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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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ポメラ獣人国の攻防

 「……ここはどこだ。余をどうするつもりだ!」

 暗闇の中、縛られ転がされている獣人国の若き王……ダビットが叫ぶ。

 「そんなの、決まってるだろ?」

 俺は、俺だと悟られないように声音を変えて喋る。

 体に匂い消しもかけてある……万全だ。

 俺は同じ失敗を繰り返さない男なんだよ。

 「うわはっはっは……。」

 「な、何を……いきなり笑いだすなんて……もしや、余を手籠めに……。」

 いかんいかん、つい笑い声が漏れてしまったが……ダビットもわけわからんことを……意外と余裕があるのか?

 「くっ、余の体を自由にしても、余の心は……グボッ……。」

 俺は最後まで言わせずダビットを殴る。

 ……ったく、漫画の見過ぎだっつうの。

 

 「ダビット……アルガード王国に出した賠償請求、本気か?」

 「……お前、アルガードの者か?」

 「そんな事いいから答えろ本気か?」

 俺はダビットの頭を小突く。

 「……本気だ。」

 「それが原因で戦争になる事を理解してるか?」

 「アルガード王国が、素直に要求を呑めば戦争にならない。……戦争が嫌なら言うとおりにすればよい。」

 俺は、ハァ……とため息をつきつつ聞いてみる。

 「本気で言ってるのか?」

 「……本気だ!」

 ドガッ!

 思わず本気で殴ってしまった。

 「戦争になれば、大勢が死ぬんだぞ!人間も獣人も……お前が守りたいって言ってた奴らも死ぬんだぞ!」 

 「……その声……レイフォード殿か?」

 しまった……つい……

 「……いや、レイフォードなんて知らん。」

 慌てて取り繕うが……

 「レイ様……諦めが肝心ですよ……。」

 そう言って、リナが明かりを点ける。

 明るい所で姿を現した俺達を見て、ダビットが言葉を詰まらせる。

 

 「……すまん、声が似ていたので知り合いと間違えたみたいだ。」

 そう言って目を逸らすダビット。

 俺とリナの格好は、エミリア仮面のそれだった……

 ダビットは、関わり合いになりたくないという態度が見え見えだった。

 ……俺だって好きでこんな格好してるんじゃねぇよ。


 「いや……間違ってないよ、ダビット君。」

 俺はダビットに凄んでみせる。

 よく考えたら、全部ダビットの所為じゃないか。


 「君がね、浅はかだから、俺がこんな格好する羽目になったんだよ?わかるかなぁ?」

 俺は手にした短剣で、ダビットの顔をぺちぺちと叩きながら言い聞かせるように言う。

 ダビットは、ブルブル震えながら、コクコクと頷くだけだった。

 「あの……レイ様、それくらいで……。」

 見かねたリナが止めに入る。

 「その声は……リナか?リナなのか?」

 ダビットが驚いた声で問いかけてくる。


 「いや、この子は俺の奴隷だよ。」

 俺はリナを後ろから抱きかかえ、ダビットに見せつけるようにする。

 「レイフォード殿……まさか……。」

 「いいじゃないか。どうせ、ポメラの獣人達は戦争で滅ぶんだ。先に俺が貰っても何の問題もないだろ?」

 そう言いながら俺は見せつけるようにして、リナの胸を揉む。

 「アン……こんなところで……。」

 リナが色っぽい声を出す。

 「この後、街に行ってもう何人か見繕ってくるかなぁ?どうせ戦争に負ければ死ぬか奴隷になるかだからなぁ。」

 さらにリナの胸を揉みしだき、乱れる様を見せつけながら言う。

 「獣人達も、無能な王の所為で可哀想だけど仕方がないよなぁ?」

 「アン……もう……お願いです、レイ様……お情けを……」

 俺の腕の中でリナが悶えている。

 いかんやり過ぎたか。

 

 「くッ……」

 ダビットは俯いたまま呻き声を上げ……そのまま黙ってしまった。

 俺はリナを離そうとするが……リナが離れたがらず、切なそうな目で見あげてくるので、軽く頬にキスをしてから引き離す。

 そしてダビットに声をかける。

 「なぁ……もう一度聞くぞ。本気で戦争する気か?」

 「……。」

 ダビットは黙ったままだ。

 俺はダビットが何か言いだすのを待っていた。


 どれくらいの時間がたったのか……やがてダビットの口が開く。

 「余だって……戦争など、したくはない。……でも、もう後に引けない……なんでこうなってしまったのだ……。」

 ダビットの口から洩れるのは悔恨の呻き声だった。

 「ダビット様……。」

 リナが労しそうにダビットを見つめる。

 俺はそんなリナを撫でて慰める。

 そしてダビットに話しかける。

 「なぁ、最初から話してみろよ。何とか出来るかもしれないぜ。」

 「……そう……だな。……今からでも……何とかなるなら……。」

 ダビットは、ボツリ、ボツリと、三者会談の後から起きた出来事を話し出した。


 屋敷が火で囲まれた時、ダビットたちはまだ屋敷の中に居たらしい。

 どうすればいいかわからず途方に暮れていた時に助けてくれたのがエミリアたちだったという事だ。

 その後、エミリアの言われるがままに避難し、エミリアの別宅でしばらくの間世話になっていたそうだ。

 エミリアに獣人国建国に反対する組織が動き出したので、安全のために隠れていた方がいいと言われ、その言葉に従っていたという。

 その後、エミリアがリナたちの事に言及し、このままだとリナたちが襲われる心配があるから別れた方がいいと進言してきた。

 ダビットも、今だけの事だと思いそれを受け入れ、リナたちに別れを告げ、建国を急ぐための行動に移ったそうだ。

 どうすればいいかなど、全てエミリアが手配してくれていたので、ダビットたちは言われるがままに動くだけでよかったという。

 そして無事建国したときにエミリアが言ってきたそうだ。

 「ダビット王。無事建国出来ましたので、アルガード王国に声明を出してはいかがですか?」

 そう言って見せてきたのが例の要求だったそうだ。

 ダビットもそれを見て納得し許可を出したという。

 そうしたら、なぜか大騒ぎになり……獣人がこれほど嫌われていたのかと思い怒りで一杯だったという。

 

 「なぁ、その要求の内容、本当に理解してるか?」

 「ああ、もちろんだ。バカにしないでくれ。獣人奴隷の即開放は当たり前の事だろう?もともとそのために動いていたのが始まりだし。賠償金も金貨100枚なら妥当ではないか?こっちも資金は必要だしな。」

 「……ダビット……お前、やっぱバカだろ?」

 なにぃ!とダビットが怒りをあらわにするが、縛られて動けないので、ジタバタしてるだけでしかない。

 「お前、本当によく見たのか?お前らが出した要求は金貨100枚じゃなく『白金貨100枚』だぞ。」

 「……白金貨ってなんだ?」

 「はぁ……金貨より価値のある貨幣だ。白金貨1枚で金貨100枚の価値がある。」

 「そ、そんな……。」

 ダビットが項垂れる。

 「一応言っておくけどな、たとえ金貨100枚でもそれが10年間ともなればやり過ぎだからな。……その要求は戦勝国が敗残国に出すぐらいのものだ。」

 「ちょっと待ってくれ……10年ってどういうことだ?聞いてないぞ。」

  まぁ、そんな事じゃないかとは思っていたが……。

 「その様子だと、治外法権の件も知らないんだろう?」

 俺は一応聞いてみる。

 「治外法権?なんだそれは?……どういう意味だ?」

 「やっぱりダビット様ですわ。」

 リナが嬉しそうに言う。

 まぁ、1国の王がここまで馬鹿でいいのかどうかは置いておいて……ダビットが本気で戦争を望んでいるわけじゃない事は分かった。


 「ダビット……本当の本当に戦争がしたいわけじゃないんだな?」

 「あぁ、避けることが出来るのであれば……ただ、獣人奴隷の解放だけは譲れない。」

 「それは何とかしよう……時間はかかるだろうが。」

 「いい方法があるのか?」

 ダビットが期待を込めた目で見てくる。

 「いい方法……ではないけどな。……今のポメラ獣人国は無くなるだろうしな。」


 俺はダビットを見て告げる。

 「多少の犠牲が出るかもしれないが、今の状況をリセットして、今後も人間達との融和を考えて生きていくか……、獣人の犠牲は出さないが、今後は人間達から怖がられ蔑まされ、敵対しながら生きていくか……お前が選べ!」

 「どういう言事だ……よくわからん。」

 「レイ様……ダビット様はバカですので、もう少し噛み砕いてお話してあげてください。でないと、また同じことが起きるかもしれません……。」

 ハァ……と、俺はため息をつく。

 仕方がないか。

 「いいか、今のままではもう戦争は避けられないところまで来ているのは分かるか?」

 「し、しかし……要求を取り下げれば……。」

 ダビットが言うが……。

 「今更取り下げても遅いんだよ。もっと前の段階なら、交渉で妥当な範囲まで持っていくことも出来たかもしれないが、アルガード国内でクーデターが起きた今では、責任をすべて擦り付けられるぞ。」

 「だったら、どうすれば……。」

 「だから今のままではどうしようもないんだよ。……ポメラ獣人国が滅ぶ以外にはな。 

 賠償要求をしている国が無くなれば、今までの事はなかったことになる。

 後はそれぞれの国の問題だ。」

 「しかし、どうやって……。」

 ダビットが聞いてくる。

 それを今から説明してやるから、黙って聞いてろっての。

 

 「そうだな……こういうのはどうだ?ポメラ獣人国に魔王軍が責めてくる。 

 必死で抵抗するも、圧倒的力の前に獣人達は成す術もなく降伏。獣人国は魔王軍の物になる。

 これで、獣人達は魔王の配下だ。人間達と敵対することになるが、魔王の支配の下、穏やかに暮らしていけるぞ。……どうだ?」

 「そんな事……出来るわけがない。獣人の中には人間達と友好関係を育んでいる者もいるんだ。……今回の事があってもなお、良い関係でいるための努力を続けている者達がいる。……その努力を無にすることなどできん。」

 ダビットが、力強く訴えてくる。

 いい話だけど……それを言うか?

 「お前が言うな!……無にしようとしていた張本人だろ?」

 ダビットが押し黙る。


 「まぁ、それがだめなら……魔王軍は、獣人達の必死の抵抗により押し戻される。 

 しかし魔王軍の力は圧倒的で、再侵攻されるのは時間の問題だ。

 そこで、獣人の王と魔王はある契約を結ぶ。

 生贄を差し出し、抵抗しない代わりに、ここから人間達に手を出さないでほしいと。

 そして、獣人達の多大な犠牲により、近隣の国は助かる。また、魔王との契約があるため、獣人達への下手な手出しは出来なくなる。

 ……これならどうだ?」

 「獣人達に多大な被害が出るのか……。」

 ダビットはそう言ったきり黙ってしまう。

 まぁ、ゆっくり考えるがいいさ。


 「レイ様、魔王軍がそう都合よく攻めてくるのでしょうか?」

 「いや攻めてこないだろ?」

 「なにぃ?じゃぁ、今までの話は何なんだ?」

 リナの質問に俺が答えると、ダビットが怒りをあらわにして怒鳴る。

 「魔王軍じゃないかもしれないが、多数のモンスターを召還した俺が攻めれば同じ事だろ?……いや、俺じゃなかった。エミリア仮面だ。エミリア仮面が攻めてくるんだ。その力は圧倒的……リンガードの皆さんが保証してくれるよ。」

 俺の言葉に、ダビットが満面の笑みを浮かべる。

 「そうか、そうすれば助かるのか。」

 「おっと、早とちりするなよ。」

 俺は喜ぶダビットに水を差す。

 「お前ら獣人は、俺の前にひれ伏すことになるんだ。多大な生贄が必要になるんだよ……このリナのようにな。」

 そう言って俺はリナを引き寄せ、ミミを、尻尾をモフる。

 「アッ……そこはダメですぅ……。」

 俺が尻尾の付け根を撫でると、思わず色っぽい声を出してしまうリナ。

 

 「俺の言う通りにして、生きる道を選ぶか……戦争で死に追いやるか……。

 ダビット、お前が王として選べ!そして、その責を一生背負っていけ。」

 正直、酷だとは思う。

 しかし、流されたとはいえ、ダビット自身が選んだ道だ。遅かれ早かれ、こういう決断をするときは来る。

 「余は……。」

 ダビットが言いよどむ。その先の言葉が出てこない。

 その時、リナがダビットに告げる。

 「ダビット様。あなたは私達が選んだ王です。選んだ時から、あなたの言葉に従うと決めております。ですから、どのような決断をしても責める者はおりませんので、心のままにお決めください。」

 そう言ってに事と笑うリナ。

 優しくて……残酷な言葉だ。


 「余に……王の資格など、なかったのかもしれぬ。余は王の器ではなかった……。許せとは言わない。余を恨んでも構わぬ。余は……、レイフォード殿に従う。」

 「ダビット様……ご立派でございます。」

 リナはそう言ってダビットの頭を撫でる。

 「余は……余は……。」

 俺はその場を離れ暫く二人きりにしてやることにした。


 「レイ様……お待たせしました。」

 しばらくしてリナがやってくる。

 「もういいのか?」

 「はい、ダビット様も落ち着きましたから。」

 「……そのままダビットについててやっていいんだぞ?」

 俺はリナにそう告げるが……。

 「私はレイ様にずっとついて行くと決めました。……ダメですか?邪魔ですか?」

 リナが見つめてくる。

 その瞳には、確かな決意の色が伺える。

 「ダメ……じゃないけど……な。」

 その目を見たらダメとは言えなかった。

 「よかったです……嬉しぃ。」

 喜ぶリナを見て、まいっかと思う……同時に、呆れかえるリィズたちの顔も浮かんだが……。


 「じゃぁ、さっそく行動に移るか……時間もない事だしな。」

 俺は、リナにダビットと共に行動するように指示を出す。

 ダビットたちが現れるタイミングが重要になるからな。

 そしてポメラ獣人国の首都ポメラの中央に位置する王宮で、モンスター達を召喚する。

 まぁ、ダンジョンのモンスターをここで放しただけなんだけどな。

 当然、王宮は大騒ぎになる。

 

 「エミリア様、ここは危険です、こちらへお逃げください!」

 「何が起きているのです!誰か、分る者はいないのか!」

 エミリアが側近に怒鳴りつける。

 「モンスターです!宮殿の中央庭園に、モンスターが現れました。現在、討伐隊が出ておりますが、危険ですので避難をお願いします。」

 「……わかりました。案内をお願いします。」

 「はい、こちらです。」

 エミリアが、護衛の兵士を先導にして避難を始める。

 

 「……何か、奥へと入り込んでいませんか?この道で合っているのですか?」

 エミリアが不審に思い立ち止まる。

 「いえ、合っていますよ。」

 護衛の兵士が剣を突き付ける。

 「クッ、裏切りか!」

 「いやだなぁ……最初に裏切ったのはあなたでしょう?」

 そう言って護衛の兵士……俺は兜を脱ぎ捨てる。

 「お、お前は!……レイ……フォード?」

 「おや、覚えててくれましたか。忘れられてるんじゃないかと心配してたんですよ。」

 俺はニヤリと笑う。

 「クッ……。」

 エミリアは、隙をついて逃げだそうとする。

 『拘束(バインド)!』

 魔力の光がエミリアに絡みつき、拘束する。

 「覚悟してくださいね。」

 俺は、動けないエミリアに対し、剣を振るう。

 肌には傷つけず、衣類がボロボロに切り刻まれる。

 肌が露わになり、必死に隠そうともがくが、拘束されている為叶わない。

 「私をどうするつもり!」

 俺をキッと睨みつけてエミリアが問うてくる。

 「さぁ、どうしましょうか?このまま、飢えた兵士たちの慰み者になってもらってもいいし、今回の首謀者として晒すのもいいかもしれませんね。……あ、そうそう、ミネラルド王国へ行ってもらうのもいいかも……楽しいところでしたよ?」

 俺はエミリアの絶望的な未来を指折り数えてあげていく。


 「俺は優しいのでエミリアさんの好きな道を選ばせてあげますよ。どれがいいですか?」 

 エミリアの顔が絶望に歪む。

 「こんなことして、許されると思っているのですか!」

 それでも気丈に叫ぶエミリア。

 「うーん、自分の立場が分かっていないみたいですね……教えてあげなくてはいけないかな?」

 俺はエミリアを引っ張りあげ、つるし上げる。

 そして目の前の、露わになっている胸の先をつまみ上げる。 

 「ひぃっ」

 エミリアが悲鳴を上げるが気にしない。

 「こんなことに使いたくないんですけどねぇ。」

 剣の形状を鞭に変え、胸の先の突起を狙って打ち据える。

 「あひぃっ!」

 鞭うたれるたびに、嬌声とも悲鳴とも取れる声を上げるエミリア。


 「そう言えば半年前、鞭うたれる俺を見て喜んでいましたね。どうです、自分が打たれるのは?嬉しいですか?」

 「う、嬉しいわけがない。」

 エミリアが吐き捨てるように言う。

 「あれ?そうは見えませんけどねぇ。」

 俺はツンツンに尖った突起を弄ぶ。

 「あぅ……アン……。」

 「ほら、喜んでいるじゃないですか?」

 「喜んでなんて……あひぃっ。」

 俺は最後まで言わせず、鞭で打ち据える。

 「素直になったらどうですか?」

 何度も鞭うつと次第に大人しくなるエミリア。


 「こういう所はアイツらに見せたくないからな。」

 俺はエミリアを鞭うちながらぼやく。

 「そろそろとどめと行きますか。」

 おれは転がっていた適当な棒を拾い上げる。

 「ひぃ……何するの……やめて……。」

 俺が持っている物を見ておびえるエミリア。

 「もう一度聞きますよ。あなたは奴隷となって兵士たちの慰み者になるか、奴隷として売りに出されるか、奴隷として俺の言う事を聞くか……どれがいいですか?」

 何のことは無い、どれを選んでも奴隷だったりする。 

 「そんな……。」

 俺は、手にした棒をエミリアに見せつける。

 「どうしてほしい?」

 「ごめんなさい、許して。奴隷でも何でもなるから……許して……ごめんなさい、ごめんなさい……。」

 とうとう、エミリアの精神が折れる。

 ごめんなさい、ごめんなさいと許しを請う声だけが響く……。


 ぼろきれを掛けただけの状態で、拘束したままのエミリアを連れて宮殿の中央へ戻る。

 宮殿の外回りではダビットを筆頭にモンスターが外に出ないように頑張っている姿が見えた。

 街の人間達は、獣人の誘導の下に避難している。

 よしよし、うまくやっているな。

 俺はほくそ笑むと、最後の仕上げの準備に取り掛かる。

 

 「ファー待たせたな。」

 (ほんとよ、今回は出番がないかと焦ったわ。)

 ファーが文句を言ってくるが、主役は最後に出るものだと宥めておく。

 「来い!ケイオス!」

 俺はファーの力を取り入れ精霊化し、ケイオスを呼ぶ。

 俺の右手の周りに光が集まり実体化していく。

 さらに俺は幻術の魔法を自分にかける。

 これで、禍々しい姿に見えるはずだ。


 俺は、ダビットの前に姿を現わす。

 「お前が、リーダか?」

 「そうだ、お前は魔王か!」

 おいおい、ダビットさんや、下手な演技だよ。

 俺は周りを見回すが、異様な光景の為か、ダビットの下手な演技に気付くものはいないようだ。

 「俺が誰かなんてどうでもいい。降伏しろ勝ち目はないぞ!」

 そう言って俺は宮殿の半分を吹き飛ばす。

 ドゥン!

 爆風と共に崩れ落ちる宮殿。

 そして飛び掛かるモンスター達。

 「させません!」

 そこに飛び込んでくる影がある……リナだ。

 ちなみにリナは顔をマスカレイドマスクで隠している……つまりエミリア仮面だ。

 リナが手にした剣を振ると光が飛び出しモンスター達が消滅する。

 「そ、それは、伝説のポメラソード!」

 我ながら適当な名前だ。

 ちなみに、それっぽく作ったただの剣だ。

 さっきのも、リナの剣の振りに合わせて俺が光を出してモンスターを消滅させただけだったりする。


 「魔王!私がいる限りダビット様は……この国の人間や獣人達には手を出させません!」

 お―リナ、かっこいいな。どこぞのヘボ役者も見習えよ。

 「まさか、伝説のポメラソードがあるとは……。」

 俺はリナとの間に光を光らせる……そろそろかな。

 リナが俺に向かい飛び込んでくる。

 俺はそれを受け止め、一際まぶしい光を放つ。


 カランッ……。

 ポメラソードがダビットの前に落ちる。

 光が消え、粉塵が収まるとそこには胸を抑え血を流している俺と、俺に抱えられてぐったりとしたリナの姿がある。

 「ふっ……この娘に免じて、今は引いてやる。しかし覚えておけ。お前ら獣人は俺様のものだ!」

 そう言って俺は足元に爆風の魔法をかける。

 爆発と共に透明化の魔法をかけ、その場から去る。

 これで、あとはアルガードとリンガードに圧力を掛ければ終わりだな。


 ふと見ると、ダビットが民衆にもみくちゃにされている。

 ヒーロー誕生ってか。


 俺はその後、リンガード共和国とアルガード王国の有力者の下に、魔王スタイルで姿を現し、獣人が気に入った事。ゆくゆくは獣人達を配下にするが、今は獣人達の心意気に免じて手を出さないでおく事、もし、ニンゲンが獣人に手を出したら、それは魔王に対する宣戦布告と受け取ることなどをいくつかの建物の破壊と共に伝えておいた。

 要は、獣人がいる間は手を出さないでおいてやるって事だ。

 まぁ、アルガードはまだゴタゴタしているから、この後言って、ケリをつけてこなきゃいけなさそうだけどな。


 「ダビット、土産だ。」

 俺は、半壊した王宮にいるダビットにグルグルに縛り上げたエミリアを放り投げる。

 「ギアスで縛って奴隷にしてあるから、逆らうことは出来ない。一応、政治的な能力は高いから秘書にするなり、愛人にするなり、慰み者にするなり、好きにするがいい。」

 慰み者と言う言葉の所で、エミリアがビクッと反応したが、無視しておく。

 「分かっているとは思うが、もう獣人の主人は俺だ。とりあえず口出しはしないが下手な事をすると国が亡ぶって事は覚えておけよ。……後は、前も言ったように人材を育てるんだな。……焦る必要はないから、しっかりと国の基盤を作ることだ。」

 「レイフォード殿……何から何まで済まない。ありがとう。」

 「気にするなよ……後、礼を言うならリナに感謝することだ。」

 そう言って、俺はダビットから離れ、ポメラ獣人国を後にする。

 ダビットは俺の姿が見えなくなるまで頭を下げていた。


 「本当にいいのか?」

 国境の丘……ここからはポメラ獣人国の首都ポメラが一望できる。

 俺は隣で、ポメラを眺めているリナに話しかける。

 「今なら……ダビットのもとに戻れるんだぞ?」

 「何度も言わせないでください。私はレイ様のお側がいいのです。……落ち着く場所が出来たらミーナも呼びますわ。」

 まぁ、これ以上言うのは野暮ってものか。


 「リナがいいなら、それでいいさ。……この後はアルガードに行く。ミリィの話だとかなり混乱しているみたいだからな。」

 「はい、レイ様の行くところなら、例え、魔界へだってついて行きますわ。……私の魔王サマ。」

 そう言ってリナは俺の頬にキスをしてくる。

 完全な不意打ちで避けることは出来なかった。

 


 ポメラ獣人国は何とか片付きました……かなり無理やりですが(^^;

リナが何故かレイフォードについてくることに……当初はダビットの奥さんとしてチョコチョコ出るか出ないかという扱いになるはずだったんですが……。

もうこの先どうなっていくのか……私自身も楽しみにしています。

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