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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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ミネラルドの鍛冶職人

 モフモフ……モフモフ……。

 カナミが一心不乱にモフっている。

 「なぁ、レイ……そろそろ……。」

 縛られて動けずにいるブランが涙目で訴えてくる。

 「……スマン。諦めてくれ。」

 俺はブランから目を逸らす。

 「うーん、モフ度70%。この微妙な手触りが何とも言えないわ~。」

 カナミがモフりながらそんな事を漏らす。

 「微妙言うな!それより、はよぅ放しぃや……ひゃんっ!」

 カナミに反論しかけたブランだが、尻尾を撫でられて硬直してしまう。

 「何を言ってるのかなぁ?」

 カナミがツツーと尻尾を付け根から逆なでする。

 「アン……や、やめてぇや……、ソコは……。」

 ブランの口から艶を含んだ声が漏れる。

 「なぁに?こうして欲しいのぉ?」

 カナミの手が更に尻尾の付け根を撫でまわし、ブランの耳に息を吹きかける。

 「ひゃん!……もぅ……堪忍や……ダメェ……。」

 

 「カナミは、獣人相手だと性格が変わるっすよ。」

 「俺も長い付き合いだが初めて知った……というか昔は獣人に縁がなかったからな。」

 「リナも、自分の身を守るために、他のメイドを生贄にしてるっすよ。」

 俺とリィズは嬌声を上げさせられているブランを気の毒に思いつつ、そんな会話をしていた。


 「アッ……アン……ダメェ、ソレ以上は……堪忍してぇ……。」

 ブランの嬌声が激しくなってくる。

 「そろそろ、止めた方がいいっす。カナミもここのところ欲求不満だったせいで歯止めが利かなくなってるっすよ。」

 見ると、カナミの手が、耳や尻尾以外の所まで弄っている。

 これ以上続けさせると18禁に引っかかる。


 とりあえず、俺がカナミを引き離し、リィズがブランの乱れた衣服を直してやっている。

 「ヤダー、もっとモフるぅー。」

 子供の様に駄々をこねるカナミ。

 仕方がない。

 「トライアングラー。」

 俺が呼ぶとポンッ、ポンッ!と現れるアングラ兎の3匹。

 こいつらは、元々カナミが連れてきたのだが、最近では俺のモフモフ相手になっているせいか、凄く懐いてくるようになり、いつの間にか召喚獣へと進化していた。

 なので、このようにいつでも呼び出せるようになっている。

 「とりあえずこいつらに構ってもらえ。」

 俺は、カナミにトライアングラーを預け、ブランの方へ向かう。


 「うぅ……初めてやったのにぃ……ウチ、もぅお嫁に行けぇへん……。」

 ブランが不穏な事をつぶやいている。

 リィズがよしよしと頭を撫でて慰めている。

 「アンタの所為や!、アンタが悪いんや!」

 俺が近づくとブランが、激しく文句を言ってくる。

 「あぁ……悪かったよ。」

 「謝ってもダメやで、お嫁に行けぇへんカラダにしたんやさかい、責任取ってもらうで。」

 「責任って……。」

 「ウチの事、責任もって最後まで面倒見るんやで!……もぅ、レイの所しか行くところなくなったさかい……。」

 顔を赤らめながらそんな事を言うブラン。

 えっと、これはアレか?……鍛冶職人ゲット……という事でいいんかな?


 「ひゃん!」

 いきなりブランがおかしな声を上げる。

 「イヤ……やめて……アン……。」

 ミルとリィズがまだ縛られたままのブランを、後ろから手を回して胸を揉みしだいている。

 「私の目の前でにぃに色目を使うなんて、いい度胸してるっす!」

 「ひゃん!……やめてぇ……。」

 さらに力を入れるリィズ。

 「ちょ、ちょっと、リィズ。」

 俺は慌てて止めに入る。

 「にぃには黙ってるっす!この女に、愛人の立場ってものをわからせるんす。……カナミもこっちきて一緒に教えるっすよ!」

 おいおい……。


 「レイ……助けてぇや……。」

 ブランが助けを求める。

 それを遮るようにカナミが立つ。

 「何甘えてんのよ!レイにぃのそばに居ることは許すけど、あくまでも愛人なんだからねっ!」

 カナミの迫力に「ひぃ!」と怯えるブラン。 

 それを見たカナミはブランを抱きしめる。

 「ごめんね、怖がらないで。あなたが立場をわきまえている限り、私はあなたの味方よ。」

 耳に息を吹きかけ、尻尾を撫でながら囁くように言うカナミ。

 リィズは、ブランの胸を執拗に攻めたてている。


 「おいで、トライアングラー」

 それからしばらくの間、ブランを中心に大人の時間が続いていたが、俺は背中を向けてトライアングラーたちと一緒に癒しの時間を過ごしていた。



 「うぅ、レイ、久しぶりの再会やってのに、酷いやんか。」

 ブランが恨めしそうに俺を睨む。

 「アハハ……まぁ、とりあえず食べよう。」

 あれからしばらくして、ようやく解放されたブランを宥めて、食堂の椅子に座らせた。

 今はカナミお手製の料理を皆で囲んでいる所だ。

 「でも、どうして急に?」

 「あぁ、サガ国王が魔族領に出兵したんじゃないかって言う噂を聞いてな……何か情報がないかと。」

 「うーん、あんま聞かへんなぁ。この間『レミアの穴』を大攻略する言うて、かなりの人員が送りこまれたようやけど。」

 「結果は聞いてるか?」

 「ほんの数人、偉い人だけが戻ってきたやけやで。結構大変やったって言う噂や。」

 ブランの話だと、5人以上の人員がレミアの穴に潜っていったが、戻ってきたのは数人で、他は皆ダンジョンの犠牲になったと言われているらしい。

 その中には、他国からの兵士もいたらしく、外交問題で国王の周りはバタバタとしているとのことだ。

 「そん時なぁ、実はウチにも声がかかってん。巻き込まれとう無いから断ったんやけど、それから監視の目が厳しゅうなってな……。」

 そろそろ潮時だと思って荷造りしかけていた所で俺達が現れたという事らしい。

 

 「こんな状況やから、てっきり敵や思うたんやけど……。」

 そう言って、カナミとリィズの方へ眼を向ける。

 「でも、ホンマにええんか、あんな子たちがおるのにウチを……。」

 ブランが顔を赤らめて俯く。

 「あいつらがいいって言ったんだったら問題はないさ。」

 (そんな事より、ブランはいいの?レイについていくのは生半可な覚悟じゃ無理よ?)

 「ファーやないか。久しぶりや。」

 ファーとの再会に喜ぶブラン。

 二人は結構気が合ってたからなぁ。

 「覚悟か?さっきリィズにも言われた。すべてを投げ打つ覚悟がなければ、ここで手を引きぃって……。優しい子なんやね。」

 (まぁ、アリゼ姉さまがあそこまで入れ込む子だからね。精霊使いの資質もないのに精霊に好かれる。稀な子であることは確かね。)

 「覚悟云々はよぉわからへんけど、ウチはレイについていくことに決めた。それは後悔せぇへん。……あの時ついていかへんかった事、後悔してるんや。だから、今度は間違えへん。」

 「そこまでの覚悟があるんだったら大丈夫っすね。……あとはカナミには気を付けるっすよ。」

 途中でリィズが口をはさんでくる。新しい仲間として認めたらしい。

 ただ、後半は同情心溢れる目つきになっていた。


 それから1週間ほど、ミネラルドの屋敷を拠点として情報収集に勤しんだ。

 俺は、入国手続きがてら、ギルドのキラルゥに会い、情報を探ってみたが大した情報を得ることはできなかった。

 リィズもカナミも、独自に動き、情報を集めていたがあまり芳しくなかったようだ。


 「結局、大した情報はないって事だな。」

 「そうっすね。……ココは国王が勝手に動いてるので勝手が違うっすよ。」

 「ウン、それは私も感じた。後、無関心な人が多くて情報が集まりにくいわね。」

 リィズやカナミの言うとおり、国王の独断が強いうえ、政治に無関心の人々では、まともな情報が集まらないだろう。

 それこそ、側近にでも聞かない限り……。

 「そう言えば、ブランを見なかったか?」

 ブランは朝から出たまま、いまだに戻ってきていない。

 「見てないっす……イヤな予感がするっすね。ちょっと調べてくるっす。」

 そう言ってリィズが出ていく。


 「にぃに、大変っす!」

 しばらくすると、リィズが慌てて戻って来る。

 「リィズ、落ち着いて、どうしたの?」

 カナミが、リィズに水を差し出しながら落ち着かせる。

 「ふぅ……水助かったっす。にぃに、ブランが連れてかれたそうっす!」

 「連れていかれた?何処に!」

 リィズの言葉に、俺も慌てる。

 「よく分からないっすが、連れて行ったのが衛兵だって言うっすから王宮かもしれないっす。」

 「チッ!」

 俺は手早く準備を整えると、家を飛び出す。

 「あ、レイにぃ、待って。」

 「にぃに、私も行くっす。」

 二人が慌てて追いかけてくる。


 「レイフォードさんですね。」 

 俺が家を飛び出すと、待ち受けていたかのように衛兵たちに取り囲まれる。

 「何だお前ら?急いでるんだ、通してくれないか?」

 俺は彼等の横を抜けようとしたが、押しとどめられる。

 「陛下がお呼びです。我々と一緒に来ていただけますか。」

 俺は周りを見回す。

 完全に取り囲まれている。

 リィズとカナミは囲みの外、家のドア付近でこちらの様子をうかがっている。

 彼女たちと協力すればこんな囲みぐらいわけなく突破できるが……。

 (ファー……リィズ達に伝えてくれ。俺はこのまま王宮に行く、お前らは別口でブランの救出を頼む、と)

 (わかったわ、任せておいて。)

 俺が小声でファーに伝言を頼むと、快く引き受けてくれ、カナミ達の方へ向かってくれる。


 「国王が、俺ごとき一介の冒険者に何の用だ?……まぁいい、行ってやるよ。」

 俺は、衛兵たちについていくことにした。

 途中カナミ達に目をやると、俺を見て頷いてくれた。


 謁見の間。

 中央前方にはサガ国王の姿が、その横には側近たちの姿が見える。

 俺は臆することなく、サガ国王の前まで歩いていく。

 「こ奴、無礼な!」

 「頭が高いぞ!」

 俺の態度に口々に責めたてる側近たち。

 「よい。」

 「し、しかし、国王様。こ奴の態度は……。」

 「よいと言っておる!お前たちは下がれ!」

 騒めく側近たちを一喝したサガ国王は、側近たちを下がらせる。

 口々に文句を言いつつ部屋から出ていく側近たち。

 やがて、謁見の間には俺とサガ国王だけが残される。


 「久しぶりだな、レイフォード君。いや、魔王レイフォードと呼んだ方がいいのかな?」

 俺は、内心サガ国王が「魔王」と呼んだことに動揺した。

 どこまで知っているんだ?

 しかし、動揺していることが分からないように平然と答える。

 「奴らが勝手に言ってるだけだ、俺はまだ魔王じゃない。」

 「まだ(・・)か……。ウハハハハ……。それは時期に魔王になるという宣告でいいのか?」

 サガ国王が笑う。

 「そんな気はないが、もしそうだと言ったら?」


 ガッキーンッ!

 いきなり切りかかってくるサガ国王の剣を、俺はファリスで何とか受け止める。

 「魔王は敵だ!ここで息の根を止めてやろうか?」

 キィン! キィン!

 金属と金属がぶつかり合う音が謁見の間に響く。

 「いきなり斬りかかるなんて、らしくないな。それとも、不意打ちでもしないと勝てないと思ったか?」

 俺は国王の剣劇を受け止めながらも、挑発する。

 キィン! キィン!

 「ほざけ!若造が!」

 キィン! キィン!

 「ダンジョンを抜けての魔族領への侵攻……何を考えている?」

 「お前には関係のない事だ……それとも、魔族側についたのか?」

  キィン! キィン!

 「はんっ、俺には魔族も人族も関係ねぇ。平和にダラダラとしてたいんだよっ!」

 ガキッ!キィーン! 

 俺はサガ国王の剣を打ち払い、一旦距離を取る。

 「ブランをどうした!」

 俺はサガ国王を睨み問いかける。

 返答次第ではすぐ飛び掛かれる体勢は崩さない。


 「ふっ、彼女は今頃無事に戻っているはずだよ。」

 サガ国王はそう言って剣を納める。

 「何のつもりだ?」

 「いや、君と話したかっただけだよ。……近いうちにこの国の西側……魔族領との国境付近で大規模な争いが起きる。その時、君はどちらにつくのかな?」

 俺は警戒しながらも、ファリスを光の粒子に戻す。

 納剣しなかったのは、いつでも反撃できるようにするためだ。

 「君は人間だろ?魔族が憎くはないのか?魔族は滅ぼされるべき種族なんだよ。それが分からないのかね?」

 「フン、勝手にやってろ。俺を巻き込むんじゃねぇ!」

 「君には失望したよ……まぁいいだろう。しかし、君は国王たる余に剣を向けた。この罪を購ってもらわないといけないなぁ。」

 「勝手な事を!斬りかかってきたのはそっちだろうが。」

 俺は、国王から距離を取り、いつでもファリスを顕現できるように身構える

 「フム、そうだな、君へのこの国における特権をすべて剥奪、国外追放に処する。……どうだ?中々温情のある罰だろう。」

 「それは、それはありがたいこと……でっ!」

 バキューンッ! バキューンッ! ドゥォーン!

 ドラグーンから放たれた3発の魔力弾。

 2発はサガ国王の帆ををかすめ、1発は足元へ着弾。

 爆風にまぎれて、俺は謁見の間を飛び出す。

 そのまま、大きな窓をぶち破り、外へ飛び出す。

 4階ぐらいの高さから飛び出した俺は、コントロールフォールの魔法で、落下速度を調整し中庭へと降り立つ。

 謁見の間付近には、騒ぎに気付いた衛兵たちが集まっている。


 『(ボム)!』

 俺は、以前仕掛けた魔力爆弾を起爆させるための魔力を送る。

ドゥォーン! ドゥォーン! ドゥォーン!


 城のあちらこちらから爆発が起こり、城内が騒然とする。

 俺は、その騒ぎにまぎれて城を脱出し、家へと向かう。

 (ファー、聞こえるか?皆はどこにいる?)

 (レイ、無事?みんなは家の前にいるわ。ブランも一緒よ。)

 ファーの言葉を聞き、ホッとする。

 (みんなに伝えてくれ。俺が着いたらすぐそこの転移陣から脱出する。もうこの国には戻れないからそのつもりで準備してくれとブランにも伝えてくれ。)

 (わかったわ。助け必要?)

 (いや、もう5分とかからずに着くから大丈夫だ。)

 (了解。待ってるわ。) 

 ファーに念話で指示を出しながら、家に向かって走る。

 俺達が転移した後、転移陣を跡形もなく消さないといけないので、その準備に少し時間が必要だ。

 城内があれだけパニックになっていれば、何とか時間は稼げるはずだが。


 「みんな無事か!」

 俺は家の中に飛び込むなり、そう声をかける。

 「にぃに、無事だったんすね。」

 俺の姿を見て、リィズが飛びついてくる。

 カナミもブランもホッとした表情で声をかけてくる。

 「無事でよかった。」

 「迷惑かけて、堪忍や……。」

 「細かい事は後だ、すぐ脱出しないとヤバい!」

 「レイにぃ、何があったの?」

 カナミが、聞いてくる。すでに脱出の準備は終えているようだ。

 「国王が喧嘩吹っ掛けて来たから、城を爆破して逃げてきた。」

 俺は簡潔に答える。

 「それ、反逆ちゃうの?」

 ブランが青ざめる。

 「何やってんすか……。」

 リィズが呆れかえったように言う。


 「とにかく、全ては脱出してからだ。ブラン、荷物はまとまってるか?」

 「う、うん、大丈夫や。いつでも行けるで。」

 俺達は転移陣のある部屋へ移動する。

 「これをこうして……。」

 俺は、結界石を外して解除する。

 いくつかの魔法陣を書き、中央に魔晶石を埋め込む。

 「みんな、こっちへ。」

 みんなが転移陣に乗る。

 俺は、周りの魔晶石へ魔力を注ぎ込むと、魔晶石から光があふれる。

 全部の魔晶石が光っているのを確認して転移陣を起動させる。

 転移する寸前魔晶石の光で部屋全体が輝くのが見えた。


 一瞬後、俺達は魔王城の転移室に居た。

 俺は転移陣を調べ、ミネラルド国の屋敷とのリンクが完全に途切れているのを確認する。

 「ふぅ……何とかなったな。」

 「さっき、凄い魔力だったけど、何したの?」

 カナミがさっきの現象について聞いてくる。

 「あぁ、転移陣毎魔晶石を暴発させた。今頃、あの屋敷は半壊しているだろうな。」

 「大丈夫なの?」

 「こっちには影響ないし、あっちは……もう行かないところだから関係ないだろ?」

 「よければいいんだけど。」

 カナミが釈然としない顔で答える。

 実際、あの国ではお尋ね者になっているので行きたくても行けないんだから、気にすることないのに。

 

 「えっと、その……ウチはどうしたら……。」

 知らないところに来たせいでブランが戸惑っている。

 「あぁ、ブランはこれから、俺達と一緒にココで暮らすんだ。鍛冶とか色々腕を振るう場もあるから安心してくれ。」

 俺はそう言うと転移室を出る。

 まだ不安そうにしているブランを、カナミとリィズが傍について色々話している。


 「ま、とりあえずは、皆への紹介と魔王城の案内だな。」

 俺は安心させるように、笑顔でブランに告げる。

 「ようこそ、魔王城へ!」



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