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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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剣闘王との邂逅

 ガシッ!キィン!ガシッ!

 剣と剣が打ち合う音が鳴り響く。

 もう、どれくらいこうしているだろうか?

 (レイ、そろそろケリつけないと、持たないわよ。)

 ファーがそう言ってくるが……。

 「分かっている。しかし……。」

 強い!

 もう30分以上打ち合っているはずなのに、目の前の男は息一つ乱していない。

 今の俺では勝ち目がない……か。

 俺は最後の勝負に出る。

 相手が打ち下ろして来た剣を左腕(・・)で払い、右手の剣を相手の喉元に向けて突き刺す。

 ・・・・・・が一歩及ばなかったようだ。

 俺の突き出した剣は相手に届かず、代わりに俺の首筋に刃があてられている。

 「・・・・・・参った。」

 俺は負けを認め、相手を見る。

 流石は「剣闘王」と呼ばれる事だけはある。

 今の俺では勝てない。


 「本気では無かろう。まだ手を隠し持っているな?」

 剣闘王サガが剣を仕舞いながら言ってくる。

 「いえ、本気でしたよ。剣では敵わない事を知りました。」

 「剣では・・・・・・か。面白いことを言う。もし俺があのまま首をはねていたらどうしたかな?」

 「はねないでしょう?実戦ではないんだし。」

 俺はとぼけてみせる。

 実際、今の質問は全く意味がない。

 「実戦だったらどうする?」

 サガが面白そうに突っ込んでくる。

 結構メンドクサい王様だなぁ。

 「実戦なら、そもそも戦わずに逃げ出してますよ・・・・・・こうしてね!」

 ドォォォーーーン!

 俺の言葉が終わるか終わらないかというタイミングで大きな爆発音が響く。

 ・・・・・・なんだ!

 どうした・・・・・・!

 周り側近達が慌てふためく。

 「どこかの『使っていない』鉱山の入り口が崩れたんですかねぇ?」

 「フッ、面白い。良かろう、褒美をとらす。何が望みだ?」

 よし!ここまでもって来れた。

 「望みなんてここにいる者の殆どはこう言うんじゃないですか?『自由』と。」


 「中級奴隷風情がよく言うわ。・・・・・・良かろう。」

 えっ・・・・・・?

 まさか、あっさりと・・・・・・

 「近いウチに依頼を出す。それをクリアして、300万ミネラを上納すれば自由民と認めよう。」

 ・・・・・・だよね。

 無条件な訳ないよね。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ファーと精霊剣という力を得た俺はあっさりと中級奴隷まで上がった。

 なにせ精霊剣を使えば容易に魔法が使えるのだ。

 依代が無いため、媒介に安物の剣を使っているが、流す魔力量をうまく調節すればそれなりに長持ちするので1回の探索に5本も持ち込めば事足りた。

 中級奴隷に上がるための試験もいくつかの指定されたアイテムを集めるだけだったので、それほど難しくはなかった。

 ただ、いくつかのダンジョンを回らなければならないのが面倒ではあった。


 ここにはいくつものダンジョンが存在する。

 俺達に公開されているモノだけでも15の入り口が存在する。

 ただ、俺は、これらのダンジョンは全て地下深くで繋がっていると考えている

 そうでなければ説明が付かない事が多い。


 まぁそんなことはどうでもいい。

 中級にあがった俺は早速街へ出かけ、鍛冶屋を訪ねる。

 「店主はいるか?」

 「らっしゃい!ウチが店主や。良いモノ揃ってんで。見たってーや。」

 出てきたのは、やや小柄ながらもバランスのとれた肢体、愛嬌のある顔立ち、頭には狐?の耳がついている獣人?の女の子だった。

 並べられた商品を見ると、彼女の言うとおり、質の良いモノが揃っている。

 俺は1本の剣を手に取り、じっくりと見る。重さといい握りの馴染み方といいかなりの拘りを感じさせる。

 「なぁ、一つ聞いて良いか?」

 「ええよ、何でも答えたるわ。」

 俺は手にした剣を降りつつ気になっている事を聞いてみる。


 「その耳本物か?」

 店主の少女が固まる。

 「・・・・・・ソコかいな!ちゃうやろ!

 今の流れなら、こう・・・・・・この剣素晴らしいな。とか、制作者は誰や?とか、いくらだ?とかちゃうんかい!

 それが何でウチの耳のことやねん!」

 ぜぇ、ぜぇ・・・・・・と荒い息をつきつつ、一気にまくし立てる少女。

 「いや、ホンモノならモフらせてくれないかな?とか気になるじゃん?」

 「はぁ・・・・・・理由までアホらしいわ。・・・・・・一応本物やで、でもお触り禁止や!」

 「50万ミネラだす!モフらせてくれ!」

 「ご、ごじゅう・・・・・・いや、ダメや、禁止やで!」

 今かなり揺れたな・・・・・・もう一押し・・・・・・

 (レイ、まだそのバカな会話続ける気?)

 「バカとはなんだ!あの耳は見たところ『モフ度70%』の稀少品に違いない。ここで触らずいつ触る。」

 (70%って微妙・・・・・・)

 「バカ!微妙だからこその稀少価値だ!あの『極上じゃないけど悪いとは言えない』『決して悪い訳じゃないんだけど・・・・・・』という絶妙なバランスの上に立つ微妙さがわからんとは・・・・・・嘆かわしい!」

 俺はファーの言葉に反論する。


 「オイ、コラ・・・・・・客じゃないなら帰れ!・・・・・・後微妙で悪かったな!」

 店主の少女がキレていた。


 (そう、アナタはドワーフ族のメロウ種なのね。)

 だったら納得だわ・・・・・・とファーが感心したように頷く。

 店内の商品は全て彼女の手作りだということにファーが興味を示し色々聞いてたのだ。

 「ウン、よくわからん。解説頼む。」

 (・・・・・・ホントバカね。 

 彼女はドワーフ族のメロウ種なの。ドワーフ族だから鍛冶細工はお手の物ってわけ。

 ちなみにメロウ種ってのはね、3種族以上の血が混じっているのを指すのよ。

 彼女の場合、ドワーフ族の他に人間、エルフ、ノーム、ホビット、獣人族の血が混じってるわ・・・・・・後、微かだけど妖精族と魔族の血も混じってるわね。)

 なる程、ドワーフ族で有りながらドワーフ族ではあり得ないあのスタイルは、別種族の血のなせる技と言うことか。


 (そんなことより・・・・・・レイ、私この子気に入っちゃった。例のモノこの子に頼みましょ。)

 「まぁ、この出来ならいいものが出来るだろうな。」

 「・・・・・・結局、客っちゅうことでええんか?」

 「あぁ、この剣を作ったお前に依頼したいものがある。」

 「・・・・・・ブランや。」

 店主に、依頼をしたのに、何故か不機嫌そうに言ってくる。

 「ウチの名前や!ブラニュシェード=アドマン。言いにくいやろうから、ブランでええ。あの子とかお前とか言われるんは気に入らんねん。」

 どうやら名前で呼んで欲しかったみたいだ。

 「じゃぁ改めてブランに依頼をしたい。剣を一振り作成して欲しい。」

 俺はブランに依頼をする。

 正直、俺の手に余りそうだったので、ここまでの腕前を持っているなら頼んだ方がいいだろう。

 ファーも気に入っているようだし。

 「構わへんで。どんなんや?」

 「先ずはこれを見てくれ。」

 俺はそう言って、精霊剣(スピリッド・ソード)を呼び出す。

 「これは実体のない幻影だが、これとそっくりに作って欲しい」


 俺は、剣の姿を見せた後、細部について細かく注文する。

 「ホンマ、難儀やなぁ……。注文通りのモン作ろ思うたら、素材が足りぃひん……。」

 「……無理か?」

 「誰が無理、言うた?……アンタに依頼や。」

 どうやら職人魂に火をつけてしまったらしい。


 「中級ダンジョン、30フロアに出現する「デッドスライムの核」、同じく45階層で採集できる「メリア鉱石」、ミラーダンジョン15階層に出現する「ミラーラミーの欠片」及び「ミラー草」これらのアイテムを取りに行くで。

 報酬は、アンタの剣の作成や。どや、悪くないやろ?」

 ブランは、にんまりと笑う。

 「OK。……行くでって、ブランも来るのか?」

 「当たり前や。こんなチャンス、見逃したらあかんで。」

 ……ま、いっか。

 戦闘スタイル見せておいた方が、製作の段階で微調整してもらえるかもしれないしな。


 そして中級ダンジョン30フロア。

 「……こうなると思ったんだよなぁ。」

 そう、スライムに女の子と言えば……お約束である。

 「訳わからん事言っとらんで、はよぅ助けてぇや。」

 ブランは、この階層でデッドスライムを見かけるなり、一気に飛び出していった。

 そして手にした武器、ウォーハンマーでスライムを叩いたのは良いが……。

 「結局、大したダメージは与えられず、逆に取り込まれたんだよなぁ。」

 そう、今ブランは、スライムに絡み取られ、拘束されて動けないでいるのだ。

 しかも、お約束通り、徐々に衣服を溶かされつつある。

 現在は大事な処が辛うじて見えない程度に溶かされつつあるが……一気に攻めないあたり、中々通なスライムである。


 「うーん、もう少し待つといいものが見られそうなんだけど……。」

 「頼むで、はよぅ助けてぇや。護衛失敗になるで。」

 「と言われてもなぁ、こっちの制止も聞かずに勝手に飛び出していったのはブランだし……。」

 「悪かったで。何でもするさかい、はよぉ、助けてぇな。……胸が……お願いやで。」

 ……もう少しで、胸の先が見えそうなところまで溶けている。……がんばれスライム!


 (……レイ?)

 ファーが心底呆れたという声を出す。

 チッ……仕方がないな。

 「火炎剣(フレイムソード)

 俺は、精霊剣に炎を纏わらせ、スライムを焼き切っていく。

 まぁ、炎の魔法さえ使えれば、雑魚と変わらないのがスライム種だ。

 ほどなくして、全てを焼き切り、残った核を手に入れる。

 「これでいいのか?」

 俺は、核を手にブランの方へ向く……。

 「こっち見んといてーや。」

 ブランは両腕で胸を隠すようにして座り込んでいた。

 衣服はほぼ溶け落ちていて、全裸と言っても差し支えなかった。

 「……もぅ帰るぅー……」

 ブランが幼児化してしまった。


 しかしここで帰すわけにはいかない。

 このまま帰ると「全裸の女の子を連れている俺」という図が周りに広まってしまう……それは、大変よろしくない。

 「……あー、これでも着ておけば?」

 俺は手元にあったローブを渡す。

 「ありがと……。」

 ブランは小さな声で礼を言うと、ローブを着こむ。

 そんな殊勝な態度を取られると、調子が狂う……つい、可愛いと思ってしまった。

 

 「どうする?45階層まで、このままいくか?」

 「ウン、後ついていくからお願い……。」

 ……だから調子狂うっての。


 「炎風陣(フレイム・バースト)!」

 三つ首の狼が、巨大な棍棒を持った巨人が炎に包まれ息絶える。


 「炎の爆風(ブラストファイア)!」

 猿のような顔をした羽をはやした魔物の群れがまとめて吹き飛ぶ。


 「大いなる風の龍(ウィンド・トルネード)!」

 ドラゴン種の亜種だろうか?大きなトカゲとドラゴンを足して二で割ったようなモンスターを5匹纏めて、竜巻の中に閉じ込め、風の刃が切り刻んでいく。

 

 「光の刃(フラッシュ・エッジ)!」

 リッチー、レイスなどのアンデットの群れの中に飛び込み、縦横無尽に斬り裂く。

 刃に触れたアンデットたちは一瞬にして消滅していく。

 リッチーも一突きで浄化だった。


 魔法が連発できる俺にとっては、このあたりの敵は雑魚と変わらない。

 剣技も一応覚えたんだけど……なかなか上達しないのは、やはり魔法に頼ってしまうからだろう。 

 ま、それでも45階層までは難なく行けるので大きな問題はない……よな?


 「なぁ、『メリア鉱石』ってのはどんな鉱石なんだ?」

 俺はブランにメリア鉱石について聞いてみる。

 初めて聞く名前だが、グラスメイア鉱石とどっちが使いやすいんだろうか?

 「メリア鉱石は、このあたりのダンジョンでしか取れない希少な鉱石や。特性としては、ある程度魔力を溜めておくことが出来る事、どの属性にも染まる事、魔力伝導率99.9%とすごく効率がいいこと、後は、魔力を流せば流すほど強度が上がる、ちゅう事ぐらいやな。

 魔力に特化した特性と、魔力溜まりの側で採れる事から、魔力の塊が鉱石化したものやないか?って言われとるで。」

 なるほどね。俺の武器としては、最高の素材だな。

 「なぁ、レイフォードはん……アンタ、さっきから、バンバンに魔法撃っとるけど、大丈夫なんか?」

 「あぁ、俺は結構魔力量が多いし、ファーの助けもあるからな。これくらいでは魔力切れは起こさんよ。」

 「ならいいけど……レイフォードはん、それだけ強いんやったら、武闘大会に出るとええで。」

 「そんなのあるのか?」

 「知らんのか?武闘大会はやなぁ……。」


 ブランの説明によると、不定期に国王主催の武闘大会が行われるらしい。

 そこで優勝し、尚且つ国王の目に留まると、国王との立ち合いが出来るらしい。

 そこで、国王の目に適えば、望みを一つ叶えてくれるとのことだった。

 もちろん出来る範囲の物に限るのだが。

 ちなみに次の大会は1ヶ月後と、すでに告知がなされているそうだ。

 「うちの作った武器で勝ち進んでーや。で、武器はウチが作ったんやでーって宣伝してくれればええんや。」

 ……広告塔に使う気らしい。ちゃっかりしてやがる。

 「俺にメリットがなさそうだが?」

 「褒美に『自由民にしてくれー』って頼めばええんちゃう?

 うまくいけば、ちまちまやるより、早く自由になれるんとちゃうか?」

 「なるほど……一考の価値はあるな。」

 「そうと決まったら、最高のモン作ったるで!そのためにも、ちゃっちゃと掘るんやで!」


 ◇

 

 カーン、カーン、カーン……。

 「もうすぐやで!あとひと踏ん張りや!」

 カーン、カーン……。

 あれから十分すぎるぐらいの素材を集めた俺は、ブランの工房で、共に剣を打っている。

 俗にいう相打ちという奴だ。

 なぜ俺まで……と思ったが、ブランが言うには……

 「アンタが使うアンタの為の剣や。アンタが関わらんでどないするんや。」

 とのことである。

 魔力回路やエンチャントなどは俺がやるんだから、別にいいと思うんだけど……まぁ、せっかくの機会だし「ドワーフの秘儀」というものを体験させてもらおう。


 鍛冶をしているときのブランはまさしく、神懸かっていた。

 正直、美しい……というより神々しいと、見惚れてしまった程だ。

 俺の腕ではついていくのが精一杯だったが、ドワーフの妙技を間近で見ることが出来、大変有意義な時間だったと思う。


 そんな素晴らしい時間もあとわずかで終わる。

 ブランが最後の一打ちをする……槌と鋼があたった瞬間、剣が光に包まれる。

 「神降ろしや……鍛冶の神ドゥリュッケの加護が降りて来たんや。

 ……今までに何万本も打ってきたけど、神降ろしが起きるんは数本もなかったで。

 中でも、この剣は最高の出来や!

 ……さぁ、手にとって、名前を付けたってぇな。」

 「名前か……。」

 俺は考え込むが、すぐに頭の中に一つの名が浮かびあがる。

 「ケイオスだ……「妖星剣ケイオス」がこの剣の名前だよ。」


 俺は、続けて作業に入る。

 この高揚とした気分のまま剣を完成させたかった。

 柄の部分に空けてある穴に、ファーの精霊石をはめ込む。

 そこから、柄全体を通り、刃の中を毛細血管のように張り巡らすように魔力の通り道を作っていく。

  メリア鉱石で出来た刀身は、俺の魔力を吸い上げ貯め込んでいき、やがて刃全体が漆黒に染まっていく。

 さらに、精霊石の周りに、各属性魔力で染め上げた魔力結晶を埋め込み、カオティックルーンを刻んでいく。

 最後に、もう一度、全体に行き渡るように魔力を流す。

 禍々しいイメージの刀身から、神々しい光があふれる。

 すべての属性をあしらい、邪悪とも入れる禍々しい力と、清廉たる神々しい力を併せ持つ、ファーの依り代であり、俺の愛剣となる……妖星剣ケイオス。

 

 正直強大すぎる力だと思う。

 しかし、この力が必要な時が来るのだろう。

 俺の脳裏に、ユルグスやベルゲンと言った魔人たちの姿がよぎる……ケイオスをもってしても5分5分ではないだろうかとも思う。


 「魔人が出てきたら逃げればいいさ。それより、俺はこの力でさっさとこの国を出る。

 ……ミリィ、リィズ、ソラ、もう少しだ。待ってろよ。」


 


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