※ 1万PV記念SS 例えばこんな日常(地球Ver.)
1万PVを超えた記念SSです。
本編の続きを待っていた人、ごめんなさい。
「……きて、……きてったら!」
ん……どこに行けばいいんだ?
「何寝ぼけてんの!早く起きてったら!」
ん?あぁ、リィズかぁ?……もう少しだけ……。
バシッ!
「うわぁ!」
いきなりの衝撃に、俺は慌てて飛び起きた。
「な、なんだぁ?」
ここは……俺の部屋?
俺はベッドの上で……周りを見るとあきれ顔の美鈴と、ハリセンを持った香奈美がいた。
「何故、ここで、梨珠の名前が出てくるの!ここは愛しの香奈美ちゃん!じゃないの!」
ぷんぷん、と怒っているのは水上香奈美……一応俺の恋人だ。
まぁ、一応というのには訳があって……ま、いいか、そんなことは。
「朝からイチャつくのもいいけど、そろそろ時間じゃない?」
あきれ顔で言ってくる美鈴……彼女は俺の妹だ。
最近知ったのだが、カナミとは中学の時からの親友らしい。
「そうだった!もう行かないと。じゃぁ、センパイ。今日もお昼にいつもの所でね!……美鈴行くよ!」
そう言って、あわただしく部屋を出ていく、香奈美と美鈴。
何だったんだ?
ふと、ベットサイドにおいてある時計を見ると8:05の表示。
っと、急がないと遅刻だな。
着替えてリビングに行くと朝食が用意してある。
一緒に置かれたメモには……
「香奈美様の愛情朝食だゾ。よく味わって食べてネ。」
……と書いてある。
残念ながら、味わう暇はないのだよ。
そう思いながら、俺は玉子焼きサンドを咥える。
……ウン、いつもながら香奈美の玉子焼きサンドは絶品だな。
俺は食べながら仕事に行く支度を整える。
俺は最後の玉子焼きサンドを手に取り、家を後にする。
職場までは10分とかからないが、そろそろ出ないとまずい。
俺と香奈美はUSOというMMORPGで知り合った。
もう4年以上前の話だ。
しかし、実際にリアルで顔を合わせたのは2年ぐらい前だったりする。
それから、事ある毎に遊びに行ったり、一緒にお昼を食べたりなど、一緒にいる時間が増えて、この間俺から告白して、晴れて恋人同士となった……はず。
はず……というのは、香奈美からの返事をもらった記憶がないからだ。
嬉しすぎて記憶が吹っ飛んだ?
イヤイヤ……。
でも、まぁNOなら、こんな風に、一緒にランチを食べたり、毎朝起こしに来たりはしない……と思う。
「センパイ?何考えてるの?」
弁当箱を広げながら香奈美が聞いてくる。
「いや、まぁ……。」
俺は笑いながら誤魔化す。
告白の返事なんて、いまさら聞けるわけがない……下手に聞いたりすると「聞いてなかったの!」と地雷を踏みかねない。
「変なセンパイ……はいアーン。」
香奈美がフォークに突き出した玉子焼きを差し出してくる。
おっと、いきなり来たか。
誰も見ていないとはいえ、少し恥ずかしい。
でも、と覚悟を決めたところで、横から、パクっと奪われる。
「むぐむぐ……美味しいっす。悔しいけどカナミの玉子焼きは絶品ですね。」
「ありがと……って、なんでアンタがここに居るのよ!」
俺から玉子焼きを奪った、コイツは梨珠……苗字は忘れた。
香奈美と同じ学園の制服を着ている。香奈美と美鈴のクラスメイトらしい。
「いや、香奈美が、いつもの様にコソコソと出ていくから、後をつけたっす!」
「アンタは、いつもいつも、おいしい所で邪魔するんだから!」
「えぇー。キスするときは邪魔しないっすよ。」
「……見てたのっ!」
香奈美が真っ赤になってあたふたする。
「そのあわてぶり、したんすね。いつ、どこで……。」
梨珠が香奈美をからかい始める。
いつもの事だ。
「いつも騒がしいですね。はい、彼方さん、アーン。」
あまりにもの自然な流れに、つい、差し出された唐揚げを口に入れてします。
もぐもぐ……ウン、うまい。
「……って、美里!?」
いつの間に居たんだろう。
俺の隣で、にこにこと笑いながら、今度はウィンナーを差し出してくる女性は「森野美里」……俺の同僚だった。
薄いライムグリーンのスーツ姿がよく似合っている。
「どうしたんですか?彼方さん。私の顔に何かついてますか?」
そう言って、にっこりと微笑む笑顔は大変魅力的で、入社以来、美里を狙っている男性社員の数多い事。
ここで一緒にランチをしてるのがバレたら、酷い目にあうこと間違いなしである。
美里に差し出されたウィンナーをモグモグとしながら、そんな事を考えていた。
「あー、美里!アンタ何抜け駆けしてるのよ!」
梨珠とじゃれ合っていた香奈美が美里に気づく。
「あ、ミリ姉も来たんだ。今日のお弁当何?」
梨珠は早速、美里のお弁当からハンバーグをつまむ。
「もぅ、センパイも、こっちを食べて!、アーン……。」
そう言って差し出される玉子焼きを、俺は口にする。
もぐもぐ……ウン、今日の玉子焼きも美味しい。
梨珠も美里も、実はUSOのユーザーだったのが判明したのはつい最近の事。
香奈美が一時期USOにIN出来ない時期があり、その時に知り合ったのがこの二人。
ようやく香奈美がIN出来るようになった頃には、ここにはいないメンバーを含めてギルドを設立するかという話が持ち上がっていた。
香奈美も加えて、ギルドを設立しギルドホームで他愛のないおしゃべりをしているとき、香奈美がうっかりとリアル情報を漏らしてしまった。
普段俺と二人だけの時には気にせずにいた事と、ギルド内の気安い雰囲気でついうっかり……まぁ、気持ちもわからないでもない。俺も何度かやりかけたしな。
まぁ、それがきっかけで梨珠が香奈美のクラスメイト、美里が俺の同僚、ここにはいないが、他のメンバーも近所に住んでいることが明らかになった。
って言うか、出来過ぎじゃね?
そんなわけで、2年ほど続いていた、香奈美との二人っきりのランチタイムだが、身バレしたため、最近はこのように乱入されることが多くなった。
まぁ、二人っきりもいいけど、こういう賑やかのも悪くないと心から思う。
「あっと、せっかくだから今の内に伝えておくな。今夜9時ドラゴンの森に行こうと思うのでそのつもりでよろしく。」
「いよいよっすか!腕が鳴るっす。」
梨珠はUSOではアサシン系列のシャドウダンサーだ。
その双剣から繰り出される各種の攻撃はウチ一番のダメージディーラーと言っても過言ではない。
「9時ですね。……部長とのお食事断らないと……。」
いや、相手部長さんでしょ?……っていうか、部長既婚者のくせに何手を出そうとしてんの!
リアルで色々と問題がありそうな美里はUSOでは精霊使いをやっている。
攻撃、回復、補助と後衛のオールラウンダーだ。
「9時って……天ちゃん大丈夫なの?」
まだ中学生の天が参加できるかを心配する香奈美は、クレリックをやっている。
回復、補助がメインだが、たまに前衛に突っこんできてメイスを振るう時もある。
本人は「火力より、女子力だよ!」と言って、効率の良い装備より見た目重視なので、攻略難易度が上がることもしばしばある。
「あぁ、ソラに聞いたら、10時までは大丈夫だそうだ。……その後はタイブレークとか言ってたけどな。」
話に出てきた天はUSOでは珍しいガンナーをやっている。
『呪歌』のスキルも持っている為、支援中心のプレイスタイルだ。
彼女は近所に住む中学生で、初めてリアルであったときは、俺達も通っていた中学のセーラ服を着ていた。
祖父がロシア系のクウォーターだという、天の髪はアッシュブロンドというのだろうか?銀髪とまではいかないが、日に当たるとキラキラ輝いて見えたのが印象的だった。
天は中学生の為、余り夜遅くのプレイが出来ない……結構親の目を盗んでやっているそうだが、見つかると強制退場という事もしばしば……。
まぁ、最近はそれをネタにもしているので俺達も天自身もあまり気にせずに遊んでいる。
他にもメンバーはいるが、メインはこの5人でいることが多い。
「属性龍……楽しみっすね。」
キーンコーンカーンコーン……
梨珠が言うと同時に、遠くでチャイムが聞こえる。
「うわ、もうそんな時間……うぅ、余りイチャイチャできなかたよぉ。」
しょげかえる香奈美に、俺は「夜待ってるから」と囁く。
明日は土曜で休みだから、遅くまで一緒にUSOをやるのもいいだろう。
「ウン、また夜ね。」
真っ赤になった香奈美とそれを冷かす梨珠が学校へと戻っていく。
それを俺と美里は見送ってから、会社へと戻る。
……一緒に戻ると、なぜか、部長からのあたりが強くなるんだよなぁ……。
夜、俺達はUSO内のギルドホームで待ち合わせをする。
時間までまだ早いので、雑談しながら時間つぶしだ。
「ねぇ、センパイ。今日の玉子焼きどうだった?」
背中越しに聞いてくる香奈美。
「あぁ、久しぶりの所為かな?凄く美味しかった。」
お互いに背中合わせに体重をかけ合いながら、それぞれのモニターを見てプレイしているので、どのような表情をしているかわからないが、照れて真っ赤になっているであろうことは想像がついた。
「ねぇ、センパイ……。」
「うん?」
「いつまでも、こういう日がずっと続けばいいね。」
「あぁ、そうだな。」
俺はいつかも感じたこの気持ちを胸の奥底で噛みしめる……そうだ、いつまでもこの時間が続けばいい……。
「……パイ。……センパイ?」
香奈美の声が遠くで聞こえる。
「え、ちょっと、寝落ち?……早くない?……疲れてたのかなぁ?」
◇
「……ぃ。……パイ……センパイ。起きて!」
「ン、あぁ、香奈美か……どうした?」
「どうした?じゃないよ。もうみんな集まっているよ。」
目の前には見慣れた巫女装束のカナミ……USOっていつからVRになったんだ?
「まだ寝ぼけてるの?早く行かないと、リナが困ってるわよ。」
……言われて、段々意識がはっきりしてくる。
あぁ、そうだ、ここは魔王城。
……魔王城?
「なんだか、おかしな夢を見てたような……懐かしい様な……。」
「あれ?センパイも?……私もさっきまで、懐かしい夢みてた気がするんだよねぇ。」
カナミが振り返って笑う。
「あ、そうだ、センパイの事、ちゃんと好きですから、安心してね。」
不意に、そう告げるカナミの目は笑っている。
そんな不安そうな顔をしてたか?
「うん、わかっている。」
俺はちょっとだけ、強がってそう言ってみる。
カナミの笑顔が更に広がる。
「だよねー。」
カナミが俺の横に来て腕を絡め、見上げながら言う。
なんだか、こういうやり取りがくすぐったい。
「にぃにー、カナミー、早く来るっす!」
向こうでリィズが呼んでいる。
俺達は互いに顔を見合わせると、クスリと笑いリィズ達が待つ方へ走り出した。




