表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/153

魔王ダンジョン上層 -後編ー

 「さて、残るはリィズとカナだが……。」

 正直、あの二人と戦闘というのは避けたい。

 手加減なんか出来る相手じゃないからな。


 部屋が見えた、と思ったら、いきなり真空の刃が襲ってくる。

 「すでに戦闘モードってか……ケイオス!」

 俺はケイオスを呼び寄せ、部屋の中に飛び込む。


 「にぃに、待ってたっすよ。勝負するっす!」

 中に居たリィズはすでに精霊化しており、双剣を構えて戦闘モードに入っている。

 これは、とりあえず一戦交えないと収まりはつかないか……。

 「ケイオス、なるべく傷つけるなよ。」

 俺の言葉に応えて小さく震えるケイオス。


 リィズが飛び込んでくる。

 キィン!キィン!

 振り下ろされた双剣を受け止める。

 そのまま押し返そうとするが、すでにリィズの姿は見えない。

 『爆風(ボムッ)!』

 振り向き様、リィズの足元に魔法を放つ。

 しかし、リィズは爆風を利用して、死角から襲い掛かってくる。

 キィン!キィン!

 何とかケイオスで打ち払うが、その時にはリィズは、別の方角へと移動している。

 ……クッ、速い!


 『真空刃(カマイタチ)!』『真空刃(カマイタチ)!』『真空刃(カマイタチ)!』

 俺は、リィズから距離を取り、出の速いワンワードの魔法を連続で放つ。

 リィズは、それを避けながら俺に迫ってくる。

 『真空刃(カマイタチ)!』『真空刃(カマイタチ)!』

 魔法を器用に避け、時には剣で弾き、俺に近づいたところで、双剣が振り下ろされる。


 『衝撃反射(カウンターショック)!』

 俺は受け止める瞬間に魔法を発動させる。

 バシッ!

 双剣とケイオスが触れた瞬間、衝撃波がリィズを襲う。

 リィズはバックステップで自ら後方に飛び、衝撃の殆どを逸らす。


 二人の間合いが広がり、俺とリィズは、互いに剣を構えたまま見つめ合う。

 「にぃには、私の事好き?」

 「当たり前だろ!」

 俺達は、ジリ、ジリと少しずつ間合いを詰めながら会話を交わす。

 リィズは間合いに入った瞬間、飛び掛かって来るだろう。

 俺としては、その前に魔法を放ちたいところだが……。


 「ねぇねより?カナミより?……にぃににとって、私は何番目?」

 リィズがそんな事を聞いてくる。

 女の子ってやつは……。

 「以前、カナミにも同じことを聞かれたよ。」

 「なんて答えたの?」

 ……あと一歩……。


 俺は答える代わりに、リィズの足元めがけて魔法を放つ。

 『炎の爆風(ブラストファイア)!』

 リィズの足元から、炎の柱が伸びる。

 着弾と共に炎の嵐が吹き荒れる。

 リィズはサイドステップで躱そうとするが、すでにそこには俺がいる。

 キィン!キィン!

 ケイオスで、リィズの双剣を跳ね飛ばし、リィズの喉元に突きつける。

 「みんな大事な俺の嫁。順番なんか付けられない!お前らは黙って俺について来い。」

 俺はさっきのリィズの質問に答える。

 

 「……ホント、にぃにはオレ様キャラっすね。」

 リィズは手を挙げて降参の意を示し、その場に座り込む。

 俺は双剣を拾い上げ、リィズに渡してから、横に座る。

 「私が操られていないって事、判ってたっすか?」

 「そんなの、一目見ればわかるよ……エアリーゼ、ファー、いい加減出て来いよ。」

 (うぅ……いつからバレてたのよ!)

 (レイ、ごめんなさい。アリゼ姉さまが内緒だって……。)

 エアリーゼとファーの姉妹精霊が小妖精の姿で現れる。

 「リィズが現れた時、すでに精霊化してただろ?……憑依されていたら精霊化は出来ないはずだ。」

 (盲点だったわ!)

 いや、それくらい気づけよ。

 「やっぱり、にぃにには敵わないっす。」

 リィズは、そう言いながら俺に体重を預けてくる。

 「リィズ相手はギリギリだからな。できれば勘弁してほしい。」

 肩にかかるリィズの重さを感じながら答える。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ほんと、にぃにには敵わない。

 にぃにの言葉を聞きながら私はそう思う。


 ダンジョンに入った途端、ここに飛ばされた時、心の奥底でささやく声が聞こえた。

 にぃにが好き、にぃにを独り占めしたい、私だけのにぃに……。

 ……何をバカな事を言ってるんすか!

 私は心の声を一喝する。

 周りで黒い靄が漂ってるのが見てた。

 ……こいつらですか。

 私は双剣を振るって靄を散り散りに引き裂いた。

 

 (リィズちゃん、聞こえる?)

 「エアリーゼ……無事だったすか。」

 (うん、リィズちゃんが靄を払ってくれたおかげでね。)

 エアリーゼが言うには、心の隙間に忍び込んで憑依するタイプのモンスターらしい。

 ソラ達も憑依されて、にぃにと戦ったんだって。

 「にぃにと……ウン、決めた!」

 このまま操られているふりをして、にぃにと戦おう。

 そしてにぃにの本音を聞き出してやる。

 ほんのちょっとした悪戯心。

 (それ面白そう!ワタシも協力してあげる。)


 結局、にぃにには敵わなかったけど……。

 「でも、ちょっとは本音引き出せたかな?」

 ……大好きだよ。私の伝説の王子様……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「にぃには、このまま、その先へ行くっす。」

 俺が皆の所へ行こうと言うと、リィズがそんな事を言ってくる。

 「この先にカナミがいるっす。私が皆を呼びに行くから、にぃには先に行って、カナミと遊んでくるといいっす。」

 「遊んで来いって……。」

 俺は釈然としないままリィズに聞いてみるが……。

 「カナミの早く来いオーラ感じないっすか?」

 「言われてみれば、なんか不穏な空気が……。」

 「とにかく、後の事は任せて、カナミの所へ行くっす。」

 俺は、リィズに背中を押されて、先へと進むことになった。


 ◇


 「おっそーい!どれだけ待たせるのよ!」

 小部屋に入ると、カナミが腕を組んでぷんぷんと怒っていた。

 「大体センパイは、昔から待ち合わせ時間に遅れてくるんだから……しかも計ったように3分ぴったし遅れで……。」

 「あれは、人待ち顔の香奈美が可愛くてつい……。」

 カナミが懐かしい話を持ち出してくる。

 そんな話をしていると、ついこの間の事のように思えるのが不思議だ。

 

 「何がつい、よ!……まぁ、そんな事はどうでもいいから始めるよ。……ヴィノゥ!」

 カナミがタクトを振り、ロッドに変化させる。

 『爆烈風(ストーム)!』

 いきなりの大技。

 俺の足元に着弾し吹き飛ばされる。


 俺は空中で体勢を立て直し、爆風にまぎれてこちらが見えないであろうカナミに向かって魔法を放つ。

 『炎の爆風(ブラストファイア)!』

 カナミの足元に着弾し、炎の爆風が吹き荒れる。


 ガッキッン!

 土煙の向こうから巨大なメイスが振り下ろされ、それをケイオスで受け止める。

 ガッ! ガッ! キィン! ガンッ! ガンッ! ガッキッン!

 右から、左から、上から、下から……縦横無尽に振り回されるメイスを全て受け止め、弾き、押し返す。

 『風の斬撃(ウィンド・カッター)!』

 『雷の矢(ライトニングボルト)!』

 『炎の矢(フレイム・アロー)!』

 『海原の大渦(ダイダル・ウェイヴ)!』

 『大いなる風の龍(ウィンド・トルネード)!』

 

 時折混じる魔法も、時には躱し、相殺し、時にはカウンターを放って抑え込む。


 ガッ! ガッ! キィン! ガンッ! ガンッ! ガッキッン!

 「大体、センパイは、酷いよ!」

 ガンッ! ガンッ!  ガッ! ガッ! キィン!

 「俺が、何を、したってんだ。」

 カナミのメイスを受け止めながら、応える。


 「私に、黙って、居なくなって。ようやく、会えたら、ハーレム作っていて。」

 ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! キィン! ガンッ! ガンッ! 

 グゥ……重い……。

 「仕方がないだろ。……成り行き、だ!」

 キィン! キィン! ガンッ! ガンッ! ガッキッン!

 「私に、告白するのに、1年以上も、かかった、ヘタレのくせにっ。こっちでは、何人もっ!」

 ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! キィン! キィン! ガッ! ガンッ! ガンッ! 

 右、左、右、下……。 

 グッ……カナミもいつの間にか、近接戦闘の腕を上げているし……。

 「ヘタレで、悪かったなぁ!」

 ガッキッン!

 俺は、カナミのメイスを跳ね上げる。


 そのまま、ケイオスをカナミに突きつける。

 「チェック・メイトだ。」

 カナミは俺をしばらく睨んでいたが、やがて地面にぺたんと座り込み力を抜く。

 「もぅ……負けよ。好きにして。……でも、優しくしてネ。」

 俺を見上げてそう言ってくるカナミの顔は可愛くて……というか、あざとい。

 狙ってやってるだろう。

  

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ふぅ……やっぱり負けちゃったね。

 まぁ、センパイ相手なら仕方がないけど、楽しかったぁ。

 ちょっと、色々モヤモヤしてたのが、スッキリした……かな?

 

 ダンジョンに入って、いきなりここへ飛ばされた時は、ちょっと焦ったけどね。

 バラバラにされて、仲間同士の不和を誘って同士討ち、なんて使い古されてるギミックだもんね。

 たぶん、この周りにフヨフヨしている、黒い霧みたいなものが取り憑くか乗り移るんだよね。

 私は黒い靄に魔力をぶつけて分解する。


 まぁ、普通に考えれば不安を誘って、その隙をついて洗脳か憑依かな?

 人間だれしも小さな不安なんてあるからね。

 私だってセンパイの事……ううん、私だけじゃないな。

 きっとみんなそう。

 どうしても好きな人を独占したいって考えは捨てられないもんね。


 異世界転生なんてなければ……って考えたこともあったけど、今更だしね。

 それより、この世界で再会できたことの方がよっぽど嬉しいよ。

 まぁ、ハーレム作っちゃったのは仕方がないとしても、私の事忘れてなかったってことで許してあげる。

 おかげで、美鈴以外に友達のいなかったこの私に、こんなにたくさんの友達が出来たんだしね。


 でも、やっぱり、センパイの事を考えると、切なくて、愛おしくて……。

 邪魔が入らないところでゆっくりと愛し合いたいと思っちゃうのは、仕方がないと思うのよ。


 私は隣に座ったセンパイに腕を絡める。

 そしてセンパイを見上げて……目を閉じる。

 センパイの息遣いが近い……。


 スパーン!

 「そこまでっす!」

 軽く唇が触れたところで、リィズからのツッコミが入る。

 もぅ!いい所で邪魔してっ!

 「リィズぅ……よくも邪魔したわねぇ!」

 私はリィズを睨みつける。

 リィズの時は私が邪魔するよ!

 「小さい子が見てるっす!」

 そう言って、リィズがソラを指さす。

 「ぐっ……それはそれよ!」

 「そうだよ、ボクもう子供じゃないよ。おにぃちゃんとキスだってできるよ。」

 ソラちゃんが、センパイへ駆け寄るのを、辛うじて止める。

 「リィズ!ちゃんとソラを止めなさいよ。」

 「……今のは確かに悪かったっす。」

 

 うぅ……私のターンが、乱入で終わりだなんて……。

 私はもう一度センパイに抱き着く。

 今度、ロマンティックなところに連れて行ってよね。

 ……もちろん、二人っきりでだゾ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 カナミといい雰囲気の所にリィズからの邪魔が入る。

 いつの間にかみんなが来ていたらしい。

 ちょっと不満顔のカナミ……そんな顔も可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みってやつかな。

 ドタバタと賑やかな風景。

 いつもの風景……二人っきりもいいけど、こんな賑やかなのも楽しい。

 俺は、そんなカオスになりつつある情景を、しばらくの間、ぼーっと眺めていた。


 ◇


 「さて、そろそろ先に進もうか?」

 ドタバタが落ち着き、少しの休憩を入れた後、俺が皆に声をかける。

 皆がそろった安心感からか、誰の顔にも疲れは見えない。

 このフロア、小さな小部屋が沢山あったけど、基本的には一本道だ。

 だから、迷ったり戻ったりする心配はないのだけど、罠があるかもしれないので、リィズを先頭に慎重に進んでいく。


 「あっと、そこに罠があるっすよ……進むならカナミが進むといいっす。」

 「なんでよっ!」

 カナミとリィズは相変わらず仲がいい。

 二人にそう言うと「どこがっ!」って声を揃えて言われるが、揃っている時点で十分気が合ってると思う。

 

 「よく考えたら、まだ、ダンジョンの中に入ったばっかりなのよね。」

 カナミがそんな事を言ってくる。

 「確かにな。いきなり、バラバラになったから少し時間かかったけど。」

 「そう考えると、この後もどんな仕掛けがあるか分からないって事だよね?」

 「うーん、ただ一つわかっていることは、お約束に従うなら、次の階層前にボスがいるって事ぐらいかな?」

 「そうだよねー。」


 俺とカナミが「お約束」について話しているうちに、大きな扉の前に辿り着く。

 ……まぁ、この奥がボス部屋、かな?

 「扉周りにはトラップらしきものは見つからないっすよ。」

 調べていたリィズが報告をくれる。 

 「じゃぁ、行くか。」

 俺は一通り、皆の顔を見回してから、ゆっくりと扉を押し開けた。


 扉の奥は大広間になっていて、奥の方に玉座っぽい豪華な椅子があり、そこに一人の魔族らしきものが座っていた。

 ……イヤ、魔族というより、アンデット……リッチか?


 「フハハハ、よくぞここまでたどり着いた。あの罠を潜り抜けてきたのは大したものだ。ここ数十年の間には一組もここまでたどり着いたものはいなかったからな。」

 俺達の間に緊張が走る。

 「一応確認するが、あの転移陣でバラバラにしたり、黒い靄で憑依したりってのは、全てお前の仕業か?」

 「フハハハ、そうとも!不安を煽り、心の隙間を広げ、不和を招く!お互いを信じられない馬鹿どもは勝手に自滅していく。どうだ素晴らしいだろう!……って何だ?何だ?」

 高笑いをして、自分のやったことを自慢げに語る、リッチ。

 俺とカナミとランを除く他のメンバーが、リッチを取り囲む。


 「そう、あなたの仕業なのね……。」

 ミリィが最終確認というようにつぶやく。

 「そうとも!吾輩以外あのような……。」


 「「「「「「天誅!」」」」」」

 リッチが最後まで言う前に、皆からの一斉攻撃を食らい、あっという間に塵となる。

 『浄化の炎(フレイム)!』

 その塵をカナミが浄化の炎で燃やし尽くす。


 南無……。

 見せ場も何もなく消滅してしまった、一応、フロアボスのはずのリッチに対し、黙祷を捧げておく。

 成仏しろよ。


 リッチの座っていた玉座の後ろには、お約束通り次の階層へと続く扉があった。

 俺達は互いに顔を見合わすと、ゆっくりと扉を開けて次の階層へ進むのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ