サキュバス族
「ねぇ、にぃに……聞いてもいいすか?」
「何だ?」
「私達って、どこに向かってるんすか?」
「……魔族領だ。」
俺は、リィズの問いに渋々答える。
「……ココはもう魔族領っすよね?」
リィズが聞いてくる。
確かに魔族領には違いない。
レミアの穴40階層の扉をくぐれば、そこからは魔族領なのだから。
「魔族領のどこに向かってるんすか?」
「……村だ。」
「……もう3時間以上歩いてるっす。まだ着かない位遠いっすか?」
「……。」
アドラーは言った。
この先はサキュバスの集落につながっている……と。
詳しくは聞いていなかったが、大体1時間もかからずに着くと言っていたはず……。
……認めようじゃないか!
「ふっ……どうやら認識疎外の術にかかったらしい……。」
「認識疎外の魔法かかってないよ?」
カナミが言う。
「……人除けの結界があるな。」
「精霊さんたちは、そんなことしてないと言ってますわ。」
ミリィが言う。
「……幻惑の魔術か?」
「まほーの気配は、欠片もないってファルスが言ってるよ?」
ソラが教えてくれる……。
「流石は魔族だ。高度な技を使う!」
「迷ったんすか?」
リィズがジト目で見てくる。
「……。」
「迷ったんすね?」
はぁ……とリィズが大きなため息をつく。
「そうさ!迷ったさ!迷って何が悪いんだぁ!」
俺はぶち切れた。
「最初から素直にそう言えばいいんすよ。……あそこで休憩にするっす。」
そんな俺をスルーして、休憩の準備に入るみんな……相手にされないのはツライっす……。
「それで、なんて村に行こうとしてたっすか?」
焼けた肉の塊を頬張りながら、リィズが聞いてくる。
「いや、な。以前知り合った魔族が、この先はサキュバスの集落に繋がっているって言ってたんだよ。」
俺がそう言った途端、周りの温度が下がった気がした。
「サキュバスっすか……。」
「サキュバスさんですか……。」
「おにぃちゃん、やっぱり大きい方がいいの?」
「レイにぃ……最初に目指すのがサキュバスって……やっぱりそうなの?」
みんながジト目で見てくる。
「違うんだ!お前らは何か誤解しているぞ!」
「あんなこと言ってますが、どう思うっすか?」
「サキュバスは男のロマンって昔言ってたよ。」
「困りましたわねぇ……。」
「やっぱり、ボクじゃ満足できない?」
「大きさだけなら、レイファかねぇねでも……。」
「でも、サキュバスはテクニシャンだって……。」
「困りましたわねぇ……。」
「サキュバス捕まえる?」
「「「それだ!」」」
……俺を無視して、何やら剣呑な会話がなされているようだ。
……あぁ、肉が美味しいなぁ。
「……で、そろそろ俺の話を聞いてくれるか?」
一通り話が落ち着いたと思われる辺りで、俺は皆に声をかける。
「うん、サキュバスの村殲滅ってことで話がまとまったよ。」
物騒な事を言うカナミ。
「オイ……。」
「じゃぁ、逆に聞くっすけど……。」
リィズが口をはさんでくる。
「もし、インキュバスの村に私達が行くって言ったら、にぃにはどうするっすか?」
「殲滅だな!」
俺のカナミやリィズ達に手は出させん!
「そう言う事っす……。」
……何も言えない。
「……ま、まぁ、魔族ちゃちと、事をきゃまえるのは……。」
「にぃに……噛み噛みっすよ。」
いかん、思った以上に動揺してしまった。
「……ゴホン、まぁ、とにかくだな、、この先にサキュバスの集落がある、という事以外魔族領について何も情報がないんだ。
だから、まずは、そこに行って情報を集めたいと思う。
話によれば、そこには人族もいるらしいしな。
できればアドラーと連絡を取れるのが一番いいんだが。」
俺は、もっともらしい事を言って話を纏める。
これ以上、サキュバスについて言及するのは危険すぎる。
「今、ドライアードさんが教えてくれたんですが、半径10㎞以内に集落はないそうですよ?森の中を彷徨うより、森から出た方が早いって言ってますがどうしましょう?」
ミリィが、精霊から情報を集めてくれたようだ。
「じゃぁ、森から出ましょう!道はわかるのかな?」
「ドライアード達が案内してくれるそうです。」
カナミの問いに、ミリィが答える。
「じゃぁ、一旦森を抜けるっすよ!」
……なんか、あっという間に方針が決まってしまった。
進行方向の樹木が動き、道が出来る。
すすむに合わせて、後方の道が消え去り、前方が開けていく。
「ドライアードの道案内ね……便利ではあるが……。」
「そうっすね、何事もなく抜けれそうっすね。」
俺のつぶやきに合わせて、リィズも言う。
「あ、リィズちゃん、ダメ!」
「え?何がっすか?」
「あ、ボク知ってる。『フラグ』って言うんだよね?」
カナミの制止に、何のことかわからず訊ねるリィズ。
それに対して、得意げに話すソラ。
「キャー、誰か、助けてー!」
前方より助けを求める悲鳴が聞こえる。
……まぁ、そうだよね。
「これはまた……お約束な……。」
「見事なまでの『お約束』ね……。」
駆け付けた俺達の目の前に繰り広げられる光景。
それを見た俺とカナミは大きなため息をつく。
目の前には蜘蛛の巣に捕らえられ、あられもない格好で身動きが取れずにいる女の子。
そして、それを狙って、いまにも襲い掛からんとする巨大蜘蛛。
「誰だか知りませんが、助けて下さぁーい。食べられちゃいますぅー。」
俺達に気づき、泣きながら助けを求める女の子。
小柄だが、出る所はしっかりと出ているボディライン。
やや幼さの残る顔立ちにくるっとした瞳には涙が溜まり潤んでいる。
可愛らしい小さな口からは助けを呼ぶ言葉が……。
蜘蛛の糸に巻かれて、判りづらいが、背中からはそれほど大きくない黒い翼が見える。
「ロリサキュバス……。」
……いたんだ、本当に……噂でしか聞いた事のない伝説の存在……。
「おーい、にぃにー?大丈夫っすかぁー?」
「あぅ……レイにぃのストライクゾーン、ど真ん中だよぉ……」
「うぅ……ボクの方が……ボクの方が……、えーん、お姉ちゃん、胸で負けてるよぉ……。」
「いいからぁー、早く助けて下さぁーい。何でもしますからぁー。」
バシュッ!
サキュバスの悲痛な叫び声を聞いた途端、俺はファリスをドラグーン変形させ、巨大蜘蛛をぶち抜く。
「へっ?」
今にも襲われそうだった巨大蜘蛛の頭が急に消えたので軽いパニックに陥るサキュバス。
キィン!キィン!
ドラグーンをファリスに変形させ、蜘蛛の巣を切り裂き囚われのサキュバスを助け出す。
腕や足に糸が絡みついたままで身動きが取れず、地面にそのまま落ちていくサキュバスを抱きとめる。
「大丈夫だった?」
「あ、ハイ、ありがとうございます……。」
頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうにお礼を言う姿が、なんとも愛らしい。
「よし、帰ろう!」
魔族領に来た目的は達した。
スパーンッ!スパーンッ!
「へぐっ!」
いきなり後ろ頭をはたかれる。
「何くだらないこと言ってんすか!」
ハリセンを持ったリィズとカナミが怖い顔で睨んでいる。
「だって、こんなかわいいサキュバスを捕まえたんだぞ!もうここに用はないじゃないか!」
スパーンッ!
「にぃに!魔族領に何しに来たんすか!」
更にはたかれた。
「何って……なんだっけ?サキュバスを捕まえに?」
俺は頭を押さえながら答える……痛くはないが衝撃はあるのだ。
スパーンッ!
「違うでしょ!」
カナミに突っこまれる。
(そうよ!帰るなんてとんでもないわ!)
いきなりエアリーズが現れて文句をつける。
(まだ、カナミの分もリィズの分も捕まえてないでしょうが!)
「あぁ!そうか、そうだな。お前らの分も必要だよな。」
なぁーんだ、自分たちの分が欲しくて怒ってたのかぁ。
スパーンッ!スパーンッ!
「「違うわっ!」」
二人から同時にツッコミが入る。
ちなみにエアリーズにもツッコミが入り、俺の横でピクピクしている。
流石は「精霊叩き」……いい仕事してるぜ……。
「あのぉ……私、これからどうなるんでしょうか?」
今まで黙っていたサキュバスが口を開く。
俺達の会話に不穏なものを感じ取ったのか、声が震えている。
「このままでは、にぃにのペットになるっすよ!」
俺が答えるよりも先にリィズが答える。
「城の一室に閉じ込められて一生飼い殺しにされるっす。」
「ヒィッ……そんなぁ……もう……帰れないの……。」
サキュバスの瞳から涙があふれる。
「安心して。貴女が知っていることを素直に全部喋れば助けてあげるわ。」
カナミがやさしく微笑んでサキュバスに告げる。
「ほんと?」
涙をこらえてカナミを見上げるサキュバス。
「ほんとよ。私達は道に迷っちゃってね、あなたたちの集落へ連れて行ってほしいだけなのよ……案内してくれる?」
「ウン……案内する。」
「よかった……。それでね、集落にはどれくらいの……。」
……いつの間にか、尋問が始まっている。
しかも、相手に尋問と悟らせないしたたかさ……怖ぁ……。
ロリサキュバス……チェムというらしい……の話では、サキュバスの集落は、つい先日無くなってしまったらしい。
そこに住んでいたサキュバスたちは方々へ散っていき、チェム達数人は、ここから30分ほど歩いたところにある小さな村に住んでいるとのことだ。
今、俺達はチェムの先導で、その村に案内してもらってるのだが……。
「あのぉ……私はなんで、まだ縛られているのでしょうか?」
「……。」
俺は目を逸らす。
「解いてもいいんすけどね……。」
リィズがため息をつく。
「えー、チェムちゃん可愛いからそのままでいいじゃない?」
カナミがニコニコという。
なんだかんだと言ってもカナミと俺の思考は似通っている。
それが、世界を渡った影響なのか、俺が向こうで色々と語った影響なのか、元々の『ナミ』の性質だったのかもしれない……香奈美の本質なのかも分からない。
……が、とにかく「可愛いもの」に関してはブレーキが壊れるきらいがある。
過分に俺の影響を受けていることは否めないが……。
しかもSっ気があったりするから質が悪い……と言いつつ、カナミの気持ちがわかり過ぎるほどにわかってしまう……俺も同類なんだろうか。
「ほんと、こういう所はカナミもにぃにもそっくりっすよ。」
リィズが、俺の思考を読んだかのように言ってくる。
「アハハ………ん?」
リィズのツッコミを笑ってごまかそうとしたとき、何かが俺の気配感知に触れる……これは……殺気!
スチャッ。
リィズも感じたようだ。
無言で双剣を抜く。
俺達のその動きを見て他の三人も歩みを止め、身構える。
来るっ!
前方から感じていた殺気が大きくなり、襲い掛かってくる。
ガキッン!
俺はファリスを抜いて、その攻撃を受け止める。
キィン!キィン!キィン!キィン!
「……ッツ!」
そのまま何合か打ち合う。
中々の手練れみたいだ。
隙を見て魔法を打ち込みたいが……
剣を振り下ろしつつ、右、左と揺さぶってくる。
動きが激しい為、リィズも介入するタイミングが計れずにいる。
ガキッーンッ!
「爆風」
俺は思いっきり、相手の剣を跳ね上げ、足元に爆風の魔法を打ち込む。
体勢が崩れた瞬間を狙って、後ろに飛びずさり距離をあける。
しかし、相手も、すぐさま体勢を整えなおし、俺の様子を伺う。
「中々の腕だ。相談だが、その子を離してくれねぇか?そうすれば、この場は見逃してやるよ。」
俺との間合いを図りながらそんな事を言ってくる。
土煙が収まるまでの時間稼ぎだろうか。
「悪いけど、それは聞けないな!まだ礼もしてもらってないんでねッ!」
俺は視界が晴れる前に勝負をつけようと飛び込む。
上段から斬り付けるように見せて、フェイントをかける。
そして中断から横薙ぎ……ガキッ!
読まれてた!
俺の剣は相手の剣によって止められる。
次の動作に移る前に、相手からの攻撃が上段から振り下ろされる。
ガッキィッィィン!
相手の剣を何とか受け止める。
剣の向こうの顔がニヤリと笑う……見覚えがある顔だ。
「オッサン?」
思わず声が出る。
「なにぃ……ひょっとして坊主か?」
相手も思い当たる節があったのか、剣に込められた力が緩む。
俺達はお互いに一歩引き、剣を降ろす。
「オッサン……こんな所で何やってんだよ。」
俺は相手をまじまじと見てそう言う。
昔、俺に剣の手解きをしてくれた地方騎士団の中隊長だ。
「坊主、お前こそなんで……。」
「サイラス様?サイラス様ではないですか?」
そこにカナミの言葉が割り込む。
「おぉ、聖女様もご一緒でしたか……一体何なんだ?」
「こっちが聞きたいぜ。」
「まぁ、色々話を聞きたいが……。」
オッサン……サイラスの眼に殺気がこもる。
「チェムさんをどうするつもりだ。場合によっちゃぁ、坊主でも……。」
「オッサンこそ、チェムをどうするつもりなんだ?チェムは俺のペット……ぐぶっ!」
スパーンッ!
ハリセンの軽快な音が鳴り響く。
「にぃにはまだ、そんなくだらないこと言ってるんすか!」
俺はその場に正座し、リィズの説教を大人しく聞く。
「サイラス様、レイフォード様方は、巨大蜘蛛に襲われていた私を助けてくださったのです。」
「はぁ、そうだったんですか、でもその恰好は……。」
サイラスがチェムの言葉に頷きながらも、チェムを見ては眼をそらすというように視線が定まらない。
胴を縛り上げている蜘蛛の糸は、一際太くなっており堅くてほどけないのだ。
それが身体に食い込むように巻き付いており、身体の一部……ハッキリ言おう、胸を強調させている。
時間を掛ければ斬ることは出来るが、そのエロい姿を恥ずかしがるチェムの仕草が可愛かったのでそのままにしていた。
しかし、俺だけならともかく、他の男に見せるのは勿体ない。
「仕方がないなぁ……チェム、ちょっと熱いけど我慢しろよ。」
俺はファリスを小型なぐらいまで小さくして、糸とチェムの体の間に差し込む。
逆の手はその大きく強調された双丘へ。
いや、支えだよ。他に置く場所がないんだから仕方がないんだよ。軽く揉んじゃったのは……。
「ヒートブレード!」
ファリスの刃を炎に変えて一気に手前に引く。
炎で焼かれ、脆くなった糸が斬り裂かれ、チェムの戒めが解ける。
『癒しの光』
カナミが、チェムの火傷を癒す。
「レイフォード様、ナミ様、ありがとうございます。」
やっと自由になったチェムがお礼を言う。
んーっと、翼を広げて伸びをする。
「あれがホントの「羽を伸ばす」ってやつか。」
「レイにぃ、座布団三枚!」
俺が呟くと、カナミがすかさず乗ってくる。
こういうノリはやっぱりカナミとならではだな。
俺はカナミと顔を見合し笑いあう。
情報交換するにも、とりあえずは落ち着いてからがいいだろうと、チェムとサイラスの先導で村へと向かう。
「……つまりオッサンたちが魔族領に攻め込んだ、と?」
「あぁ、そう言う事だ。」
オッサンの話によれば、俺がミネラルド国を去って1か月ほど後に、サガ国王が大々的にレミアの穴を攻略し、魔族領へと侵攻したらしい。
オッサンたち地方騎士団は、その侵攻に際してアルガード王国からの出向という形で参加していたそうだ。
しかし、攻め込んだ先には見目麗しいサキュバスたちの集落。
騎士道精神を発揮したオッサンは、略奪しようとする仲間を押しとどめるが、多勢に無勢。大怪我を負ってしまったそうだ。
ただ、オッサンが、食い止めていたおかげで、魔族側御援軍が間に合い、人族は退却、魔族側も集落を放棄して奥へと退避したんだとか。
「そしてオッサンはこの村で、サキュバスの手厚い看護を受けて今に至っていると。」
「いやぁ……まぁ、そうなるかなぁ。」
オッサンがデレッとしている原因は、オッサンの横に寄り添うようにしている一人のサキュバスだ。
名前をミネヴァと言い、チェムのお姉さんだそうだ。
この村にはチェムとミネヴァの姉妹の他、妙齢のサキュバスが10人ほど住んでいるだけだった。
「サキュバスの集落にはいついてる人族の男が大勢いるって聞いたんだが?」
「えぇ、実は、人族が侵攻してくることは、かなり前から分かっていたんです。
なので、魔族領に骨を埋めることを望んでいる人以外は地下に閉じ込めていたんですが……。」
オッサンたちが侵攻してきた際に脱走して、略奪に加わっていたという。
ただ、かなり早い段階で避難していたおかげで、侵攻の際に集落に残っていたサキュバスは、けが人や年寄りの介抱をしていたミネヴァ他数人のみだったという。
ちなみにサキュバスはお年寄りと言っても30代半ばにしか見えない。
中には40~50代ぐらいに見えるものもいるが、それはそう言う需要があるからだという。
尚、チェムみたいな「ロリサキュバス」が、最近需要が増えつつあるため、サキュバス全体の見た目年齢が若返っているらしい。
「それで、これからどうするんだ?」
俺はオッサンとサキュバスたちに聞く。
「そうだな……今更アルガード王国にも戻れないし。かといって魔族領にずっといるわけにも……。」
オッサンは、まぁ、命令違反をしたわけなので、今更ノコノコと国へ戻っても処分されるだけだ。
しかし、右も左も分からない魔族領でミネヴァのヒモみたいな生活も耐え難いという。
ミネヴァが言うには、ここに居るサキュバスたちは、基本人族が好きなので他の者達みたいに、奥地に籠るのもどうかと、途方に暮れているという。
「はぁ……いったん戻るか。」
「そうっすね、……まぁ、仕方がないっすね。」
ちらっとチェムを見た後、俺の言葉にリィズが頷く。
「まぁ……仕方がないわね。」
カナミもチェムと他のサキュバスを見てため息をつく。
「部屋は余ってますからね。」
ミリィもチェムを見て頷く。
みんな俺が何をしたいのか分かってくれているようだ……ソラ以外は。
ただ、何故、チェムを見るんだろうか?
「とりあえず、オッサン……いや、サイラスさん、ポメラ獣人国に来ないか?
国王とは顔見知りだし、騎士団長に推薦してやるよ。
ミネヴァさんと一緒に住める場所も用意できるから……どうだ?」
「それは、願ってもない話だが……いいのか?」
「あぁ……昔オッサンが見ず知らずのガキに言い出すような純粋な行為じゃなく、打算的で悪いけどな。後、ミネヴァさんは自分でちゃんと口説いてくれ。」
「相変わらず、口の減らない坊主だ。……世話になる。よろしく頼む。」
そう言ってオッサンは頭を下げる。
「くすぐったいから、やめてくれ。俺は今後の事でサキュバスたちと話があるから、先に移動の準備をよろしく……大きいものは後でも運べるからな。」
そう言って、俺はオッサンの傍を離れ、ミリィ達と話しているサキュバスたちの下へと行く。
「あなた方に提案があるんだが、聞いてくれるか?」
俺は、サイラスにはナイショでと、先に念押しをしてから、今の現状そして俺達が魔族領に来た理由を話す。
「とりあえず、以上の背景があるって事を知ってもらったうえで……だ、俺の所に来ないか?
ポメラの街で専用の酒場を開くっていうのはどうだ?ホステスが接待してくれるちょっと高級な酒場。……まぁその後、大人同士の語らいをしたいのであれば、別室を用意してあるのでそこで……と。」
まぁ、言葉を濁してはいるが、クラブを兼ねた娼館をやってはどうか?と勧めているわけだ。
「獣人達は、そう言うのに疎いのも多くてな、また、獣人を嫌がる人族もやっぱりいるから、ポメラにはそういう店がないんだよ。もちろん無理強いをする気はないし、俺の城でメイドとして働いてもらうのでもいいぞ。
どちらにしても、多少窮屈な思いはするかもしれないけど、他の人国よりは過ごしやすい環境を与えれると思う。」
俺はそこで、一旦言葉を切る。
ミリィ達はそれ程でもないが、カナミの表情は複雑そうだ。
習慣の違いという事で呑んでもらうしかないんだけどな。
それに、精気を食とするサキュバスたちにとっては、一番効率の良い方法だと思う。
「ただ、チェムは俺の城でメイドとして働くことが決まっている。」
チェムは、えー、いつの間に……と驚いた顔をしているが、助けた礼に何でもするっと言ったんだから仕方がない。
リィズが心得たようにチェムを捕まえ、何やら話をする。
任せておけば大丈夫だろう。
「後、ミネヴァさんがサイラスさんと一緒にいる事を望むのなら、住む所は用意するし、色々便宜は図れると思う。まぁ、最終的にはミネヴァさんが決める事だけどね。
すぐに決めれないと思うけど、こっちもあまりゆっくりできないから2~3日で結論を出してくれるとありがたいかな。」
俺は、そう締めくくると、サキュバスたちの反応を待つ。
「あの、レイフォードさん、私はセレナと申します。一つ伺ってもよろしいかしら?」
ここに居るサキュバスたちの中でも、一際妖艶な雰囲気を醸し出している一人が声をかけてきた。
「レイフォードさんは魔王様と戦うおつもりですか?」
セレナがそう聞いてくる。
魔族の世界は基本弱肉強食で成り立っている。
弱者は強者に寄り添って生きる。強者の見極め、それが生き延びる上で必要な事。
どの派閥に属するのが一番良いか?
その選択が盛衰を決めると言っても過言ではない。
だからと言って、戦いを好むわけでもない。
魔族だって平穏に生きれるのならと思っている者も少なくない。
「戦うつもりはないよ。さっきも言ったように、ゴチャゴチャし始めたから一度話を通したいと思っている。
ただ、相手が話を聞かないのであれば、遠慮なくつぶす!」
しばし黙考の後、セレナが口を開く。
「分かりました。私達サキュバスは人の精がなければ生きていけない種族。その為、過去には色々とありましたが、安心して精が頂ける環境を、作ってくださるとのお言葉、信じましょう。生きる場を与えてくださる限り、我々はレイフォード様に忠誠を捧げます。」
セレナの言葉が終わると、サキュバスたちから何か光のようなものが浮かび上がり、俺の体内に吸い込まれていった。
……なんだ?いまの?
(忠誠の証よ。魂の欠片みたいなモノ。あなたはサキュバス族の忠誠を受け取ったわ。サキュバス族を生かすも殺すもあなた次第……頑張ってね。……後、言葉を待ってるわよ。何か答えてあげなさい。)
俺の疑問にファーが答えてくれる。
……いきなり責任が重くなったぞ?
セレナたちが膝まづいて、俺の言葉を待っている。
「サキュバスの忠誠、確かに受け取った。お前達が俺の意向に背かない限り、お前たちの安寧に力を尽くすことを約束しよう。」
サキュバスたちから歓声が上がる。
嬉しそうだから、まぁいいか。
ふと、奥の方を見ると、ミリィ達が複雑そうな表情で睨んでいた。
うぅ……仕方がないじゃないか。
俺だってこんなことになるとは、思ってなかったんだよ。
俺は、みんなの下へ近づく。
「なんか、大事になっちゃって……あはは……。」
「レイにぃ、嬉しそう。」
「にぃに、鼻の下伸びてるっす。」
「レイさん……。」
「おにぃちゃん、浮気?」
其々に勝手なことを言ってくる。
俺の気も知らんと……後、ソラ、浮気じゃないからね。
とりあえず、一旦戻って色々準備しないとな。




