たまにはのんびりスローライフを・・・?
「金がない!」
俺は皆の顔を見回しそう言った。
「どうしたんですか?レイさん。」
心配そうに見つめるミリィ。
「おにぃちゃん、お熱ある?」
そう言って、額に手をあててくるソラ。
「えっとどうすれば……。」
何をしていいかわからず、オロオロするリナとミーナ。
「今度は何の遊びっすか?」
呆れたように聞いてくるリィズ。
「ココは皆で内職を……。」
視線をそむけつつバラの造花を差し出すカナミ。
「お金がないんだよ!」
俺はもう一度、はっきりと言ってやる。
「このままではあと1週間もしないうちに残金が0になる。」
「何故そんな事に……」
リナが青ざめた顔をしながら聞いてくる。
他のみんなも、なぜ?という顔でみてくる。
「……全部、お前らの所為だよ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺達の屋敷は、ポメラ獣人国の北に位置するそれなりに広い1区画をもらい受けて、建ててある。
この区画、対外的には「魔王封印の地」と言うことになっておりポメラの獣人達が国をあげて封印を守っているため、魔王が他の国に攻め込まないと言う設定になっている。
・・・・・・いつの間にそんな設定が出来たんだろう?
まぁ、変な奴らが入り込まないように区画全体を結界で囲っているから、封じられているように見えなくもないが・・・・・。
そしてポメラ国内と俺達の土地を行き来するための場所・・・・・「門」の前にはポメラソードを掲げた、英雄(リナ・・・・・エミリア仮面ver.)の像が建っている。
コレは、恥ずかしがるリナが可愛くて、悪戯心でつい造ってしまったものだ。
像の前で手を合わせる獣人達を見ては、羞恥に悶えるリナは、ソレはもう何とも言えないぐらい可愛くて・・・・・。
まぁ、やり過ぎた感はあったので、1日で撤去するつもりだったのだが・・・・・・。
撤去しようとしたら、獣人達が泣いて懇願してきたのだ。
「撤去しないで」
「私達の心の拠り所を奪わないで」
「私を好きにしていいから、像を残して・・・・・・」
等々・・・・・・
面倒になったので、リナがよければとふったら、ダビット国王始め国民全員がリナに土下座をして頼み込んでいた。
結果、今も像がここにあるのだが・・・・・・リナの機嫌を直して貰うのに1週間かかった。
そして魔王城(いつの間にか俺の屋敷がそう呼ばれている)の1日はこの像の前から始まる。
「いいか!そなた等は全国民より選ばれた栄誉ある生け贄だ。誇りを持って、魔王様のご機嫌を損ねず、しっかりと勤め上げて来るように!」
そんなツッコミ処満載なセリフが、像の横に立つ兵士の口からはなたれる。
って言うか、いつの間にか俺が魔王って定着してるんですけど?
なるべく早いうちに魔族領に行って話付けないと不味いかも・・・・・・。
「我らが英雄、リナ様は身を挺して魔王様の猛振りを押さえていらっしゃる。
そなた等の役目は魔王様の御寵愛を受け、リナ様の御負担を減らすことにある。」
・・・・・・そうだったのか?
獣人国から奉仕活動に来ていることは知っていたが、俺の元にきた奴らなんか見たことがないぞ?
兵士から説明を受けて、ゾロゾロと門をくぐっていく生け贄達(人聞き悪いよな?)
そのまま、屋敷入り口近くの客間へ通される。
中にはリナとミーナ、そして何故かカナミとミリィがいた。
「んー、あなたとあなた、それとあなたも・・・・・・こっちへいらっしゃい。」
目の前に並ぶ8人の内、3人をカナミが呼ぶ。
「カナミ、その子は私も狙ってたのですわ。」
「そう?じゃぁ、あなたはあちらに・・・・・・代わりにあなたこちらへいらっしゃい。」
カナミは最後に指名した子をミリィの方へいかせて、代わりの子を選ぶ。
「私はこの子を・・・・・・。」
ミリィも選び終えたようだ。
「では、今呼ばれたものはここに残り、魔王様のお妃様の指示に従うように。残ったものは私たちと一緒にこちらへ・・・・・・。」
リナがそう言って呼ばれなかった者達を連れて、部屋を出ていく。
残された者達の身体が強ばる。
「あなた達、そんなに堅くならなくてもいいわよ。」
カナミはそう言うが、ふつうに考えてそれは無理だろうと思う。
なんと言っても目の前にいるのは凶悪な魔王(獣人視点)の妃なのだ。
「取りあえず、・・・・・・お風呂に行こっか?」
獣人達は何を言われたか分からないという顔をしているが、お妃様の命と言うことで黙ってついて行く。
「そっか、私達を裸にして危険なものを隠し持っていないか調べられるんだ。」
服を脱ぎながら、獣人の独りがそんなことを言う。
それを聞いたほかの獣人達は成程と頷き、率先して服を脱ぎ出す。
もたもたして疑われてはたまらないと言うように・・・・・・。
お風呂からでた獣人の子達をドライヤー(俺が作った)で乾かしながらブラッシングする、カナミとミリィ。
「もう・・・・・・我慢できないわ!」
カナミがブラッシングする手を止め、耳をいじり出す。
「アッ・・・・・・お妃様、何を・・・・・・アン・・・・・・。」
「知ってるよ、ここがいいんでしょ?」
そう言ってカナミがしっぽの付け根をツーっと逆撫でする。」
「アン・・・・・・ソコダメェ・・・・・・。」
中々感度の良い子のようだ。
「あなた達は私とミリィを満足させるために選ばれたのよ。」
そう言ってカナミは、耳を、尻尾をモフりだす。
「アン・・・・・・ダメェ・・・・・・。許して・・・・・・。」
見ると、ミリィもモフり出している。
そうか・・・・・・カナミもミリィも午前中姿をみないと思ったら・・・・・・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カナミとミリィが目線をそらす。
「お前等がモフモフした子達に与えた衣裳代にお小遣いと称して与えた特別手当。
他にもおかし代など諸々・・・・・・。
「カナミ、ねぇね・・・・・・。」
「お姉ちゃん・・・・・・。」
リィズとソラが残念な人を見る目でカナミとミリィを見る。
「ち、違うのよあれは……。」
「……そう言うリィズちゃんとソラちゃんだって……私知ってるんだからね。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
お昼の後、リィズちゃんとソラちゃんは、いつものようにポメラの街に繰り出すのよ。
何しに行ってるかって?
それは……
「今日もいつものお願いっす!」
リィズちゃんは、テーブルに着くとすぐ注文したのよ。
「いつもの」で通じるあたり、かなりの常連さんなのは間違いないわね。
「嬢ちゃん、今日も来たのかい?」
「今日こそは負けないっすよ!」
「じゃぁ、かかってきな!また返り討ちにしてやるよ。」
リィズちゃんは、近くの男と何やら話をしているの。
会話から推察するに、何か賭け事をしてるみたい……それでいつもリィズちゃんが負けてるっぽいのね。
リィズちゃんと、男の客が何かを始めたわ……あれは……ビットンかしら?
周りにギャラリーが出来てるわね。
ちなみにソラちゃんは、我関せずって感じでパフェを食べてるわね。
「……これで詰みだな。」
「クッ……負けたっす。」
「じゃぁ、いつもの、また頼むぜ……それとも、今日こそ脱ぐかい?」
男が下卑た笑いを漏らす。
「ふざけるなっす!私のお肌はにぃに以外には見せないっすよ!」
……言ってることは立派だけど……かなり危ないことしてるんじゃないの?
「ソラ、今日もやるっすよ!」
「はぁーい」
ソラちゃんの背中から翼が広がる。
……と同時にステージ衣装に早変わりする。
あ、アレこの間作ったやつね。
「ソッラちゃーん!」
「可愛ぃよぉー」
リィズちゃんの周りに光が広がり姿を覆い隠す。
光が消えた時には、ネコ耳ネコ尻尾姿のリィズちゃん。
こちらもステージ衣装になってるよ。
「私達の歌を聴くっすよ!」
即席のステージが始まった。
……いいのかな?これ?
3曲ほど歌ってステージが終わる。
(どうよ!、今日のリィズちゃんも可愛いでしょ! この衣装新作なのよ!)
エアリーゼが小妖精の姿で現れる。
レイにぃの連れてきたファーリースとエアリーゼは姉妹だったんだって。
ファーリース……ファーは、色々あって、普段は小妖精の姿をしてるのだけれど、それを見たエアリーズが、私もやる!って言って、小妖精の姿になったのよ。
エネルギー消費がなくて楽ね。ってエアリーゼは言ってたけど、余程気に入ったのか、最近ではその姿で飛び回ってることが多いのよ。
そのエアリーズが「リィズちゃんを褒めたたえよ!」っていうのだけれど……
「ソラちゃん、サイコー!」
「もう1曲!」
「ソラちゃん、すっきだぁ!」
何故かソラちゃんコールばかり。
よく見てみると、エアリーゼとリィズちゃんをからかってワザと言ってるみたいなんだけどね。
(キィーッ!リィズちゃんの可愛さを分からないなんて、あんたらの眼は節穴か!)
(アリゼ姉様、やっちゃいますか?)
(お―こんな奴ら、やっちゃえ!)
(では……トルネード!)
ファーの放つ暴風の魔法が狭い店内を吹き荒れる。
テーブルが倒れ、食器が舞上がり、人が吹き飛ぶ。
「ちょ、ちょっとやり過ぎっすよ!」
(えー、リィズちゃんの可愛さを分からない奴らには丁度いい薬よ!)
「ったく……ソラ、逃げるっすよ!」
リィズちゃんはソラちゃんの腕を引っ張り、酒場を後にしたわ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そ、それは……。」
カナミの話を聞き、うろたえるリィズ。
ソラは知らんぷりをしている。
「酒場からの食事代と修繕費の請求書がこれです。」
リナが請求書を見せる……ゼロの数が多い……。
「後、こちらが衣装代の請求書です。」
リナがさらに請求書を上乗せする。
それを見たリィズが、ソラに目を向ける。
「ソラ……私が頼んでない衣装が多数あるんだけど?」
「えっと、それは……。」
今まで知らんぷりをしていたソラが慌てる。
「だって、可愛い衣装……。」
「ソラ様の衣装にかかる金額は、リィズ様の請求額に匹敵しています。」
「デモ……だって……。」
ソラの顔が涙で歪む……が。
「そうだ、ボク知ってるよ、リナだって……。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕方、朝来た人たちを、リナは門まで見送りに行くんだよ。
みんな、リナに頭を下げて、嬉しそうに帰っていくんだ。
リナも、笑顔でみんなが見えなくなるまで見送ってるんだよ。
だけど……。
「ふぅ……今日も、皆さまご苦労様ですわ。」
最後の一人を見送った後、リナは振り返るんだけど……。
そこには、立派なリナの像が建っていて…………。
「まったく忌々しいですわ。」
像を見上げるリナの顔が、禍々しく歪むんだよ。
……ハッキリ言って、とっても怖い顔だよ。
そしてリナは、像の前に突き刺さっているポメラソードを抜いて……。
「えいっ!」
力任せに像を斬り付けるんだよ。
「ふぅ……清々しましたわ。」
そう言って門の中に戻っていくリナ。
その場には、折れたポメラソードが無造作に打ち棄てられていて、リナの像には深々と刀傷が……。
「おい!、まただ、またやられてるぞ!」
「早く王様に報告するんだ!」
しばらくするとね……衛兵が、それを見つけて大騒ぎになるんだよ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
話を聞いていたリナが、そっぽを向いている。
「この、ダビットからの『頼むから、像を壊さないでくれ!……後出来たら少しでいいので修繕費の負担を……』という手紙と共に来ていた請求書は、そういう意味だったのか。」
俺は深々と頷く……
「……あんなものは無くなってしまえばいいのです!」
……リナが開き直った。
「それに、ご主人様!……私は知ってますの!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夜、みんなが寝静まった頃ですわ。
ご主人様は寝室を抜け出して、奥様方の部屋に忍び込もうとしていますのよ。
「ミリィ……?」
呼びかけるが返事がない。
そっとドアノブを捻り、中に入る。
「ミリィ?」
ご主人様は寝入っているミリィ様のベットに近づくのですが、あと一歩という所で……。
「グルッポー……グルッポー……。」
「な、なんでベガス達が……お前ら夜行性じゃないだろ?」
いきなりベガスの群れが飛び込んできて、邪魔をするのですわ。
しかも、それだけ騒いでも、ミリィ様は起きられないのが不思議です。
「リィズ……?」
あきらめきれないご主人様は、ターゲットを変えます。
ガチャ、ガチャ……。
リィズ様の部屋は、厳重に鍵が掛かっていては入れなかったのです。
「カナミ……?」
ご主人様はさらに別の獲物を求めて徘徊いたしますの。
「あ、センパイ。……こんな遅くにどうしたの?」
「……わかってるだろ?」
ご主人様はナミ様に近づき、強く抱きしめ、口づけをかわします。
「カナミ……。」
唇を離したご主人様は、ナミ様をゆっくりとベットに押し倒します。
「センパイ……。」
少しだけ潤んだ瞳でご主人様を見つめるナミ様。
ご主人様の右手が、ナミ様の胸に……
布越しでもわかる弾力……我慢ならなくなったご主人様は、ナミ様の上着をたくし上げます。
月明かりに照らされる、ナミ様の双丘が、ご主人様を誘います。
「カナミ……綺麗だよ……。」
ご主人様が、優しく、荒々しくナミ様を求めます。
右手で胸を揉みしだき、左手をそっと下腹部へ……
「……やっぱりダメ!」
ご主人様の手が、ナミ様の大事なところに、触れるか触れないかという所でのいきなりの拒絶。
「ゴ、ゴメン……でも、……怖いの……ごめんなさい!」
そう言って逃げだすナミ様。
後に残されるご主人様。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そしてご主人様は作業場へ赴き、何かに憑かれたように装備を量産しているのです。」
話を聞いた皆が、カナミの方へ視線を向ける。
「だ、だって……」
カナミは真っ赤になりながらもじもじしている。
って言うか、どこまで細かく見てるんだよ!
俺はリナを見る。
「大体、ご主人様もご主人さまですわ。なぜ、私達の所に来てくださらないの?」
「そうだよー!なんでボクの所に来ないの?」
俺はリナとソラに詰め寄られる。
「いや、リナの所にはミーナがいるし、ソラだって、まだ……。」
「ボクはもう立派なレディだよ!」
「そうですわ、私とミーナでお相手いたしますわ!」
俺がリナとソラに責められている時、カナミもミリィ達に責められていた。
「にぃにもですが、カナミもヘタレですか!」
「そうですわ。逃げ出すのであれば、女神様に呪いを解く様お願いしてください。」
「そうだよ、にぃにの傍にいると決めたんなら、覚悟決めてさっさとヤられるっす!」
そう、俺と香奈美の再会は、恋愛神マァルの意図したものと大きくかけ離れていたらしいのだ。
それで拗ねてしまったマァルは、せめて、最初は香奈美からと、カナミ以外に手を出そうとするといいところで邪魔が入る呪い(マァルに言わせると祝福らしいのだが)をかけられた。
俺としては、香奈美とゆっくり愛を育んで……などという考えもないとは言わないが……やっぱり男なので……しかも、これだけ魅力的な女の子たちに囲まれているというのに……。
生殺し状態のリビドーを生産作業にぶつけるぐらいは大目に見てほしい。
「ねぇね、いっその事、カナミを縛ってにぃにの所に連れて行くっていうのはどうっすか?」
「そうね、先にカナミと済ませてもらって、その後は私達を可愛がってもらいましょうか?」
ミリィとリィズが、とても素敵な……じゃなく不穏なことを考えているみたいだ。
「いやぁー、初めては優しくしてほしいの。無理やりなんていやぁ!」
カナミの必死の抵抗。……まぁ、普通そうだろうな。
「だったら覚悟決めるっす!……私達も一杯なんすよ!」
「そうね……カナミが覚悟を決められないなら、眠らせて……」
「ミ、ミリィ?怖い笑顔になってるよ……落ちつこ?ね、ね?」
部屋の中が騒がしくなる。
リナが俺に詰め寄る。
「皆様の後で構いませんので、私達の事もお考え下さい!」
「わ、分かったから、落ち着け……なっ?」
リナの持っている書類から1枚の請求書が落ちる。
……俺が購入した素材の請求書だ……
俺はそこに書かれている額を見た後、裏返して机の上に置く。
「みんな!」
俺はひときわ大きな声を出し、皆の注目を集める。
「話を戻すが……金がない。しかし、それを誰かのせいと責めるのは間違いだと思わないか?」
みんなは顔を見合わせ、頷く。
その時部屋の中だというのに風が吹き、机の上の書類が舞上がる。
風が収まると、皆の前に1枚の請求書が……
それを一瞥した後……冷たい視線が俺に突き刺さる。
「あー明日、みんなでダンジョンに行って稼ごっか?」
アハハ……と、乾いた笑いが部屋の中に響く……




