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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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例えばこんな日常

 「・・・・・・ァ・・・・・・ン・・・・・・ダメっすよ、にぃに・・・・・・ァン・・・・・・ダメだってばぁ・・・・・・イヤ、イヤ・・・・・・ソコは・・・・・・」

 扉の向こうからリィズちゃんの嬌声が聞こえる。

 私は勢いよく扉を開ける。

 べ、べつに邪魔しようとか、そんなんじゃ無いんだからね!

 そう、教育上の問題よ。

 ソラちゃんもミーナちゃんもいるんだから、朝からと言うのはよくないわ。


 「リィズちゃ・・・・・・ん?」

 私は真っ赤になりながらも、リィズちゃんに声をかけるが・・・・・・。

 目の前の光景をみて言葉を失う。

 リィズちゃんがベガス達で埋まっていた。


 「・・・・・・ソコ・・・・・・そんな先っぽばっかり・・・・・・ダメェ・・・・・・。」

 ベガスがリィズちゃんの胸を突っついている。

 リィズちゃんはセンパイに触られている夢を見てるらしい。とても幸せそうだ・・・・・・。

 起こしてあげるのと、このままにしておくのと、どちらが親切何だろう?


 センパイはこの部屋には居なかった・・・・・・、多分作業室かな?


 「アン・・・・・・ダメェ・・・・・・。」

 ベガスに埋もれていた、アングル兎がリィズちゃんのほっぺを舐める。

 

 ・・・・・・起こして現実を見せるのは可哀想だね。

 私はそっと扉を閉め、部屋を後にした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 表に出るとそこにはミリィがいる。

 ……えっと、確かお庭だったよね?

 ここに来たばかりの時は、確かに中庭だったはずの場所……そこにミリィがいるけど……。

 もしゃもしゃと草を食べるヤンゴンとバフ。

 バフと言うのは、向こうの世界のホルスタインと水牛を足したような感じの牛なのよ。

 凶悪な面構えと凶暴な性格、ちょっとしたモンスターならその角の一撃で蹴散らせるという力を持っているけど……単なる牛であることに間違いはないわ。

 ミリィは、そのバフの傍に膝まつき、乳を搾っている。

 ……すごく牧歌的……牧歌的なんだけど……

 「いつの間に牧場になったのよ!」

 思わずツッコんじゃったよ。


 「あら、カナミおはようございます。……朝御飯はもう少し待ってくださいね。」

 ミリィが私に気付き、そう挨拶してくる。

 「あ、うん、それはいいけど……。」

 何故、ヤンゴンとバフがこんなに増えてるのよ!……と言うツッコミを一生懸命こらえる。

 ツッコんだら負けのような気がした。

 「ねぇ、ミリィ……昨日の朝居たのって、迷い込んできたバフ1頭だけだったよね?……後、昨日まで、ここお庭だったよね?」

 「そうですね。バフ1頭と、カナミについてきたヤンゴン2頭だけでしたね。……ご飯欲しそうにしてたので、精霊さんにお願いして、牧草を生やしてもらいました。」

 柵はいつの間にかレイさんが準備してくれた……とミリィが笑いながら伝えてくる。

 「それより、カナミ。一口いかがですか?」

 そう言ってミリィはバフの搾りたての乳をカップに入れて差し出してくる。

 「ありがとう。」

 私はカップを受け取り口をつける。

 「……美味しい。」

 口の中に広がる濃厚な味わいと草原の香り。後味もすっきりしていて残らない爽やかさ……向こうの世界では味わえないミルク……。

 美味しんだけど……、美味しいんだけどっ!

 この理不尽な怒りと言うかツッコミどころと言うか……

 うぅ……。

 とりあえず棚上げしておくわ……。

 「そう言えば、レイにぃを見かけなかった?部屋にはいなかったんだけど?」

 「さぁ、こちらには来てませんよ。……作業場じゃないかしら?」

 「そう……じゃぁ、ちょっと行ってみるね。……ミルク御馳走様。」

 私はミリィにカップを返して、その場を後にした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ~~~~~♪

 作業場に行く途中、綺麗な歌声が聞こえる……聖堂からだ。

 私は、教会の中を覗いてみたの。

 「あ、やっぱりソラちゃんだ。……相変わらずいい声ね。」

 祭壇の前で、背中から金色の翼を広げて歌う様は、天使と見間違えるようで、とても綺麗だわ。

 歌っているのは、私が教えた讃美歌……マリア様を賛美する曲。

 やっぱリ教会には讃美歌だよね。

 ゴスペルもいいけどね。

 ……歌詞は、そのうち女神様向けに変えないとね。


 でも、ソラちゃん、本当に楽しそうに歌うなぁ……精霊たちも寄ってきて……キラキラ……。

 んー、独り占めはもったいないかも?


 あ、曲が変わった……って、これアニソンじゃん!

 センパイだな!……もぅ、やり過ぎだよぉ。


 曲が終わったところで、ソラちゃんが声をかけてくる。

 「カナミお姉ちゃん、ボクの歌どうだった?」

 「とっても素敵だったよ。つい聞き惚れちゃった。」

 「エヘッ」

 ソラちゃんが笑う。

 以前、ソラちゃんのステージをミンディアでやったって聞いたけど……凄い人気だっただろうねぇ。

 「今ね、楽器の練習もしてるんだ。」

 そう言ってソラちゃんが取り出したのは、「ハープムーン」と呼ばれている小さな楽器だった。

 向こうの世界の「オカリナ」が一番近いかな? 

 「ちょっと聞いてくれる?」

 「ウン、聞かせて。」

 

 ソラちゃんがハープムーンを口に当てる。

 流れ出す、優しい……どこか懐かしい音色。

 それでいて、心の奥底まで染め上げていくような深い深い音色……。

 やがて、余韻を残して曲が終わる。


 「どう?」

 パチパチパチ!

 私は思いっきり拍手した……ほんとに凄いわ。

 「すっごく上手!ギュってしていい?」

 私は返事を待たずにソラちゃんを抱きしめる。

 「うぅ……苦しぃ……」

 「ソラちゃんはホントに凄いなぁ。みんなに自慢したくなっちゃう。」

 (あの……そろそろ離してあげて……)

 どこからかファルスの声が聞こえた。

 ……私の腕の中でソラちゃんがぐったりしてる。

 「きゅぅ……。」

 しまった、やり過ぎちゃった。

 私は、慌ててソラちゃんを離して、椅子の上に寝かせる。

 「ごめーん。つい……。」

 「うぅ……カナミお姉ちゃんは、加減っていうものを覚えるべきだと、ボクは思う……。」

 「アハハ……ファルス、あとお願いね。……ソラちゃんまたねー。」

 私は、後をファルスに押し付け、逃げ出す……ふぅ、失敗、失敗。

 可愛いソラちゃんが悪いんだからね。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 レイにぃの作業場は……と。

 「いいですかミーナ……。」

 廊下を歩いていると、部屋の中から声が漏れ聞こえてきた。

 ある部屋のドアが少し開いている。

 私は気になって、そーっと覗いてみたの。

 中にはメイド服を着た、リナとミーナがいた。

 どうやら、リナが、ミーナに色々と教えているらしい。

 

 「ミーナ、スカートの丈はもう少し短くです。

 そう、それくらい。かがんだ時、ご主人様から、中が見えないギリギリのラインを攻めるのです。」

 「ウン、分かった……こうだね。」

 「そうです。ミーナは覚えが早いですね。……次は、ご主人様とぶつかった時のしぐさです。」

 「えーッと、こうかな?」

 「ミーナ、ダメです。お尻を付けた時に、自然と、この角度になる様に計算するのですよ。」

 「えーと……こう?」

 ミーナちゃんがぺたんと座り込み、手を前につく。

 ギリギリのラインでスカートが捲れ上がっている。

 ……リナってば、何を教えてるの!

 「次は、食器をかたずける時の作法です。……こう手を伸ばせば胸元が……。」

 私はそっとドアを閉める。

 私は何も見なかった……何も見なかった……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 そう言えば、レイファも泊りに来てたんだっけ……。

 確かこの先の客間だったよね。

 一応声かけておこうと、レイファのいる客間に向かう。

 ここだよね?

 私はノックしようとして、手が止まる。

 「ん……クッ……んー……。」

 何か唸るような声が聞こえる。

 私はそっとドアを少しだけ開ける。

 隙間から覗くとレイファが、鏡の前で、何やらポーズをとっている。

 「……っと、これだとちょっと引かれそう……。」

 鏡に映る、自分の胸の角度をじっくりと見ている。

 「ンッ……この感じは良さそう。……レイさんの眼が、丁度、私の胸に来るわね。」

 自然と持ち上がるようなポーズを取って、満足気にうなずくレイファ。

 「……こうしたら……ッと、っとっと……。」

 少し身体を捻り過ぎたようで、バランスを崩すレイファ……。


 レイファ……あなたもなの?……私はそっとドアを閉める。

 ゴメンね、レイファ……私は何も見てないからね。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 「レイにぃ、いるかなぁ?」

 私は、作業場のドアをノックしてからあける。

 「レイにぃ、今いい?」

 テーブルの上で、何やら細かい作業をしているレイにぃに私は声をかける。

 「カナ?ちょっとだけまってくれ。」

 私は言われたとおり、レイにぃの作業を見つめながら待つことにする。


 私とレイにぃが再開してから2週間が過ぎた。

 最初の内は、色々な後処理でお互いにゆっくりできなかったんだけど、1週間前、ここに落ち着いてからはのんびりとした日々を送っている。

 レイにぃも、好きな製作三昧で喜んでいる……っぽい。

 レイにぃも私も外見がUSOの時のアバターに酷似しているから、何んとなく呼び方がUSO時代に戻ってしまっているが、それはそれで楽しかったりする。


 「出来た!」

 レイにぃの作業が終わったみたい。

 「お疲れー、何作ってたの?」

 「あぁ……まぁ……丁度いいか……。」

 レイにぃがなんかソワソワしている。

 「カナ、ちょっと手を出して……。」

 私は言われたとおり手を出す。……無意識に左手を出しちゃった……けど問題ないよね?」

 レイにぃは、私の手を取って、指に何か嵌めてくる……指輪!

 「レイにぃ……これって。」

 「いや、みんなは持ってるのに、カナだけないってのも変だろ?」

 レイにぃが、照れたように言う。

 ……エンゲージリング……嬉しぃよぉ!

 「その宝石には高位の魔結晶を使用していて、そこから共有倉庫にアクセスする機能を詰め込んでみた……。」

 あれっ?……レイにぃが、指輪の機能の事を話し始めたよ?

 えっと、ひょっとして思ってたのと違う?


 「あの……この指輪って……。」

 「あぁ、みんなにも渡してある、位置情報と魔力タンクと、簡単な魔力抵抗を付与してあるお守りみたいなもんだけど……?」

 ……って事は何?

 レイにぃにとっては単なるアクセサリーを送っただけって事?

 「レイにぃ、一つ聞いていいかな?」

 「ん?」

 「みんなに指輪上げた時、何か言われなかった?」

 「んー、そう言えば、指輪がどうとか、結婚賀とかなんかパニくってたよなぁ?」

 ハァ……レイにぃって、変わってないというかなんて言うか……

 とりあえず……。

 「レイにぃ、そこに正座!」

 「えっ?一体……。」

 「いいから正座!」


 私は、正座したレイにぃを前に、女心と言うモノをみっちりと教授してあげた。

 もっと、私達のこと考えてよね!


 



  


 


 

ギリギリ「今日」に間に合いました。

短めでごめんなさい。


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