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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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51/153

※ 祝50話記念SS 夏と言えば海!

 ※ 本編とは関係のないSSです。

時系列的には、かなり後のお話です。

 青い空、白い雲、ギラギラと照り付ける太陽……そして、眼前に広がる青い海。

 「海だぁ~~~!」

 俺は叫んで見る。

 ……。

 「にぃに……何やってるんすか?」

 リィズが、皆を代表して聞いてくる……みんなの視線が冷たい。

 「いや、海だから……。」 

 みんな、理解できないというように首を振っている。

 「あ、コラ!カナミならわかるだろ!」

 「……何の事かしら?」

 おほほ……と笑いながらも視線を合わせようとしないカナミ。

 くそ……裏切者め。

  

 「そ、そんな事より、みんな早く着替えましょ。」

 カナミがそう言って、皆を追い立てる。

 「今回の水着はエリィが目一杯気合を入れて作ったから、期待しててね、セ・ン・パ・イ♪」

 カナミがそんなことをこっそりと耳打ちしてくる。 

 エリィというのはカナミの知り合いの服飾職人で、カナミの好みをバッチリ把握し、イメージ通りのものを作り出す凄腕だ。

 カナミがいつも着ている巫女服もデザイン画だけで、エリィが制作したらしい。


 ……あれはUSO時代のカナミの装備で、俺にとっても懐かしいものだ。

 さらに、今のカナミにバッチリ似合っている点も高評価である。

 ……ウン、みんなの水着姿、楽しみだ。


 俺はパラソルとタープを立て、日陰を確保する。

 結構な大人数だが、こんな所に来るのは俺達ぐらいなので、周りを気にしなくていい。

 ……しばらく待つ……誰も来ない……さらに待つ……来ない……。

 ……俺が砂浜に「いじいじ」と文字を書いていると「おにぃちゃーん!」という声とともに駆け寄ってくる人影があった。


 その姿を見た途端、俺の脳内で、コンテストのアナウンスが流れた!

 『エントリーナンバー1番 キュートが売り物、守ってあげたいNo.1 光翼の歌姫・ソラちゃんの登場です!

 ピンクのワンピーススタイルが良く似合う。駆け寄ってきたときのスカートが翻る感じもGood!

 自らの幼さを逆手に取り、天然のあざとさが伺えます。……これは高得点なるか!』

 「……10点」

 「え?おにぃちゃんどうしたの?」

 ソラが、不思議そうに首をかしげる。

 「いや、ソラは気にしなくていいよ。それより皆は?」

 「ウン、もう来るよ……あ、ほら。」


 ソラが指指す方を見ると、そこには天国が……。

 『エントリーナンバー2番 何と言ってもその爆乳、包容力は他の追随を許さない。ゆるふわ系のお姉さん・レイファの登場です!

 ライムイエローのビキニスタイル。ホルターネックで、その胸を惜しげもなく強調しているのは、狙いか、天然か!抑えきれずに揺れる……いや、暴れる乳は業界No.1

 男なら、必ず目が奪われる……男の視線をとらえて離さない……これも高得点が期待できます!』

 「……10点」

 「何の事ですかぁ?」

 レイファが聞いてくるが……。

 「いや……気にしないでくれ。」

 レイファの胸から視線が離せない……。

 「あら?リィズちゃんが走ってきますわ。」

 

 俺は無理やり視線を外すと、リィズの姿を捉える。

 『エントリーナンバー3番、ロリ属性はソラちゃんに劣るものの、元気さと愛らしさで勝負。我らがリィズちゃん、ネコ耳、ネコ尻尾をつけて登場だ!

 黒のオフショルダービキニ。快活さ溢れる姿。胸元のフリルで、大きさを分かりづらくしているのが、なんともいじらしい!

 そして、何と言ってもマニア垂涎の、ネコ耳・ネコ尻尾がゆれる……あざとさNo.1。高得点狙いでしょう!』

 「……10点」

 「……しっぽ……触ってもいいっすよ……。」

 リィズが真っ赤になりながら伝えてくる……思わず抱きしめそうになってしまう。


 リィズの……しっぽの……誘惑に耐えて、視線をそらすと、そこにはにっこりと微笑むミリィがいた。

 『エントリーナンバー4番 レイファちゃんに負けない包容力。トータルバランスでは勝っているか?影が薄いと揶揄されるミリィちゃん、圧倒的質量で満を持しての登場です!

 ライムグリーンのモノキニスタイル。大きく空いた背中からは年にそぐわない色気を醸し出しています。同じく、開いているサイドラインはウエストの細さを強調。……まさしく「ボンッ!キュッ!ボンッ!」……これも高得点が期待できます!』

 「……10点」

 「レイさん……他の人ばかり見てちゃいやですぅ。」

 ミリィがギュッと抱きついてくる。

 最近、かまってやる時間が少ないかな?

 ミリィが甘えてくる頻度が高くなっている。


 腕に押し付けられる胸の圧力に、理性を飛ばされそうになりながらも、何とか耐え抜くとカナミがやってくるのが見えた。

 『エントリーナンバー5番 正統派ヒロインのはずが、他よりキャラが弱く立場が危うい。がんばれカナミ、負けるなカナミ……いつかきっといいことあるさ!

 清純派の象徴、白のビキニスタイル。胸元にリボンをあしらい可愛らしさをアピール。ボトムのパレオも、清純さを強調……まさしく正統派。アイドル顔負けのこの姿。審査員は何点をつけるのか!』

 「……10点」

 「……何の点数なのかな?」

 ヤバい、カナミにはバレている。

 「いや、ナンデモナイヨ……。」

 思わず棒読みになってしまうが致し方がない。


 「あれ?ランはどうした?」

 俺はもう一人いたはずの女の子の姿が見えないのに気付き、皆に聞いてみる。

 「あー、アハハ……。」

 カナミが力なく笑う。

 「ランねぇちゃんねぇ、こんなの着れるかって言って飛び出して行っちゃったよ。」

 そう言ってソラが差し出してきたのは紐?だった……いや、水着らしい……スリングショットという奴だ。


『エントリーナンバー6番 スタイルだけならレイファにも負けない!ドラゴン族が一の美女・ラン!

 スリングショットはやり過ぎか……棄権です!』

 「……0点」

 

 というか、この子たち……並んでみると、本当にアイドル顔負けの美少女達だ。

 それが俺の傍にいる……ニヤけてしまっても致し方がないと思う。

 「にぃにがねぇねとレイファの胸を見てニヤついてるっす!」

 「おにぃちゃん、ボクの方がキュートだよ!」

 リィズが、謂れのない?批判をしてくる。

 ソラが、対抗意識を燃やしている。

 

 「あれぇ?リィズちゃん?センパイは私の胸見てたのかもしれないよ?」

 カナミが、リィズを挑発するが……。

 「それは無いっす!」

 リィズが即座に否定する。

 「なんでっ!」

 「おねぇさんの胸……微妙」

 カナミの反論をソラが一言で粉砕する。

 「……微妙……ビミョー……。」

 「ソラ、向こうで一緒に遊ぶっすよ。」

 カナミのあまりにもの落ち込みように、居たたまれなくなったのか、リィズがソラを誘って、その場から逃げ出す。

 「びみょー……。」

 「気にするなよ。」

 俺は落ち込むカナミの肩をポンと叩いて慰める。

 「センパイは、やっぱり大きい方がいい?」

 カナミが潤んだ目で聞いてくる……。

 いや、ここで、その質問はないだろう。

 大きい方がと答えれば、リィズとソラが傷つき、小さい方がと言えばミリィとレイファが……。

 どちらにも属さないカナミは果たして勝ち組なのか負け組なのか……。


 「何言ってるんだ?大きさなんて関係ないよ。」

 でも……とジト目で見つめてくるカナミ……仕方がないなぁ。

 俺はそっと抱き寄せ、耳元で囁く。

 「今のカナミが一番可愛いよ。」

 カナミの顔が、一気に赤く染まる。

 「わ、わた、私……ちょっと泳いでくる。」

 カナミが逃げるようにして走り去る。


 「へぇ、ナミも以外と初心いところあるんだ。……あ、飲み物どうぞ……ご主人様。」 

 そう言って、飲み物を差し出してくれるのは、メイド服を着たエリィだ。

 「あぁ、ありがとう。……ところで暑くないの?それ?」

 俺が聞くとエリィは「夏仕様ですから」と言って、スカートをつまみ上げる。

 ……そういう問題なんだろうか?


 「ところで、みんなの水着、エリィが作ったんだって?」

 「えぇ、ナミのデザインを元にみんなに合うようにって頑張っちゃいました。」

 何でも二日ほど徹夜して仕上げたらしい。

 「こっちでは、ああいうの無いから戸惑わなかった?」

 「確かに、最初はびっくりしましたけど……いいものですね!」

 エリィはそう言って親指を立てる。

 ……この子も段々と毒されているよなぁ。

 「今、ソラちゃんの新作のステージ衣装作ってるんですよ。また感想聞かせてくださいね。」

 「あぁ、楽しみにしてるよ。」

 では、またあとで……と言って、エリィが下がる。


 海ではしゃぐソラとリィズとカナミ……あ、テンタクルスだ。

 あっという間にリィズに斬り裂かれ、何事もなかったように、波と戯れる三人。


 浜辺では、ミリィとレイファが日光浴をしている……よく見ると二人の周りで風の精霊たちが踊っている。

 ……涼しそうだな。


 (ねぇ、レイ……暇なの?)

 「ボーっとしてるだけで暇なわけじゃないんだが。」

 ファーが話しかけてくるが、休日にボーっとしていることを暇と言わないでもらいたい。

 ……暇してる気になってくるじゃないか。

 「ファーも、たまにはエアリーゼたちと遊んで来いよ。テンタクルス達が沢山いるみたいだぜ?」

 そう言って、俺はカナミたちの方を指さす。

 海では、テンタクルスが襲い掛かって来てはリィズ……正確に言えばその周りにいるエアリーゼだが……に斬り裂かれている。

 (そうね、そうするわ。)

 小妖精の姿のファーが海へ向かって飛んでいく。


 ……平和だなぁ。

 

 やがて、日も暮れてきて、浜辺では花火大会が始まる。

 今日に合わせて、ブランに沢山作ってもらったオリジナル花火だ。

 リィズが、ソラが花火を手にして浜辺を走り回る。

 近くで、ミリィとレイファが線香花火を手に、ほのぼのとしている。


 「たまには、こういうのもいいね。」

 俺の隣に座ったカナミが言う。

 「そうだな、久しぶりにのんびりできたよ。」

 カナミが俺の肩に頭を預けてくる。

 「ねぇ、あの時……向こうにいた時、私が海に誘ったら、センパイ来てくれた?」

 「たぶん、行っただろうな。……ただ今みたいに楽しめなかったかもしれないけど。」

 「それはどうしてかな?」

 俺が素直に答えると、カナミはニヤニヤしながら聞いてくる……わかってるくせに。

 「そりゃ、好きな子と初めての海だからな、緊張して何も考えられなかっただろうさ。」

 「ぶぅー、今は緊張の欠片もないってか!」

 「いや、カナミが可愛すぎてドキドキしてるよ。」

 「ホントかなぁ……。」

 「本当さ」

 俺はカナミの肩を抱いて少しひきよせる。

 

 眼前ではソラのステージが始まっていた。

 リィズも一緒に歌っている。

 それを見て拍手をしている、ミリィとレイファとエリィ。

 「みんな……素敵な女の子たちだよね。……少し嫉妬しちゃうなぁ。」

 カナミがぼそりとつぶやく。 

 「ここが異世界でよかったよ。誰か一人を選ぶなんてできない。」

 ごめんなとカナミを抱き寄せる。

 「まぁ……ウン……仕方がないよね……ほんと、仕方がないよ……。」

 カナミが顔を上げて、俺を見つめてくる。

 遠くでドォーンという音が鳴り響く。

 打ち上げ花火に火を点けたみたいだ。

 浜辺にいる皆は、初めて見る打ち上げ花火に感動しているみたいだ。

 ……作らせてよかった。

 

 「センパイは、この世界に来てよかったって思ってる?向こうの世界に残っていたかったって思うことない?」

 カナミが、俺を見つめながら聞いてくる……顔が近い。

 「そうだな……今更って感じだな。……正直カナミがここに居るからな。この世界に来てよかったって思うよ。……カナミがいなかった時は、やっぱり、向こうでの事をよく夢見てたしな。」

 俺は正直に答える。

 カナミがいるならどちらの世界でも関係なかった。

 ただ、この世界には大事な人が出来てしまったから、カナミがいなければ悩んだことだろう。

 でも、カナミはここに居る。だったら向こうの世界にこだわる理由はない。

 「そうだね……ミリィもレイファも、リィズちゃんもソラちゃんも、もうセンパイの一部だもんね。切り離せないよね。」


 でも……とカナミは言う。

 「今だけは……今この時だけは私を……香奈美を見て欲しいな。」

 カナミの顔を花火の光が照らし出す。

 カナミと香奈美の顔がダブって見える……。

 花火のあがる音と、波が打ち寄せる音以外は何も聞こえない。

 カナミがそっと目を閉じる。

 俺はカナミに顔を近づけていく。

 二人の距離がゼロになった瞬間、ひときわ大きい花火が上がり、二人の姿を浮き彫りにする。 

 俺達は、しばらくの間二人だけの世界にいた。



 「まぁ、仕方がないっすね……今だけは見逃してあげるっすよ。」

 「リズ姉、見えないよぉ。」

 「あらあら、仲がよろしいですわ。」

 「うぅ…レイさんが……。」


 他の4人が見ていることに最後まで気づかなかった俺達だった。

 

 

夏と言えばやっぱり海ですよね?

今はまだ梅雨明けしていないですが、時節に沿ったSSを書いてみたかったのです。

海の日も近いという事で(^^

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