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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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聖女 -4-

 「な、何が望み……だ?」

 目の前の神官、エリクシードが声を絞り出す。

 威圧の力が強まったせいで、少し苦しそう。

 「それが答えなのでしょうか?」

 私は必死になって漏れ出す魔力を抑える。

 その分威圧を抑える力が弱くなってしまうが仕方がないわ。

 エリクシードも教会が壊れるよりはマシと思うよね。

 「何が望みって、私が聞きたいですわ。知人を脅し、家族を犯し、殺し、その上で私を呼び出して……何が、お望みなのかしら?」

 ようやく、力の調節に慣れてきた。

 これで、教会が壊れることはないかな?

 ……んー、威圧に集中するとダメっぽいわね。


 「あぁ、エリクシード様はご存じないのでしたね。……誰か、先ほどの神官長を連れてきていただけないかしら?」

 私は側使えの者達へ視線を向けるが、皆平伏したまま誰一人として動かない。

 「わ、私が責任をもって、其方の望みを……叶えたいと思う……だ、だから、少し時間を……頂けないか?」

 エリクシードが苦しそうに、しかし、はっきりと、そう告げる。

 「私の望みねぇ……被害にあった人達を被害前の状態に戻して。犯された人たちは犯される前に、殺された人たちは殺される前に……出来るの?」

 私は馬鹿にしたようにエリクシードに告げる。

 出来るわけがない。それこそ時間を操る神でもない限り。

 「そんな……。」

 エリクシードが項垂れ、崩れ落ちる。

 もう威圧に耐える力も残ってないようだ。


 (あまり無理を言うのではなくてよ……。)

 その時、天から声が響く……神々しい光が辺り一面を包む。

 ……えーと何だろう、コレ?

 (カナミ……お久しぶり……と言っても覚えていないわね。私はエルフィーネ・創造と再生を司るものです。)

 「えっと、エルフィーネ?何の用なの?」

 (一言でいえばお願いでしょうか?このままではこの教会が壊されてしまいます。ここは、私にとって思い出深い場所ですから、壊されるのを望みません。)

 「……この教会を壊さなければ「エルフィーネの力で協力」してくれる?」 

 私は聞いてみる……ダメで元々だ。

(………そうですね。私が「望まない」力の使い方でない限り「協力」致しますわ。)

 「じゃぁ、教会は壊さない。……けど、問題は解決してないわ。」


 (そう、その通り……)

 さらに光が増える。

 (私は復讐の神、エファじゃ。カナミの怒りは正当なものと認める。人の子らには復讐する権利がある。私が「協力」してやるから思いを遂げるがよいぞ。)

 ……えっと……ちょっと混乱してきた。


 (力を欲している者はここか?我が「協力」してやろう。我はマルスレイ・戦いの女神じゃ。要求を通さば戦って力を示して見せよ。)

 ……ちょっとちょっと……一体何が……


 (こら、何を言ってるのよ!だからアンタは脳筋って言われるんでしょうが。カナミはねぇ、愛に生きてるのよ!センパイとの愛を貫くためならなんだってやる突撃乙女なのよ。ワタシはそんなカナミに「協力」するのよ!……ね、カナミ?)

 ……えっとアンタ誰?

 (もぅ、私は恋愛神マァルよ。忘れちゃったの?)


 ……もぅ!いい加減に……

 (いい加減にしなさい!)

 一際強い光が生まれる。

 (あなた方はカナミに力を貸したいのですか?それとも邪魔をしたいのですか?秩序も何もないではありませんか!)

 ((((最高神様!))))

 (……カナミ、皆はこれでもあなたの力になりたいのです。それだけは分かってあげて欲しいのです。もちろん私も……出来る事なら「協力」いたしますわ。……ただ、時を戻すことは出来ません。出来ることは癒すことだけです。あなたの大事な方々が受けた悲しみを癒すことを最高神ネルフィーの名において約束いたしましょう。)


 「……よくわからないけど……ありがとう。力を貸して欲しい時はどうすればいいのかな?」

 (あなたの持つ力で……私たちの力を願いなさい。また、時と場所が叶うのならば姿を見せることもできましょう。では、いずれ……皆、戻りますよ!)

 ((((はーい))))

 その言葉と共に、あたり一面を覆っていた光は急速に消えて行った。


 「……という訳なんだけど?」

 私は、エリクシードに声をかける。

 何が「という訳」何だろう。自分で言ってて訳わかんなくなる。

 思ったより混乱してるんだなぁ、私。

 「ハッ、仰せのままに!」

 ……エリクさんは分かったみたい。慌てて飛び出していった。

 ……大丈夫かなぁ?


 それからが大変だった。

 エリクシードさんは後始末のため駆け回り、また、女神が降臨されたという噂が街中に流れ、女神様のお姿を拝見できないものかと、領都内外から人が押し寄せた。

 そして今、私は教会の大聖堂の一番高い位置にいる……なぜこうなったの?

 (私たちが力を振るうのに教会は便利なのですよ)

 突然現れるエルフィーネ。

 周りがざわめく。

 当然だろう……女神が簡単に出てきたら誰だって驚くよ。

 (ここに集いし我が子らよ!我が名はエルフィーネ。創造と再生を司る者也。此度は我が朋友ナミを慰めに来ただけじゃ。人の世の事は人らで何とかするがよい。ただし、我が朋友を害するものに関しては神の名において天罰が下るものと思い知るがよい!)

 

 (……どう?中々威厳あったでしょ?_) 

 エルフィーネが、みんなに声をかけ姿を消した後、私にこっそりと言ってくる。

 やりすぎだよ……それに姿現さなくてもしゃべれるなら最初からそうしてよ。

 (うーん、近くの人には見えているのよ?)

 周りを見てみると、私のそばにいる人はエルフィーネの光を凝視している。

 (まぁ、邪魔しちゃ悪いからね。また後で)

 そう言ってエルフィーネは姿を消す。


 結局、私は大神殿の神殿長に就任することになった。

 神降しが出来る私を、手放したくない領主を始めとした貴族一同と、私と気軽に会うために教会にいて欲しい女神たちの思惑が一致した結果だった。

 そして、今私は罪人たちを前にしている。

 彼らの罪状は「女神の朋友たる聖女様に対し無礼を働いた罪」である。

 ただ、「農民の娘から利権を取り上げようとしたついでにハッちゃけた」だけのはずだった彼らは気の毒ではある。

 ……許す気はないけどね。

 今の私は、被害者であり、原告であり、検察官であり、裁判長なのだ。

 つまり、彼らの罪は私の思うがままって事。

 なんだかんだと言ってもエリクシードさんは有能だった。

 たった三日で、罪人たち一族郎党迄をこの場に連れてきている。 

 貴族たちはそれなりに位が高そうなので、普通ならそう簡単に捕縛は出来なかったと思うのよ。


 まぁ、とりあえずは罪の軽そうな人たちからね。

 この人たち全員の処罰は私に委ねられているので、さっさと済まさないと焦れた女神たちがまた出てくると面倒だし。

 まずはマリノさん達を襲った人たち。

 実行犯は犯罪奴隷として売却っと。指示した者達には金貨50枚の罰金。……まぁ貴族様たちならお金で済んでよかったってところでしょうけどね。

 罰金の半分は私の方へ、もう半分はマリノ商会への損失補填に回してもらう。


 そして、村を襲った貴族たち……中心人物は3人……一応罪状を確認しておこうかな?

 「あなた方はある農村へ赴き、そこで乱暴狼藉を働いた。嫌がる村の女性達を犯し、止めに入る男たちを切り捨てた……間違いありませんね。」

 「いや、俺達は…そんなつもりじゃ……」

 「ちょっと酒がハイって気分良くなってただけで……」

 「あいつらも嫌がってなかったしよぉ……」

 ……なんて言い草なんだろう……

 「間違いありませんね!」

 再度問う。少し口調が強めになったけど、これでも自制してるのよ。


 「あいつらは農民なんだよ!農民に何しても俺達が責められる言われはねぇ!」

 プチン!

 あーぁ、こいつ言っちゃったよ……。

 一応領主たちの方を見る。反応によっては……。

 領主含めほぼ皆が頭を抱えるか額を抑えている。

 ……まぁ、立場が分かっているみたいね。


 私は目の前の3人に向き直る。

 「貴族だから平民に何しても問題ないと?」

 「そうだよ!身分が違うんだよ!」

 あ―ァ、死刑執行書に自分でサインしちゃったよ、この人。

 「じゃぁ、女神様が人間に何しても問題ないわけね。」

 私の言葉に、エルフィーネが姿を現す。

 (この者達の処分はエルフィーネの名においてナミに一任します。ナミの言葉は私の言葉です)

 そう言って再び姿を消すエルフィーネ。

 「よかったねぇ、間近で女神様が見られるなんて、人生の最後にいい思い出が出来たね。」

 私はにっこりと笑ってあげる。

 彼らは顔面蒼白になっていたが知ったことではない。


 「この者達の妻子をここへ!」

 私は近くの兵士に命じる。

 やがて数人の男女が連れてこられる。

 妻と思わしき女性が5人。成人しているだろうと思われる男性が二人と女性が一人、まだ未成年の私より少し小さい女の子が二人。

 私は小声で「ブック」とつぶやき、新たに得た神々の権能の内「嘘感知」の能力を選ぶ。

 そして、連れてこられた10人の妻子たちに話しかける。

 「女神の御名において申し付けます。この先嘘偽りなく答えることを誓いますか?

 「ハイ誓います」

 全員が誓ってくれた。これで準備はOKね。

 「じゃぁ、まず、そこのあなた方。」

 私は跡取りらしい二人の男に問いかける。

 (ねぇねぇ、カナミ、この子たち、ちょっと子供っぽく甘えて見せたら、調子に乗って本音言ってくれるよ。)

  マァルが急に出てきてそんなことを言ってくる。

 ……いや、普通にないわー。


 「……ねぇ、おにぃちゃん達は、お父さんがやったことどう思う?」

 ちょっと子供っぽく問いかけてみる。

 ……こんなんで引っかかるバカはいないと思うけどなぁ。

 「どうって……それは……。」

 「まぁ、お酒も入ってたっていうし、ちょっとハメ外しすぎかなとは思うけどよぅ……」

 「農民相手だろ?相手も喜んでたんじゃないか?」

 「そうそう、貴族がわざわざ相手してやるんだ。光栄に思ったんじゃないか?」

 ……バカがいた。


 「この二人を父親の下へ……次女性達」

 子供たちが何をしゃべったかまでは聞こえていないだろうが、父親の下へ連れて行かれるのを見て、思うところがあるようだ

 「あなた方の御主人は、嫌がる村の女性達を無理やり犯して回りました。この事についてどう思われますか?」

 「だらしがない。」

 「いつかはこうなるんじゃないかと。」

 「女癖の悪さはいくら言っても治りませんの。」

 「私は関係ないですよね?」

 妻たちは口々に主人の悪口を並べ立てる……普段からの鬱憤がよほどたまっているようだ。

 嘘感知に反応はないところを見ると、本音……なんだよね。

 「アナタは……どう思われますか?」

 一人だけ黙っている女性に声をかける。

 「大変痛ましい事だと思いますが……私からは何も言えません。」

 「何故ですか?」

 「私は、あの方の妻であり、また村の女性たちと同じ立場でもあるからです。妻である以上どれだけ責めたくても何も言う資格はありませんから。」

 女性は淋しそうに笑う。

 どうやら、無理やり妻にされたクチらしい。

 

 後は女の子たちだけだが……未成年の女の子に男の汚いところを見せる必要はない。

 私は成人している女性だけを呼ぶ。

 「あなたは父親のしたことをどう思いますか?」

 「……別にどうも……貴族の男なんてあんなものでしょう?……ただ、願わくば私みたいな立場の者が出ないように祈りますわ。」

 後半は声が小さすぎて聞き取れなかった。

 

 私は未成年の子供を含めた女性8人を、男たちの前へ連れてくる。

 「お待たせしましたわ。さて、あなた方は大勢の衆目の前で村の女性達を犯し、それについて農民だから何をしてもいいと言いました。」

 そこで私は一息入れる。

 「では私が、あなた方の妻子を犯しても問題ないという事でいいですか?」

 私の言葉に口々に非難が飛んでくる。

 「何故だ!」

 「いいわけないだろ!」

 「何故私が!」

 「お願いです、どうかこの子だけは!」

 「あんたの所為よ!」

 「……私……お姉さまになら……ぽっ」

 「イヤよ!こんなところで何てイヤ!」

 「農民と一緒にするな!」

 「……いつかはこうなると……。」

 ……中に変なのが混じってたような気がするが気にしないでおこう。

 

 「そこのあなた……この子達を私の部屋へ連れて行ってちょうだい。」

 私は近く委の兵士に命じて、女の子3人と、一人だけ寡黙だった奥さんの4人を連れて行かせる。

 そして男3人に向かって言い放つ。

 「あの子たちは私が貰うわ。大丈夫よ、あなた方の事なんて思いださないくらい可愛がってあげるから。だから安心して処刑されてね。」


 私はエリクさんの方へ向き、処分を言いつける。

 「この者らは女神様に対し、不敬の念しか持っていないようですわ。貴族の理においてふさわしい処分をお願いします。」

 ……処刑しといてね、一族郎党については任せるからね。という事だよ。


 さて、最後は、総責任者なんだけどねぇ……もう処刑でいいんじゃない?

 疲れちゃったしね。

 とりあえず領主さんを呼びつける。

 相手が領主だろうが何だろうが、今の私は女神様の代理。偉いのよ!

 「聖女様、何でしょうか?」

 「あの元神官長の処刑にあたって、何か問題ある?」

 「……特に何もございません。」

 「あ、そっ……もう疲れたから、あとお願いね。後、連座で処刑って私好きじゃないの。どうしようもないクズはともかくとして、一族ってだけで他に罪もないものは考慮してあげてね。」

 「仰せのままに。」

 「あ、そうそう、元神官長の一族の中でこの子たちは私の部屋へ連れてきてちょうだい。」

 そう言って何人かの名前を読み上げる。 

 ……みんな可愛い女の子たちだ。


 ……この事がきっかけで、後日「聖女様は可愛い女の子を囲っている」って噂が流れるんだけど……違うからね。女の子がハーレム作ってどうすんのよ!


 「後、この聖堂使うから人払いしておいて。」

 「それは構いませんが……何をなさるおつもりでしょうか?」

 ……うーん、取り立てて言う事じゃないんだけど……相手は一応領主様だし……いいか。

 「ウン、ちょっとね、呼び出したい女神様がいるんだ。……人がいると大騒ぎになるでしょ。だから人払いお願い。」

 ……領主様が絶句する。

 まぁ、そうだろう。気軽に女神様を呼び出すなんて言う人いないだろうからね。

 「あの……恐れながら、わたくしも立ち会ってよろしいでしょうか?」

 「はぁ?なんで?」

 「……実はお恥ずかしながら……女神さま方が降臨成された時のお姿が神々しく素敵だったと、息子から聞かされまして……わたくしもこの目で拝見したく……。」

 顔を真っ赤にしながら白状する領主。

 まいいか……。

 でも、せっかくだから意地悪だけはしておこう。

 「減るものじゃないし、別にいいですよ。他に見たいって人がいるなら2~3人ぐらいなら連れてきてもいいですよ。」

 「本当ですか!ありがとうございます。」

 「エルフィーネ、そう言う事だから……この人たち貴女だけじゃ物足りないんだって。」

 領主が私の言葉を聞いて青ざめる。

 (はぁ……仕方がないですねぇ……私はこの領地の為に力を尽くしてきたんですけど……淋しいものですねぇ。)

 エルフィーネが、私の言葉に乗って泣き真似をする。

 意外とノリのいい女神様だった。


 体を清め、大聖堂に戻った時、そこには30人ほどの人が集まっていた。

 「……2~3人って言ったのに……数も数えられないバカですか!」

 とりあえずエリクシードにあたっておく。

 

 私は一緒に連れてきた女の子達……バカ貴族の妻子と一族の中から私が選んだ子達だ……を聖堂の椅子に座らせ、黙ってみているように言い含めておく。くれぐれも、ここで見聞きすることは他言無用だと念を押しておく。

 彼女らは、今後私の身の回りのお世話をしてもらう予定だ。また、貴族の常識というものも、彼女達から学ばなければならない。

 私が女神の朋友という所をしっかりと見せつけておく必要があるのだ。

 ……まぁ、そういう意味では領主様が連れて来た人達も無駄ではないだろうけど……。

 他の人々にも、他言無用と言い含めてから、私は祭壇へ上がる。


 私は祭壇の前で手を合わせ、祈りをささげる。

 「最高神ネルフィー様、あなたの名前においてカナミが願います。……ミィルを呼んで頂戴。」

 私は暫く待つ……やがて、光が満ちてきて女神が姿を現す。

 (久しぶりですね、カナミ。私を呼び出すとは……思い出しましたか?)

 「えぇ、全部じゃないけどね。」

 (それで私に何の用ですか?)

 「私の聞きたいことなんて一つに決まってるわ。……センパイはどこにいるの?」

 (……今はまだ会えません。現在はこの国にいるとだけ申し上げましょう。)

 「ホント……本当に、この国のどこかにいるのね?」

 私は涙が溢れてくる。

 今はまだ会えないとミィルは言った。

 でも、この国のどこかに彼方センパイがいる、それだけで私の心は嬉しさの悲鳴を上げる。

 「いつ、どこで、センパイに会えるの?ミィル、貴女ならわかるんでしょ。教えて!」

 (今はまだ……あなた方が再び巡り合うためには、彼方が、幾つかの大きな試練を乗り越える必要があります。)

 「私に……出来ることは無いの?」

 (今はただ……待つことです。力を蓄えなさい。その時が来るまでに……。)

 「……ミィルは「協力」してくれる?」

 (……私の力はあなたに扱える物ではありません……しかし、そうですね……。)

 ミィルから力の塊みたいなものが私の方へ流れ込んでくる……温かい……そして優しい……。

 (彼方の能力の一部をあなたに貸し与えます。……どうやらあなたの方が有効に使えそうですからね。)

 彼は全く使いこなせてないのですよと呆れたように言うミィル。

 その仕草が非常に人間っぽくって、思わず笑ってしまう。


 (いいですか、カナミ。あなたと彼方を結ぶ運命の糸は、とても細く脆いものです。本来ならば、この世界で繋がる事はあり得ないほどに……今、二人を繋ぐ糸を紡いでいるのは「あなたの彼方への想い」だけなのです。ですから……何があっても彼を信じなさい。何が起ころうとも必ず会えると信じなさい。あなたの想いだけが彼との絆を繋ぐものです。最後に私からも祝福を……彼方と香奈美の運命の糸が交差しますように、時と運命を司る女神ミィルの名において祝福します。……ブレッシング!)

 

 祝福の光と共に掻き消えていくミィル。

 消えゆく直前に「ミンディアへ」と言葉を残していった。


 彼方センパイがこの国のどこかにいる。それが分かっただけでもミィルと会った甲斐はあった。

 私は薄れゆく意識の中でそう思った。



 数日後、私はマリノさんとエリィ、そして、この街の商会を牛耳っている商人ギルドのギルド長と会っている。

 「そういうわけで、神殿長になっちゃたの。それでね、今度ミンディアに行くことになったから中々会えなくなると思うから……挨拶だけしておこうと思って。」

 マリノさんとエリィは突然の事にどう反応していいか分からないようだ。

 まぁ、これは正直、ギルド長に見せつけるためのものでもあるから、二人の反応はどうでもいいんだけどね。

 ただ、ちょっとは淋しく思ってもらえたら嬉しいなぁ、なんて思ってしまう。


 「すまない……突然の事で、びっくりした。ただ、これからも付き合いは続けてくれるって事でいいんだろうか?」

 マリノさんはそう言いながらギルド長の方を見る。

 言いたいことはわかるけど、あえて無視する。

 「そうね。私としては、私の服はエリィに頼みたいの。特に貴族枠に入っちゃったからね。服の数も、側使え達の服も用意しなきゃいけないからね。正直、マリノさんの所だけでは追い付かないかなぁなんて。」

 そう言って私はギルド長の方へ視線を向ける。

 「今日儂が呼ばれたのは、新しいお得意様を紹介するって意味でいいのですかな?」

 ギルド長が話に入ってくる。

 「そうね、今日あなたを呼んだのは……エリィと私の仲の良さを見せつけるためかな?」

 私はそう言ってエリィを抱き寄せる。

 エリィは目を丸くしている……ゴメンね。


 「マリノ商会とは、縁あって最初におつきあいを始めたのですわ。今では私の意を汲んだ立派な商会で、私のお気に入りですの。ただ、それを面白くなく思う人達もいるようですわ。」

 そう言ってギルド長を見る。

 「私は私の「お気に入り」を傷つけるのは許せませんの。商人同士の駆け引きや出し抜き大いに結構、ただ、人の道を外れた場合……それなりにお覚悟を持っていませんと……ね。」

 ギルド長は、必死に震えを抑えて「その通りですな」と言っている。

 私は少し威圧を緩める。

 「さすがはギルド長さんですわね。ちゃんと道理をわきまえていらっしゃいますこと。」

 にっこりと笑って言葉を続ける。

 「先ほども申しました通り、私の方の事情でマリノ商会さんだけでは手が足りなくなさそうなので、是非ご協力をお願いできましたらと思っておりますのよ。もちろん、ミンディアでも探すつもりですが、優秀な商人さん達は中々見つからないでしょうねぇ。」

 ……要は、余計なことをせずに協力しろ!と言いたいのだけど、ちゃんと伝わってるかしら?

 「えぇ、任せてください。服飾においてはマリノ商会を通していただければ職人の手はずをさせていただきます。それ以外の事柄に置きましては、その都度お話を伺う……という事でいかがでしょうか?」

 ウン、ちゃんと伝わったみたいね。

 「こちらの意を汲んでいただきまして、ありがとう存じます。これからもいいお付き合いをお願いいたしますわ。」

 最後にはほくほく顔になったギルド長を見送り、私は残った二人に声をかける。

 「さっき言いそびれたけど、今回迷惑かけちゃって、本当にごめんなさい。」

 私は二人に謝罪する。

 「コラッ、貴族様が簡単に頭を下げるんじゃない!」

 マリノさんが笑いながら叱ってくる。

 「だって……貴族なんかじゃないモン。」

 コラッともう一度マリノさんが言う。

 「それでミンディアにはいつ発つんだ?」

 「そうね、諸々の準備が出来てからだから3週間後ぐらいかな?……それまでに普段使いの服3着ほど頼めるかなぁ?」

 ちらっとエリィを見る。

 「仕方がないわね。お得意様だから、ちょっと無理してみますわ、お嬢様。」

 エリィが笑いながら言ってくる。

 ……ほんと、二人ともありがとうね。


 「ねぇ、二人に甘えてもいいかなぁ?」

 「ん?」

 「なぁに?」

 「たぶんね、最終的には領都に行くことになるんだけど、その時はマリノ商会、領都に来てほしいなぁ。」

 「「!!」」

 「……これはまた、とんでもない無茶ぶりだな。」

 「……ダメ……かなぁ?」

 「んーん、ナミの服を作れるのは私だけだからね。何としても領都に店を出すわ……でも、3年は待ってね?」

 「……ナミの無茶ぶりは今に始まったことじゃないしなぁ……仕方がないな。」


 そう言って笑ってくれる二人がとても大好きだった。



カナミの物語もようやく動き出した感じです。

でも、本編に追いつくにはもう少し時間が必要かな?


※ 不定期ですが活動報告も書き始めました。

 よかったら顔を出してください。

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