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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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魔族と人族とオーガ族の忠誠

 「これは、一体……。」

 俺の目の前に広がるオーガ族の集落。

 崩れ落ちた建物、まだ火が残る民家……あっちこっち荒らされているが、人影は見えない。

 「じぃじー、ミカサー、誰かいないのー。」

 セイラが声をかけるが呼びかけに答えるものはいない。


 「セイラ様、集落に残っている者はおりませぬ。」

 集落を見回っていたハクレイが戻ってきてそう告げる。 

 いったい何があったんだ?


 「そう……、皆いないの……。」

 「大丈夫です。皆どこかに逃げ延びています。探しましょう!」

 報告を聞いてがっくりと肩を落とすセイラと、それを励ますハクレイ。


 そんな二人に俺は声をかける。

 「なぁ、ゼブラの街に行ってみないか?ココから近いなら、そこに逃げ延びているかもしれないし、何か情報があるかもしれない。」

 「そうだな、ここに居ても仕方がない。……セイラ様、ゼブラの街へ行きましょう。」

 「……そうですね。」

 セイラは、名残惜しそうに集落を見つめていたが、何かを振り切るように首を振り、ハクレイの言葉にうなずく。


 

 ゼブラの街。

 魔族領の東端に位置する、それなりに大きな街だ。

 周りにはサキュバス族やオーガ族など各種族の集落が点在し、種族間の交流の場として栄えている。

 また、人間族領とつながっているダンジョンが発見されたため、警戒のための防衛もしっかりしており、その気になれば街を中心に防衛拠点として運用できるようにもなっている。


 「まぁ、外れにある田舎町だけど重要拠点の一つってところだな。」

 俺はセレナやハクレイから聞いた情報をリィズ達に教えてやる。

 「成程っす。だからあんなにも物々しいんすね。」

 リィズの言うとおり、目の前に見えて来たゼブラの街は、警備兵と思わしき一団が、門の前で警戒にあたっている。


 「いや、普段は、あんなに物々しくはない。せいぜい門番が立っている程度だ。」

 ハクレイが言う。やはり何かあったのだろうか?

 「何かあったのです。きっとオーガの集落にも関係する何かが。」

 「とにかく、行ってみないとわからないな。……一人で飛び出すと危ないぞ。」

 飛び出そうとするセイラを抑える。

 

 俺達が門の前に行くと、警備兵たちが周りを取り囲む。

 皆殺気立っている。抑えきれない怒りを何とか抑えているという感じだ。

 特に俺達に対する殺気がヤバいレベルだ。


 「アドラーはいるか?アドラーに呼ばれてきたんだが?」

 俺は取り囲んでいる一人に声をかける。

 「こいつは!アドラー様を呼び捨てとは。無礼にもほどがある。」

 そう言って飛び掛かってくる警備兵。

 ガキッーィン!

 俺はファリスで相手の獲物を受け止め、跳ね上げる。

 体勢を崩した警備兵の腹をけり飛ばし、その間にファリスをドラグーンに変形させる。

 ドゥン!ドゥン!ドゥン!

 地面に尻もちをついている警備兵の周りにドラグーンの魔力弾を打ちこむ。

 

 それを見ていた他の警備兵の殺気が膨れ上がる。

 あちゃ……やり過ぎたか。

 「おい、ハクレイ。あの中にオーガ族が混じっているが、殺っちまってもいいか?」

 「レイフォード様、お待ちになってください。」

 そう言ってセイラが一歩前に出る。

 「お引きなさい!ここにおられるレイフォード様は私の命の恩人。その方に剣を向けるのは許しません!」

 セイラの迫力に一歩退く警備兵たち。

 「しかし、そいつらは人族……。」

 「黙りなさい!オーガ族はいつから恥知らずの集団になったのですか!」

 「しかし……。」


 「何をやっておる!」

 セイラと警備員たちの間で膠着状態に陥ってた時、門から声がかかる。

 「ハッ!アドラー様。人族の一行が、アドラー様に会わせろと……。」

 「ん?レイフォードか……ぬけぬけと姿を現しおったか!」

 アドラーから殺気が放たれる。

 「呼び出しておいて、ご挨拶だな。それとも最初からそのつもりだったのか?」

 俺もアドラーに対し、威圧を返す。

 しばしの間、俺とアドラーが睨み合う。

 アドラーの殺気と俺の威圧がぶつかり合い、周りの者は動けずにいる。


 「姫巫女様!」

 門から一人のオーガが飛び出してくる。

 「なんだ、貴様は!」

 門番に押しとどめられるオーガ族

 「こちらに姫巫女様がいるって本当か!」

 「ミカサ……無事だったのですね。」

 「姫巫女様!ご無事で……。はっ、それより御館様の元へ、お急ぎください!」

 「じぃじは無事なのですか!」

 「今は何とか……しかし先程の襲撃で様態が……とにかくお急ぎください!」

 「でも……。」

 セイラはこちらを振り返る。

 どうすればいいのか迷っている顔だ。

 「カナ、ミリィ。」

 俺は彼女たちの名前を呼ぶ。

 俺と目が合うと頷いてくれる。

 言わなくても分っているようだ。

 「セイラちゃん、早く行きましょ!……ハクレイさんも。」

 カナが、セイラの腕を引っ張って門へ向かう。


 「許すと思っているのか!」

 アドラーが唸る。

 「黙ってろ!……蔦縛陣!」

 地面から蔦が伸び、俺たち以外のその場にいるものを拘束する。

 「セイラ早く行け、待ってるんだろ?ソラ、カナとミリィの援護頼むな。」

 俺はアドラーに向き直る。

 「邪魔はさせない。やるというなら相手になるぞ!……ケイオス!」

 俺はファーと融合し、ケイオスを呼ぶ。

 リィズもすでに精霊化をして戦闘態勢に入っている。

 

 俺はケイオスをアドラーに向けて構える。

 アドラーはすでに、蔦の拘束から抜け出し、俺達に武器を向けている。

 「お前たちは……何が目的だ! 何故魔族領を襲う!」

 アドラーが叫ぶ。

 「目的?呼ばれたから来たに決まってるだろ?……それにセイラの事は、助けるって約束をしたから、それを果たすだけだ。」

 俺はアドラーを睨みつける……何か誤解があるみたいだが、邪魔をするなら……潰す。

 しばらく、俺とアドラーのにらみ合いが続く。

 「魔族を襲うって何のことだ?」

 俺は、威圧を維持しながら聞いてみる。

 「知らないのか……。」

 アドラーが怪訝そうな顔をして、何かを考えこむ。

 「そうか……。いや、こちらが失礼したようだ。」

 アドラーから殺気が消える。

 「……じゃぁ、通っていいか?オーガ族が気になる。」

 誤解が解けたのなら、争う必要はない。

 アドラーとガチでやりあえば、結構厳しい戦いになると思う。

 正直、それは避けたいところだった。


 「待て!」

 俺は門を通ろうとするが、アドラーからストップがかかる。

 「あぁん?この期に及んで、まだ何か?」

 「いや、通る前に、これを解除していってくれないか?このままでは、奴らが動けん。」

 アドラーは周りにいる警備隊を見回して言う。 

 っと忘れていた……そのままでも俺は困らんが。


 俺が呪文を解除すると、アドラーの先導でゼブラの街へ入る。

 街中には、傷ついた魔族たちの姿が見える。

 「一体何があったんだ……いや、それより、先にオーガ族だ。」

 気にはなったが、先にカナミ達の状況を確認しよう。

 俺はアドラーの案内でオーガ族たちが集まっている区画へ移動した。


 「レイさん。」

 俺に気づいたミリィが近づいてくる。

 「ミリィ、状況は?」

 「レイにぃ……一応容態は落ち着いたけど、傷が深すぎて、このままじゃ厳しい。」

 カナミが俺に状況を伝えてくる。

 目の前に、力なく横たわった鬼人の長がいる。

 その手を握りしめて、必死に声をかけているセイラ。


 「カナミで無理なら、俺の回復魔法でも無理か……。」

 「ウン、レイファが居れば何とかなるかもしれないけど……。」

 そうか、レイファか。

 「アドラー、ここに転移陣を設置する許可をくれ!」

 俺はアドラーに詰め寄る。

 「いきなり何を……。」

 「いいから許可しろ!ダメなら力づくで……。」

 俺はアドラーの胸ぐらをつかみ、詰め寄る。

 「わ、判った……許可する。」

 「にぃに……それ殆ど力づくっす。」

 リィズが何か言っているが気にしない。

 とりあえず簡易的に陣を描く。

 「リィズ見張っていてくれ。」

 そう言って俺はミンディアへと転移する。


 「レイファ、きてくれ。」

 俺は教会の中で説法をしていたレイファを抱え上げて走る。

 いわゆるお姫様抱っこだ。

 抱えて走るにはちょうどいい。

 「きゃっ、レイ様何を……強引なのですね……ぽっ」

 レイファの腕が俺の首に回り体重を預けてくれる。

 俺はそのまま転移陣へと入り、ゼブラの街へ転移する。

 「あ、レイファ、早くこっちへ。」

 俺達の姿を見たカナミがすぐ指示を出す。


 言われるがままにレイファがカナミの元へ……指示に従って呪文を唱えていく。

 あらゆる状態異常を払う「女神の祈り」と最大級の回復魔法「女神の癒し」の重ね掛けか。

 カナミとレイファを中心に光が溢れ出す。

 神々しい輝きだ。いつしか、周りのもの全てがカナミとレイファに魅入っている。

 やがて、光が徐々に収まり、消えていく。

 「ふぅ……これで大丈夫。後は安静にしていれば問題ないわ。」

 「カナミ様、ありがとうございます!」

 セイラがカナミに抱き着く。

 カナミはセイラの頭を撫でてあやしている。

 「カナ、ミリィ、レイファ、一息ついたら街のみんなを癒してやってくれないか?オーガ族以外にも、結構傷ついている奴らが多いみたいだ。ソラは皆の手伝いを。」

 俺は彼女たちに指示を出してからアドラーの方へ近づく。

 「状況が知りたい。話してもらえるか?」

 「そうだな。ここは協力をしてもらった方がよさそうだ。」


 俺たちはアドラーに連れられて、ある屋敷の一室へと移動した。

 「何のもてなしも出来なくて心苦しいが、くつろいでもらえると助かる。」

 「いや、それはいいんだが……一体何があったんだ?」

 「ウム、それなのだが……。」


 アドラーの話によれば、数日前……ちょうど俺達がダンジョンに入った頃、人間族が攻めて来たそうだ。

 人間族は、近隣の集落を襲い、オーガの集落にも襲い掛かった。

 しかし、俺と会うためにゼブラの街へ来ていたアドラーとその親衛隊が駆け付けたため、人間族は撤退。魔族もゼブラの街を凄拠点として警戒態勢に入っているとのことだった。

 そこへ俺達が現れたので、何事かと警戒していたようだ。

 アドラーはアドラーで、人族の襲撃は俺が指示した事、もしくは人族の襲撃に合わせて、俺が何か画策しようとしているのではないかと疑っていたそうだ。 


 「成程な。俺の事が信じられないってわけだ。」

 「有り体に言えばそうだ。しかし、サキュバス族の命主となったお前だ。単に魔族領の侵略が目的とは思えん。だからお前の立ち位置を確認しておきたい。今は我らと敵対していないみたいだが……。」

 アドラーにしてみれば、俺の立場や行動が、今後どう影響するのかを考えなければいけないのだろう。

 

 「立ち位置と言われてもな。俺は別に人族の代表というわけでもないし、今回の襲撃の件もどうやら、ミネラルド国のサガ国王の独断っぽいが、あの国王の命令を受ける立場でもないしな。」

 俺は一息入れて言葉を選ぶ……。

 「……俺としては、魔族だろうが人族だろうが、邪魔をするなら潰す!ただそれだけだな。」

 「……それは我らと敵対しない、という事でいいのか?」

 アドラーが念を押してくる。

 「俺の邪魔をしない限りはな。」


 「今はそれでいいだろう。……では、この話はこれまでという事でいいかな。」

 「構わないが……そう言えば、呼び出した理由を聞いてないぞ。」

 俺は、元々の目的を思い出してアドラーに聞いてみる。

 「ほとんどさっきの内容と一緒だよ。サキュバス族の命主となったお前の真意を聞いておきたかっただけだ。」

 「成程ね。じゃぁ、こっちからも幾つかいいか?」

 「何だ?出来る事なら先程の謝罪もかねて便宜を図ろう。」 

 「それはありがたい。まずはこの街に転移陣を設置する許可が欲しい。サキュバスたちが自由に行き来できる環境が欲しいんだ。」


 俺は、サキュバスたちの命主になった経緯と、現在の状況、今後の展望などを話す。

 「その様な事に……しかし、それならば人族との間に余計な摩擦を起こさず、サキュバスたちの生きる道が開けるな。……成程。しかし転移陣とは……。」

 「転移陣は俺の敷地を利用しているから、人族、魔族共に俺が許可したものしか使用できない。」

 だから安心しろというつもりで言ったのだが。

 「それは、お前が許可すれば大軍勢を送り込めるという事だな。」

 アドラーが警戒したように言う。

 そういう風にも取れるのか。

 「……考えてなかった……が、そう言う事だな。ただ、さっきも言ったように俺に邪魔をしなければ問題ないはずだ。違うか?」

 「お前が敵に回った時点でゼブラの街は放棄せざるを得ない、というわけか……。」

 ……えっと、そう言う事なの?

 俺はちらりとリィズを見る。

 「にぃには抜けてるっすね。アドラーさんたちから見たらゼブラの街をよこせって言ってるようなもんすよ?」

 そうなのか!

 そんなつもりは毛頭なかったけど。

 「あー、じゃぁ、転移陣はセイラに頼んで、オーガ族の集落にでも……。」

 「ウハハハハ、いいぞ。この街に転移陣を設置する許可をやろう。オーガ集落も今のままでは復興できないしな。」

 アドラーは何が楽しいのか、しきりに笑っている。

 「にぃに、気に入られてるっすね。」

 リィズが呆れたように言う。

 「気に入られてるのか?」

 よくわからんが。


 「あと一つ、魔王について聞きたい。魔王には会えるのか?」

 俺はアドラーに、現在俺が置かれている現状を話す。

 「……というわけで、このままだと魔王に迷惑がかかるかもしれないので、一言言っておきたくてな。」

 「その様な事か……まぁ、魔王を名乗るのは別に構わんぞ。ただ真に魔王となるならそれなりの覚悟が必要だぞ。」

 どうやら「自称:魔王」なら問題ないらしい。

 ……痛々しい称号だな。

 

 「真の魔王とはどういうことだ?」

 このあたりの情報が欲しくて俺はここに来たんだ。

 「以前あった時に勇者と魔王のシステムの事は話したであろう。その時に魔王様にだけ与えられる使命があると言ったのは覚えているか?」

 「あぁ、覚えている。」

 「その使命を得て、初めて真の魔王と成れる。それがどんなものかは魔王様にしかわからんが。……魔王様に会う手はずを整えてやろう。」

 「いいのか?」

 「あぁ、正直な所お前が魔王を代わってくれるならそれでいいと思っている。正直、今の魔王様は見ていられない。」

 「そんなにか?」

 「そんなに……だ。」

 「……まぁ、話を聞いてからな。」

 「魔王様に話をつけるまで少しの時間が頂きたい。それまでこの街でゆっくりするといい。」

 「あぁ、オーガ達の事もあるし、向こうでもやる事はある。この辺りの散策もしたいしな。……魔王と話が出来るようになったら呼んでくれ。」

 「あぁ、サキュバスたちを通じて連絡しよう。」


 アドラーから、魔王との会見の約束を取り付ける事が出来た。

 とりあえず魔族領はこのゼブラの街を拠点にして動くことになりそうだ。

 まずは転移陣を設置して、サキュバスたちが行き来できるようにしないとな。


 「レイにぃ、セイラちゃんとハクレイさんが会いたいって言ってるけど、どうする?」

 俺が、転移陣を使って、向こうとこっちの調整をしているときにカナミが声をかけてきた。

 「アッと……ココがもう少しで終わるから……そうだな、昼からで良かったら会おうか。」

 「わかった、じゃぁ、お昼になったら、広間に来てね。」

 そう言ってカナミは出ていく。

 色々あってオーガ族のこと忘れていたけど、まぁ、カナミとミリィがついていたからいい方向で収まったんだろう。

 

 昼過ぎ、俺は広間に顔を出す。

 「セイラとハクレイが話があるって……おわっ!」

 俺の目の前に、セイラとハクレイ、その後ろにずらりとオーガ族が並んで膝まついている。

 「これは……一体?」

 俺はカナミを見る。

 「さぁ?」

 カナミが顔を背ける。

 しかし、ニヤニヤしてるのが気になるなぁ。

 「えーと、セイラ、ハクレイ、話って?」

 「この度はレイフォード様のご厚意により、御館様並びに同胞の命を救っていただいた事感謝いたします。」

 オーガ一族が一斉に頭を垂れる。

 「いいって、いいって。頭を上げなよ。そんな大したことはしていないし、それより、みんな無事でよかったじゃないか。」

 「ハッ、これも全てレイフォード殿のお陰であります。」

 ハクレイが再び頭を垂れる。

 うぅ、やりずらい。

 「レイフォード様、これより、我がオーガ一族はレイフォード様に忠誠を捧げることを、姫巫女セイラの名に於いてお誓い申し上げます。我らが忠誠お受けいただけますでしょうか?」

 これはいらないと言えないんだろうなぁ?

 俺はちらりとミリィを見る。

 「レイさんの心のままに。」

 カナミを見る。

 「まぁ、今回はレイにぃよりもリィズちゃん狙いみたいだし、いいんじゃない?」

 リィズを見る。

 「今更っすよ?」

 ソラを見る。

 「おにぃちゃん?どうしたの?」

 ソラはよくわかってない。


 「はぁ……まぁ、仕方がないか。オーガ族の忠誠ありがたく思う。お前達が俺の意向に背かない限り、お前たちの安寧に力を尽くすことを約束しよう。」

 オーガたちから歓声が上がる。

 光の粒子が舞い上がり、俺の中へ入ってくる。

 ふぅ……サキュバス族に続いてオーガ族までか……段々重くなってくるなぁ。


 「ハクレイ、オーガ族の集落の復興はどうなっている?」

 「ハッ!実は、地脈がズタズタにされており、あの場所での復興がかなり難しい状況です。いつまでもゼブラの街に厄介になっているわけにもいかず、……お恥ずかしい限りですが手詰まりで困っております。」

 やっぱりか。アドラーが復興は難しいって言ってたしな。

 「そのことについて提案があるんだが、聞いてくれるか?」

 

 俺はハクレイに、俺の島「魔王島」で集落をつくってはどうかと持ち掛ける。

 サキュバス族を受け入れると決めてから、魔王島にサキュバス族の集落をつくることを考えていた。

 数人だけなら、ポメラ国で住んでもらってもいいが、一族全員になるとそれなりの拠点が必要になる。

 魔族領でその拠点があればよかったが、以前の所を追われている現状では魔族領で新しく作るより、魔王島で受け入れた方が色々と楽で便利なのだ。

 サキュバスの集落だけ作るのも、オーガの集落を一緒に作るのも、手間は一緒どころかオーガたちの協力を得られる分都合がいい。

 城の近くから北の森のかけて開拓すれば場所の問題はない。

 其々の集落からこのゼブラの街へ、城からポメラ国内へ転移陣をつなぐので移動も問題ないだろう。

 

 「どうだ?」

 「その様な申し出、……ありがたく受けさせていただきます。」

 ハクレイがさらに平伏する。

 「じゃぁ、準備が出来次第案内するから、そのつもりで頼む。」

 「ハッ!」

 ハクレイがオーガたちの元へと行き、何やら指示を出している。

 

 「レイフォード様、此度は何から何までありがとう存じます。」

 セイラが礼を言ってくる。

 「まぁ、気にするな。これも何かの縁だろ。希望があれば遠慮なく言ってくれ。」

 「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて……これからもリィズお姉さまの側に一緒に居ることをお許しいただけると。」

 よほどリィズが気に入ったらしい。

 俺が「いいよ」というとセイラは喜んでリィズの元にかけていく。

 「お姉さま!お許しが出ましたわー。」

 セイラがリィズに抱きつく。

 「ちょ、ちょっと離れるっす!……にぃに、なんとかするっすー!」

 リィズが困ってる顔が可愛いのでしばらく放置しよう。


 俺達だけの島だった魔王島だが、ちょっとは賑やかになりそうだな。

 「はぁ……。」

 「どうしたミリィ?」

 「いえ、サキュバス族とオーガ族だけで済むのかなぁと思って。」

 「ミリィ、それフラグだってばぁ。」

 カナミがミリィにツッコむ。

 ……フラフ立ってないよな?

 これ以上の面倒を抱えるのはごめんだ。


 俺は、フラグが立っていませんようにと、フラグの神様に祈るのだった。


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