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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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魔王ダンジョン下層

 「どこまで続くんだ?」

 俺達は今、魔王が作ったと言われるダンジョンを攻略している。

 入り口からすぐにバラバラに飛ばされ、苦労して合流した上層。

 マグマ帯の暑い中、ドラゴンとの死闘を繰り広げた中層。

 そして……。

 「俺達、下層に向かって進んでるんだよなぁ?それともここはすでに下層なのか?」

 薄暗く、じめじめとした一本道を、すでに1時間以上は歩き続けているだろうか。

 「そろそろ休憩と言いたいけど、もう少し周りの様子がわかるまでは難しいか?」

 「せやなぁ、もうちょい広い所の方がええで。」

 俺のつぶやきに応えるブラン。

 しかし、前方を見ても代り映えのしない通路が続くばかりだ。


 「なぁ、お前は、ここのこと知らないのか?」

 俺は後ろからついてくるフレイに聞いてみる。

 フレイはソラと同じぐらいの背格好をした少女だ。

 実は中層で戦ったファイアードラゴンが人化した姿である。

 戦闘で俺が止めを刺したことにより「責任をとれ」というわけの分からない言いがかりでついて来ている。

 一応、ランの顔馴染みなので、全てランに丸投げしてあるが。


 「私が知るわけないじゃない。ずっと上にいたんだよ。そんなことも分らないの?アンタバカ?」

 くそー殴りてぇ。

 見た目、美少女であり、外見上はやや幼めであることから、ここで俺が殴ると色々とシャレにならない未来しか見えない。

 ……いい、フレイの事は無視しよう。


 更に30分歩くが全く変化が見られない。 

 仕方がないか。

 「みんな、一度この辺りで休憩しよう。」

 このまま歩き続け、疲れ果てたところでモンスターと出会ったりしたら、目も当てられないからな。

 俺はライトの魔法を強めにして、お互いの顔がはっきりとわかるぐらいまで、周りを明るくする。

 通路の前後には簡易結界を張り、誰かが近づけばわかるようにしてから腰を下ろす。


 「にぃに、ちょっと先まで偵察してくるっす。」

 リィズが申し出てくる。

 ちょうどお願いしようと思っていたので、軽く頷く。

 「一人じゃ危ないからな、リナと一緒に行ってくれ。」

 「了解っす。」

 元気よく返事をすると、リナと共に駆けだしていく。

 これで、ちょっと行ったところに休憩に適した広場があったなんて言ったら大笑い何だけどなぁ。



 「リィズ達遅いね。」

 「あぁ、ちょっと時間かかっているな。」

 「様子を見に行った方がいいかな?」

 リィズ達が出掛けて30分以上経つ。

 ちょっとした様子見なら、そろそろ戻って来ても良い頃だ。

 カナミが心配するのも当然だろう。


 (レイ、今アリゼ姉様から連絡よ。リィズちゃん達が襲われてるって。それほど強くはないけど、数が多くて厄介みたいよ。)

 「みんな、休憩は終わりだ!この先でリィズとリナが襲われているらしい。助けに行くぞ!」

 「レイさん、先に行くわね。」

 俺は、ファーからの連絡を受けると、すぐに行動を起こす。

 ミリィは、俺の声を聴くや否やフェンリルを呼び出し、その背に飛び乗って駆けだしていく。

 置いていかれまいと、ソラがミリィの背中にしがみつく。

 ……いいなぁ、アレ。

 そのような場合ではないと思いつつ、ちょっとだけ羨ましく思うのであった。


 皆に声をかけた後は、結界を崩し、人がいた痕跡を消すなど後始末をしてから、通路の先へと駆け出す。

 結果として一番最後になってしまったが、すぐに追いつけるだろう。

 「ファー、敵は何かわかるか?数は?場所は?」

 俺は救出に向かいつつ、ファーから情報を集める。

 (ちょっと待って……敵はアンデットみたいよ。倒しても倒してもわらわらと湧いて出てきているのできりがないみたい。場所はそれ程遠くは……あ、今、ミリィとソラが到着したみたいね。)

 流石はミリィ……というかフェンリルのスピード半端ねぇ。

 分体と言えども、その能力はかなりのスペックってか。


 途中、先行していたカナミ達を追い抜き、アンデットで一杯という広場に出る。

 『聖なる光の剣セイクリッド・ライトセイバー

 俺はファリスを光の剣に変え、聖属性を纏わす。

 群がるレイスや、スケルトン達を切り伏せながら、リィズの元に向かう。

 「リィズ、リナ!大丈夫か?」

 「にぃに、助かったっす!」

 「ご主人様、ありがとうございます。」

 俺とリィズ達は、互いに背中合わせになり、背後の死角を消しながら、まだ群がってくるアンデット達を斬り伏せていく。


 俺は、光の剣に聖属性を上乗せしてあるので、迫りくるレイスなどは触れただけで消滅するが、リィズやリナの場合はそうはいかない。

 リィズの双剣は、以前のヘキサエッジに光と闇の2属性を追加した『オクトエッジ』にパワーアップしているので、アンデットに対しても火属性や光属性を纏わせればそれなりの効力を発する。

 しかし、聖属性に比べると効果は一段落ちるのは否めず、レイス1体を倒すのに2~3振り必要になっている。

 リナに至っては、魔力を付与してある魔法剣を使用しているものの、魔力を纏わすことが出来ないため、リィズより手数が多く必要になり、その分疲労度が激しい。

 

 「浄化の炎(フレイム)!」

 俺は、右手の方から迫ってくるゾンビの群れを焼き払う。

 クッソ、本当にキリがないな。

 「みんな、お待たせ!そのままこっちへ来て!」

 さっきから、カナミとレイファが何かをしていたようだが、準備が整ったようだ。


 『聖なる光の刃セイクリッド・ライトエッジ

 光の刃が飛び出し、道を切り開く。

 「こっちだ!」

 リィズとリナに、刃が通って出来た道を指し示し急がせる。

 

 「セイクリッド・ターンアンデット!」

 レイファが、広範囲の退魔呪文を唱える。

 そこにカナミが描いた広範囲の魔法陣から光が注がれ、広場全体を光が覆う。

 「セイクリッド・バニッシュメント!」

 カナミのルーンが発動する。

 レイファのターンアンデットとの相乗効果で、広場全体のアンデットが一瞬にして消滅し、尚且つ広場全体が浄化される。


 「派手っすねぇ。」

 「派手ですねぇ。」 

 その光景を俺と一緒に眺めていた二人が、同じ言葉をつぶやく。

 「まぁ、アンデット戦は、聖女達の唯一の見せ場だからな。」

 カナミ達のお陰で、この場所が浄化されたからしばらくはアンデットも沸いてこないだろう。

 二人を労い、少し休ませることにする。


 「二人とも、休みながらでいいので詳細を話してくれるか?」

 「えぇ、ご主人様。私達は……。」

 リィズとリナが、通路を抜けてここに来た時は、何の変哲もないただの広場だったそうだ。

 周りを見ても何もなく、ここで休息するのが良さそうだと互いに確認し合い戻ろうとしたところで、奥にある扉に気づいたそうだ。

 

 俺は、リナたちが指さす方を見ると……いかにも、という感じの扉が鎮座していた。

 「一応、調べた方がいいと思ったんす。」

 そして、その扉周りにおかしな所はなく、扉に手をかけたところでアラームが鳴り響きアンデットの大群が現れたという事らしい。


 「じゃぁ、一休みしたらあの扉を開けようか。」

 そう言って、リィズ達と扉に視線を向ける。

 「って、えぇー!」

 その視線の先には……無造作に扉を開けるソラの姿があった。


 「ねぇ、おにぃちゃん、中に誰かいるよ?」

 ……ソラが自由過ぎる。

 「とりあえず、行ってくる……。」

 「あ、私も行くっすよ。」

 扉の中をチラチラ見ているソラとミリィの元へ行き、二人を制して中を覗き見る。


 「何じゃ、入って来ぬのか?」

 中から、声が聞こえる。

 声の主の顔は良く見えない。

 俺は思い切って中に入る。


 「よく来たな、お客人。……そんなところに立ってないで中に入って来てはいかがかな?」

 俺達は誘われるままに中に入る。

 目の前に、立派なサロンが広がっていた。

 ……ココはホントにダンジョンの中なんだろうか?

 

 「何を飲むかね?」

 「アイリッシュコーヒー。ホットで。」

 ……つい、そんな事を言ってしまった。

 この世界でコーヒーなんてあるわけないのにな。

 「私はミラ茶のセカンドフラッシュ。レモン添えで。」

 カナミが、お嬢様っぽい注文をする。

 ミラ茶って何だ?


 ……なんか、にぃにとカナミが堂々としていて、かえって怖いっす。

 ……えっと、これはどういう状況なのかしら。

 ……アイリッシュコーヒーって何ですの?ご主人様の好みなら覚えておかないと。

 ………。

 何か、ざわざわしてるな。

 「皆には、適当にお勧めを。」

 

 俺達は勧められるままに席に座る……。

 マジか……ホントにアイリッシュコーヒーが出てきた。

 ひと時のゆったりとした時間が流れる。

 ……。

 ……。


 「はっ、ついまったりとしてしまったが、お前は誰だ!」

 思わず雰囲気に流されてしまったが、ダンジョンの中でこの風景は明らかにおかしいだろ。

 「ウム……誰かと問われても……難しいの……簡単に言えばヴァンパイアかのぅ?」

 部屋の主はカミラと名乗った。

 ヴァンパイアの中でも「始祖」と呼ばれる最古の種族らしい。

 俺の知っている一般的なヴァンパイアは、アンデットのモンスターであり、始祖であるカミラ達とは全く別物だそうだ。


 ヴァンパイアの始祖であるカミラ達は魔族に分類され、長命な魔族たちの中でもさらに長い寿命……平均寿命は5~7万年だそうだ……を持つ種族なのだが、長命種ゆえに出生率が低く種族の繁栄という面が常に不安の種だった。

 その為、それを何とかしようと魔法や錬金術を駆使して作り上げたのが、次世代のヴァンパイアなのだが、定期的に輸血をしないと倒れたり、日差しに弱く肌荒れを起こしたり、ニンニクやニラ、ピーマンなど香りの強い野菜は嫌いとか偏食気味だったりと、病弱な体質でとてもじゃないが次代を任せるには不安要素が一杯のヴァンパイアが出来てしまった。


 しかも、このヴァンパイアたちは重度のコミュ障を患わっており、人に会いたくないと昼の間は引き籠り、人気の少なくなった深夜になってから活動をするというダメっぷり。

 そのくせ「種族繁栄」の目的はしっかりと達成しており、異性を見ると種族構わず襲い掛かり、相手の体内へ自分の体液を混じらわせることにより、同種族のヴァンパイアに変質させるという能力を持っていた。

 襲われ、ヴァンパイアに変質した者達は、元々の種族が持つ特性に加え、加害者であるヴァンパイアと同じ特性を持つようになり、襲われヴァンパイアになった者達が、また別の者を襲うというサイクルが発生してしまった。

 その被害は凄まじく、滅亡した種族もあったという。


 このヴァンパイアたちによる被害が多くなった分、種族が増えるという皮肉な結果をもたらすのだが、当然認めることはできず、始祖たちは次世代のヴァンパイアたちを処分することに決めた。

 しかし、始祖たるヴァンパイアの長命を受け継いだ次世代のヴァンパイアの生命力は半端なく、殺してもアンデットとして蘇ってくるうえ、アンデットになってもその繁殖力は衰えず、被害は増すばかりという始末。

 結局始祖たちは根絶することを早々に諦めたという。

 その頃には各種族の自衛手段も高まり、被害が減っていたこともあり、また、アンデットと言えども、そのままでは500年もすれば肉体そのものが維持できずに崩壊し、消滅するので放置しておくことにしたのだとか。

 ……はた迷惑な話である。

 

 「しかし、何故ここに?他に仲間はいないのか?」

 始祖のカミラがなぜ一人でここに居るのかは不思議だった。

 また、始祖はカミラだけなのか、他にも存在しているのかは、非常に気になるところだった。

 「仲間は、外の隠れ里に住んでおる。私がここに居る理由は……話せば長くなるが…………。」

 そこでカミラは言い淀む。

 何か話したくない理由でもあるのだろうか?

 「まぁ、そうじゃな………一言でいえば…………迷ったのじゃ。」

 「はぁ?」


 カミラの話を纏めると、昔……と言っても200年程前らしいが、知り合いを訪ねて魔王とここに来たらしいが、途中ではぐれて迷ってしまったらしい。

 その上、何らかのトラップに引っかかってしまい、この部屋から出ようとするとアンデット達が湧いてきて出られなくなってしまったとのことだ。


 「あぁ。あのアンデット達か……今なら、浄化済だから出られると思うぞ。」

 「何?それは本当か?」

 アンデット達が大量に沸いていた事、大規模に浄化して今は納まっていることなど、俺は先程の事を話す。

 「そうか!では、私がこの先を案内してやろう。」

 「「「「「「イヤイヤイヤ。」」」」」」

 この一本道しかないところで迷う奴に案内してもらった日には、何年たっても魔王の元に辿り着けないんじゃないだろうか?


 結局、俺達は1時間ぐらい、カミラのサロンで持て成しを受けた後、カミラを伴って先を進むのだった。

 

 「ところで、カミラ。さっき魔王と古い知り合いを訪ねに来たって言ってたけど、魔王ってどんな奴なんだ?」

 「魔王か?うーん、一言でいえば優しい奴じゃ。」

 カミラの話では、魔王は元から魔王ではなかったらしい。

 しかし、あることがきっかけで魔王に成らざるを得なかったそうだ。

 詳細はプライベートという事で教えてはもらえなかったが、魔王という重圧に耐えてでもやるべきことがあり、それだけに強いとのことだ。


 他には、魔王に娘がいて娘に大甘だとか、娘のお土産が何がいいかわからずに部下に聞いて回ったりだとか、娘に「パパ臭い」と言われて10年落ち込んでいたとか、そんなどうでもいい事ばかりだった。

 

 ……なんか、上手くはぐらかされた気もするが、要は知りたいことがあれば自分で聞けという事なんだろう。

 

 「ところで、どこに向かっておるのじゃ?」

 カミラが聞いてくるが……そんな事も知らずについてきたのだろうか?

 「あぁ、魔王に会うために、このダンジョンを抜ける必要があってな。この階層のボス部屋を探しているんだ。」

 俺がそう答えると、カミラが黙り込み……しばらくしてから口を開く。

 「……言いにくいのじゃが、この道はループしておってのぅ。普通ではボスの部屋には辿り着けないようになっておるのじゃ。」

 「……。」

 ………そう言う事は早く教えてくれ。


 「リナ、リィズ、何かわかったか?」

 カミラの話を聞いた俺達は、闇雲に歩き回るのをやめ、仕掛けを探すことに専念していた。

 「なんとなく、この辺りが怪しい気がするっす……。」

 仕掛けの位置や内容をカミラが覚えていればよかったのだが、全く覚えてないらしい。

 「カナ、ミリィ、魔力感知の方はどうだ?」

 「ウン……やっぱり、リィズの言ってる辺りに変な歪みがあるよ。」

 「じゃぁ、この辺りを重点的に……。」


 「おぉ!そうじゃ、思い出した!」

 いきなり大声を出すカミラ。

 「何を思い出したんだ?」

 「この先じゃ。この先に隠し通路があるのじゃ。」

 結界で隠してあるという事だろうか?

 「みんな少し下がって。」

 俺は、一見何もない空間に向けてフォースブレイカーを使用する。

 パリーン!という音と共に結界が砕け散り、先へと進む通路が現れる。


 俺達は、新しくできた道を進んでいく。

 その後も、似たようなことがあり、結界を探しながら壊して進むという作業を半日ほど繰り返して、ようやく目的地らしい広場に到達する。

 その広場の奥には、見るからに怪しい扉が存在していた。

 たぶん、カミラがいた所と同じ作りなのだろう。

 あの扉に触るとアンデットが湧き出てくるに違いない。

 って、えぇ!


 俺の目の前で、止める間もなくソラが扉を開けようとしていた。

 「コラ、ソラ勝手な事をするんじゃない!」

 俺が怒鳴ると、今にも扉を開けようとしていたソラの身体が、ビクッと震え、そのはずみで手の先が扉に触れる。

 鳴り響くアラーム。

 「チッ!結局こうなるのか。」

 俺はファリスを光の剣に変え、湧いて出てくるであろうアンデットに備える。

 「カナ、レイファ。準備ができるまで俺達が押さえ込んでおくから、さっきの奴を頼む。」

 「ウン、任せて。」

 「ご主人様、一時的でも聖属性を付与することは出来ないのでしょうか?」

 リナがそう聞いてくる。

 先程の苦戦を思い出したのだろう。

 「聖属性は使用者に資質がないと扱えないからな。」

 武器そのものの固有特性として聖属性を持っている物は別として、エンチャント等後付けの属性に関しては、使用者の資質によるところが大きい。

 それでも、基本的には強弱の差があるだけで、効果がないというい事はないのだが、聖属性に関してだけは、資質がなければ効果を発揮しないのである。

 

 「そうですか……残念です。」

 落ち込むリナを見て、俺はリナの剣に光属性を付与してやる。

 「聖属性ほどではないが、光属性を付与しておいたので、それなりに効果はあるはずだ。」

 「ご主人様ありがとうございます。」

 そんな事を話している間にも、アンデット達が湧き出してくる。

 「とりあえず、話は後だ。行くぞ!」

 俺はリナやリィズと共にアンデットの群れに対して飛び出して行った。


 30分後、全てのアンデット達を駆逐した俺達は休憩をしているが、ソラはミリィとカナミ、リィズに囲まれてお説教タイムである。

 「勝手な事をすると危ないっす!」

 「ソラちゃん、ダンジョンでは勝手なことしないでね。」

 「ソラ、ダンジョンは外とは違うのですよ。勝手な判断で全滅という事もあるのです。」

 「………。」

 3人に囲まれているソラは、少し不機嫌だった。

 反抗期という奴だろうか。

 まぁ、ダンジョンの中で勝手な動きをしないことを、しっかりと約束させたら助け出してやるか。


 「カミラ、この扉について何か思い出したことはあるか?」

 「そうじゃのぅ。……扉の所にヘキサグラムがないか?」

 カミラに言われて扉を調べると、取っ手の横にヘキサグラムがあった。

 「これの事か?」

 「おぉ、それじゃ。その各頂点のボタンを、決められた順番で押すと扉が開くはずじゃ。」

 「一応聞くけど、その順番は?」

 「知らぬ。」

 だよね……。

 俺は試しに上のボタンを押してみる。

 ゴンッ!……

 何もない上から、金ダライが降ってきた。

 「言い忘れておったが、間違えるとペナルティがあるそうじゃ。」

 そう言う事は早く言えっての。


 ポチッ。……ゴンッ!

 ポチッ。……ビリビリビリッ! 

 ポチッ、ポチッ。……ゴンッ!

 ポチッ、ポチッ。……ガゴンッ!

 ………。

 ………。

 

 何度もトライしては失敗を繰り返すこと1時間。

 ペナルティが、ちょっとビリビリしたりとか、タライが降ってきたりとか、ちょっとモンスターが湧いたりするぐらいで大事ではないとわかってから、皆が変わり替わりボタンを押し始める。

 ちょっとした罰ゲームの感覚だ。


 ポチッ、ポチッ、ポチッ、ポチッ。……ガゴンッ!

 ポチッ、ポチッ、ポチッ、ポチッ。……ゴンッ!ゴンッ!

 ポチッ、ポチッ、ポチッ、ポチッ。……ビリビリビリッ! 

 ポチッ、ポチッ、ポチッ、ポチッ。……ゴンッ!ゴンッ!

 ポチッ、ポチッ、ポチッ、ポチッ………ポチッ!

 ………カチャリッ。

 何度かのトライアンドエラーの結果、ようやく扉の鍵が開く。

 「やっとか……。」

 俺以外の皆にも疲労の色が濃い。

 

 ギギギィィ……。

 扉がきしむ音がする……長らく開けられてなかったようだ。

 「ここは……。」

 部屋の中は、何かの研究室のようだった。

 「ん?誰だ?」

 研究に没頭していたらしい、部屋の主が振り返り誰何してくる。

 「……リッチ?」

 部屋の中にいたのは、魔導師然としたリッチだった。

 「リック、久しぶりじゃのう……300年ぶりになるか?」

 カミラがリッチに話しかける。

 「ん?カミラ?」

 「相変わらず研究三昧みたいじゃのう。」

 カミラが部屋の中を見てそう言う。

 「他にやる事は無いからな。」

 しばらくの間、カミラとリックが思い出話で盛り上がるのを、俺達は黙って聞いていることにした。


 「おぉ、すまぬ。つい盛り上がってしまった。」

 「いや、いいよ300年振りだったんだろ?……ところでこの先へ進みたいんだが、通してくれるか?」

 俺がそう問いかけると、リックから出される雰囲気が変わる。

 思わず、剣に手をかける。

 「ここを通るか……お前らに出来るか?」

 「出来る、出来ないじゃない。やるんだよ!」

 俺はファリスを抜いて構える。

 「ま、待て。」

 リックが慌てたように、押しとどめてくる。

 「勘違いするな。通してやりたいのは山々なのだが……。」

 リックの話では、この先の部屋に先へ進む扉があるそうなのだが……。

 

 「実は、以前ついうっかりとミスをしてしまってな……アンデットであふれかえってるんだよ。」

 リックはうっかりもの……と。

 結局、このフロアにアンデットが溢れかえっているのも、カミラが200年閉じこめられる羽目になったのも全てリックのうっかりが原因だったらしい。

 その事を知ったカミラが、リックを正座させて説教をしていた。


 「ねぇ、レイにぃ。ここで、このフロア全体を浄化しちゃえば早いんじゃない?レイファに手伝ってもらえば出来るよ?」

 カナミがそんな提案をしてくる。

 「まぁ、それが一番早いが……それだと、リックまで浄化しないか?」

 「ダメなの?」

 ……ダメじゃないか?

 「……別にいいか?」

 「ちょっと待つのじゃ!」

 「出来れば、まだ未練があるのだが……。」

 カミラとリックが心なしか涙目になっている。

 「……という事なので、とりあえず全体を浄化するのは無しの方向で。」

 「ちぇー。」

 カナミが、ソラみたいに膨れる。

 元聖女だし、アンデットには思う所があるんだろうが。

 

 「とりあえず、その部屋のアンデットを処理するか。」

 扉をゆっくり開ける。

 「うわぁ……ウジャウジャいるねぇ。」

 「あれを処分するの面倒っす。」

 「まとめて処理する方で行くか……カナ、レイファさっきのもう一回できるか?」

 俺は、カナミとレイファに部屋の中のアンデットを浄化する儀式を頼む。

 「今までよりちょっと大掛かりになるから、5分時間くれる?」

 「了解。リィズ、リナ行くぞ!みんなは援護を頼む。」

 

 アンデットの群れに飛び込み、切裂いていく。

 ゾンビにスケルトン、レイスなど様々なアンデットのオンパレード。

 1体1体は強くないがとにかく数が多い。

 まともに戦っていては消耗していくだけ……エルダーリッチのリックでも手が出せないって言うのは分かる気がする。

 

 「レイにぃ、お待たせ!いっくよー!」

 「お待たせしました、行きます!……セイクリッド・ターンアンデット!」

 レイファが、広範囲の退魔呪文を唱え、カナミが魔法陣を描く。

 「セイクリッド・バニッシュメント!」

 部屋全体を光が包み込む。

 

 「終わったよ。」

 光が収まった後の部屋には清浄な空気が溢れ、アンデットがいた痕跡は全て消え失せていた。

 「おぉ、これで、やっと外へ出れる。」

 リックが喜んでいる。

 やっぱり外に出たかったらしい。


 これで、ようやく長いダンジョンをクリアすることが出来そうだ。

 「さぁ、あと少しだ、皆行くぞ!」

 

※ いつも誤字報告ありがとうございます。

 報告があった以外にも、気づいたところはチョコチョコと直していますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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