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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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聖女 -5-

カナミ視点のお話です。

彼方視点だとダンジョンばかりになりそうなので、世界情勢を挟みます。

 「姫さまー、探しましたよ!」

 「もう、姫様はやめてって言ってるでしょ。」

 私は、探しに来ていた側近……リーンに、そう告げる。

 「姫様、そんな事はどうでもいいのです。」

 「そんな事って……。」

 ガーン……結構大事なことだと思うのよ。

 もし、私が「姫様」なんて呼ばれている所をセンパイが見たら……。

 ……見直すかな?

 …………いや、あのセンパイの事だ、しばらく「姫様」と呼んでからかうに違いない。

 

 「……様、姫様ってば!」

 「はッ……ごめん、何だっけ?」

 「もぅ、ちゃんと聞いてください。……ソフィア公女様と連絡が取れました。」

 リーンが小声で伝えてくる。

 「公女様と……そう。では、例の場所で落ち合えるように、手はずを整えてください。」

 「わかりました。」

  リーンは、私の命を受けると、各所に連絡を取り始めた。


  ソフィア公女はこのアルガード王国の最大領地「エルファント公爵領」の第三公女。

 現エルファント公爵が、アルガード王の弟にあたる為、低いながらも王位継承権も持っている、正真正銘のプリンセスなのよ。

 「私と違って、本物の『姫様』なんだよね。」

 その「姫様」が、なぜか私に好意を持ってくれていて、今では、結構気心の知れた私の数少ない「友達」の一人だったりする。


 「私が「姫様」と友達なんて、誰も信じないだろうねぇ。」

 「そんなことありませんよ。」

 わっ……独り言聞かれてた……ハズい……。

 「いるならいるって言ってよ、リーン。」

 「私はずっといましたが?……それより「聖女様」と「公女様」の友誼は国民皆の憧れの的なんですよ?」

 知らなかったんですか?とリーンが笑う。

 「うぅ……、後で辱めてやるぅ……。」

 「なんでそうなるんですか!」

 リーンは慌てて、自分の尻尾を隠すようにする。

 チッ……警戒されたか。

 リーンの尻尾は、とても気持ちいい……一度モフモフし始めたら時間を忘れてしまうぐらい……。

 「それより……公女様は大丈夫ですか?」

 「えぇ、抜かりはありません。三日後には、例の場所へ到着する予定になっています。」

 「そう……じゃぁ、明日にでも私たちも向かいましょうか?」

 「そうですね。……何?」

 「お話し中申し訳ございません、緊急の連絡が入りました。」

 私とリーンの会話に、伝令が割り込んでくる。

 

「構わないわ、話しなさい。」

 こちらの様子を伺っている伝令に、リーンが告げる……急ぎの時は体面気にしなくていいよって言ってるのに……まだまだ浸透してないのよね。リーンも苦労するね。

 「ハッ。公女様一行の後をつけている者たちが発見されました。」

 「公女様たちは気づいているの?」

 「一組には気づいているようです。」

 「一組……だと?」

 リーンが問いかける。

 「はい、尾行しているのは公女様たちも確認している一行……たぶんリンガードの手の物と思われますが、それとは別に二組が確認されています。」

 「二組も……。」

 リンガードが公女様を狙うのは分かるけど、他の二組は……?

 普通に考えたら一組は囮で、他の二組が、安心している所を狙うってところかな?


 「ただ……その二組なのですが……。」

 伝令の話によると、動きがおかしいんだって。

 公女様を狙っているって感じもなくて、連携してるって感じもなくて……なんか、たまたま同じ方向に向かっているぽいような……って。

 「ねぇ、リーン、今から向かうとして、その二組もしくは公女様たちの所に辿り着くにはどれくらいかかるかな?」

 私は、様々なことを計算しながらリーンに尋ねる。

 「……そうですね、報告のあった場所と時間から予測地点を割り出すと……。」

 リーンが思案している……しっぽがゆらゆらしてる……触りたい!

 「そうですね。明日の昼にはこのあたりで……姫様どうなされました?」

 私が、頭を抱えてしっぽの誘惑と戦っているうちに、リーンの計算が終わった様だ。

 「分かりました。1刻後に、私とリーンの二人だけで向かいましょう。……リーンはこの後、私の部屋へ。」

 「姫様と、リーン殿二人だけなんて危険です。せめて、もう数人御連れ下さい。」

 私の言葉を聞いて、側近の一人が止めてくる。

 「これは、秘せてなければならない事なのです。あなた方は、私の不在を決して他に漏れないようにしてください。その為にも、私とリーンの二人だけの方が都合がいいのです。」

 わかりましたか?と側近たちを見回す。

 「ハッ、分かりました。我々は、姫様の不在を守り通して見せます!」

 「よろしくお願いしますわ。」

 そう言って、私はリーンと共に部屋へ戻る。


 ……堅苦しいのはイヤなんだけどねぇ……仕方がないのかな。

 「姫様……1刻後に出発って、本気ですか?」

 「当り前じゃない。こんなチャンス逃してなるものですか。」

 そう、リーンと二人なら、しばらくは羽を伸ばせる……ソフィアには悪いけど……わかってくれるよね?


 「それより……私がリーンを呼んだ理由……わかっているわよね?」

 「えーと、わかりませんと答えたいです……。」

 リーンがおびえたように言う。

 ……そんな姿も可愛い……けどダメ!

 「あなたが悪いんだからねっ!」

 私はリーンに襲い掛かる。


 「アッ、アァ……。姫様……何を……。」

 「あなたが悪いのよ!……私の前で、こんなかわいいしっぽを振り振りさせて……、後、二人の時は「ナミ」って呼んでって言ってるでしょ!……リーンなら『カナミ』と呼ぶことも許すわよ!」

 私はリーンを押さえつけてしっぽを撫でまわす。

 毛並みに沿ってそーっと逆なでする。

 その度にリーンの口から可愛い喘ぎ声が漏れ出す。

 「アン……ダメです。……それに……」

 「なぁに?」

 私はしっぽの付け根をちょこちょこしながら、可愛い耳もモフる。

 「どうしたの?さぁ『カナミ様』って言ってごらんなさい。」

 ダメだぁ……リーンを前にすると理性が吹っ飛ぶわぁ。

 私、こんなSキャラだったっけ?

 ……全部リーンが可愛いから行けないのよ。


 「ア……ンッ……何故……。」

 「全部、貴女が可愛いからいけないのよ?……さぁ、どうしたの?」

 私はさらにしっぽの付け根を攻める。

 ここが弱点だという事はもうわかっている。

 そのまま耳を甘噛みする。

 「ひゃんっ……もう……ダメぇ……か、カナミ様……許してぇ……。」

 「はい、よく言えました。」

 私はご褒美に尻尾の先から付け根までを優しく逆なでしてあげる。

 「アァ、それダメぇ―。」

 

 私はぐったりしたリーンを撫でてあげる。

 あぁ、可愛い……。

 「うぅ……満足ですかぁ……。」

 リーンがうつぶせになったまま、顔だけをこちらに向け、恨めがましい目で言ってくる。

 「えぇ、とても満足!さぁ、出かける用意をしましょうか?」

 「それは良かったですねぇ……。」


 一刻後、私達は教会の大聖堂の祭壇前にいた。

 「姫様、出発なさるのでは?」

 リーンが戸惑いながら聞いてくる。

 「もちろん、出発するわよ。あと、これからソフィアに会うまでは「姫様」禁止!「ナミ」もしくは「カナミ」と呼びなさい。」

 「そんな……女神様から賜ったお名前をお呼びするのは恐れ多い……「ナミ様」でご容赦を。」

 私のここでの名前は「ナミ」……だけど、私の本質を知っている女神様たちは「カナミ」と呼ぶ。

それを聞いていた皆は、「カナミ」という御名を女神様から授かった……という認識らしいのね。

 女神様に授けられた御名をお呼びするのは恐れ多い、ましてや許可なく呼んだ日には、どのような災いが起きるか……というのが世間一般の感覚。

 まぁ、センパイ以外の男に「カナミ」って呼ばせる気はないから都合いいんだけどさ、ソフィアとか、リーンとか、仲良くなった友達には「カナミ」って呼んでもらいたいなぁ。

 

 「ふぅ……まぁいいわ。ここに来たのは時間短縮のため……一応言っておくけど、他言無用よ?……ブック!」

 私は一応リーンに口止めをしておいて本を開く。

 私が、この能力を自覚してから3年……正直凄いことになっているのよね。

 生産系の能力は中級レベル以上をほぼ網羅しているし、聖女になってからは騎士団クラスの人たちの協力もあって、戦闘系のスキルがかなり増えたわ。

 こっそり抜け出してモンスターとも戦っていたから、モンスターのスキルも多少そろっているし……。

 なんといっても、チート中のチートともいえるのが女神の力。

 正直、これだけあれば他いらないでしょと言いたいぐらい便利でズルい力……センパイだったらゲームバランスが崩れるっていうんだろうなぁ……。

 ……早くセンパイに会いたいなぁ……。


 この三年間、ひたすら情報を集めたんだけどセンパイらしき人って見つからないんだよね。

 一度、辺境の鉱山村で大きな事件が起きて、それを解決したミルフォード子爵って人から助けてくれたパーティの人が凄い力を持っていた、っていうから、話を聞いたんだけど……。

 羽根の生えた天使の歌が素晴らしいとか、小柄な双剣使いの女の子が愛らしいとか、そんな事ばかり言ってた。

 いい加減うんざりして、後半は聞き流してたんだけど……そういえば、そのパーティリーダーに爵位を授けたいと相談されたような……結局どうなったんだっけ?

 その後、ミンディアがドラゴンに襲われたって話を聞いて、それにかかわった「勇者パーティ」の話を聞いたんだけど……。

 センパイなら「勇者」って呼ばれるような活躍しててもおかしくないよねって、期待してたんだけどねぇ……。

 正直、イタいだけだったわぁ……。

 結局勇者が事件を解決したわけでもなかったみたいだし。

 ただ、その後のミンディアからの報告を聞くと……センパイの影がチラホラと見える気がするのよ。

 きっとミンディアで何かやったと思うんだけど……。


 人の報告だとはっきりしないのよ。私自身が行って確かめたいのに、色々事件が起きちゃって動けないし……ね。

 あっと、そうそう早く移動しないとね。 

 各女神様の「協力」により、私は女神の力を限定されてはいるが使うことが出来る。

 その中に『遍在』という力がある。

 これは、元々、どこにでも広く存在するって意味なんだけど、要は「神様はどこにでも存在する」=「どこにでも行ける」って能力なんだよね。

 一見便利そうなんだけど、私の場合は、「私が知っている清められた教会」から「私の良く知っている場所」への一方通行だったりするわけで……。

 まぁ、教会同士であれば行き来できるから、使い方次第なんだけどね。

 使い勝手が悪いわけでもないけど、便利すぎるわけでもない……そんな微妙に中途半端な女神の力……それが私が今使おうとしている力。

 報告にあった場所からそれほど離れていないところにある森……実は、私の最近の秘密の狩場なのですよ。


 「リーン、私にしっかり捕まってね。」

 私はリーンが捕まったのを確認すると力ある言葉(ワード)を唱える。

 『我は遍在する』

 頭にいつもの森をイメージする。

 一瞬後にはイメージ通りの風景が、目の前に広がる。

 「ここは……?」

 リーンが驚いて周りを見回す。

 無理もないだろう。馬車で1日以上かかる場所に一瞬で移動しているのだから。

 ふふん、驚け、私を尊敬のまなざしで見ていいのよ!

 「……最近姫様が教会に行った後、姿を見失うって報告が多くあったんですが……こういう事だったんですね……。」

 あれっ?なんか反応が……。

 「姫様は……この力で私達をだまして、こっそりと遊びに行ってたんですね……。」

 え、そこなの! ほら、もう、こう……さすがは女神様のお力……とか……。

 「いいですか、姫様!これから、黙って遊びに行くの禁止です!」

 「うぅ……姫様禁止ぃ……。」

 「うるさい!姫様が黙って抜け出すのをやめるって約束してくれるまで、ナミと呼んであげません!」

 うぅ……意地悪ぅ……きっとさっきの仕返しだよね。

 「返事は?」

 「……うぅ、わかりましたぁ、リーンちゃんがナミと呼んでくれるなら抜け出しませーん。」

 「約束ですよ、ナミ。」

 「はーい」


 「で、ナミ、これからはどう行動するおつもりですか?」

 私達は手ごろな広場で火をおこし、野営の準備をしている。

 まだ、野営には早い時間だが、他にやることがないので仕方がない。 

 リーンは今夜の食料を狩りに行ってくると言って、大きなイノシシを仕留めて帰ってきた。

 そのイノシシを焼きながら、リーンが訊ねてきたのが、今後の予定だった。

 リーンの計算では、相手との接触迄、半日以上の時間があるという。

 「ウン、まぁ、今夜はここでゆっくりして、明日、相手の先回りして様子を伺う予定。ソフィアたちの方はとりあえず後回しで、別の二組を先に確認しよっか。」

 「問題ありませんが、一応理由を聞いても?」

 リーンが訪ねてくる。

 「んーと、まず、ソフィアたちね。後つけられていることに気付いているんだから、私との合流の前に何とかしようと考えていると思うのね。だからそっちは後回しで構わないわ。」

 私は一度言葉を切り、目の前のイノシシをつつく……まだ焼けないね。

 「他の二組が、どこの手の物か、目的が何かはっきりしないうちは手を出しづらいわ。だから、まず探ってみましょ。」

 「私と同じ考えですね、安心しました。」

 リーンは時折こういう所がある。

 自分の考え方に自信が持てないのか?それとも私を試しているのか?

 どっちでもいいけどね。何かあればモフモフの刑にするだけだし。


 「ふっふっふ……それより、リーン?今夜は二人っきりよぉ。」

 私はリーンにしなだれかかる。

 しかしリーンは慌てることもなく「そうですね」と言ってくる。

 あれ?普段なら、ここで慌てふためくのに……おかしぃ。

 「ナミ……いつまでも私がやられっぱなしだと思っていませんか?幸いここならほかの眼も届かないいですしね。」

 リーンの眼が怪しく光る。

 あれっ?これ、私がヤバいヤツじゃない?


 「うぅ……ひどいよぉ……リーン……。」

 私は、今リーンに拘束されて動けずにいる。

 正確に言えば、動けなくはない……しかし私を取り囲む10対の視線がそれを許さないのだ。

 「そんなことを言うのはどの口ですか?この口ですか?」

 リーンが、私のほっぺを突っついてくる。

 「うぅ……覚えていなさいよぉ。」

 「あら、そんなこと言っていいのかしら?」

 リーンが私を取り囲んでいる手下に「やりなさい」と合図を送る。

 取り囲んでいる手下先が我先にと、私にのしかかってくる。

 あ、ダメ、胸……そこ力入れないで……。

 私の顔に息がかかるくらい近づいてくるものもいた。

 「うぅ……や、やめて……。」

 「あら?こういうのを望んでいたんでしょ?」

 リーンが意地悪そうに言う。

 「違うの!私は……。」

 途中で遮られる……私の顔を生暖かいものが触れる……舐められている。

 「イヤぁ……それはイヤぁ……。」

 「あれ?こういうのがいいんでしょ?」

 「違うぅー!」

 私は声の限り叫ぶ。

 「私はモフられたいんじゃなくてモフりたいのよぉ!」


 そう、私は今、リーンとその手下……ワイルドキャット、一角ウサギ、トビハムスター、フワフワリスなど、10匹の小動物に押さえつけられている。

 頬を撫でるウサギの毛の柔らかさ、肌に張り付くようなフワフワリスの毛並み……それらが絶妙に近づいたり離れたりしている。

 押さえつけられているのを振りほどくのは簡単だが、そうすると、この小さなモフモフたちが怪我をするかもしれない。

 だから動くに動けずにいるこの状況をリーンは楽しんでいるのだ。

 「もう、私に悪戯しないって誓いますか?」

 そうしたら離して、どかしてあげますとリーンは言う。

 「うぅ……わかった、もうリーンには悪戯しない……今日はね。」

 最後の言葉はリーンに聞こえないように付け足す。

 「……なんか素直すぎて怪しいですが……まぁいいでしょう。」

 リーンが小動物たちに合図を送ると、私から離れて帰っていく。

 私は、最後に離れようとした一角ウサギを捕まえる。

 「リーンに悪戯しないとは言ったけど、モフらないとは言ってないからね。」

 「……まぁ、その子にならいいでしょう。私はこちらで休ませてもらいますね。」

 リーンは一角ウサギを私に生贄として差し出し、自分の寝床を確保して寝入ってしまう。

 「ブック!」

 私はうさぎをモフりながら、本を取り出す。

 「エファ……リベンジ・倍返し!」

 私は復讐神エファの権能である、リベンジの力を発動する。

 エファはのリベンジは簡単に言えばやられたことをやり返す能力だが、その中でも、倍返しの権能は余分に力を使うが、やられたことを必ず倍以上にして返せる素晴らしい能力だ。

 しかし、制限のある私の力では「いつ」「どのように」「どうやって」を選ぶことが出来ない。

 でも、今回はそれでいいのよ。

 リーンが今後私以上にモフられることは間違いないんだからね。

 女神様の力を持ち私の恐ろしさを思い知るのよ!

 「クックック……。」

 思わず邪悪な笑いが漏れ出てしまった。

 私の手の中でモフられている一角ウサギが、身を固くする。

 私は、そんなうさぎをモフりつつ眠りにつくのであった。


 ◇

 

 「ナミ、戦っています。例の二組が戦っています。」

 「どういう事……仲間じゃなかったってこと?」

 敵対関係にある二組が、さらにソフィアを狙ってる?

 「ナミ、どうしますか?」

 リーンが聞いてくる。

 どっちかに力を貸すか、それとも黙ってみてるかを聞きたいのは分かるけど……。

 私は目の前に戦闘に目を向ける。

 片方は……5~6人ぐらいで、相手を取り囲んでいる。

 装備からするとリンガードの兵士とも言い切れない……傭兵か冒険者か……。

 もう片方は……速い!

 囲まれないように動きながら敵を斬り付けていく。

 速すぎて姿がよく分からない……辛うじて両手に双剣を構えて、それで戦っている事が分かる。

 後は……ネコ耳!


 「リーン、あの一人の方を助けるわよ!」

 「え、ナミ?」

 「あの子獣人よ、さっき一瞬ネコ耳が見えたわ。」

 そう言って、私は戦場に飛び出していく。

 「……黒猫の獣人?いたかしら……?」

 リーンが呟くのが聞こえたが、構ってられない。

 私は、獣人の子と傭兵たちの間が十分に空くのを狙って衝撃波を放つ。

 思いがけないところからの攻撃に、その場の全員の注意がこちらを向く。

 今ね。私は、傭兵たちをめがけてジャンプする。

 「ブック! マルスレイの力を我に!」

 私は愛用のメイスを取り出し、落下速度の力も借りて、メイスを振り下ろす。

 「重心破砕(インパクト)!」

 メイスを打ち下ろした衝撃が私を中心に広がる。

 傭兵たちは一人残らず、そのショックを受け倒れるが、獣人の子は瞬間に飛び上がって難を逃れたようだ。


 「動くな!」

 次の瞬間、私の首に双剣があてられる。

 いつの間にか後ろに回り込まれていた。

 「は、速いわね。」

 「ナミ!」

 リーンがこちらに駆け寄ろうとする。

 「リーン待って!」

 私は、それを押しとどめる。

 この子は敵じゃない。

 私の何かがそう教えてくれる……誤解を解かなきゃね。

 「リーン?」

 リーンお名前を聞いた途端、獣人の子の力が一瞬緩む。

 「ブック! フラッシュ!」

 私はその隙に発光の特殊能力を使う。

 これは、発光トカゲの特殊能力だ。

 意思が中々通じないので手に入れるのに苦労したのよ。

 突然の目くらましで力が緩んだ瞬間に私は拘束から逃れる。


 「待って、私は敵じゃないわ。」

 私は声をかける……相手は警戒心を解かないけど、襲い掛かってくることもしない。

 「ナミ、大丈夫ですか?」

 リーンがそばに来て……獣人の子に話しかける。

 「私はリーン!ミラウ集落の出だ。お前はどこの集落のものだ!」

 目の前の獣人の子は何かブツブツ言ってるみたいだけど……。

 「あなたがリーン……ミーナを知ってるっすか?」

 そんなことを聞いてくる。

 ミーナって……確か……。

 「ミーナを知ってるのか?どこで会った?教えてくれ!」

 私の考えがまとまるより早くリーンが取り乱す様に詰めかかる。

 「リーン、落ち着いて……」

 私が取りなすが、リーンは止まらない。

 「ミーナのお姉さんなら、敵じゃないっすね……ミーナは、たぶん無事っすよ。」

 獣人の子はそう言ったかと思うとクタッと力が抜けるように倒れ込む。

 その瞬間、ミミとしっぽが消える……

 「えっ消えた?」

 目の前の子から圧力が上がる。

 (敵じゃないみたいだけど……この子に手出しはさせないからね)

 どこからともなく、声が響く……。

 そうはいってもこのままにしておけないよ。

 「誰だか分からないけど、とりあえず安全なところに運んでいい?」

 (……構わない……けど、何かあれば全員殺す!)

 物騒だなぁ……

 「安心して、私達は敵じゃないから。」 


 とりあえず、私は少女を野営していた場所まで運ぶ。

 この子誰なんだろうね。

 「ミーナが無事……うぅ……。」

 リーンはこの子に早く話を聞きたいようだが、それを宥める。

 「ダメよ、まずは休ませてあげて。」

 私はリーンを押しとどめる。

 下手にリーンが暴走して、さっきの声に暴れられても困る。

 「でも、かわいい子だね……早く目覚めてくれないかなぁ?」

 私は、目の前の少女の寝顔を見ながら、そう思った。 



 


 


……カナミとリーンのイチャイチャでほとんど終わってしまいました(^^;

最初に聖女と合流するのが誰になるか悩みましたが……結局こうなりました。


次は彼方の話に戻るか、聖女編の続きになるか悩み中です。

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