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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう
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聖女 -8-

 「はぁ……困ったわねぇ。」

 私は今、心底困っていた……手詰まりなのだ。

 「あんまり困っているようには見えませんが?」

 リーンが私を見てそう言うが……こんなに困ってるオーラを出してるのに……ねぇ?

 「姫様……本当に困っている人間は、そのようにだらしない顔で、ウサギを撫でまわしたりはしないものですよ。」

 どこがだらしない顔っていうのよ。

 私は、一角ウサギのお腹に顔をうずめながら、リーンに反論する。

 「私は、この子に癒されてるのよ。……それとも、リーンをモフっていい?」

 「その子で我慢してください。」

 「ちぇー。」

 

 「カナミ、村の人は街の教会まで避難してもらったっすよ。」

 リィズちゃんが、部屋に入ってきて、そう報告してくれる。

 「そう?じゃぁ、そろそろ行きましょうか……『お話し合い』をしにね。」

 そう言って、私は村の入り口で待ち構えている、バカ共に会うために部屋をでる。

 正直気が重い……はぁ。


 私達がミンディアにいついてから1か月が過ぎようとしていた。

 ソフィアと再会し、リィズちゃんソラちゃんからセンパイの事を聞いて、舞い上がっていたという自覚はある。

 自覚はあるのだけど……まさか、こんなんになってるなんて、誰も思わないわよ。

 

 ミンディアに着いた時、私はレイファという、ここの教会を預かっているシスターからとんでもないことを知らされた。

 ちなみに、リィズちゃんとソラちゃんは、レイファと知り合いだったって事にも驚いたんだけどね。

 レイファは、私がミンディアにいた時に救済した孤児院にいたらしく、私と会った時、さんざんお礼を言われたんだよね。

 ……でも、実は覚えていないって言いだしにくくて、笑ってごまかしてたんだけど……リィズちゃんが、私を冷たい目で見てた……あの目は、きっとバレてるよね?


 そうそう、レイファから聞かされたとんでもない話っていうのが、王都でクーデターが起きてるって話。

 何でもね、私がソフィアに会うために領都の教会を抜け出した翌日に、全世界に向けて「パメラ獣人国」の建国が宣言されたらしいのよ。

 まぁ、それはどうでもいいんだけどね……で、国として正式にアルガード王国に要求を突き付けて来たんだって。


 その要求っていうのが「国内の獣人奴隷の即開放」と「賠償金として、白金貨100枚を今後10年間支払うこと」「アルガード王国内における獣人の治外法権を認める事」なんだって。

 ……無茶よね。

 どう考えても通るわけないよね……あれかな?

 最初に無茶な要求を出しておいて、妥協したように見せて本当の要求を通すって技……。

 そのことをリーンやリィズちゃんに言ったら、ダビットにそんな頭はないって即否定されちゃったよ。

 そう考えると、本気で通気なのか、裏で操る誰かがいるのか……。


 とにかく、そんな無茶な要求飲めるわけがないっ!戦争だ!っていう声が、国中で上がっちゃったのね。

 それに対して国王様が、戦争は良くない。今まで獣人達に迷惑をかけた償いはしなければいけない、なんて言い出したんだって。

 獣人王国建国には反対していたのに、いざ建国して要求が来た途端、言いなりになるような国王には任せておけないって、軍を中心として多数の貴族たちが反旗を翻して、王都を取り囲んじゃってるわけ。

 まぁ、王都も広いし、やっぱり国王様相手だからね、取り囲んだものの、そこからの決め手がなく膠着状態っていうのが今の現状なのよ。

 

 そんな事になっているとも知らずにね、ソフィアを連れて王都に顔出しちゃったからもう大変。

 国王派の皆は私が国王についた……女神様は国王様が正しいとおっしゃってるなんて宣伝しちゃうし……面倒くさいから逃げてきちゃったけど……王宮ふっ飛ばさなかっただけ感謝してほしいわ。


 そうしたら、今度は戦争賛成の過激派の人たちが「聖女は不当に捕われていた。その証拠に王宮から脱出された!聖女は我々と志を同じくするに違いない!」なんて湧いたこと言いだしてね……。


 あまりにも腹が立ったから「黙って要求を呑もうとする国王派(バカ)、戦争をしたがる脳筋共(アホ)、どちらも頭冷やしなさい!」って王都近辺に集中豪雨を降らせちゃった……農民さんゴメンね。今年はちょっと不作かも。

 おかげで、穏健派でも過激派でもない第三勢力としての「聖女派」なんてのが出来たみたいなんだけど。


 で、今、村を囲む国王派(バカ)脳筋共(アホ)の地方部隊の代表との話合いをしようってところなのね。

 アイツら退けても、後から後から湧いて出てくるんだよね。

 もうホント疲れました……モフらなきゃやってられないよ。

 「カナミ……これが終わったら、ヤムロ山脈へ連れて行くっすよ。昨日タイガーウルフを発見したっす。」

 私の心情を慮ってか、リィズちゃんがそんな事を言ってくる。

 「ホントに!タイガーウルフかぁ……あのお腹気持ちいいのよぉ……。」

 タイガーウルフは狼のような体躯でトラのような縞模様の毛皮が人気のモンスターだ。

 大きさは成人より一回り大きいくらいで、ネコ科特有のしなやかさ俊敏さと、イヌ科特有の統制のとれた動きと力強い動きが特徴である。

 ちなみにかなり知能は高く獰猛である。

 

 「タイガーウルフはね、抱き枕にも、丁度いいのよ。それにあのお腹や胸元のモフモフ感……。リィズちゃん、すぐ行きましょ。早く行きましょ!」

 「カナミ、落ち着くっす。先に、あっちを片付けるっす。」

 私が、すぐにでも駆け出そうとするのを、リィズちゃんが止める。

 「うぅ……めんどくさいよぉ。」

 

 「聖女様、我々と一緒に来ていただきましょう。」

 「聖女様、王の命です。我々と一緒にお戻りください。」

 私は左右から聞かされる声に心底うんざりする。

 ここのところ困っているのがこの状況なのだ。

 国王派(バカ)脳筋共(アホ)の両陣営が、出した結論が「聖女を自陣営に引きずり込むこと」らしい。

 結局私がいる方が女神様の加護を受けているって事なので、両陣営から離れている今の状態は双方共によろしくないのだそうだ。


 軍勢を率いてやってきたのは今回が初めてだが、今後はずっと軍勢を率いてくるでしょうね。

 その方が、私を確保した後の動きが楽だもんね。

 逃げ出せばいいのかもしれないけど、ちょっと遅かった。

 今、私達がミンディアを離れると、ミンディアが人質に取られそうなんだよね。

 逃げるにしても、後顧の憂いを断っておかなきゃね。


 私が黙っていると、両陣営ともジリジリと距離を詰めてくる。

 ……これは一戦交えることになるかな?

 「リィズちゃん、ソラちゃん、いつでも行けるように準備して!」

 私は二人に声をかける。

 「任せるっすよ!」

 リィズちゃんが愛用の双剣を抜く。

 「ボク、やっちゃうね!」

 ソラちゃんの背中から翼が生えて、宙に浮かぶ。

 両手にはワルサーが握られている。

 

 「「かかれ!」」

 両陣営から、開戦の合図が飛ぶ。

 私は、一歩下がり、魔法の準備をする。

 ……。

 ……。

 しかし、両陣営の兵士たちは動かない。

 いや、動こうとする者もいるのだが、他の兵士によって、動けなくされている。

 また、両陣営の代表の貴族も、兵士たちによって捉えられている……いつの間に?


 「「聖女様、お目通りをお許しいただきたく。」」

 そして、両陣営より一人ずつ代表っぽい人が出てきた。

 「えーとあなたたちは?」

 「ハッ!私は『ソラちゃんに蔑まされ隊』隊員No.251番、スベルスキーであります!」

 「同じく『ソラちゃんに蔑まされ隊』隊員No.186番、ニシカノールであります!」

 「「一時の事とはいえ、ソラちゃんに刃を向けたことお許しください!」」

 そう言って二人及び後ろにいた大勢の兵士たちが、ソラちゃんに向かって土下座した。 

 えっと……なんなの?これっ?

 ……何が起きてるのよぉ……説明ぷりーず!


 「まったく、どれだけ増えてるんすか……ここに、にぃにがいなくてよかったっすね。」

  リィズちゃんに視線を向けると、やれやれ……と言う顔で土下座をしている二人に話しかける。

 「現在500人に届く勢いで増えていま…………リィズちゃん、そのお姿は?」

 リィズちゃんは、今精霊化している為、ミミとしっぽが生えている……獣人と間違われているのかな?


 ……ザワザワ……

 ………すぐ本部へ知らせるんだ!……急げ!……

 ……メーデー、メーデー!……

 ………天使だ!天使が再臨したぞ!……

 ……俺、やっぱり『リィズちゃんに踏まれ隊』に戻る!……

 ……生きててよかった!……

 ………ザワザワ……

 

 途端に騒がしくなった。

 ちょっとまずい状況??

 

 でも何か違うような……えーと何なの、コレぇー?

 「えーとリィズちゃん……なんの騒ぎなの?」

 「知らないっす!」

 リィズちゃんは真っ赤になりながらそっぽを向く。


 「今『リィズちゃんに踏まれ隊』の隊長と連絡がつきました。ぜひお会いしたいと!」

 「そんな事知らないっす!……カナミ後任せたっす!ソラ行くっすよ。」

 リィズちゃんは、ソラちゃんを引っ張って行ってしまった。

 後に残された私と、何たら隊の面々……。

 「えーと……。」

 どうすればいいのよー!


 その後、残された私は『リィズちゃんに踏まれ隊』や『ソラちゃんに蔑まされ隊』の面々から、リィズちゃんとソラちゃんの可愛らしさ、素晴らしさを延々と聞かされる羽目になった。

 もうやだー。


 「アン……アフゥ……ャン……ダメぇ……。」

 狭い部屋にリーンの嬌声が響く。

 「カナミ……それくらいにしてあげたらどうっすか?」

 「イヤ……。」

 そう言って、私はもう一度リーンの尻尾の付け根あたりを逆なでする。

 「アッ、そこダメぇ……。」

 「置いてったのは悪かったって思ってるっすよ。」

 ……アン…………もぅ……

 私が撫でる度にリーンの可愛い声が聞こえる。

 「悪かったって思うなら、リィズちゃんのしっぽとミミ触らせて。」

 「イヤっす!」

 即答だった。

 仕方がないので、リーンのしっぽを先から根本まで、ツーと逆なでする。

 「にょわぁぁ……。」


 「タイガーウルフの所にも行けなかった……」

 「悪かったっすよ……もぅ仕方がないっすね。」

 リィズちゃんが後ろから包み込むように抱きついてくる。

 「カナミにだけは話したくなかったけど、特別に話してあげるっすよ。」 

 そう言ってリィズちゃんが話してくれたのは、センパイがリィズちゃんに話した内容だった。


 以前、みんなでピクニックに行った時のお弁当での話題の事だった。

 「にぃには「卵焼き」に拘ってたんすよ。卵焼きってどんなものか知らなかった私とねぇねは、にぃにから聞きだして何とか作ったんすけどね……。

 美味しいよと言ってくれたんすけど……今から思えば、あれはカナミのと比べられてたんすよね。

 その後、卵焼きについていろいろ語ってたっすよ。

 特に絶品なのは、薄く焼いた卵焼きに特製ケチャップとかいうものをつけてパンに挟んだ「卵焼きサンド」をもう一度食べたいって言ってたっすよ。

 私もねぇねも、結局どういうものか分からないので作れないんっすけどね。」


 私が必ずお弁当にいれていた卵焼き……そして卵焼きサンド……センパイのお気に入りだったっけ。

 知らずのうちに私の瞳に涙が溢れてくる……センパイ……逢いたいよぉ……。

 リィズちゃんがギュッと抱きしめてくれる。

 「もうすぐっすよ。もうすぐにぃにに逢えるっす。……私も早く逢いたいっす。」

 「リィズちゃーん……。」

 私は振り向いてリィズちゃんを抱きしめる。

 小っちゃくて柔らかい……リィズちゃんもセンパイに逢いたいよね。


 「センパイに逢ったら、二人でギュってしてもらおうね。」

 「……私とねぇねとソラがいるっすから、カナミの場所無いかもっす。」

 「何で!そこは素直に『ウン』って頷くところじゃないの!」

 「たとえカナミでも、にぃにの横は譲らないっすよ!」

 「うぅ……。」

 「あ、あと言い忘れてましたが、レイファもにぃにの嫁候補っすよ?」

 「レイファまで!?」

 センパイのばかぁー、女たらしぃ―、向こうでは全然女っ気なかった癖にぃ……ばかぁ……。


 「……少しは機嫌直った様っすね。明日は、ヤムロ山脈行くっすよ。寝過ごしたら置いてくっす。」

 お休み……と言って、リィズちゃんが部屋を出ていく。

 

 ふぅ……もぅリィズちゃんはホントにいい子だよ。

 センパイが気に入ってるのも分かるよ……仕方がないかぁ……出遅れちゃってるもんね。

 「ま、いいや、寝よ、寝よ。」

 私はぐったりしているリーンを抱き枕にして眠りについた。

 

 翌日、私とリィズちゃんとリーンの3人はヤムロ山脈へ向かった。

 ソラちゃんはレイファとお留守番だ。

 意地悪してるわけじゃないよ。

 昨日の兵隊さんたち……『ソラちゃんに蔑まされ隊』の面々が、近隣の村と街に常駐し守ってくれることになったけど、混乱が激しくレイファ一人では捌ききれないのよ。

 でも、ソラちゃんの一言で、規律正しい模範的な兵隊さんみたいになるからってレイファに泣いて頼まれてねぇ……。

 結局、街で歌って待ってるねーと言うソラちゃんを残してヤムロ山脈まで来たのだけど……。

 

 「本当にすぐなんだね。」

 私は転移陣を使った移動にちょっとびっくりした。

 私の「遍在」より便利かも?と思う。

 「遍在」はイメージできるところなら、場所を選ばないけど一方通行だしね。

 転移陣は設置する手間があるけど、設置しちゃえば誰でも使えるそうだし……。

 わかってはいたけど、センパイどこまで規格外なんだろうね。


 それよりー……タイガーウルフちゃんはどっこかなぁ?

 「カナミ、あまり一人で動くと危ないっすよ!」

 「だいじょーぶ、だいじょーぶ。」

 こっちの方から、モフモフの気配がするよー。


 山裾の奥の方へ分け入っていくと……一際大きなヤンゴンと、それを取り巻くタイガーウルフの群れを見つけた。

 「狩りの邪魔しちゃいけないよね。」

 私は、そこから見守ることにした。


 タイガーウルフたちが、ヤンゴンの周りを包囲し、ジリジリと包囲を狭めていく。

 ヤンゴンは、一斉に飛び掛かられる前に、とばかりに、体の小さいタイガーウルフに向かって突進する。 

 小さいタイガーウルフはさっと避け、それと同時に茂みの中に隠れていた3頭のタイガーウルフがヤンゴンの首筋に食らいつく。

 

 ヤンゴンは引き離そうと必死に体を振るが、食らいついたタイがーウルフ達は離れない。

 そして、次々と食らいついて行くタイガーウルフたち。

 こうなってはヤンゴンに成す術もない。

 やがて力尽きて倒れたヤンゴンを、タイガーウルフ達は貪る。

 それを少し離れたところから見守るようにして立っているタイガーウルフがいた。

 「ボスかな?体も一回り大きいしね。……あの子にしよう。」


 「ブック!」

 私は本を取り出す。

 「コール! サモン・テイマー!」

 以前、使い魔を操る魔術師から召喚術を、動物を操る調教師からテイミングを「協力」してもらった。

 面白くて何度も使っていたら、いつの間にか使い魔・召喚獣・その他動物調教がまとめて出来るようになっていた。

 この力も、まだまだよくわからないことが多すぎるよ。 

 ま、便利だからいいか。


 この力のおかげで、私は今、彼らと意思疎通することが出来る。

 私はタイガーベアに近づき話しかける。

 「私と一緒に来ない?」

 (なんだ、お前は!)

 「私はカナミ……女神の化身よ!」

 ハッタリだが、結構効くのよ。さすが女神様ね。

 (何が望みだ?)

 「私は仲間を探している。あなたにも仲間になって欲しいの。」

 (俺には、こいつらを食わせる責任がある!)

 周りのタイガーウルフ達がグルルゥ……と低く唸る。

 中々カッコイイ事を言う……気に入ったよ。

 「大丈夫、女神の力で私が呼べば私の下に来ることが出来る。あなたは普段通り何も変わらない。私が呼んだ時に力を貸して欲しい。状況によっては一族全員呼ぶこともできるからね。ご飯も用意できるよ。」  

 (わかった。契約を結ぼう……ごはん、忘れるなよ。)

 どうやら、ご飯の一言が聞いたらしい。

 まずは1モフ、ゲットよ!


 その後私は一角ウサギを抱え、羽リスを頭に乗せ、ヤンゴンの背に乗ってリィズ達の元へと戻る。

 後ろからはタイガーウルフの群れがついてきている。

 「何すか!その大群は?」

 「あ、リィズちゃん、この子たちのご飯取ってきてー。」

 私はタイガーウルフ達を指さす。

 「……ったく。規格外はにぃにで慣れたつもりでしたが……カナミも大概っすね。」

 そう言いながらリィズちゃんは、獲物を狩りに行ってくれる。 


 私はリィズちゃんを待っている間、ヤンゴンのふわふわの毛に埋もれて、心ゆく迄モフモフを堪能する。

 ……平和っていいねぇー。


 私はヤンゴンの毛に埋もれながら青い空を見上げ、この先の事を考える。

 ミンディアは、守ってくれる人がいるから大丈夫……。


 私達がゆっくりできる拠点を作った方がいいかな……最悪の場合逃げ込める場所として……ね。

 ミンディアと行き来できる方がいいから、教会のある場所か、このヤムロ山脈かなぁ。

 住む所って考えると教会のある村か街……それも人のいないところ……あるわけないか。


 ポメラ獣人国とアルガード王国……正直、私達に火の粉が降りかかってこなければどうでもいいけど……一度はポメラ獣人国に行くべきかな?リーンもミーナの事が心配だろうしね。


 リンガードで情報も集めなきゃね。

 どうやらセンパイはリンガードに捕まったぽいから、その後どうなってるのか……

 センパイが大人しくつかまるとは思えないんだけど……ね。

 何か考えがあるって思うから、下手なこと、できないんだよね……もどかしいなぁ。


 「獲物、取ってきたっすよー……焼くっすか?そのままっすか?」

 あ、リィズちゃんが帰ってきたみたい。

 私は起き上がって、リィズちゃんを見る。

 大きなシカのモンスターが2頭……どうやって倒したのよ!

 私の事言えないよね、リィズちゃんも大概だよ。


 とりあえず、1頭はそのままタイガーウルフ達へあげる。

 タロウ……ボスの名前だよ……に聞いたら生の方がいいんだって。

 もう一頭は捌いて、焼き始める。

 食べきれない分はソラちゃん達へのお土産にするんだって。

 

 「ねぇ、リィズちゃん。」

 私はタロウの首にしがみつきながらリィズちゃんに声をかける。

 「この後どうしようか?」

 私は、さっき考えていたことをリィズちゃんに話す。

 

 「そうっすね。拠点作りはいいと思うっすよ。……場所はここがいいと思うっす。」

 「なんで?」

 「ここなら、タイガーウルフ達もいるし、守り神もいるっすから。」

 守り神ってなんだろ?土着の神様かな?

 「住む所は、とりあえず洞穴利用っすね。そんなに長く使用しないだろうし、仮でいいと思うっすよ。」

 「そうね。」


 「後は……落ち着いたらリーンと二人でリンガードに行ってくるっす。向こうでの情報収集は任せて、カナミは、こっちで大人しくしてるっす。ソラとレイファがいれば、ボディガードとしては十分っすけど、チョロチョロ動かれたら大変っす。」

 ランもいるから大丈夫……とリィズちゃんが小声でつぶやく……ランって誰だろ?

 「二人だけで大丈夫?」

 「大丈夫っすよ。獣人の振りをしていけば、獣人国にも入りやすいし。」

 「そう……気を付けてね。……後、これは単なる勘だけど……エミリアっていう人には気を付けて。

 ソフィアは友達だし疑いたくないけど……ソフィアから聞いた話とあなた達の話の小さな食い違いが気になるわ。」

 「心配しなくても大丈夫っす。カナミこそ気を付けるんすよ。何かあればソラを頼って。ソラとファルス、そしてカナミの相性はとてもいいから、余程の事がなければ大丈夫だと思うんすけど。」


 それから……と、リィズちゃんがネックレスを差し出してくる。

 「にぃにに逢えるまで、それ、貸してあげるっす。……にぃにの手作りっす。」

 リィズちゃんが照れてそっぽを向く。

 「こんな大事なもの……いいの?」

 「一時とはいえ、私までいなくなると、カナミが泣くかもしれないっすから、仕方がないっす。」

 「泣かないよ!」

 リィズちゃんは、失礼だよ……私の方が年上なんだぞ……まったくもぅ……。


 「それに、私にはまだ、指輪があるっすから。」

 リィズちゃんはニヤリと笑い、これ見よがしに左手の指輪を見せてくる。

 「これもにぃにの手作りっす。」 

 うぅ……指輪だとぉ……。

 せんぱぁい……ひどいよぉ……ぐすん……


 「当面はそんな感じでどうっすか?」

 落ち込む私を無視して、リィズちゃんは話をすすめていく……

 悔しいので、リィズちゃんを抱きしめる。

 「ちょ、ちょっと、カナミ、何するんすか!」

 「リィズちゃんが意地悪するから、悔しい……だからギュってしてやるの。」

 わたわたするリィズちゃんを抱きしめ、撫でまわすと、少し気分が晴れた。


 リィズちゃんと話して、先の展望が少し見えた気がした。

 センパイに逢える日が近づいてると考えたら、頑張れる気がした。

   

聖女編です。

だんだん近づいてきて少しホッとしていますが。

カナミが絡むと、文字数は進んでも話が進まないという現象……不思議です。


因みに、カナミ自身気付いていませんが、レイフォードより、カナミの方が女神の力の分、規格外です。

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