ポメラ獣人国の事情
「っと、これくらいでいいか……。ミリィ、こっち終わったけど?」
俺は、作業が終了したことをミリィに告げる。
「ありがとうございます、レイさん。ちょうどご飯できましたので休憩しましょう。」
俺は、ミリィと食事をとりつつ、今後の事について話を進める。
「とりあえず、転移陣は設置したので、いつでもミンディアに行けるんだが……。」
ミリィが追手を阻むために作った結界……結界そのものの効果は消えているが、森と認識疎外の魔法効果は残っている。
これを利用しない手はないという事で、森の中央付近に隠れ家的アジトを作った。
と言っても、まだ、山小屋風の小さな建物が出来ただけで、本格的な改装はこれからなのだが、それはみんなと合流してからでいいと思っている。
今は簡単なキッチンと食堂、簡易的な作業場と倉庫ぐらいしか出来上がっていない。
後は、奥の部屋に転移陣を設置したばかりだ。
「ミリィは、現在の情勢をどこまで把握している?」
「どこまで……と言われても、昨日お話ししたところから後の事については、全くわからないわ。私の感覚からすると、リィズ達を守って気を失った後、目覚めたらレイさんがいた……って感じですから。」
なるほど……眠っていたのと同じ感じか……。
「正直、俺も出て来たばかりだからな。情報が不足しているんだ。
昨日の話と漏れ聞こえている噂話などから推測すると、リィズとソラは聖女と合流できたとみて間違いないだろう。
ただ、その後の事がわからないのがな……。」
「聖女様と合流出来ているなら安心じゃないのですか?」
「聖女の正体がはっきりしないうちは、安心とは言い難いな……。特に噂ではソフィアとかなり親密な友好関係にあるらしいしな。」
「ソフィアさんに何か問題があるのですか?」
ミリィが訳が分からないという顔で訊ねてくる。
まぁ、ミリィにしてみれば、ソフィアは同じ被害者で、協力して国外脱出を試みた仲だしな。
疑えというのが無理な話だろう。
「エミリアが黒幕だったって話はしたよな?」
「ええ、覚えています。」
「俺が捕まっているときに、エミリアが言ったんだ……『連れている者が精霊使いだった』『女たちが、あなたを助け出すために動く……』と……。おかしいと思わないか?」
俺の言葉にミリィがわからない……とつぶやく。
「まず、エミリアとお前たちは顔を合わせていない。屋敷の者から俺の連れが女性というのは聞いているかもしれないが、普通は、身の回りの世話をするものとかと考えるはずだ。
そしてエミリアは、最初俺が精霊使いだと思い込んでいて、お前達の事は眼中になかった。
その後、『誰か』から俺ではなく、お前達が精霊使いであることを知った。
お前達が精霊使いであることを知っていて、尚且つエミリアと接触した可能性があるのは、ダビットとソフィアだけだ。
普通に考えれば、ダビットが話したと思うんだが、ダビットは「俺が精霊使いじゃない」という事を知らない。
ダビットの前で俺が精霊を呼び出したことはないが、エアリーゼやファルスとあれだけ気軽に話しているなら精霊と関わりがある存在だと普通は思うだろう。」
「でも、宴の時に「呼び出していない」事で、精霊使いじゃないと考えたんじゃ?」
ミリィがそう反論してくる。
確かにその可能性はある。
「確かにな……。しかしここで、もう一つの言葉「俺を助けるためにお前達が動く」だ。
エミリアはお前達を見ていない……なのにお前達が戦えることを知っている……おかしいと思わないか?」
「でも精霊使いなら戦えるのは当たり前じゃないかと思うのですが?」
ミリィがそう言う。
「普通なら、そう考えるけどな……エミリアが、お前達の事を知ったのはかなり後だ。知ってから網を張ったんじゃあまりにも遅すぎる……つまり、精霊使いと知る前から戦えることを知っていたことになる……なぜだ?」
「それは……。」
ミリィが言葉に詰まる。
「ダビットから聞いたとした場合、ダビットはお前達が精霊使いであることも伝えるはずだ。だがそうじゃなかった。
じゃぁ、ソフィアなら?
ソフィアは、会談の前に俺と一緒にいたお前たちを見ている。
少なくともリィズの装備を見て、ひとりは護衛だと思ったに違いない。
つまり、ソフィアからならお前達が「精霊使いじゃなくても戦える」存在であることは伝わってもおかしくないんだ。」
俺はミリィを見ると、ミリィも納得する部分があったのか、頷いて見せる。
「そう考えると、ソフィアが無事にあの館から脱出できたのも頷ける。俺は、あのタイミングではソフィアが無事に脱出できるとは思えなかった。だから、その状況も知るためにワザと捕まったんだが……。」
「レイさんは、ソフィアさんもエミリアさんの仲間だというのですね?」
「いや、単純に仲間だとは思っていないが……何らかのつながりはあるとみている。それが今も続いているかどうかが問題なんだ。」
今も協力関係にあるならば、聖女の元にいるリィズとソラが危ない。
一時の利害が一致しての協力関係であるならば、それ程の問題にはならないだろう。
聖女の正体が香奈美であれば、何の問題もない。
安心して会いに行ける。
しかしその可能性は殆ど0%に等しい。
そうすると、結局は聖女の性格と考え方、現在の状況次第でどう転ぶかわからないわけだ。
「今、この状況でいきなりミンディアに行くのは、少々危険かもしれない。」
「私はレイさんの行くところについていくだけですわ。」
ミリィはウーンと少し考えてから、そう言ってくる。
……笑顔で言っているが、あれは思考放棄したな。
「とりあえず、ポメラ獣人国へ近づいてみようかと思う。エミリアに見つかるのは避けたいけど、あそこの現状を知らないと動きようがない気がするんだ。
明日には出発したいと思うんだが……それまでに出来るだけポーション類を作成してくれないか?」
「それは良いけど、沢山作っても持ち運べないわ。」
ミリィが驚いたように言う。
「大丈夫、それについては考えがあるから……後、保存食も作れるだけ作っておいてくれると助かる。」
俺はミリィにそう頼むと、自分の作業をするために作業場へと籠る。
「さてと……『英知の書』」
俺は英知の書を呼び出し、亜空間魔法について調べる。
……『亜空間魔法』
人界と精霊界の間にある「狭間の世界」にスペースを作る魔法。
広さは、術者の魔力に依存。
空間内の状態は術者の思うがままに出来るが、通常の生物の生存は不可。
座標を固定することにより、どこからでもアクセス可能になる。
俺が、亜空間魔法について知った……というより思いついたのは、エミリアたちに捕まる前の事だ。
あの時、自分の持ち物が奪われるのが嫌で、どこかに隠そうと考えた時、向こうの世界でよくあった「無限収納」の設定を思い出したのだ。
ああいうのがあれば便利なのに……と思いつつ、一応……とグリムベイブルで調べたら、亜空間魔法なるものがあったというわけだ。
あの時は、封印の所為で魔力量が乏しく、持ち物を亜空間に放り込むのが精一杯だったが、今ならもっと色々な事が出来る。
例えばこのバックだ。
今、亜空間への入り口は、ここの保存庫と繋げてあるが、このバックにこうしてと……魔力を注いで、亜空間魔法をかける。
これでこのバックも亜空間の入り口とつながった。
つまり、この保存庫へ入れたポーションを……こうしてバックから取り出せる……。
うん成功だ。
これさえあれば、今後は素材を持ち切れずに泣く泣く放置ってことも無くなるな。
我ながらいい仕事したぜ。
後は、時間の許す限り素材集めだな。
「ミリィ、ちょっと採集に行ってくるな。」
「行ってらっしゃーい、気を付けてね。」
俺はミリィに一声かけて森の中へと駆け出していく。
この森は素材の宝庫だ。
ミリィの魔力・精霊力が充満していたからか、全ての素材が、通常の物に比べてはるかに上質なものに変わっている。
しかも再生力が強く、採集してもそれほど時間を置かず再生する。
俺は時間を忘れて採集に没頭した。
(あのさぁ……いい加減黙ってられないんだけど……いつになったらポメラ獣人国に行くわけ?)
ファーが呆れたように聞いてくる。
(明日出かけると言ってからもう三日たつよ?)
様々な素材を目の前に時間を忘れていたが……いつの間に三日も?
ミリィも不思議そうに首をかしげている。
ポーション作りに没頭していたらしい。
「……明日だ、明日こそは出発しよう!」
「そうね。準備しておくね。」
「じゃぁ、ミリィ、行ってくるからな。」
「はい、気を付けて。」
俺は採集道具を持って、いつもの様に森の中に向かう。
(……いい加減にしなさーい!今日、ポメラ獣人国行くんじゃなかったのっ!なぜ、森なのよ!)
「いやぁ……いくよ?行くけど……ちょっとだけ……ちょっとだけ採集してから……」
(そう言って、昨日もその前もさらにその前も行かなかったじゃないの!あれから1週間よ!本当に行く気あるの?)
ファーが怒鳴ってくる。
……なんか、どうでもよくなってきたんだよなぁ。
(あっそ、レイはアリゼ姉さまに合わせてくれるって約束を破るわけね。)
そうだった!リィズとソラを迎えに行かなければ!
「ファー、俺が悪かった。すぐ出発するから機嫌を直してくれ。」
(ツーンだ!)
おれはファーを宥めながら小屋へ戻り、ミリィと共にポメラ獣人国へ向けて出発した。
ポメラ獣人国……建国したばかりの獣人による獣人の為の国だ。
弱冠13歳の若き国王ダビット。
若いながらもやり手だという国王は、近隣諸国との貿易を活発に取り入れ、首都ポメラでは他国に負けない賑わいを見せている。
国王の横には婚約者のエミリアが常に寄り添っている。
ハーフ獣人のエミリアは、誰隔てなく優しく、獣人と人族の希望の懸け橋だと言われている。
「はぁ……優しくて希望の懸け橋ねぇ……。」
「まぁ、人それぞれですよ。」
俺達は首都ポメラに紛れ込んでいる。
商人でもない人間がウロウロしていると怪しまれるので、俺は黒狐の耳を、ミリィはラクーンベアの耳をつけている。
軽く変装もしているので、知人でも間近で見ない限りバレないだろう。
「あれ?レイおにぃちゃん、こんなところでどうしたの?」
いきなり背後から声をかけられる。
「ミリィおねぇちゃんもいるんだね。今日はジャーキもってないの?」
俺達は後ろを振り返ると……そこには籠を持ったミーナが立っていた。
「「シィー!」」
俺達はミーナの口をふさぎ、路地裏へ連れ込む。
傍から見たら幼児誘拐だな……言い逃れ出来ない。
「ミーナ、俺達の名前を大声で呼ぶんじゃない。わかったか?」
ミーナはコクコクと頷く。
俺はそこでようやくミーナの口をふさいでいる手を離す。
「ミーナはなぜここに?……それより、なぜ俺達だとわかった?」
こんな子供に一目で見破られるなんて……ちょっとショックだ。
「ミーナはね、リナお姉ちゃんと買い物に来たの。そうしたら、おにぃちゃんとおねぇちゃんのにおいがしたから……。」
……臭いでバレたらしい。
獣人の嗅覚、恐るべし!
「ってことは、リナも近くにいるのか?」
俺はそう言いつつ路地の影から市場の方へ眼を向ける。
キョロキョロと誰かを探している獣人が目に入る……リナだ。
このままじゃマズい……。
「ミーナ、ここから顔を出して、そっとリナを呼ぶんだ。他の人に気づかれないようにそっとだぞ。」
そう言って俺は物陰に隠れる。
「おねぇちゃんこっちだよ。」
ミーナは、俺が言った通り、顔を少しだけ出してリナを呼ぶ。
それに気づいたリナが駆け寄ってくる。
「ミーナ、探したんだよ!こんなところでぐっ……。」
俺はリナの背後から羽交い絞めにして口をふさぐ。
「大声を出すな!」
うぅ……仕方がない事とはいえ、これでは婦女暴行の現行犯だよなぁ。
最初抵抗しようともがいていたリナだが、すっと力を抜きコクコクと頷いてくれる。
「乱暴して済まなかった。声を出されるとまずいから仕方がなかったんだ。」
俺はリナを離すと頭を下げる。
「いえ、途中でレイさんだってわかりましたから。それにレイさんなら私……ぽっ。」
イヤ、そこで顔を赤らめないでくれ。ミリィの笑顔が怖いから。
「でも、一体どうしたんです、こんなところで?」
リナが聞いてくる。まぁ当然だろうな。
「とりあえず、邪魔が入らずゆっくり話が出来るところはないか?俺も色々聞きたいことがあるんだ。」
そう言うと、リナは少し考えてから答える。
「じゃぁ、ついてきてください。案内しますね。」
リナに案内されたのは、街から外れた所にある廃村の中の1軒だった。
外から見た時は打ち寂れていたが、中は意外と綺麗に手入れがしてあった。
「どうぞ、何もお持て成し出来ませんが、今お茶を入れますので、座っててください。」
そう言ってリナは台所の方へ移動する。
俺達は言われるがまま椅子に座る。
ちなみにミリィはさっきからミーナをモフるのに余念がない。
しばらくして、リナがお茶を入れて戻って来る。
「どうぞ。こんなところですから、大したものじゃありませんけど。」
「いや、わざわざありがとう。」
「それで、どうしたんですか?2ヶ月ほど前リィズちゃんと会いましたけど、何か関係あるんですか?」
「リィズと会った?元気だったか?何か言ってなかったか?」
俺はリナに詰め寄る。
「レイさん落ち着いて。そんなに追い詰めたらリナさんも話せないわよ。」
ミリィに言われて我に返る。
「あぁ、悪かった。……とりあえず、ここ半年の事を聞かせてくれないか。」
「あの三者会談があった日……あれから10日後にダビット様は帰ってこられました。
そして私に別れてくれと告げて、数人の者たちを連れて、又出て行ってしまったのです。
ダビット様が本心でおっしゃったことじゃないことはすぐわかったんですが、何故そんな事を言い出したのか……わかったのは獣人国建国の知らせと共にエミリア様との婚約発表を知らされた時ですわ。」
今の首都ポメラは、元々から獣人達が集まる街だったため、そこを整備してすぐポメラ獣人国建国に名乗りを上げたらしい。
人族の圧政に耐えていた者達は、こぞって首都へ移り住み、その他の者達は自分達の集落で様子を見つつあるというのが今のポメラ獣人国の現状らしい。
建国後、ダビットはアルガード王国に対し、今までの住人に対する謝罪を要求するとともに、獣人奴隷の即開放と10年間の白金貨100枚という大金の賠償金要求、それに加えてアルガード国内における獣人の治外法権を突きつけた。
「獣人奴隷の開放はともかく、後の二つは無茶だろ?」
「その通りですわ。……あのダビット様が、そんなこと言いだすはずがありません。」
「……きっぱりと言い切ってるが、何か根拠があるのか?」
俺がそう聞くと、リナは恥ずかしそうに目を伏せる。
「その……ダビット様は……バカですから。……そこまで頭が回りませんわ。たぶん治外法権の意味も知らないと思いますわ。」
リナはそう言うと顔を真っ赤にする。
……まぁ、自分たちの国王がバカだなんて恥ずかしいだろう……
しかし、余り賢そうには見えなかったが、そこまでとは……たぶん入れ知恵をした奴も思ってもみなかったに違いない。
結局、その無茶な要求の所為でアルガード王国は内乱が起きているとのことだったが、ポメラ獣人国内でも、戦争をする派と、戦争を避ける派で意見が分かれまとまりがないそうだ。
……アルガードが内乱を起こさずに攻めてきたらどうするつもりだったんだろうか?
……そこまで考えて、俺はひらめく。
この状況を作った奴らは、戦争を起こさせることが狙いだったのでは?
アルガードが攻めてこれば、獣人達は我が身を守るために戦うだろう。
元々考えるのが苦手な奴らが多い種族だ。戦争して勝てばOKという単純な図式は好むところだろう。
数差があるが、獣人達の能力があればそう簡単に負けることはない。
しかし、戦争は長引くだろうが最終的には数で勝るアルガード王国の勝利で終わることは間違いない。
そして疲弊したアルガード王国を攻め込む……誰が?……リンガードだ。大義名分もあるからな。
だから、リンガードとしては、今の状況はあまり好ましくないはず。次の手を打つ準備をしているだろう。……すでにうっているかもしれないな。
そうすると……ソフィアはどう絡んでくる?
情報が少なすぎて断言できないが、この状況を利用して国内の腐敗の芽を取り除こうとかそんなところだろうな。
たぶん、今頃は収拾がつかず、自分の手に負えなくなって泣いているに違いない。
聖女が第三勢力になったというのは誤算だったんじゃないかな?
そうすると聖女の立ち位置は……。
「リナ、リィズに会ったと言ってたな。その時の状況やリィズから聞いたことを教えてくれないか?」
「えぇ、リィズさんは2ヶ月ほど前に、ここに居るミーナのお姉さん、リーンと一緒に私たちの村に来たんです。」
リィズも、さっきの俺と似たようなことを聞いてきたらしい。
後、俺の行方を知らないかとも聞いたという。
ちなみにミーナのお姉さんのリーンは、ミーナが攫われた後、探すために村を出て今は聖女様の側使え兼護衛として雇われているとのこと。
リィズも今は聖女様の所にいるらしく、リーンがミーナのお姉さんだと知って連れてきてくれたらしい。
しばらく村に滞在して、聖女様の所へ戻ったとのことだった。
リィズはたぶん、怪しまれない範囲で色々と調べていたに違いない。
それをリナに察知しろというのは無理な話だが……もう少し情報が欲しかった。
……ま、仕方がないか。
「他に何か言ってなかったか?」
「そうですねぇ……とくには何も。」
「そうか……ありがとう。」
「いえいえ……あ、そうだ、レイさんかミリィさんに会ったら伝えてほしいって伝言を頼まれていました。」
リナは思い出して良かった……とつぶやく。
「伝言って?」
「えっと……確か……「キーワード」「カナミ」……レイさんに伝えてって言ってました。」
「………あぁ、ありがとう。」
俺は言葉を失う……リナに礼を言うのがやっとだった。
「何のことかわからないですけど、伝えられて良かったです。」
リナはにこにこと笑っている。
本人の言う通り、これだけでは訳が分からないだろう。
どこの誰が敵に回るかわからない以上、余計な情報は与えないのがベストだ。
そのような状況下で、万が一俺やミリィが立ち寄りそうなところで、俺だけにわかる言葉を残していったのだろう。
流石リィズだよ。
この場に居たらギュっと抱きしめてやるところだよ。
(レイ、意味わかるの?)
「あぁ、これ以上ない朗報だよ。」
周りに気づかれないように聞いてくるファーに対し、俺も小声で答える。
俺は、叫び出しそうになるのを必死にこらえる。
どうしよう、今すぐミンディアに行きたい。
「あの……レイさん。」
俺はそわそわしつつ、他愛もない会話で心情を誤魔化していると、不意にリナがまじめなトーンで俺を呼びかけてくる。
「レイさんにこんな事お願いするのは筋違いだとはわかってるのですが……どうか、ダビット様を……私達獣人を助けていただけないでしょうか?」
ここまであからさまだと、さすがの獣人達でも、自分達が何者かに利用されているというのは理解できる。
しかし、その後どうしていいか分からないので、結局今は流されるままになっているのだという。
「助けろって言われても……どういう結論に持っていきたいんだ?」
「ごめんなさい……それがよく分からないのです。ただ、今のままじゃ酷い事になるって事だけはわかります。だから、今より酷くならなければ、……ダビット様が、あんな辛そうなお顔じゃなく、心の底から笑顔が出せるのなら、どのような結果でも構いません。」
リナが頭を下げる横で、ミーナも、お願いしますと小さな頭を下げる。
尻尾がピコピコ動いてるのが可愛い。
「任せろ……とは言えないな。正直、獣人の国に興味はない。」
俺はバッサリと切り捨てる。
「そんな……。」
リナの顔が青ざめる。今にも泣きだしそうなのをぐっとこらえている。
「報酬が必要とのことでしたら、私を一生、好きにしていただいて構いません。ですから、どうかお願いします。」
そう言って、リナは服を脱ぎ……胸元を腕で隠しながら、顔を真っ赤にして訴えてくる。
「私にはこんな事しかできません。ダビット様が……獣人達が助かるなら、私は奴隷としてレイ様にこの身を捧げます。ですから、どうかお願いいたします。」
目に涙を浮かべ、それでも必死に懇願してくる少女。
その様子を、何か考えがあるのか黙って見ているミリィ。
「はっきり言っておくが、俺は獣人の国がどうなろうと知った事じゃない。……ただ、エミリアには借りがあるからな、倍返ししてやるつもりだ。……獣人の国一国じゃ、足りないかもしれないがな。」
リナは、最初訳が分からないようだったが、俺の言葉を噛みしめその意味するところを理解すると、飛びついてきた。
「レイ様、ありがとうございます。ありがとうございます。」
リナの決して小さくはない膨らみが胸にあたる。尻尾が腰をさわさわする。耳のフサフサが頬をくすぐる。
……いかん、この破壊力はヤバい。
思わず俺の手が背中に伸びそうになる・・・・・・。
「はい、そこまで!……リナちゃん服を着なさい!」
突然のミリィの声に我に返る。……ヤバかった。
「レイさん?」
ミリィが俺を呼ぶ。……とてもいい笑顔だ。
……なんだろう、背筋に冷たいものが流れる。
「レイさん、ミーナちゃんまで脱がせてどうするおつもりだったんですか?」
ミリィの言葉にミーナを見てみると、リナの横でいそいそと着替えるミーナの姿があった。
小さすぎて目に入っていなかったが、リナが服を脱ぎ出したら、ミーナも習って服を脱いでいたらしい。
(やっぱりレイは、ロリ……)
うるさい、だまれっ!
「リナ姉ちゃんも、ミーナもレイお兄ちゃんの奴隷?」
「ミーナ、これからはレイ様、もしくはご主人様とお呼びするのですよ。」
「うん、わかった。ご主人様だね。」
「ご主人様の言葉は絶対服従ですよ?」
「うん、わかってる。ふくじゅう、だね。」
……そんな会話が耳に入ってくる。
「レイさん、ちょっとあっちでお話しませんか?」
ミリィさん、笑顔が怖すぎっす……。
彼方がとうとう、聖女の正体を知っちゃいました。
この後どう暴走するのか・・・・・・(^^;
※この話がアップされる頃には、活動報告を更新している予定です。
暇な方はそちらものぞいてみてください。




