぃぞぃ……
……ざわざわ……
ざわめきが広がっていく……。
がっくりと膝をつく奴らを後目に、俺はその場を離れる。
こいつらは「レイファちゃんを孫の嫁にし隊(平均年齢72)」とかいう、ふざけた団体だ。
俺が教会に居着いたときから、何かと絡んでくる厄介なジジィどもだ。
まぁ、おかげで「アンタも大変だねぇ」と、街の人達とは早い段階で打ち解けることが出来たのだが……狙ってやっているんだとすれば侮れないけどな。
一度、ジジィどもの悪ふざけが行き過ぎた時があり、それを目撃したレイファがマジ切れして、それ以降はこうやって時々絡む程度になっている。
しかし、あの時のレイファは、マジ怖かった。
「あ、レイさんおかえりなさい。」
俺が街から戻って来るとレイファが出迎えてくれる。
「ん?今日のお務めはもういいのか?」
「えぇ、今日の分は終わりです……お茶、入れますね。」
そう言って、お茶を入れに行くレイファを見やりながらソファに腰を下ろす。
「どうぞ。」
お茶を俺の前に置き、俺の横に座るレイファ。
そのまま俺にすり寄ってくる。
今日のレイファは、甘えたになっているなぁ。
「どうした?」
俺はレイファの頭を撫でながら、問いかけてみる。
「うん、なんとなく……レイさんはどこにも行かないよね?」
そんな風に、ちょっと見上げながら聞いてくるレイファ。
俺は、レイファを抱き寄せながら伝える。
「まぁ、いまさら行くアテもないしな。追い出されたら、ジジィどもと一緒に付きまとうしかないな。」
「もぅ、レイさんったら……。」
くすくすと笑うレイファ。
レイファに体重を預けてみると、レイファがギュっと抱きしめてくる。
顔に当たる胸の柔らかさが心地いい。
「あれ?レイさんが甘えたですか?」
くすくす笑いをやめないレイファ。
甘えただったのはレイファだっただろうに……ま、いっか。
「ソラが帰ってくるまで……な。」
「そうね、ソラには悪いけど……んっ……。」
レイファがキスをねだってくる。
「結局、レイさんの旅は何だったんですか?」
レイファとイチャイチャしているうちに時間が過ぎ、今はレイファに膝枕をしてもらっている。
そして、俺の頭を撫でながらそんな事を聞いてくる。
「……何かを探してた気がするけど、今更だな。」
本当に今更だ。
「探し物は、見つかった?」
「さぁね、見つけたのかもしれないし、違うかもしれない。」
その言葉をつぶやいたとき、急に眠気が襲ってくる。
「レイさんが探してたもの……何だったのかしら?」
レイファの声が遠くに聞こえる。
「私だったらいいな……。」
段々、声が小さくなる……。
「あれ、レイさん、寝ちゃった?……ゆっくりと休んでね。私の夢を見てくれると…………。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺はゆっくりと目を開ける。
「あ、レイさん、大丈夫ですか!」
心配そうな顔でのぞき込むミリィが、目の前にいる。
「あぁ、大丈夫だ。」
俺は立ち上がり、女神たちに剣を向ける。
「どういうつもりだ!」
流石に3回目ともなれば、何らかの意図があると考える。
単に攻撃をするだけならば、気を失わせた後に攻撃すればいいだけの話。
それをしないという事は、、あの夢を見せることに意味があると考えるのが普通。
「あんな夢を見せて、何が言いたいんだ!」
『夢ではありません』
ミィルが応える。
『あれは全て現実です。いえ、現実になるはずだった残滓……。あなたの選択次第では、起こりえた未来。』
エルフィーネが再度手を振りかざす。
光に包まれ別の未来を見せられる。
ミネラルド国でブランと一緒に暮らす未来。
ポメラ獣人国の王となり、リナと共に、獣人達を率いる未来。
アルガード王国の貴族として、ミリィ、リィズ、ソラと暮らす未来。
ブランとポメラ獣人国で鍛冶屋を営みつつ、ダビット国王やリナ王妃の相談役として暮らす未来。
ミリィと二人っきりで、精霊の森の奥深くで暮らす未来。
etc.etc……。
『未来は確定事項ではありません。あなた方の選ぶ道次第で様々に分岐していきます。
小さなところでは……次にあなたが右手を上げるか左手を上げるか、それだけでも分岐します。
ただ、小さな分岐では、大きな道に飲み込まれる様に統合して消えてしまいます。
あなたが右手を上げようと左手を上げようと、その先が変わらないのは統合された故に、です。
では、もっと大きな分岐では?
例えば分かれ道。右へ行ったあなたが出会う人。左に行ったあなたは誰とも出会わず……。
そして右に行き、出会った人により別の人に出会い、世界が広がる貴方と、出会うことなく人生を終える貴方。
更にであった人から、またで会う人が分かれ……と、延々と分岐が続く。
あなたが見たものは、そうして分岐した先にある、あなたが選ばなかった未来なのですよ。
もし、あなたが『異世界転生』のサイトを目にすることが無かったら、もし、あなたが『別の依頼』を受けていたら、もしあなたが……、もしあなたが……、そんな未来の残滓です。』
「……だから何だって言うんだ。」
俺は力を振り絞って声を上げる。
『もういいではありませんか。あなたの見た未来、パートナーの女性はどうでしたか?』
俺が見た未来の残滓、選ばれなかった未来。
どの未来でも、みんな笑っていた。
カナミも、ミリィも、リィズもみんな、みんな笑顔だった。
そして俺は唐突に理解する。
ミィルはこう言っているんだ。
「選べ」と……。
未来を、パートナーを選べ……そう言いたいのだろう。
『今、この時なら、あなたの望む未来を確定できます。あなたは頑張りました。頑張ったからこそ、未来のパートナーはみんな笑顔なのですよ。』
だから安心して選べという。
本当にそうなのか?
「選ばなかった未来は、人はどうなる?」
『消えますよ、存在しないのだから……そうですね、夢だと思ってください。存在しない世界、夢の世界。……そう言う意味では、今なら戻れます……元の世界へ。この世界は貴方が見ていた長い夢……。』
ミィルの甘美な誘惑の声。
今見てるのは、俺の夢の世界。
異世界なんてものはなくて、都合のいい夢を見てただけ。
チートだ、ハーレムだ、などは現実にはあり得ず、現実逃避したい自分が作り出した都合のいい世界。
『そうです、夢なのですよ……星野彼方さん、あなたに魔法が使えると思いますか?出会う子皆が美少女なんてありえますか?その美少女達が皆好意を寄せてくれると本気で思っていますか?
……すべては夢。あなたが見たがっている都合の良い夢なのですよ。
ただ、間違いなく言えることは、水上香奈美さんが貴方に寄せる好意は、あなたが見たとおり本当の事です。
さぁ、眠りなさい……そして、次に目覚めた時、香奈美さんが待っています。あなたの気持ちを嬉しく思い、受け止めてくれる人。あなたが生涯かけて大事にしたい人、水上香奈美さんが待っていますよ……。』
ミィルの甘美な声が囁く。
香奈美が待っている。
そうだ、香奈美を待たせているから帰らなきゃ。
段々意識が遠くなってくる。
視界の端にカナミが映る……何か叫んでいる。
待ってろ、今、香奈美のもとへ帰るから……。
今意識を手放せば……そして目が覚めたら、この夢が終わる。
そうしたら、俺は勇気を振り絞って香奈美に会うんだ。
昨日の返事をしっかりと受け止める。
大丈夫、香奈美はきっと応えてくれる。
「センパイ大好き!」って……。
そして俺は意識を手放す……。
どうしましょう。
このまま終わった方が綺麗な終わり方のような気がしてきた。
True Endじゃないですが、こういうのもありかな……と。
とりあえず、レイフォードさんには足掻いてもらいますが……True Endを迎えられるかどうか不安になってきました(^^;




