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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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火種

 「ご主人様、リザード族から面会の依頼が入っております。後、ゴブリン族とハーピー族、他、色々な種族からの面会要請が入っておりますがいかがいたしましょう。」

 リナが、魔族からの面会依頼を伝えてくる。

 

 俺がサキュバス族とオーガ族の命主になったことが各地に知れ渡ると、庇護下に入りたいという種族が増えた。

 俺がアドラーとやりあったことも知れ渡り、さらに輪をかけた。

 おかげで毎日のように種族代表からの面会依頼が入ってくる。

 

 「面倒だなぁ……ハーピー族なら会ってもいいかぁ?」

 俺が適当に答えていると、誰かが入ってくる。

 「その様な事を言わず、リザード族と会ってやってくれぬか?我らに連なる者達でもあるからのぅ。」

 「そうなのか?スイちゃん。」

 声の主を見ると、ソラぐらいの年齢の少女がいた。

 ふわりとしたワンピースにふわふわとした布が棚引いている。

 いわゆる羽衣という奴だろうか?

 よく似合っているが……中身はあの水龍だ。

 ちなみに「スイちゃん」とはソラが名付けた。

 水龍だからスイちゃん、だそうだ。

 どうかとも思うが、本人が気に入ってるので良しとしよう。


 「で、スイちゃん、リザード族が連なるものって言うのは?」

 「ウム、遠い昔ドラゴン種から別れた龍人族という種族があってな、リザード族はその龍人族の血を引いておるのじゃ。まぁ、長い年月で様々な血が混じり別れておるから、殆ど繋がりはないのじゃが、それでも縁者と言えなくはないからのぅ。」

 「まぁ、そう言う事なら会うだけあってやってもいいか。スイちゃんも立ち会うか?」

 「そうじゃのう、暇だし一緒させてもらおうかのぅ。」


 

 「いやぁ、お時間取らせて申し訳ありまへんなぁ。ワテ、ドラゴニアのドラコいいまんねん。」

 「……チェンジ!」

 「アハハ。さすが命主はんや。おもろいこと言いまんなぁ。」

 ……このエセ関西人みたいなのが、この世界のリザード族なのか?

 俺はリナを見る。

 「リザード族は、リザードマンをはじめ、ドラゴニア、ドラゴニュートなど、雑多に混じっておりますので、色々な方がいるものと思われます。」

 リナがそういうが……つまり、こういう変なのもたくさんいるって事なのか。

 俺はスイちゃんを見る。

 「ウム……こういうタイプは初めてじゃのぅ。……何か面白い事やってみるのじゃ。」

 スイちゃんはドラコをツンツンしている。

 「な、なんですの、このちびっこは?」

 あ、バカ……。

 「ちびっこって誰の事じゃ?」 

 スイちゃんから怒りのオーラが立ち上っている。

 「あ、命主殿?ちびっこが紛れ込んでまっせ?ええんですか?」

 「メイルシュトローム!」

 「あびゃばぁ……」

 スイちゃんが作り出した潮流にドラコが巻き込まれ流される。

 あーあ、スイちゃんに対するNGワードを言っちゃうから……。

 

 「リナ、とりあえずリザード族はお帰りのようだぞ。」

 「その様ですね……スイ様、お外の広い所でお願いします。」

 「わかったのじゃ、ちと遊んでくるのじゃ。」

 スイは水流を器用に操作しながら部屋から出て行った。

 「はぁ……とりあえずリザード族は保留という事にしておきますね。……次はハーピー族ですが如何いたしますか?」

 「まぁ、ついでだ。このまま会うか。」


 

 「命主様~、初めまして~。ハルピュイアのリサで~す。」

 「同じく、ハルピュイアのハルで~す。」

 「「私達ぃ、ソラちゃんとぉ~、一緒に歌いたいんですぅ~。」」

 「……ソラ、ちょっと来れるか?」

 俺は通信機でソラを呼ぶ。


 「おにぃちゃん、何の御用?」

 「あぁ、ソラか。このお姉さんたちが遊んでくれるそうだ。お外で遊んで来なさい。」

 「ハーイ。」

 ……本物のソラちゃんだぁ。

 ……かわいぃ~。

 キャッキャッと騒ぐハルピュイア達。

 「あ~、お前ら外で遊んで来いよー。」

 ソラとハルピュイア達はキャッキャッと言いながら外へ出て行った。

 ……はぁ、疲れる。


 「次はゴブリン族ですが……。」

 「あー、もういいよ、どんどん連れて来いよ。」

 

 「命主様、初めましてですだ。おらはゴブリン族代表のゴブゥと申すだ。」

 ゴブゥと名乗った代表のほか、10人ぐらいのゴブリンたちが集まっていた。

 「あぁー、でお前らは何の用だ?」

 「あのぉ……ですだ。そのぉ……リナ様に罵ってもらえたらと。」

 なんか言い出したよ。

 「ご主人様の前で何を言い出すんですか!このゲス共が!」 

 「「「ありがとうございます!」」」


 ……魔族ってこんな奴らばっかりなのか?


 「ふぅ、ふぅ……失礼しました。後、オーク族からも緊急で面会依頼が来ておりますが。」

 「オークか……今度は何だ?」

 「さぁ?ナミ様をお呼びしますか?」

 「なぜカナを?」

 「いえ、オークと言えば「くっころ」じゃないですか?」

 ……そのネタ何処から……って、カナミからか。

 「そのネタで行くなら、聖女のカナより、剣士のリナの方が適役なんだが?」

 「そうなんですか!」

 「まぁ、いい。急ぎというのが気になる。ミリィとカナを呼んでおいてくれ。」


 「お初にお目にかかります。オーク族のトンザと申します。命主様にぜひお願いしたいことがございます。」

 トンザと名乗ったオーク族の若者が語るには、最近オーク族の集落に怪しい人物が出入りしているらしい。

 その人物が、何やらいろいろな事を吹き込んで不安を煽り立てているという。

 時を同じくして収穫量が減りつつあり、飢饉の兆しも見えるという。

 このままでは、近いうちに集落内で暴動が起きるかもしれない。

 それを平定してほしいとのことだった。


 「また、めんどくさい事を……その怪しい人物って言うのは、まだいるのか?」

 「いえ、それが、ここ2~3日は見かけたものはおらず……。」

 「レイにぃ、どうするの?」

 カナミが聞いてくる。

 「暴動って、オークたちは何が不満なんだ?結局はそこだろ?」

 「実は……盟約を結んだことに不満を持つものが多く、我々は人族との戦争の際に捨て駒にされるのではないかという声が上がり……。」

 「はぁ……、その程度の事か。じゃぁ、盟約を破棄する、それでいいだろ。」

 「ちょ、ちょっとお待ちください。そんな簡単に言われましても。」

 「いや、不満の理由がそれなら、解決じゃん。はい、お帰りはあちらー。」

 俺は出口を指さす。

 カナミと、ミリィは、何か言いたそうにしているが黙っている。

 

 「お待ちください。一方的に破棄と言われましても、民が納得するか……。」

 「その民が盟約に不満なんだろ?いいか、お前らと交わしたのは盟約(・・)であって命約(・・)じゃない。こちらから申し出た事でもない上、俺が面倒を見る義理はない。」

 「しかし……。」

 トンザがうつむく。その手が小刻みに震えている。

 「レイさん、そろそろ……。」

 「そうね、レイにぃ、苛めるのもそれくらいにしてあげたら?」

 ミリィと、カナミから制止の声が上がる。

 トンザが顔を上げこっちを見る。

 「しかしだなぁ、一族が不満って言ってるんだぞ?」

 俺は一応抵抗を試みる。

 「レイさん、一部の人が煽られて騒いでいるだけってわかってますよね?」

 「レイにぃ、一度は厄介ごと引き受けるの覚悟で受けたんでしょ。」

 ミリィとカナミが口々に言ってくる。

 しかし、何故この二人がオークの肩を持つ?


 「お前ら……暇してるんだな?」

 俺の言葉にそっぽを向く二人。

 まぁ、この島にいると平和だけどやる事少ないしなぁ。

 「はぁ……、トンザ。」

 「ハッ!」

 俺達の会話についていけず呆けていたトンザが、居住まいを正す。

 「近いうちにオークの集落に行く。それまでに一族をまとめ上げておけ。不満分子は俺が処分すると伝えろ!」

 「ハハッ!」

 トンザが頭を下げる。

 「わーい、トンテキ、トンカツ、豚しゃぶ、久しぶりー。」

 カナミがはしゃいでいる……おいおいオークさん食べるなよ。

 カナミのセリフに不穏な空気を感じ取ったのか、トンザが青ざめている。


 

 「さて、どう思う?」

 俺はトンザが退出した後、三人に聞いてみる。

 「そうですね、私が調べた事と、トンザ様のお話に相違点はございませんわ。」

 リナがそういう。

 「不満のある人たちは、煽られて不満を増大させたんだよね?……不満を増大させてどうする気なんだろう?」

 カナミがそういう。

 確かに、不満が大きくなろうが、暴動が起きようが、さっき言ったように盟約を破棄しておけば何の問題もない。

 「一方的に破棄させるとか、レイさんの評判を落としたいとか?」

 ミリィが言う事も目的の一つかもしれないが、この魔族領は弱肉強食。

 強さを示せば評判などあまり関係なくなる事を思えば、少し弱いか。

 

 「オークの件より、そのバックボーンを解決しないとな。また似たようなことが起きるぞ。」

 「そうね。その出入りしていたっていう怪しい人物って言うのが何者かよね。」

 「リナ、リィズと一緒に探ってくれ。……1週間後にオークの集落に向かう。それまでに調べれるだけでいい。」

 俺はリナにそう指示すると、ミリィとカナミに1週間後に出発という事を伝える。


 1週間後、俺はミリィとカナミを連れてオーク領に向かう。

 すぐ戻る予定なので、ソラは留守番だ。


 途中リィズとリナと合流して、情報を受け取る。

 「ご主人様、やはり一定数のオーク達が謎の人物と接触しております。ただ、その人物の目的が見えてきません。」

 「どうやら人間族領から来たみたいっす。ダンジョンの方へ向かう目撃情報を最後に足取りが途絶えたっす。」

 リナの情報に、リィズが補足してくれる。

 結局大した情報が得られないまま、俺達はオーク族の集落へと向かう。


 オーク族の集落につくと、トンザが出迎えてくれた。

 トンザによれば、不満分子の勢力が大きくなり、現在オーク族を二分して、今にも内紛が始まるというような状況だった。

 「まったく面目ない。」

 「ほんとだよ。」

 トンザは項垂れている。

 まぁ、まとめ上げるどころか内紛寸前ではな。代表としての能力を疑われてもしょうがないな。

 「トンザ、不満分子の所へ案内してくれ。」

 

 

 「俺がレイフォードだ!お前らは何が不満だ!一応聞いてやろう。」

 俺は、不満分子のリーダに向かってそう告げる。

 「不満だぁ?何もかも不満だぁ。

 お前らは楽して腹一杯食べてるが、おら達は、朝から晩まで汗水流して働いて1日2食が精一杯だ。

 戦いが起これば、おら達を前線に追いやり、美味しい所だけ持っていくんだぁ。

 おら達は騙されないぞ!」

 言ってることが支離滅裂だ……それとも……。

 俺はトンザを見る。

 トンザはとんでもないというように大きく首を振る。


 「調べた限りでは、彼らが言っているような搾取はおこなれておりませんわ。」

 リナが補足してくれる。

 「それにぃ、何故おあらたち偉大なオーク族が人間のクソガキの足元をなめなきゃなんねんだ!」

 ブチッ。

 俺の横で何かが切れる音がした……気の所為と思いたいが確かに聞こえた。

 「もう一度言ってみなさい。オーク族が何ですって?」

 カナミがリーダーに問いかける。

 「何度でも言ってやるぅ。人間のクソガキなんぞ、おら達の糞に……。」


 「ファイアーランス!」

 オークが最後まで言い終わらないうちに、カナミから炎の槍が飛び出し、オークの足元に突き刺さる。

 「ファイアーランス!」「ファイアーランス!」「ファイアーランス!」

 立て続けに炎の槍がオールを取り囲む。

 「あ、熱ぃ、熱ぃ。」

 慌てふためくオークのリーダー。

 「あら、そんなに熱いの、では冷やしてあげますわ。……アイシクル・ブリッド!」

 ミリィから複数の拳大の氷の礫がリーダーに向けて放たれる。

 「ふぐっぅ!」


 「まだまだ行くよ! フレイムピアー!」

 カナミが魔法を唱えると、炎の柱が、オーク達を取り囲むように立ち上る。

 「フェンリル・ファング!」

 ミリィが魔法を唱えると、氷の牙がオーク達を噛み砕いていく。

 

 カナミとミリィのあまりにも素早い動きに、あっけにとられて動けずにいる、リィズとリナ。

 「あー、お前ら、やり過ぎるなよ!」

 俺は一応声をかけておく。

 「わかってる。明日の晩御飯は豚尽くしに決まりね。」

 いや、オーク族は食べれないからね?

 

 カナミとミリィの猛攻は続く。すでにまともに立っているオーク族はいない。

 「やめてください!」

 カナミ達の前にトンザが立ちふさがる。

 広げた両腕はブルブルと震えている。

 「これ以上、同胞を傷つけないでください。」

 震えながらも、こっちをしっかりと見据えるトンザに俺は問う。

 「何故庇う?あいつらは盟約不満を持ち、盟主に暴言を吐いた反乱者だぞ?」

 「そ、それでも、それでも、彼らは我が同胞です!すべての責はこの私が!」


 ……。

 「にぃに、何を考えてるっす?」

 「いや、ここでトンザを撃ったら面白いかな、と。」

 「……にぃに、シリアスなところでネタに走るのはやめるっす。」

 「……ダメか?」

 「ダメっす!」


 「ミリィ、カナ、こっちへ。」

 俺はミリィとカナミを呼び戻すと、トンザに向き直る。

 「トンザ、オーク族との盟約は破棄だ。今後俺に何か話があるときはオーク族全体の意思を纏めてから出直して来い。」

 俺はそう言うと、トンザに背を向けて帰路につく。

 「アッと、忘れていた。そいつの吐いた暴言に対する詫びは、ミリィとカナにしっかり返すようにな。」

 振り返って伝え忘れたことを告げる。

 


 「ご主人様、あれでよかったのですか?」

 帰り道、リナが聞いてくる。

 「まぁな、オーク族がもう少しまとまっていれば、別の方法も考えていたけど、今の状態じゃぁ力づくで従えて、結局は奴らの言うとおりになるだけだからな。」

 「でも、結局問題は解決していませんね。」

 「後は奴らの問題だろ。……それより、一度戻って準備をしたらミネラルド国に行く。」

 「やっぱり、そこが怪しいっすか?」

 俺の言葉を聞きリィズが訊ねてくる。調べているうちに、いくつか思い当たる点があったのだろう。

 「たぶんな……それより、余り大勢で行けないから行くメンバーの打ち合わせもしないといけないな。」

 俺の言葉に、カナミとリィズの目が光る。

 「私はついていくからね。」

 「にぃにには私が必要になるっすよ!」

 二人の迫力がちょっと怖い……。


 「ま、まぁソラが居ないところで決めるのも、可哀そうだろ?帰ってからな。」

 ……帰ってから言えばよかった。

 その後、城に帰るまで、カナミとリィズを中心に誰がついていくかで騒いでいた。



※ 10000pvを超えました。

 いつも読んでくれている皆様に感謝です。

 近いうちに10000pv突破記念のSSを乗せたいと思いますが、今のところネタがないので気長に待っていただけると幸いです。

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